顔 - みる会図書館


検索対象: 半径500mの日常
249件見つかりました。

1. 半径500mの日常

「ちょっと、奥さん、ホラあれ見て。男の子が化粧してもらってるのよ。まあ、あたし初めてみ がたわ。ちょっと面白いわね、いったいどうなるのかしら」 一おばさんたちは両手にデ。ハ 1 トの紙袋を下げ、仁王立ちになってじ 1 っと事の成り行きをみつ 前 男めている。通りかかったカップルも興味深そうに足を止めたりして、彼らは格好の宣伝材料とな 癶ってしまったのだった。そうい 0 た状況で美容部員のおねえさんがはり切 0 たのはいうまでもな シい。手際よくファンデ 1 ションを顔にのばし、見世物となってしまった彼らに手鏡を渡して、 デ「ほらね、不自然じゃなくて陽に焼けた感じになるでしよう」 と得意気にいう。彼らはまわりの視線に多少照れながらも鏡をのぞきこんで、まんざらでもな 眉さそうな顔をしてニタッと笑っている。 は「ファンデ 1 ションだけでも変わるけど、これを使うともっと感じが変わるわよ」 年 青美容部員はそういって眉墨を使いはじめた。この威力は絶大だった。今まで整ってはいたが何 す となくしまりのなかった顔がその眉墨によってキリッとひきしまってみえたのだ。 ろ む 「ほら、ね。ずいぶん顔が小さくみえるでしよう。ファンデ 1 ション塗っているようにもみえな に 場いし : ・ : ・どう ? 」 そういわれて彼らは、 「う 1 ん」 161

2. 半径500mの日常

た。そして、最後に到達したのが、むかしながらの、ぬか袋とうぐいすのふんである。 「これなら平気だろう」 と、風呂に入ったとき、ぬか袋で顔を洗った。朝起きたら、あっと驚く玉の肌が、できあがっ ているはずだった。ところがやりかたがマズかったらしく、ぬかの成分が、砥の粉のように顔面 にへばりつき、それがかわいて地割れを起こしているのであった。最後の最後は、うぐいすのふ ん。ただの鳥のウンコのくせに、値段がけっこう高かったので、買うときに少しムッとしたが、 背に腹はかえられなかったのである。 さらさらした細かい粉末状のふんを、手の平にのせて、温湯でこねこねして顔に塗り、石驗の かわりに使うのであるが、これも使ったあと、顔がかゆくなったので、ツラの皮が厚い母親にや ってしまった。 そして、結局は何もしないのが、私のためには一番いいのである。三十すぎたら、いるものと いらないものが、はっきりわかってきた。しかし、このまま、いらないものが多くなったとする と、しまいには仏門に入るしかないのではないか、と少し心配になってきたのである。 132

3. 半径500mの日常

と、少しでも早く布団のなかにもぐりこみたいのに、化粧を落とさなければならない。本当はそ んなこと、したくはないのだが、化粧法のマニュアルには、 で「きちんと化粧を落とさないと、肌あれの原因になります」 私 の と、堂々と書いてある。 和「それなら、昼間化粧をずーっとしていても、肌あれの原因にはならないのか」 は に と、ぶつぶついっても、マニュアルには、 粧 「お肌を守るために、化粧をしましよう」 れと、これまた堂々と書いてある。ところが、いわれるままに化粧をしていたら、顔がびりびり け たしてきた。あわてて化粧品売場にいって、症状を話すと、顔を塗り固めた美容部員が、 で「それならこちらのほうが、よろしいのでは : : : 」 んといって、目玉がとびでるような化粧品をすすめる。クリ 1 ムひと瓶が三万五千円もするので すある。私はたまげて、そのまま何も買わずに家に帰った。 い いままでやっていたことは、顔によろしくないのはわかったが、まだ色気が残っていたため、 ら 今度は低アレルギー性や自然化粧品に手をだした。これまた美容部員が、 か 「これなら、大丈夫 ! 」 高 と胸をはって答えたが、やつばりダメだった。自然化粧品のきゅうり水やヘちま水にもかぶれ 131

4. 半径500mの日常

てきなさい」と怒るのである。そのたんびに私は「ケッケッケ」といって主婦を・ハ力にする。昔 は「親の顔が見たい」だったが、今は「ダンナの顔が見たい」ということが多すぎるのである。 まあ、彼女たちはそれなりに子供を苦労して育て、日々の家事をこなしているのであろう。社 会的なル 1 ルが欠如していようが、恥の感覚が消減していようが、家庭内のことさえきちんとや っていれば、それでいいとされる。だけど、それだけに寄りかかっている主婦が何と多いことか。 た外に出て働くということではなくて、もうちょっと社会的にマシな感覚を持ってもらいたいと思 うが、どうせあいつらには言ってもわからんだろうね。

5. 半径500mの日常

先日の日曜日、駅のそばまで買物にでかけたら道路のところに人だかりがしている。事故でも あったのかといってみたら、みんなの顔がどことなくゆるんでいる。にこにこしている人もいる。 殺伐とした世の中とはいえ、 「まさか交通事故を見て、にこにこしているわけじゃないだろうね」 と思いながらそばに行ってみると、路上駐車している車をレッカ 1 移動しているところだった。 午後の一番クソ暑い時間帯だというのに見物人はどんどん集まってくる。そして、みんなとって もうれしそうな顔をしている。 「戻ってきたらビックリするだろうなあ」 駐車違反、レッカ 1 移動で持ち主ビックリ 周囲はニッコリ、他人の不幸はお楽しみ

6. 半径500mの日常

なるほど似てないことはない。一見美人の彼女の顔をじーっと見ていると、だんだん河本敏夫の 顔になってくる。このミスマッチ感覚がたまらないわけである。 隣に座っていた二十五歳の女性編集者は少しむくれていった。 「あたしなんかずっと沖雅也っていわれてるんです。悪いけど彼が亡くなったときに、内心『も 去 過 うこれでいわれないな』と思ったんですけど、やつばりいわれ続けてます」 の 屈やつばりよく似ていた。 い そしてある日、島田紳助にそっくりな弟を持った彼女が、体格のいい学生時代の友人の女の子 しをつれてきた。 出 い「もう彼女はそっくりの極めつけです」 よ 1 く顔を見ると、彼女は野球選手のホーナ 1 そっくりだった。 さ「ホ 1 ナーに似てるっていわれて嬉しくて、彼と同じ眼鏡を買ってかけてます」 ファンでもないのに、ただ有名人に似ているというだけで嬉しいらしい。もし私がホ 1 ナーに っ の似ていたら、なるべく彼に似ないように似ないようにするだろう。同じ眼鏡を買うなんて言語道 誰断である。しかし彼女は初対面の人にも平気で、 な「ハロ 1 。ホーナーです」などといってしまう。両親の責任でホーナ 1 に似てしまったのに、こ あ れだけ喜んでいるのなら、御両親もほっと胸をなでおろしていることだろう。仕事の上でも相手

7. 半径500mの日常

い が ぐ つ と 購 . 買 欲 を 押 さ え て 自 粛 し て い る の で あ る 59 昔エジソンバンド、今六十円のパンスト私を惑わせる通信販売の妖しい魅力 、美 、広 よ う な 気 が す る も し 力、 し た ら 私 が い ち ば ん 欲 し カ : っ て い る の は こ う い う 商 ロロ な の か も し れ な く 自 分 の 点 を っ く 商 ロロ か り だ か ら 次 か ら 次 と 手 を 出 し て し ま っ て 収 が つ か な く な る コ ン フ。 レ ッ ク ス 関 係 の 商 ロロ に 手 を 出 し た ら あ と は ド ツ ポ に は る だ け だ と 思 つ て い る と に か と 甲 い な が ら も 気 に な る 何 度 も 何 度 も 上ヒ を 見 ら れ る と は 揺 れ 動 く の で あ る し し 肌 は と も か く 顔 カ : あ あ な る と 困 る わ ね 能 人 御 愛 用 の 容 ロ 1 フ 1 も ク リ 1 ム と か 顔 が 小 さ く な る 顔 ガ ド ル い う こ っ そ り 使 っ て き れ い に な る 類 い の も の で あ る と お り じ や な い か と 覚 て し ま こ と あ る 小 学 生 の こ ろ と 同 じ で あ る 塗 る だ け て・ や せ る あ り に 通 信 販 売 の 商 ロロ が 気 に る と 首 を し げ た く な る よ う な 商 ロロ す の、 て 謳 い 文 句 の

8. 半径500mの日常

書店で中原淳一の本が復刻版で出ていたので、思わず買ってしまった。昭和三十三年に出版さ れた『あなたがもっと美しくなるために』という、女心をそそるタイトルの本である。私はこの 本のことは知らなかったけれど、彼が子供のために描いたスタイルブックには、どれだけお世話 になったかわからない。母親がいつもスタイルブックを参考に、私と弟の服を縫ってくれたから である。 幅広で平べったい私たちの顔と違い、彼の描く女の子や子供は夢のように美しい顔をしていた。 目が大きく二重まぶたで、鼻がつんと高く、少女マンガのヒロインとはまた違ったかわいさがあ った。私のまわりを見渡しても、誰一人としてあのような顔立ちの人はいなかった。しかし、 懐かしの「スタイルブック」を読んで反省 古い服を新鮮に着るこの工夫、この努力 179

9. 半径500mの日常

私は四、五年前まで、主婦というのは立派な女でなければできないことだと思っていた。ダン ナに朝食を食べさせて、掃除、洗濯。昼食は朝の残りものですませて、ホッと一息つくのも束の 、買物にいってタ食の準備。ダンナが帰ってきたら風呂をわかし、跡片付けをして、おまけに ニャンニャンまでしてしまうのである。毎日食事の献立を考え、ダンナが夜遅くに友人をつれて 帰ってきても、嫌な顔もせずにこやかに酒の肴なんかを作って出さなければならない。これは完 璧に私には不可能なことで、私はハナからこれはダメだとあきらめていた。ところが、だんだん、 実はそうではないようだと気がっきはじめたわけである。 私が今住んでいる所は集合住宅で、ほとんどの住人が子持ち世帯である。私は昼間家で仕事を 社会的ル 1 ル欠如の主婦の群 ダンナの顔を見てみたい

10. 半径500mの日常

大学を卒業すると私のまわりの女たちはみごとに三派に分れた。一派は就職派、もう一派は恋 愛結婚派、残りは見合い結婚派である。なかには就職先で恋愛結婚をしようなどというふとどき 者もいてみんなのひんしゆくをかっていた。 就職派は大変だった。大手企業など親のコネがなければとてもじゃないけど入れず、やっと面 接までこぎつけた個人事務所は社長の二号選びといったような質問内容だったりして、みな青ざ めた顔をしていた。そしてどういうわけかふとどきな就職から恋愛結婚派のほうがすんなりと就 職が決まってしまうのだ。いったいどこが違うんだろうかと青ざめた顔同士で考えてみたら、背 後にやはり親の影がちらついているのである。自分の娘にどういった職業の男と結婚したいかを 大学は出たけれど : ・・就職、恋愛、 お見合いに青春を燃やす女たち 184