ひとり - みる会図書館


検索対象: 啄木歌集
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1. 啄木歌集

うらさびし日も夜もわかぬくらやみの心をいそぎ木下いそげば うららかに日照り淸らに日の照れる世としも思ひ寢なば寢なまし 花のもとたもとほる子よいざ舞はむ木間もる月に袂かへして 若きどち綠の旗をおし立てて隊組み夏の森中をゆく 巷ゆき君をし見れば春山の小鹿のごとくこころ躍るも ひとびらの肉に飢ゑたる黒大と戀なき我といづれかなしき みぞれ降る巷々の街燈のひかりうすれて夜はふけてゆく ふためきて君があと追ひ野路はしり野菊が中にねて空を見る かぎりなき察のかけ路をゆく鳥の雲に入る見て君を忘るる 一すちの並木のみちの春雨に小傘してくる君をこそ待て ひと夜見ず心かわきて死なまくも君ぞこひしきいかにせましゃ 秋野ゆき萩咲くみちの白露に消えまく君を戀ひわたるかも わがいのち盡きかも行くか何しかも君を夢みず一夜へにける 年 月かげに溶けてかゆかばなっかしき詫寢の君が戸にし入るべき 十 四わが心花のもと吹く風となり君がたもとを吹かまくおもへ さみどり 春の國目路のかぎりを淺綠の雲たなびけり雲雀なく日に 冬の夜火きえし室にひとり寢てわかれし入をかぞへこそすれ めち こした

2. 啄木歌集

五歳になる子に、何故ともなく ソニヤといふ露西亞名をつけて、 呼びてはよろこぶ。 がたき 解け 不和のあひだに身を處して、 ひとりかなしく今日も怒れ ねこ 猫を飼はば、 ねこ その猫がまた爭ひの種となるらむ。 かなしき我が家。 げしゆくや 俺ひとり下宿屋にやりてくれぬかと、 今日も、あやふく、 いひ出でしかな。 おれ わ あらそ ろしあな み しょ たね

3. 啄木歌集

かなしきは 喉のかわきをこらへつつ とき よざむ 夜寒の夜具にちちこまる時 われあたま 一度でも我に頭を下げさせし 人みな死ねと のりてしこと われ 我に似し友の二人よ ひとり 一人は死に ら , ひとり いまや 一人は牢を出でて今病む あまりある才を抱きて 妻のため おもひわづらふ友をかなしむ つど ひと つま いちど ふたり

4. 啄木歌集

わうん 汪然として きた ああ酒のかなしみぞ我に來れる 立ちて舞ひなむ いとどな 蝉鳴く そのかたはらの石に踞し ものい 泣き笑ひしてひとり物言ふ 力なく病みし頃より くち ロすこし開きて眠るが 癖となりにき 人ひとり得るに過ぎざる事をもて たいぐわん 大願とせし わか 若きあやまち くせ ちから ひと さけ わら や ころ す ねむ ぎよ われ こと

5. 啄木歌集

148 こひ あはれなる戀かなと つぶや ひとり呟きて ひをけ 夜半の火桶に炭添へにけり 眞白なるラム。フの笠に 手をあてて ものおも 寒き夜にする物思ひかな みづ 水のごと からだ 身體をひたすかなしみに わぎ ゅふべ 葱の香などのまじれるタ とき 時ありて ねこ 猫のまねなどして笑ふ み - そち 三十路の友のひとり住みかな さむ ましろ すみそ わら

6. 啄木歌集

242 流氷の山にかこまれ船ゆかず七日七夜を君をこそ思へ またとなき心ひとつを捧げゐて猶足らじかも身の溲せにける うつむきてまた物言はずかくてしも別れじとするわりなき宵よ 別れきて若草かをる山行けばうぐひす啼きぬ驚きて聞く さカ 物怖づる性にもあればあざやかにゑわらふ人をみて遁れける 醉ひしれしこのひと時に千萬の年もへよかし思ふことなく はるかなる海の彼方の島に似て相見る日なし思ひっかれぬ あか / \ と血のいろしたる落日の海こそみゆれ砂山來れば 逢ふといふそのうれしさに暗がりの磯の木原もおそれずといへ しゅこ 我がどちは心おくべき家もなし手をとる子なし酒壺に枕す ざ舞はむかざす櫻の一枝と君がみ手とる我醉ひにけり 春の海ああその沖をゆく舟のたよりもきかず君のこひしき うたたね 春の鳥なく日の山のかげともに若草しいて假寢ぞする 君來らず盃を見てゆふぐれの海の景色に心すさぶも 春の雨をちかた入の涙にしこころ濡るるとわりなきタ ( 明治四十一年六月十六日「心の花ー十二ノ七 ) 六月二十三日夜半より曉まで

7. 啄木歌集

184 びやうゐん 病院に入りて初めての夜といふに すぐ寐人りしが、 物足らぬかな。 何となく自分をえらい人のやうに 思ひてゐたりき。 こども 子供なりしかな。 ふくれたる腹を撫でつつ、 病院の寐臺に、ひとり、 かなしみてあり。 ものた なに びやうゐんねだい うご 目さませば、 からだ痛くて 動かれず。 よあ 泣きたくなりて夜明くるを待つ。 じぶん はら ひと

8. 啄木歌集

我いまだ髯を生やさぬそのうちに老いたる親をかなしみて泣く わが母は今日も我より送るべき爲替を待ちて門に立つらむ ふ我を信ずるや母 百二百さるはした金何かあるかくい われ今日も不倶戴天の敵を見て劍を拔かず老いたる母よ 夏來れど袷をぬがぬ人々は我と來て泣け夜の明くるまで あたたかき飯を子に盛り古飯に湯をかけ給ふ母の白髪 母君の泣くを見ぬ日は我ひとりひそかに泣きしふるさとの夏 今日は汝が生れし日ぞとわが膳の上に載せたる一合の酒 若しも我露西亞に入りて反亂に死なむといふも誰か咎めむ かなしみて破らずといふ都合よき事を知らざる愚直の男 雪深き人里の山をただひとり越えてゆきけむ老いし父はも 父と我無言のままに秋の夜半ならびて行きし故鄕の路 やや老いて父の怒らずなりし頃われわが君を思ひそめてき 一女なる君乞ふ紅き叛旗をば手づから縫ひて我に賜へよ 四君にして男なりせば大都會既に二つは燒けてありけむ ムロ わが父が蝋燭をもて蚊をやくと一夜寢ざりしこと夢となれ 天に問ふ今もし一人我しなばわが父母をいかに處するや しらがみ

9. 啄木歌集

親と子と こころ はなればなれの心もて靜かに對ふ き な 気まづきや何ぞ ふね かの船の ひとり かの航海の船客の一人にてありき し 死にかねたるは まへ 目の前の菓子皿などを かりかりと噛みてみたくなりぬ もどかしきかな わかをとこ よく笑ふ若き男の し 死にたらば すこしはこの世のさびしくもなれ め わら くわしざら んかく しづ

10. 啄木歌集

り 0 こころきた おほどかの心來れ あるくにも 腹に力のたまるがごとし ただひとり泣かまほしさに 來て寢たる やどや 宿屋の夜具のこころよさかな 亠久よさは こじき 乞食の卑しさ厭ふなかれ しか 餓ゑたる時は我も爾りき 新しきインクのにほひ 栓拔けば 餓ゑたる腹に沁むがかなしも はらちから あたら せんぬ とき はら な われ