事故後、清掃作業に従事した方 * チェルノブイリでは、二四万人の被ばく線量は平均一〇〇ミリシーベルトで、健康に 影響はなかった。 * 福島では、この部分はまだ該当者なし。 3 周辺住民 る * チェルノブイリでは、高線量汚染地の二七万人は五〇ミリシーベルト以上、低線量汚弾 を 染地の五〇〇万人は一〇 5 二〇ミリシーベルトの被ばく線量と計算されているが、健康 ち には影響は認められない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に飲用都 した子供の中で六〇〇〇人が手術を受け、現在までに一五名が亡くなっている。福島の の 故 牛乳に関しては、暫定基準三〇〇 ( 乳児は一〇〇 ) べクレル / キログラムを守って、一 事 発 原 〇〇べクレル / キログラムを超える牛乳は流通していないので、問題ない。 章 * 福島の周辺住民の現在の被ばく線量は、二〇ミリシーベルト以下になっているので、 第 放射線の影響は起こらない。 一般論としては、「レベル 7 の放射能漏出があると、広範囲で確率的影響 ( 発
しオした。 その一方で東電は、「漏れ続けている高濃度のものに比べれば、大変、低濃度の汚染水 だ」と言いながら、さらに何万トンも海に放出している。こちらは事故で漏れ出したので はありません。「高濃度の汚染水置き場をつくるため」と言い訳しながら意図的に流した わけです。こんなことをしていたら、海外から「海洋汚染テロ国家」と非難を浴びてもし ようがない。私が確認した敦賀原発周辺での " 異変。とは比較にならないほどの非常事態 が、近い将来、福島周辺で発生するのは避けられないと思います。 それに加え、今もなおダダ漏れ状態の汚染水をどうするのかといえば、完全にお手上げ 状態です。注水を停止すれば、核燃料の溶融がさらに進んでしまう。冷やせば汚染水がダ ダ漏れのジレンマ。広瀬さんは、事故発生後の対応をどう見ているのですか。 * 4 ルポルタージュ研究所のホームページ (http://www ・ rupoken.jp/) で電子書籍をダウンロード 可能。
明石高濃度汚染水の処理問題では、フランスのアレヴァ社が乗り込んできて支援すると う・さんくさ っていましたが、 かなり胡散臭いですね。 広瀬ああ、あれは駄目です。アレヴァ社のアンヌ・ロベルジョンという O O ( 六月一 六日に退任 ) はトンデモナイ女傑だ。来日して「汚染水処理はまかせろ」なんてテレビで 言っていたけれど、フランスなんか信用してはいけない。火事場泥棒みたいなものです。 明石僕もそう思います。フランスのラ・アーグ使用済み核燃料再処理工場周辺の海で深 刻な放射能汚染が発覚していますけど、あそこはアレヴァ社が経営しているのです。再処 理工場が放射能汚染水を海にガンガンたれ流している。「汚染水処理の専門家」だなんて 機 危 る とんでもない話なわけです。 あ アレヴァ社の前身である「コジェマ」という会社が再処理工場を運営していた時期の一 九九七年の話ですが、あの周辺で小児白血病が増えているという疫学調査が公表されたこ 章 とを受け、僕はフランス現地取材を敢行したのです。その結果は、その年の一一月から 「週刊プレイボーイ」に連載して報告したのですが、原発推進陣営はこの疫学調査の影響第 4 が日本にまで及ぶのを阻止しようと、日本からわざわざ放射線医学総合研究所 ( 放医研 )
が止まらなかった。 こうした真剣な科学者たちに対抗して、悪質な自称専門家が、現在は「クリアランス分 科会」という組織をつくって、今度の福島原発事故の汚染水処理にも関係して、放射能汚 染水を濃縮してドラム缶詰めする処理などを考えている。クリアランスというのは、とん でもなく危険な放射能を「これ以下は安全」とスソ切りをして流してしまうことです。原 子力安全専門部会と連絡を取り合い、次々つながっていって、そのすべての元締めが原子 力安全委員会。そういう構造になっています。 明石早い話、この「クリアランス制度」を導入することによって、放射能ゴミの一部を 一般ゴミとして捨ててしまうか、資源として再利用する形で「放射能ゴミ」でないことに してしまおうと彼らは画策しているわけですね。それこそ、このままだとリサイクルに回 されて見た目が変った「元・放射能ゴミ」が、気がっかないうちにドシドシ一般家庭の中 にまで入り込んでくる恐れがあります。「クリアランス制度」など導入されなければ、こ んなことはそもそもありえない話だったのです。なので僕もこの「クリアランス制度」は、 はら かなり危険を孕んでいると捉えています。ともかく「原子力シンジケート」の繁栄のため 178
広瀬燃料棒が破損してどこかに落ちていることは、もうみんな認めています。燃料棒が 立っている状態じゃなくて落ちて固まりになっているのだから、表面が厚く酸化して、固 まりの内部は冷却できないでしよう。おそらく半熟卵のように、内部が溶けて、表面だけ 冷やしている。配管のパッキン類が溶けたり、溶接部が壊れたりしたことによって、圧力 容器も格納容器も破損していることは間違いない。そうなるとさっきも言ったように、ポ ンプで圧力容器や格納容器に注水しても、底の抜けたバケツに水を入れるのだから、汚染 水がどんどん漏れ出してゆく。一〇〇℃以下の冷温停止にするには、水素爆発直後にすぐ、 ( ゼネラル・エレクトリック ) の技術者たちが「ワシントン・ポスト」でアドバイスし ていたように、外付けの冷却回路をつけるほかないというのに、東電がそれを試みたのは、 ようやく二ヶ月後だよ。しかし結局、被曝量が高すぎてその作業もできない。 呆れたのは、元東電の人物が「穴を掘って汚染水を地下に流し込め」とテレビで言った ことですよ。要するに答は一つ。汚染水は、そういう暴言を吐く東電の本社ビルに保管さ せろということだ。本社が放射能汚染水でいつばいになったら霞ヶ関の保安院に持ってい け。それができないのなら、連中の安全論は全部嘘なのだから、国民が信用するはずがな 47 第一章今ここにある危機
加えて東電は「原子炉の温度が低いから大丈夫」なんてことをまだしゃべっている。内 部がメチャクチャなのだから温度計だって信用できないことは、素人でも分るはずだ。原 子力の専門家は、原子炉の内部構造が何も分っていない。驚くべき低レベルだ。問題なの は、こういう技術面に無知な者が次から次へとテレビに出てしゃべるために、ほとんどの 日本人が、もう事故は終ったと勘違いしていることだ。原子炉から大量に水が漏れ出てい るのに、その行く先さえ東電には分らない。二ヶ月後になっても放射能汚染が陸と海にど んどん拡大している。きわめて深刻な事態が進行しているのが現実ですよ。そこにいる福 島県民の命が、本当に危ない。一時帰宅している場合ではないよ。汚染にしても、神奈川 県の一番西にある足柄で生茶葉の汚染が発見されて、回収された。農家のことを考えると、 とてもつらくて見ていられない。その意味で、その危険性をひと言も発言しない岡本たち の責任はきわめて重い 明石事故収束のメドがまったくつかないばかりか、環境汚染も拡大する一方ですので、 こうした「解説」がことごとくウソだったことが全国民の知るところとなったわけです。 広瀬彼らのいい加減さは昔からのことで、カネや利権を互いにやり取りする " 業界。の 97 第二章原発事故の責任者たちを糾弾する
て、マスコミを洗脳している。それを真に受けて、日本のメディアは「、い強い支援」なん て報道している。冗談じゃない。 明石そうなのです。結局何もできないと思うのですよ。ただその後、多分しつかりとお カネだけは東電に請求するような気がするのです。それにかかったおカネがまた電気料金 に上乗せされるわけだから、どこまでも庶民は馬鹿を見ている。 広瀬ともかく汚染水の処理は、国民が監視しなければいけないのに、監視する手段がな 。もちろん私たちは原発には近づけない。一番こわいのは、東電が処理しきれず、最後 には希釈して海に流すことだ。東電が取り仕切って来た六ヶ所再処理工場は、その予行演 習をずっとやってきた。原発の一八〇倍の放射能を放出していし 、という濃度規制で運転 してきて、海水で薄めればいくらでも流していいという恐怖の工場だからね。その六ヶ所 再処理工場を経営している日本原燃の会長だったのが、当時の東電社長で現在の会長、勝 俣恒久だよ。今、日本全国の企業は、福島原発の汚染水の処理法を打診されて、タンクな どいろいろな方法を検討しています。私にも、その技術的な相談がきています。すぐれた 企業の力を結集しないと、日本はさらに取り返しのつかない海洋汚染を広げてしまいます。
るじゃないですか。乳牛には、たくさんの水を飲ませるのですよ。原乳の放射能検出は、 その水の汚染を示しているわけで、酪農家が本当に心配になるのは、当然なのです。こん な基本的なことも知らない大学教授が、放射線の専門家だと偉そうにして、放射能安全論 をしゃべっている。このような人間を放射線健康リスク管理アドバイザーに雇う福島県の 佐藤雄平知事も、住民の健康を本心から考えていないと批判されるべきだ。五月一四日に は、その佐藤知事が先頭に立って、東京都内で岩手、宮城、福島三県農産物の大売り出し をやって安全を宣伝し、風評被害追放の一大キャンペーンをしていたが、今回は風評被害 なんて、ないんだ。日本全土が放射能汚染されたのだから、すべて実害だよ。そもそも佐 藤知事は、二〇一〇年のプルサーマル導入にゴーサインを出した責任者だ。 明石福島第一原発の三〇キロ圏の同心円外に位置する飯舘村周辺に住む人々は、明らか に高い汚染にさらされているにもかかわらず、ずっと放置されました。ここに住む一五歳 以下の子供たち約九五〇人について甲状腺の被曝線量を調べた結果が、四月二日に国から 発表されたのですが、「いずれも問題なかった」という。最高で毎時〇・〇七マイクロシ ーベルトで、国の原子力安全委員会が定める基準値 ( 毎時〇・二マイクロシーベルト ) を下
どがあって、分析作業員がプルトニウムを吸い込むという事件が起こった時、石川迪夫が、 業界紙「エネルギーレビュ ー」二〇〇七年二月号にこう書いている。 放射能が存在する以上、管理区域で働く人は、放射線を浴びたり汚染される可能性を持 つ。この被曝や汚染の可能性を極力少なくするのが原子力安全の要諦だが、機械は故障 し人はミスを犯すもの。管理区域で働く以上、少量の汚染や被曝は避けられない。それ を例えれば、お百姓をすれば泥が付くのと同じと。 呆れた人間だ。プルトニウムを吸い込んだ事件を「お百姓をすれば泥が付くのと同じ」 と言い切るとは。泥とプルトニウムの違いも分らないのか。さすがにマスコミもその発一言 を批判したけれど、それに対して石川は「一大吠えれば万犬騒ぐ」と開き直り、「泥が食 べ物を作るようにプルトニウムは電気を作る、いずれもエネルギーを作る大切なもの」と 書き連ねている。騒ぐマスコミも青森県民も犬扱いだ。お前こそ、原子力マフィアに飼わ れた役立たずの番犬ではないか。 118
な数値を、今日まで無能の限りをつくしてきた東電や保安院が、正しく掌握してきたとは しやくねっ 考えられない。核分裂を制御する制御棒がまともな形で残っているはずがない。灼熱の とのような形で落下しているかという最も重要なことさえ、中をのそ 燃料棒が、どこに、。 けないから誰にも分っていない。 だから私は現在でも、日本のすべての気休め報道を疑って、いっ何が起こっても不思議 ではないと思っています。問題なのは、原子炉というのは、とにかく膨大な配管や配線の ダクト、弁が密集している複雑な設計であるということです。その配管のうち、原子炉に 直結している箇所が破損していることを、田中三彦さんは早い時期から推測していた。で も、どこが破損しているか、誰にも分らないわけです。しかも現場は高濃度の放射線が放る あ 出されているから、作業員が近づけない。被曝による死を覚悟で近づけたとしても、入り 組んだダクトのどこが破損して、放射能が流出しているかを見つけることは不可能です。 今 章 破損箇所が見つからなければ、注水した水がダダ漏れ状態になって、高濃度の汚染水が永 遠に出続ける。穴の開いたバケツにジャプジャプ水をつぎ込んで汚染水を膨大につくり出第 している状態です。