236 西の海潮路の果の雲黄なる下ゆく舟よ神や乘るらむ 夜の星の思ひあまれる白たまの涙うつくし園の朝露 おばしまに天の川みる宵ふけて背戸のたかむら秋風ぞ吹く かぐはしきみ魂のいぶき咲き出でし君が墓なる龍膽の花 はうきぼし王座につかずかの虚空翔る自在を喜びて去る ああ芭蕉もろ羽折れたる大鳥か秋風吹けばはらはらと鳴く ゃぶれたる心を縫はむしろがねの匂ふ糸ひけ君が御手より わが少女もの泣き死にし葬むりの夜の雨くろし千草枯れなむ 君泣けば我また泣きし秋の夜の板庇うつ時雨しのばゅ 秋の牧さびしきに居て物言はず人をたのまぬ友たづねける 秋の夜小暗き辻に飴をうる女聲あり月踏みゆけば あま 海士の子が憂き目に見やるタ濱の藻をやく煙行方かなしも 否といふ君をうらまず我がこころ我をはかなみ涙に落つる 時雨してタ日うするる岡の家の障子にうつる干柿の影 たふれたる籬の菊をおこしつつ野分のあとの月を見るかな さびしさの心まどひか袖拂ふ人のけはひす雪の夜のリ こともなくほほゑみありし我が君にやつれ見ゆると喜ぶ日かな りんだう
そらとは ふるさとの察遠みかも 高き屋にひとりのばりて くだ 愁ひて下る せうじん 皎として玉をあざむく小入も あきく 秋來といふに もの 物を思へり かなしきは あきか新 秋風ぞかし まれ 稀にのみ湧きし涙の繁に流るる あを 靑に透く かなしみの玉に枕して まっ 松のひびきを夜もすがら聽く や たま なだ まくら しじ なが
目になれし山にはあれど あきく 秋來れば かみす 神や住まむとかしこみて見る わが爲さむこと世に盡きて なが 長き日を おも かくしもあはれ物を思ふか きた さらさらと雨落ち來り の面の濡れゆくを見て 涙わすれぬ ふるさとの寺の御廊に 踏みにける をぐし てふ 小櫛の蝶を夢にみしかな なみだ やま てら ゅめ もの みら )
ものゑ 物怨ずる そのやはらかき上目をば 愛づとことさらつれなくせむや かくばかり熱き涙は はっこひ 初戀の日にもありきと 泣く日またなし わす 長く長く忘れし友に 會ふごとき おとぎ みづ よろこびをもて水の音聽く あき 秋の夜の はがね おほぞら 鋼鐵の色の大空に 火を噴く山もあれなど思ふ なが なが やま あつなみだ うはめ
碎けてはまたか ~ しくる大波のゆくら / \ に胸をどる洋 ( 石の卷を懷ふ ) 二首 うみ くる、雲をはてを何所としらずして洋覆ふ幕に想ひ入りぬる 濁る波にたヾよひ出でむ想ひぞもうき草つひに紅ならぬ ( 十首出鄕 ) ゆくかた 關を出でて何所としらぬ羽のちから行方なりとて暗指させし さと 行く秋のちる葉憐み留めんとてあわたゞしうも追うて出る鄕 秋の山のにしききて行く我なれば泣きまさゞりしたらちねの胸 くさわかば 踏む道のしもがれ草ぞわれによきかくてか ~ らむ日の草嫩葉 虹の輪のたかき仰ぎてか ~ り見てかざすは秋の詩の袖なりし 暫しさめて再び入らむ聖き夢ゅめはとこし ~ 幸あらむ者 わかれなりとうす紫の袖そめて萬代われに望みかけし人 枯葉見て星を仰ぎて幸の世のみじかかるべき旅をさぶしむ 高き世の高きのぞみと思 ~ ばのこの旅立に辛かりし涙 み文みてその夜がたりを思ひ出て思ひかへして涙に朽つる ( 花鄕兄 ~ ) ( 明治三十五年十一月五日日記 ) ゆく秋の落葉戀ひてぞ朽つるま、あわただしうも追ひし門出や 亂れてぞみ胸そめてぞ姫紫苑秋むらさきの濃きめし玉 ~ ( せっ子さま ~ か ~ し ) ( 明治三十五年十一月六日日記 )
わがこころ けふもひそかに泣かむとす 友みな己が道をあゆめり こひ 先んじて戀のあまさと われ かなしさを知りし我なり さき 先んじて老ゅ ぎようきた 興來れば ともなみだた 友涙垂れ手を揮りて かた 醉ひどれの如くなりて語りき びと 人ごみの中をわけ來る わ 我が友の むかし 昔ながらの太き杖かな とも さき おの なか お ふと ごと みち っゑ
112 さいはての驛に下り立ち 雪あかり さびしき町にあゆみ入りにき しらしらと氷かがやき ちどり 千鳥なく くしろ 釧路の海の冬の月かな こほりたるインクの罎を 火に翳し なみだ 涙ながれぬともしびの下 顏とこゑ むかし それのみ昔に變らざる友にも會ひき 國の果にて くに かは ゆき かざ うみ まち こほり えき ふゅ つき びん た
175 なみだい といふ符牒 ふるにつぎ 古日記の處處にあり とはあの人の事なりしかな 百姓の多くは酒をやめしといふ。 もっと困らば、 何をやめるらむ。 目さまして直ぐの心よ 年よりの家出の記事にも 涙出でたり。 人とともに事をはかるに 適せざる おも ねざめ わが性格を思ふ寐覺かな。 なに め とし ひやくしゃうおほ てき ひと ふてふ しよしょ ひと こと さけ こと こころ
106 きようどう 共同の藥屋開き 儲けむといふ友なりき 詐欺せしといふ あをじろき頬に涙を光らせて かた 死をば語りき わか あきびと 若き商入 子を負ひて ふ ていしやば 雪の吹き人る停車場に みおく まゆ われ見送りし妻の眉かな 敵として憎みし友と やや長く手をば握りき わかれといふに し ゆき てき お なが くすりやひら にく て ほほなみだひか つま にぎ
176 なに 何となく、 あんぐわい 案外に多き氣もせらる、 おな 自分と同じこと思ふ入。 ひと としわか 自分よりも年若き人に きえん 半日も気焔を吐きて、 こころ つかれし心ー 疹一らしく、今日は、 ぎくわい なみだい 議會を罵りつつ涙出でたり。 おも うれしと田 5 ふ。 ひと晩に咲かせてみむと、 あふ 梅の鉢を火に焙りしが、 咲かざりしかな。 じふん じふん はんにち うめ ばん はち ののし おは ひと