ワシントン - みる会図書館


検索対象: 向上心
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1. 向上心

ー 22 レ ) と、つ 「 " 怒濤さかまく嵐の海でじっと耐えている岩…とは、ヴィレム一世の友人が彼の意志 の固さを表現する時に好んで使った言葉ーだったのである。 大成する人は「はげしい感情と抑制」のバランスをとるのがうまい モトリーはヴィレム・ザ・サイレントとワシントンを比較している。この二人には 多くの共通点があった。ワシントンはヴィレム同様に、尊厳さや勇気、純粋さ、そし て人間として最高の資質の権化として歴史の中でも特に際立っている。 彼は困難や危険に直面した時でさえ自分の感情を抑えようとしたが、そんな彼の姿 は、生まれつき落ち着いていて無感動な性格の男にさえ見えた。 しかし、生来ワシントンは気性が激しく、物事に熱中しやすいタイプだったのであ る。他人に対して見せたやさしさや穏やかさ、礼儀正しさ、思いやりなどはすべて、 少年時代からたゆみなく実行し続けてきた厳格な自制と自己修養のたまものだったの である。 ワシントンの伝記の著者は言っている。 「彼はものごとに熱中しやすくて情熱的な性格だった。その彼がさまざまな誘惑や刺

2. 向上心

こんな人物は、自分の影響力が及ぶ範囲にいる人を啓発し、高めてもくれる。彼らは 生きた慈善活動の中心とも言えるだろう。 活力のある、正直な人間を責任ある地位につけてみるがいい彳 。皮の下で働く人は、 いつの間にか自分でもやる気が出ているのに気づくだろう。チャタムが大臣に任命さ れた時には、役所のすみすみにまで彼の感化が及んだものだ。ネルソン提督の指揮の 下で戦った水兵はみな、自分たちの英雄の勇気をともに分かち合ったのである。 ワシントンが総司令官になるのを承諾した時、人びとはアメリカ軍の力がこれまで の倍になったように感じた。 1 ノンで暮らしていた。 後年、老いたワシントンは第一線から引退してマウント・ 一七九八年、フランスが合衆国に対して宣戦を布告する気配を見せ始めた時、大統領 アダムスはワシントンに手紙を送って、「もしお許し願えれば、われわれは閣下のお 名前をせひとも使わせていただきたいのです。何万という将兵よりも、閣下のお名前 のほうがはるかに効力をあらわすものと存じます」と懇願している。 これこそ、偉大なる大統領ワシントンの高潔な人格と卓越した能力が、いかにアメ リカ人に高く評価されていたかを物語るものだろう。

3. 向上心

初志を貫徹させるものは何か 初代アメリカ大統領ワシントンの人柄からすれば当然のことと思われるだろうが、 彼の人生を支えた主な原動力はひとえに使命感であった。 彼の人格に一貫性と密度の高さと力強さを与えたのは、その性格にひそんでいた帝 王にもふさわしい威厳だったのである。果たさねばならぬことが目の前にあれば、あ らゆる危険を冒しても、彼はそれを完全無欠にやってのけた。見栄のためにするので もなければ、栄光を手に入れるためでもなく、ましてや人気とりや報酬目当てにする のでもなかった。なさねばならぬことを最良の手段でやり遂げることしか彼の頭には なかったのである。 そのうえワシントンは非常に謙虚だった。独立戦争が起こった時、国軍の最高司令 官になってもらえまいかと言われた彼は、どうしてもと頼まれるまではその地位を受 け入れるのを渋った。祖国の将来を大きく変えるかもしれない責任重大な名誉ある職 務を引き受けさせられたワシントンはこ、つ言った。 「私に寄せられた信頼を、万が一裏切るようなことになるといけないので、今日ここ

4. 向上心

いつも自分に誇りが持てる生き方をしているか 先にあげたワシントンもまた、アメリカ合衆国の宝物として鏡のごとく清らかな生 き方の手本を遺している。誠実で清純無垢な気高さにあふれた人格は、死後も変わる ことなく手本として人びとの胸に生き続けている。 しかもワシントンの場合、他の偉大な指導者によく見られるように、その偉大さは 矢能がすぐれていたからとか、才能があったからとか、老練な手腕をもっていたから とかいうわけではない。名誉を重んじる高潔で誠実な人柄や、義務の遂行に忠実な精 神によるところが大きかった。ひと言で言えば、正真正銘の高潔な人格あっての偉大 さであった。 る え 燃 こんな人たちこそ、祖国にとってかけがえのない生命力である。彼らは国家の意気 盟を高め、向上させ、活気を与えて精神を高揚させる。遺産として遺した手本となるべ 使き生き方と人格は、祖国に栄光をもたらしてくれるのだ。 「偉大な人物の名前と記憶は、天が国家に与え給うた贈り物である。未亡人も、破滅 る。

5. 向上心

に正直に宣言しておきたい。すなわち私は、与えられた名誉ある職務にふさわしいカ など、とても自分にはないと思っているのだ」 ワシントンは最高司令官として、そしてのちには大統領として義務を遂行すること をためらわす、清く正しい人生を全うした。よい噂にも、また彼の権威と信望を危機 におとしいれるような下心のある噂にも惑わされす、人気を気にせずに初志を貫徹し たのである。 たとえば、ジョン・ジェイが英国との間に締結しようとした和平協定の批准が問題 になった時のことだ。そんな条約は否認すべきだという声が上がったが、ワシントン は自分と国の名誉を守るために、反対を押し切ってこの条約を批准した。 けんけんごうごう 結果的には世間から喧々囂々たる非難を浴び、彼の人気も地に落ち、集まった群衆 に石を投げつけられたことも実際にあったという。しかし彼は屈せす、条約を批准す る 燃るのは自分の仕事、使命であるという考えを曲げなかった。そして国中から寄せられ 盟た陳情や抗議をふり切って、条約を発効させた。 使抗議した人びとに対して、彼はこう答えている。 「私は自分を支持してくれる多くの人たちへ深い感謝を捧げている。だから、自分の

6. 向上心

2 ー 2 " 存在感のある人。の重み、感化カ 偉大で徳の高い人物は、見るだけでも若者の励みになる。穏やかな人、勇敢な人、 誠実な人、度量の広い人を目のあたりにすれば、あこがれと尊敬の念は抑え切れない。 フランスの小説家シャトープリアンがワシントンを見たのはたった一度だったが、そ の時の感激を一生忘れることができなかった。その一度切りの出会いの様子を、彼は 次のよ、つに語っている 「私が何の名声も得られぬうちに、ワシントンは棺におさめられてしまった。どこの 皮よまぶしいほどに光り 誰とも知れぬ一人の人間として、私は彼の前を通りすぎた。彳 ( 輝いていた。一方、私はまったく無名の存在だった。彼は、私の名前などその日のう ちに忘れてしまったにちがいない。それでも、彼の目が自分に注がれただけで天にも のほる心地がした。その思い出は、今でも私を暖かく包んでくれている。偉大な人物 というのは、そのまなざしだけにも徳を感じるものだ」 ドイツの古代史家ニープールが死んだ時、出版業を営む友人のフレデリック・ベル テスは、彼のことをこ、つ衄っている

7. 向上心

にとって苛酷に思われる文章を書きたい時は、我しにくいところだろうが、ひとま ずべンをおくほうが無難である。 「ガチョウのわめき声は、ライオンの爪よりも痛みを感じさせることがある」とスペ インのことわざにもある カーライルは、クロムウエルについて、「彼は気持ちを心にしまっておけない男だ ったので、思いやりをあらわす気くばりができなかった」と述べている。ヴィレム・ ザ・サイレントに対立する者は、彼の口から横柄で軽率な言葉を聞いたことがないと 感心している。ワシントンもまた、ものを一言う時には廩重に言葉を選び、敵をやり込 めたり、議論で一時の勝利を手に入れようなどとはしなかった。 結局、世間はいかなる時にどのようにして沈黙を守るべきかをわきまえている賢者 のまわりに集まり、支持するようになる。 や " 沈黙にまさる言葉。を口にせよ を 事 仕 豊かな経験を積んだ人が、「あの時話すのではなかった」と後悔しているのをよく 2 聞く。しかし、沈黙したのは失敗だったとくやんでいるのは耳にしたことがない

8. 向上心

とがそれとなくあらわれ、いっとはなしに人びとの尊敬と賞賛を集め、彼の信奉者に クロムウエル、ワシントン、ピット、ウエリントンを してしまうのである。ルター はじめ、偉大な指導者たちには、みなこのように人を引っ張っていく強い人格があっ 偉大な指導者は、磁石が鉄を吸い寄せるように、自分と人格がよく似た人間を引き 寄せるものだ。 たとえばナポレオン戦争で活躍したジョン・ムーアは、将校たちの中から、目ざと くネーピア三兄弟を見分けていた。兄弟のほうでもその返礼として、ムーアに強いあ こがれを抱いたのである。節度ある虚心坦懐なムーアの態度と勇敢さに魅了されてし まったのだ。こうして兄弟は、「この男を手本に行動しよう。できれば肩を並べるま でになりたいものだ」と心に決めたのである。 ウィリアム・ネーピアはのちに外交官となったが、彼の伝記の著者は次のように述 べている。 「兄弟の人格形成の過程におけるムーアの影響は著しい。ムーアが、三兄弟の精神的 並びに道徳的な素質をすぐに発見したことは、すなわちム 1 ア自身、相手の人格を見

9. 向上心

8 すぐれた鍛冶屋になるためには、一生鉄を鍛えなければならない。すぐれた管理者 になるためには、死ぬまで実務を学んで実践しなければならない。 すぐれた実務能力の持ち主に最高の敬意を払うのが、スコットの特徴だった。 「いくら文学的才能があっても、実生活というより高い分野で実力のある人、とりわ と彼は断一言している。 け第一級の指揮官などとは到底比べものにならない ワシントンもまた、疲れを知らぬ実務能力の人だった。彼は子供の頃から、物事に 熱中する習慣、勉強する習慣、そして仕事を秩序立ててする習慣を身につけようと努 力した。 彼のノートが今でも残っている。それを見ると、わずか十三歳で領収証から約東手 形、為替手形、契約書、債券、賃貸契約書、土地の権利書まで、味もそっけもない書 類を自分からすすんで丹念に書き写している。幼い時からこうして身につけた習慣が、 後年厄介な政治問題を手際よく処理してみせた驚くべき実務能力の母胎となったので ある。

10. 向上心

あのワシントンが偉大だった最大の理由 実務能力は、実にいろいろな分野で活用される。実務能力とは、物事を敏速に処理 する機敏性と、日常の実際的な仕事を上手に解決する能力のことである。その能力が 求められるのは家庭管理や事業の経営、商売や貿易、あるいは国の政治であってもみ な同じである。 さまざまな分野で生じる問題をすみやかに処理するための訓練は、実際の生活でこ そ何よりも役立つのである。さらにそれは、人格を高めるためにも最高の訓練となる。 つまり勤勉さと注意力、自己犠牲、判断力、機転、そして他人に対する理解と思いや りの精神などを実際に働かせることを含んでいるからである。 こういった訓練を重ねることは、文学的な教養を深めたり哲学的思索にふけったり するよりもはるかに充実した人生と幸福とを約東してくれる。なせかと言えば、長い を目で見ると実務能力は知性とつながりをもち、気性と習慣を才能に変えてしまうこと 事 仕が多いからである。ただし、これは絶えす注意力を働かせ、廩重に経験を積み重ねる ことによってのみ得られる一種の才能であることをつけ加えておこう。