見る - みる会図書館


検索対象: 半径500mの日常
244件見つかりました。

1. 半径500mの日常

い次に手にとったのは、紫色のものすごく透けた。ハンツだった。このおばさんがその。ハンツをは 選いている姿を想像すると、三日間は立ち直れそうもなかった。仕事で読んだ夫婦交換雑誌のグラ で 分ビアで、こういう。ハンツをはいたこういう体型のおばさんが、何人も得意気にポ 1 ズをとってい ッたことを思い出したりした。 ン 「これかあ」 の 分ホストは紫色のが気に入らないようだった。 私「ねえ、それじゃ、あなたが好きなのを選んでえ 1 ん」 でトドは甘ったれてお尻をくねらせている。ホストが選んだのは、真っ赤のレ 1 スに黒いふちど 物 りがついた三角形で、両脇には金色の輪つかがついているものだった。 贈 の「あっ、これ、かわい 1 い」 ン トドはとても喜んでそれを買っていった。 に 女「愛人の好きな赤。ハンツ」だったのかもしれないが、なかなかすごい眺めであった。 が ところが、つい最近、近所の大手スー。ハ 1 の下着売り場で、久々に熱心に。ハンツを物色してい 彼 圦る男の人をみかけた。見た感じでは大学生のようだった。私の頭のなかにあった下着売り場に来 なる妙な人々と違って、いやらしい雰囲気などないふつうの人である。しかし、そういう人でもや 流 はり腕組みしながらピンクやレ 1 スのついた。ハンツを見ているというのはちょっと異様だ。 223

2. 半径500mの日常

力などといわれようものなら、天にも昇る気持ちになった。 の 当時私たちは既製品などまず買ってもらえなかった。特に小学校の低学年までそうだった。う こ 工ちにお金がなかったのも理由のびとつだが、店で売っているのは主にとっておきのおしゃれ着ば こかりだったような記憶がある。友だちもふだんはお兄さん、お姉さんのおさがりを着ていた。い る 着 とこからまわりまわってきたスカ 1 トをはいた子。お兄ちゃんがはいていた、ヒザのところに穴 に 新のあいた長ズボンを、おばあちゃんが縫い直して半ズボンにして、弟がはいているなんて、あた を 服りまえのことだった。既製服をふだん着ている子なんて、クラスでほんと一人か二人だった。私 は母親が縫ってくれた服も嫌いじゃなかったが、既製品を着ている子がうらやましくて、そのウ 省 仮サを晴らすため、ちくりちくりといじめたものだった。 読そしてこの『あなたがもっと美しくなるために』を読んでいて、母親が子供に作っただけでは を なくて、かっては女の人のほとんどが「自分の着るものは自分で作っていた」ことをあらためて ク プ知らされたのである。たとえばシンプルな襟なしのワンピ 1 スを作っておいて、替えカ一フ 1 をつ 1 を作るときにはあとで仕立てか けかえれば新鮮な気分で着ることができるとか、新しいオー ス えることを考えてデザインを決める。二年ごとに仕立てかえれば、六年間に三度新しい形が着ら の かれるなどというのは、そのためのアドバイスである。私は編み物だけは好きなのでやるのだが、 手編みのセ 1 ターに関しても耳の痛いことが書いてあった。「昨年も着ていたものをまた今年も 181

3. 半径500mの日常

れるこの手のニュ 1 スを見るたびにぶつぶついっていたのだが、ふと、こういったプ 1 ル開きや スケ 1 ト・リンクのオープンのときに、必ず女子大生がその場にいるのはなぜだろうかと、突然、 不思議に思えてきたのである。 真っ先に泳いだりスケ 1 トをしたいのは何も女子大生ばかりではあるまい。泳ぎの好きな人は 山ほどいる。しかしニュ 1 スの画面に写しだされるのはすさまじい数の女子大生である。おなか のせり出たおっさん、若い男の子のかげも形もない。子供の姿も見えない。単にオープンしたこ とを知らせるのだったら、おっさんや男の子でもいいじゃないかと思うのだが、ニュースではこ とさら「『女子大生』が視聴者のみなさんより先に、今年『初めて』楽しみました」ということ を強調している。きっと誰かが裏から手を回して、女子大生が大挙して押し寄せたかのように見 せているのだろうし、そうでなければアルフィ 1 のコンサ 1 トじゃないんだから、あんなに女の 子が集まるはずがない。広告代理店の若いのが上司に、「学生時代のクラブの後輩をかき集めて こい。顔がアップにならないから質よりも量だぞ」などと命令されて必死にかき集めてきたのに 違いない。彼女たちは集団じゃないと価値がないのである。 あるときは、かき集められた女子大生が女性だけの討論会に出席していた。「女の生き方」を テ 1 マに、ポルノ女優、詩人、 O* などが出ていたのだが、女子大生はポルノ女優の仕事を非難 したりして、ロだけは達者に頑張っていた。男には好かれるが、女には嫌われるタイプの女子大 250

4. 半径500mの日常

仕事をしていたら、つけっ放しにしていたテレビから、「スケ 1 ト・リンクがオ 1 プンして、 女子大生が初滑りを楽しんでいました」というニ = 1 スが流れてきた。何気なく画面を見たら女 子大生がスケ 1 ト靴をはいてお互いにしつかと手を握りあい、腰をガクガクいわせながら必死に なって氷の上を歩いている。そういえば夏のプール開きのときも同じようなニュ 1 スが流されて いた。スケ 1 トはまだしもプ 1 ルのときは、水に入るには少し低い気温だというのに、みんな見 事な太腿をあらわにしてぶるぶるふるえながら水の中に入っていた。浮かべられたゴム・ポ 1 ト によじ登るのに失敗して股を開いて水中に落下したり、子供みたいにキャ 1 キャ 1 大騒ぎしなが ら水を引っ掛けあったりしていたのだ。「こんなつまんないこと放送するな」と、毎年繰り返さ マスコミに操られて愚かな印象を 振りまく女子大生を尊敬してしまう 249

5. 半径500mの日常

私は部屋の中でごろごろしているのが一番好きだ。当然運動不足である。そのうえ朝昼晩三食 をおいしいおいしいといって食べていれば、あっちこっち肉がゆるんでくるのは当たり前である。 いつまでもこういうことをやっていてはいけないなあと反省しながら、運動を始めるには何がい いかといろいろ考えてみた。まず三日坊主を防ぐために、友だちと一緒にやるという方法がある。 これも人選に気をつけなければいけない。私と同じ性格だと二人してすぐ、 「やめよう、やめよう」 ということになるので、執着心のある人を選んだ。主婦の彼女は子供もいないし、昼間はでか けられる。ところが彼女に電話をかけてみたら、 シェイプアップに水泳しよう、心掛けは よかったが : : : いまだ越せない水着の壁 164

6. 半径500mの日常

会社の経営状態が苦しくなってくると、まっさきに削られるのが広告費であるらしい。そうい えば新聞を見ていても、最近は雑誌の広告が以前よりも少なくなってきたような気がする。その 反面、こんなにもうかっているのかと疑いたくなるほど目につく広告もある。新聞、雑誌はもと より、テレビでも 0 が流されている、通販会社のものである。最初は二光通販くらいしかなか ったが、次から次へと同業者が登場するようになった。 扱う商品は、締めつけているだけで顔が小さくなるという、「おこそ頭巾」みたいな顔面バン ド。塗るだけでおつばいが大きくなる「魔法のクリーム」。名前だけ聞いてすぐ欲しくなってし まう、あったか 1 い「もちはだ肌着」など、本当にこの能書きを信用していいのかしらと思うも つるつるの手足はもてるの幻想に 通販の脱毛マシンに群がる男たち

7. 半径500mの日常

今から八年くらい前、私は失業していた。もちろん無収入になってしまったために家に入れる お金がない。すると我が母は一言、 「金がないなら体で払え」 と時代劇に出てくる女郎屋のオヤジみたいなことを言うのであった。それからは朝七時半にお きて朝御飯を作り、そのあと掃除、洗濯、昼御飯をたべてテレビをみてからしばしポーツとする。 そしてハッと我にかえり買物カゴをかかえて駅前にとび出していくという生活だった。 毎日の仕事の中で一番いやだったのがこの買物だった。いつ行っても常連おばさん軍団が・ハリ ケ 1 ドをはって、私なんかは仲間にいれてくれないのである。どうせ同じ金を出して買うならよ 店頭に並ぶおばさんの鉄壁の臀部 カゴをのぞかれ、買物はラクじゃない

8. 半径500mの日常

て少し痩せたんだぜ」 と大きなお腹をゆすっていった。もうひとりの彼はものすごく勉強ができて学年で一番だった 2 が、あまり頭を使いすぎたのか髪の毛が淋しくなっていた。 「友だちに会うとついつい話題が『 101 』になっちゃって : : : 」 と照れたりしている。当時、私が、 「なんてきれいなんだろう」 と嫉妬さえ覚えながら憧れていた男の子の髪も、滅びるのは時間の問題と聞かされてビックリ した。いくら男女の違いはあるにせよ、かっての同級生がハゲの話をしていると知ると、ものす ごく歳をとったような気になってしまった。 もうひとっ驚いたのは、同級生や同じク一フプにいた同士で結婚していた人が多かったことだ。 私にデブといい放った・ハチがあたって、自分が大デブになってしまった彼も、同級生と結婚して いた。話によると、中学を卒業したあとに目星をつけていた女の子に会いたくなったときには、 世話好きの友人をつつついてクラス会を開くようにしむけるそうだ。これだったらみんな疑わず にくるし、お金もかからないし、気を使わなくてもいい。誠に賢いやり方ではある。しかし、そ の話を聞いて私はだんだん腹が立ってきた。自慢じゃないがこの二十年間、ク一フス会に名を借り た集団デートの場に一度も呼ばれたことがなかったからだ。私はすかさずこの件を厳しく追及し

9. 半径500mの日常

「こいつはスゴイ」 と思ったのはたった一人しかいなかった。 その人は他の美容師とちがって、べらべら喋らず、自分の仕事に熱中しているところがすごか ったのである。美容師にしてみれば、退屈させまいと、いろいろ喋るらしいのだが、そのネタ探 しのために、夏休みはどこにいったのか、どんな仕事をしているのか、などと、プライベ 1 トな ことをいろいろときかれるのが、うるさくてたまらないのである。まあ、彼らにしてみれば、よ かれと思ってやっているのだから仕方がない。ところが問題は、何回かその店にいき、顔見知り になると、明らかに手を抜くようになることである。一番最初にいった時は、きちんとやってく れたのに、二、三回通うと、毛先が揃ってなかったり、すぐ形がくずれたりして、不愉快な思い をする。やればできるのに、手を抜くのはよくない。あれだけべラベラ喋る時間を半分にして、 その分もうちょっと集中して、マシな仕事をしろ、といいたい。 だから最近は、行く美容院を毎回変えることにした。満足のいく結果を追求すると、こうなる。 みてくれは無愛想で、全然かっこ良くも何ともないけど、腕はとびきりいい美容師が私の理想で あるが、残念ながら今のところは、あっちこっち歩くしかない現状なのである。 140

10. 半径500mの日常

仲のよい友だちとの忘年会で、一年を振り返ってみて身近に起こった一番びつくりした出来事 は何だったかを話しあった。私の場合は弟の入院である。精密検査で結核菌が胸のリン。ハ腺にひ つかかっていることがわかり、薬を投与したら三日で平熱に戻って、あっという間に退院という 素早さではあったが、精密検査の結果がわかるまではまるで針のむしろに座っているみたいだっ た。子もお兄さんの入院が一番のびつくり事件であった。お兄さんの場合は過労による突発性 難聴で、突然何も聴こえなくなってこれまた大騒ぎだったそうである。 主婦の子の場合はよく考えてみたら夫婦生活が年に三回しかなかったことが一番びつくりし たことだった。結婚して五年になるが、年々なんか数が少なくなってきたような気がすると感じ げにすさまじきは肉食民族、産婆なく 三畳間でハサミ片手に子を産み落す