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検索対象: 小説の構築 その2
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1. 小説の構築 その2

だ。変化には必ず時系列を伴う。演繹 " にはこだわらず、とにかく「何がどう " の作品でもストーリーと関係ないと 法は未来、帰納法は過去について考 ~ なるか」をできるかぎり、たくさんのころでいろいろ会話をさせてみると えていくアプローチといってよいだ ハターンで短い時間に出せるように「あ、こいつ、こんな奴なんだ」とかわ ろう。 かってくる。たとえば「マクドナルド なるのが理想だ。 もちろん、あなたが思いつくもの このとき、注意したいのは、ログラでどんなことするかな」と考えたと は物語の一場面とは限らない。魅力インに変化の要素を持たせることき、そこでの行動が自然に浮かぶよ 的なキャラクターかもしれないし、 だ。たとえば、「猫」「森」「死体」という うなら、すでにキャラクターの造詣 突拍子もないシチュエーションやガ三枚で構成して、「森で猫の死体を見はできているといっていい。 登場人物は作者の考えを語る代弁 ジェットかもしれない。あるいは、つける」はログラインとして十全で 象的な科白かもしれない。 はない。エピソードとしては有効か者ではない。物語の中で生き、語る存 そうしたときであっても、同じだ。【 もしれないが、物語には「どうなるか在だ。極端な話をするなら、物語の中 断片から周辺を考えていこう。キャ ~ 」が必要だ。「森で見つけた猫の死体のシチュエーションに、あなたの知 ラクターならどんな振る舞いをするに憤り、猫を殺した人物を探す」なる身近な人を登場人物として投げ込 ら、いちおうログラインにはなる。 んで、そこでの言動をシミュレート か、どんな過去があるか、シチュエー ションやガジェットなら何が起こる エピソードは物語を構成する一要してもよい。 か、なぜそうなったのか、科白ならば素にすぎない。エピソードを物語に キャラクターとは、特定のシチュ ャ中 エーションで固有の反応をする〈ユ 誰がどんなシチュエーションで発しするためには、 < が〈エピソード〉に キの ているか、そんなことをいわれたらよって co になる ( をする ) といったニット〉にすぎない。状況というイン ~ は か髄 まわりはどんな反応をするか : : : そ構造が必要だ。単純な形でこれを包ブットに、行動というアウトブット る神 うして出てきたものに、さらに「どう【含しているのがログラインだという【のある〈ユニット〉。反応は各々の性拠説 ことを、常に意識しておきたい。 なる ? 」と「なぜ ? 」を問いかけてい ・格や考え方で変わる。その性格や考 ~ 网 昞は え方をつくりだしているのがキャラ吊 帰瀏 、逍 その繰り返しだ。 ・キャラクターを掴むクターのそれまでの人生だ。いうな か内 らば、作者が用意するキャラクター る坪 キャラクターは「つくる」より「掴の人生は特定の反応を返させるため拠 三題噺で練習する 法去 む」ことが大切だ。掴めば、どんなシ【の〈回路〉なのだ。 繹 どこから思いついていいのか皆目 ~ チュエーションに配しても、ぶれず ~ 物語における経験 ( キャラクター 演る れ にとっての人生 ) が〈回路〉に新しい 見当もっかないときは、カードに適 ~ に展開をつくることができる。 法ら 当な単語を書いて、その中から三枚むためにはまず、「会話する」「イ配線を付け加えたり、断線させたりい の用 を引いて、出たもので組み立てると ~ ンタビューする」「行動を観察する」 ~ すれば、アウトブットは変化する。た 詣も いうものがある。 「シミュレーションする」といった方 ~ だ、もともとの〈回路〉そのものが変造で 一詣る わってしまうわけではないことと、 いわゆる三題噺だが、ここからス ~ 法がある。 タ造い クのて ナイダーのジャンル分類表に基づい よい作品はキャラがよく掴めるの ~ 〈回路〉の変化には、物語上の経験が ャタ及 たシートに当て嵌めてログラインを ~ で、「この人が〇〇にいたら」といっ】必要だという点は意識しておきた キク言 立ててみるといい。面白いかどうか た形で想像がしやすい。だから、自分 ◎ラで 今回はプロットづくりの 具体的なテクニックを 中心に解説するよー 作家のもとへ、物語は物語として形を 持って降りてくるわけではない。 作家は目を凝らして物語の影を見つ け、耳を澄まして物語の囁きを聞く。そ うしていくうち、次第に物語は物語とし ての形を見出されていくのだ。 ログラインと プロットの基礎は 前の本を 見るわけですね 点で混乱してしまうということだろ まず、アイティアを考える 物語づくりにおいても同様の点を 肝に銘じておきたい。 物語づくりを志す人の中には何かしら書・抽象的な = 葉が入っていたら、そ " きたいものがあるはずだ。物語づくりの】こはまだ空白なのだ。 第一歩は、その何かをあなたの中でしつ ふたつの発想法 かりとと掴むことだ。 最初に何か、とば口になるものが イメー ) ンには形がある以前、デザイナーの羽良多平吉氏 ~ 浮かんだら、とりあえず、そこから広】 が「イメージっていうのは形がある ~ げてみよう。 物語づくりは、想像力を解放してものなんだよ」と話してくれた。 かといって、ただ漫然と考えてい やることからはじまる。 つまり、頭の中でまとまっていなても浮かばないときはまるで浮かば それも、一発ではなく、複合的な想 いものは、イメージと呼ぶべき段階ない。そうしたときは考えを広げる 像力が必要だ。「これがこうなるとあに至っていないということだ。イための道筋をつくってやるといい。 あなるから、次にこうなって : : : 」とメージは、はっきりしていなければ ~ 「そこからどうなっていくのか ? 」 こ 状況を次々にリレーするように展開イメージではないー と、「なせ、そうなったのか ? 」 させていく想像力 : : : 「もし、〇〇が紙面であれ、ディスプレイ上であ ~ のふたつの方向で考えてみよう。前 △△だったら」だけではなく、そこで ~ れ、造形物であれ、テザインは形とし ~ 者が演繹法、後者が帰納法による発 何が起こって、どうなるかを考える。 ~ て表現される。頭の中にある状態で、 ~ 想法だ。 実のところ、このタイプの想像を ~ すでに明瞭でなければ、形にする時 以前、記したように、物語とは変化 普通の人間はうまくできない。次は 浮かんでも、次の次、その次という形 ~ なぜ で繋いでいくことは苦手なのだ。 こんな一」—u に・ これはもう、訓練していくしかな い。こうした作業を特段、苦もなくで 法 きる人は物語づくりに向いていると 納 いえるだろう。 帰 そうして思いつくことをだらだら と書き並べて、それが具体的なもの なら安心していい。ただし、「さまざ まな出来事を経て : : : 」という程度 の想像しかできないときはまずい。 想像するⅡイメージする。 昭和のギャグは若い読者には通じにくいから、 使いどころを考えよう。 先天法 ( 演繹法 ) 理想上の性質を分析解剖し、作 中の人物の性質をつくる。たた し、注意して造詣していかない と、現実と乖離して「人間に似 て人間ならさる異様の怪物」と なりかねない。 性を現な な物非ら ま人にな 法 さて端は 納ましに さ合 帰 、調タ る、たク あめのラ 此法を用ふる作者は、主に実験 法に集こャ と観察とを其必須の手段とし 天界り。キ 世選るな て人の性質の原紊となるべき 後のをく的。 こ質っ実い・種々の性情をば造れるから、前 の先天派の作者の如くに、あま りに極端なる理にはしりて、 人らしくもなき人問をば造る程 にはいたらめなり ハナ肇にしては 痩せてますね 0 何となれば八犬士は仁義礼智忠 棺孝悌といふ形而上の性質を ば、細かに解剖分析して形而下 の場合に応用なし、しかして作 りたる人物なり。語をかへてえ れをいへば、八行といふ形の 物をば有形のんに擬したるなり これから どうなるの ? 3 坪内逍遥の 銅像だよっー 演繹法 4 C)

2. 小説の構築 その2

設定づくりは楽しいけれど、設定は 物語ではない。 ロクラインからプロットへ 思うに、妄想力には横と縦があっ て、横だと世界観、縦だとキャラドラ マで、物語づくりは縦の力が強いほ アイティアが出てきた時点で即、ストー うがやりやすい。世界観中心の場合、 リーを構成していくのではなく、その前 どうしても設定主導となって、そこ にログラインで物語の軸を掴み、それか . でキャラクターが何をするかが不明・ 瞭になってしまう。 らプロットへと入っていこう。 〈出来事〉と〈お話〉は違う。これを理 ログ一フィンを ~ 並てラマックスを考えていく方法もある ~ 解し、〈出来事〉を〈お話〉とにするこ が、こちらはどんどん話が逸れて ~ とが物語づくりの最初のハードルと 【いっていいだろう。 以前解説したように、ログラインいってしまうことも多い。帰納的に は物語を端的に表すための指針だ。 " 逆算していくほうがまとまりはよい 「密室殺人」をそのまま〈出来事〉とし ひとことでいい表せない作品は物語 ~ だろう。ただし、演繹的なアプローチ ~ て扱うなら、「クイズ」にすぎない。 の軸が定まっていない。 のほうが盛り上がっていく感しはっ ~ 「クイズ」と「推理小説」の間にある違 アイディア以前の、思いっきのよ ~ くりやすい。帰納的に考えると、こぢ いは、たんなる量的な差ではない。 うなものがとっちらかったものはき ~ んまりとしてしまう感は否めない。 「推理小説」をあらすじにしても、「ク つい。ネタ出しから発想を広げてい トンネルを掘るかのように、冒頭イズ」にはならない。 く過程をしつかりとやらないと、「起 ~ からは演繹的に、結末からは帰納的何度も繰り返すが、物語というの 」の部分が延々続くような作劇に に頭を切り換えながらアプローチし ~ はキャラクターたちの行動だ。これ なってしまう ( 転がっていかず、状況ていけるといい ( 短編が得意な人は がないと、ただの〈出来事〉になって や道具立てが提示されるだけで使わ帰納的、長編シリーズが得意な人は ~ しまう。 たとえば、キャラクターにおいて れない ) 。芯になる道筋がスカスカな ~ 考え方をすることが多いようだ ) 。 のだ。 「ここからどうするか ? ( どうなるも、「リンゴが好き」という属性は設 ログラインを立てることで、「どんか ? 日演繹的 ) ) 」と「なせ、こうする ~ 定にすぎない。「リンゴ好きがアップ な話なのか ( ジャンル ) 」、「感情面でのか ? ( こうなったのか ? 帰納的 ) ~ ルバ イを焼こうとして失敗する」と いう形にすれば、エピソードにはな どんな変化が生じるのか」が決まる。 ~ 」、ふたつの思考法を組み合わせ、話 そこで、「何が感情を変化させるか ? の結構を合わせていく。 る。しかし、これもまだ〈出来事〉だ。】 」を考えると、クライマックスとして このエピソードを〈お話〉として見せ ていくためのがプロット ( ひねり ) 。 用意すべき事件も必然的に導かれて ~ 設定は物語ではない くる。クライマックスが浮かべば、ど 「なぜ、アップル八イを焼こうとした うやってそこへ導いていくかを帰納 小説を書こうという人には設定を ~ のか」「なせ、リンゴが好きなのか」 的に考える。 つくりたいのか、物語をつくりたい ・ : キャラクターを軸にして〈出来 演繹的に発展させながら、クライ】のか区別がついていない人が多い。 事〉を構成することで〈お話〉になる。 設定を思いついても話にできない肩報へのキャ一フの反応は「面白かった」で終わらずに、後かターの感情や事物の説明、出来事と ら綺麗な形で展開を思い出せる。か いったものに相関関係がないなら、 場合、キャラクターが設定を使って ( あるいは設定に関わって ) 何をする展開を構成する際にはどうしてもりに一日経って場面しか思い出せな ~ そのプロックはいらない。「あそび」 か決まっていないことが多い。設定キャラクターの遭遇する事件や、状いなら、それは有機的な構成ができ ~ の部分がないと作品はどうしてもタ イトになってしまうが、長編小説で を説明するためのエピソードを考え ~ 況の推移に目が行ってしまう。確かていないからだ。 に物語とは登場人物の行動によって エピソード単位での面白さをスも文庫一冊に収められる情報にはか る必要があるだろう。かりにそのエ トーリーの軸に一致させる必要があ ~ ぎりがある。不要な部分はできるか ピソードが本筋に関係しないものなつくられるところが多分にある。た だ、行動には理由が必要だ。理性的でる。 ぎり切っていく ( どうせ、そういう部 ら、その設定は必要ないと見做した ほうがよい 物語をつくっていくうえで留意す分を思いつく人は、実際に書き始め ~ あれ、感情的であれ、動機づけをして いかねばならない。 べきは、読者は読み終わるまで物語てから本筋を逸れる部分を書いてし 情報を説明するために、説明の場 ~ を俯瞰することができないという点まうはずだ。だから、あえてプロット チャートで考える 面をつくることは上策ではなく、エ】だ。ここを抑えておかないと、物語は段階ではそうした要素は排除してお わかりづらくなり、作者のひとりよくよう、心懸ける ) 。 物語の大枠ができてくると、直線 ~ ピソードを通じて提示するべきだ。 ~ 的にストーリーを展開させてしまい しかし、当該キャラクターにとって ~ がりとの誹りを受けかねない。読者 がちだ。 ~ の情報の重要度という問題をもう少は読み進めたところまでの情報でし毎味乾燥を、縣け 【か、物語を理解できないのだ。 そこで、チャート的に起こりうる ~ し考える必要がある。 プロットは構成であり、骨格だ。 情報を得ることでそのキャラは何 状況を「ある」「ない」で考えてみる。 ディティールが過剰に入ってしまう たとえば、主人公が誰かの家を訪ね ~ を感じるのか、どんな言動を取るの ~ 「欠け」を見つけラ と構造が見えにくくなってしまう。 る場面があるとすると、会える場合、 】か。そうした反応 ( 感情 ) を次の場面 起承転結でのバランスが悪い理由 ~ だから、プロットは無味乾燥な箇条 会えない場合を考える。ただし、物 ~ に引くようなっくりにしていかない 語の大枠としては会うという展開にと、ただフラグを立てているだけで、 ~ として考えられるのは、①各プロツ】書きのほうがいい。そこに「 < はを 落着させたい。となると、書き手は作劇が予定の消化作業になってしまクでのキャラクターの感情の変化が ~ 愛していた」とか書いてあると「な 不明瞭、②各プロックの役割と配置【ぜ ? 」とか「どんなふうに ? 」とか具 どうやってこのキャラクターたちを ~ う。 すべき事項の不一致、③各。フロック ~ 体化させていかねばならない点が露 会わせるか、考えていくことになる。 でのエピソードを構成するアイティ ~ 呈するからだ。 このとき、相手がたまたま家に帰っ ~ 有機的な構成 「あらすじ」的な文章にまとめると、 アの欠如が考えられる。たとえば、 てくるといった展開なら、なぜ不在 「起」なら「状況とキャラクターを説わかったような気分になるものの、 だったかが後に影響を与えるだろう ~ 構成において最も面倒なことは、 し、主人公が積極的に相手を探しに ~ 最終的に読者の頭の中で形づくられ ~ 明するためのエピソード ( アイディ ~ 実は空っぽであることが多い。プ 行くなら、見つけ出すまでの展開で ~ る物語を、いかにして順序立てて伝 ~ ア ) 」が不可欠だ。 ロット作業は物語において具体化す【 そこで、プロットシートに貼り付 ~ べき点を洗い出すための工程だ。 興味を惹くことも可能になる。いや、 ~ 達していくかだ。しかも、単調な羅列 そもそも不在である相手に対して主 ~ ではなく、紆余曲折を入れねばなら ~ けたアイディアを見ながら、シート ~ 構造を可視化することで、どんな 上の機能と照らし合わせて作劇的に ~ 場面が展開するか、おおまかに想像 人公はどう感じるのか ? できるようにしよう。 こうした方法を用いることで、物 ~ 構成を学ぶには映画を見た後、ど ~ 欠けている部分を検討していこう。 語に〈ひねり〉が生まれる。つまり、んな話だったか、流れを箇条書きで ~ 重要なことは、物語は各要素が繋 挙げてみるといい。よい構成の作品 ~ がっているという点だ。キャラク 物語が膨らんでいくのだ。 整合とバランスが取れていると思ったら あとは現場 ( 執筆 ) に進んでしまおう 行き詰まったら もう一度、プロットに戻ればいい この作業の目的は 小説を書くことだから プロットを完璧にすることに こだわりすぎてはいけない 初期段階はこんな感じで ざっくりとっくって だんだんと詰めてい ◎要素を付箋に書き出し、シートへ貼っていくことで構成 していく。キャラクターや内容で色分けしてみるのもいい だろう。部屋に紐を張って、洗濯バサミで情報カードをぶ ら下げていく ( 昔の映画フィルムの編集のように ! ) 方式 を取ったこともあるが、物語全体を見渡して作業できるよ ・うにするのが望ましい。 鬘ま物 = " を」 = ぬ , どこまで細かくつくるかは 作品のタイプやその人の好みだから 好きな段階を選ばう 糾りし物 忸みれ、ノ町 い。を ( をし : まの物はキ 1 て 三 ? ( 。佐っ 有彦いれ貌 人を度第 0 0 0 廳すれま被をれを ! スワ 0 グい ル支また

3. 小説の構築 その2

意ガ 識リ せを メリハリと密度 【読者の興味を惹く この作品では密度とスピード感を すでに何かが起こっているところ から始めるという方法がある。会話 重視してプロットを組んでる。 最近のラノベはアニメ化なども意 ~ やアクションシーンから書き起こす 識したっくりが多いので、本作では ~ わけだ。北村想は「テンションの高い そうした傾向も参考とした。 ところから物語を始める」ことが、物 たとえば、アニメ化されたラノベ 語を面白くするコツだと語ってい 作品が「三話まで見ないと面白いか ~ る。 同時に、導入部分は「アトラクト どうか判断できない」といわれる背 景には、そこまでで第 1 巻のラスト、 ~ 〔 attract 〕に優れたものであらねば あるいは第 1 巻のクライマックス直 ~ ならない」とも記している。つまり、 前になるという配分であることは影【魅力的な書き出しとは。受け手の注 響しているのだろう。 意や興味を惹きつけるものだという ことだ。 本作でも、展開をアニメでの 35 4 話分を意識した配分とし、「起」の ~ 物語をつくり慣れていない人は、 プロックを第 1 話と見なし、これが ~ 事件を時系列に従って、そのまま書 どんな作品なのかわかってもらえる ~ いてしまうことが多い。だが、物語づ ように注意を払った。 くりは、読んで字の如く、モノを語る 】作業だ。それこそ、興味を惹くために ファーストイメージ ~ は結末から入ってもいし 小林信彦はストーリーとプロット 基本的に、読者は白紙の状態から ~ の違いについて、こんなふうに言及 している。ストーリーとは「美しい女 小説を頭から読み進めていく。 したがって、このプロックでは物 ~ 性は青年 O のフィアンセだった。 語のさまさまな情報を提示していく ~ そのに、 0 の友人 < が惚れた」とい ことが求められる。いつ、どこで、誰 ~ うもので、プロットとは「青年 < は知 が、何をする話なのか : : : しかし、こ ~ り合った女の子に惚れて、友人 0 れらが羅列的に記されていたのでは ~ に紹介した。ところがは O のフィ 退屈なものになってしまうし、情報 ~ アンセだったのである」と。 がいちどきに流れ込むと読んでいる後者は情報の順序を入れ替えて、 ~ 見せたい部分を効果的に提示してい 側の頭も飽和してしまう。 読者の興味を惹きつつ、情報を整る。つまり、これがプロットⅱ構成な 理して提示するために、可能な限り、わけだ。 エピソード化を心懸ける。 ー翠玉のチェストフレイカ呵で 解説する作劇 ロクライン 自分に自信を持てなかった少年が、 特別な存在として選はれ、 他人から必要とされる手応えを感じるようになる。 名機の専属機匠 自分にしかない特別なカ キ人公 : 晴明イツナ 冒頭にアクションシーンを配 し、この物語が「超人」と「機 械」のバトルものだということを示 した。ただし、イヅナ自身が活躍す るのではなく、彼が事態を目撃する ことで読者に世界を伝える代弁者の 役割を担わせている。 どうしても設定や背景説明を 地の文で書かねばならないと きは、分量に気をつけたい。最近の人 気ライトノベルなどを見ると、一カ 所につき、 253 ページくらいが一 般的な読者が退屈せずに読める範囲 のように思える。 主人公に焦点をあてる 主人公、ドラマの前提、背景 現状への疑問 ( 不満 ) 冊 26 問題の明確化 欠けているもの 51 ドラマ上の欲求 「骨法十箇条」は 『仁義なき戦い』の脚本家、 笠原和夫が掲げた シナリオづくりで 困ったら立ち戻る基本ー ドキドキ 冊① 1 山奥にある学園へ教 師・葦矢の車で向かう ィッナ。 機師・葛ノ葉キリネ & 機装戦騎・スイネと、 機師・黄沖の野死合を 目撃する。 周囲に違和感を覚え続 けていたイツナは、中 学卒業の日、クラスメ イトとともに入ったカ ラオケ店で機匠の力に 覚醒する。 自らの力に怯え、家に 逃げ帰ったイツナは両 親がアンドロイドであ り、本当の両親は数年 前の事故で死んでいる と知る。 アンドロイドに組み込 まれたメッセージでイ ツナは「世界の真実」を 知らされる。 学園の入学式で校長の 形代は機匠としてのカ を披露し、機師と機匠 の役目について語る。 半殺しにした黄沖を連 れ、キリネが登場。形代 へ詰問する ( 因縁あり ィッナはキリネに呼び 出され、野死合の最中 に目撃したモノについ て他言しないよう求め = られる。 ニ人きりの様子を先輩 の茂武に見られるが、 キリネはイツナが交際 の申し込みをしてきた のだといい逃れる。 感情の動き 覚醒冖数週間前〕 を 主人公に 、カセをかけろ ! クラスの女子との会話で、イ ヅナの抱える「違和感」や過 去の事故について軽く触れた。 は主人公へマイナスに作用する ファクター たとえば、身分の違う相手に寄せ る恋心はカセとして機能する。 カセから生する波乱を笠原は「ア ャ ( 綾 ) 」と呼んでいるが、効果的な カセとは「枷」であり、主人公に背【アヤをつくるには適切なカセが必 要だとも念を押している。 負わされた運命、宿命を意味する。 「コロガリ」が主人公のアクティヴ ~ カセが凡庸だとアヤがちゃちなパ 第 ' な面を強調するのに対して、「カセ」】ターンになってしまうのだ。 に初めて登場する主役や何人かの主 要人物は、最初のシーンの芝居が引 き立つように書く ( 「役」の「出」のテ ンポを考え、印象強く提示すること が重要 ) 。 コロガリは冒頭のみならず、構成 コロガリとは「転がり」であり、展全般で意識されるべきものだ。たと 開の妙 ( 主にサスペンス ) をいう。 えば、「コロガリが悪い」となれば、不 笠原によれば、「これから何が始ま ~ 自然な展開や御都合主義による話の るかと客の胸をワクワクさせ」、最初】運び、脇の筋 ( サププロット ) への深 に何の話かを端的に示唆することが ~ 入り、「コロガリ過ぎる」とは本筋だ 大事。 けが先へ先へと進んでしまうような 突然のアクション・シーンであっ状態をいう。 つまり、コロガリは受け手との間 。ても、説明は後でいくらでも入れら れるので、思い切った衝撃的シーン ~ での駆け引きであり 、いかに意表を を真っ先に持ってくる。特に、ドラマ】つくかというテクニックなのだ。 『キーマスター』は 川瀬弓鶴くんとの合作で アイディア段階からいろいろ ディスカッションして 組んでいった フロット ポイント 01 シリーズ第 1 巻を想定したけど ここしばらくで考えてきた 構成理論を盛り込むように 心懸けたから参考になると思う っ′ 4 角 このプロックの冒頭に「寄木 細工」という表現を入れたが、 これが全篇を通してのモチーフと なっていく。 この段階で、物語を引っ張っ ていく謎が、冒頭の戦いの中 で目撃した「機装戦騎の中に入って いる少女の腕」であることを示した。 キーマスター翠玉の チェストプレイカー 著者皆川ゆか・川瀬弓鶴 イラストレーターフ子 ほにきゃん BOOKS ライト ノベルシリーズ 文庫価格 : 650 円 ( 税別 )

4. 小説の構築 その2

2 2 こんなところにいてもいいの かと思っている ( 自信を持て ない ) イヅナが、スイネの専属に選 ばれてしまう。この展開によって彼 女たちの抱える問題にイヅナは否応 なく、巻き込まれていくことになる。 法。 当初、エミリは設定されてお らす、執筆時に機匠について 説明しやすいよう、あらたに盛り込 まれたキャラクター。キャラを最小 限の人数で組んでおいても実際に書 きはじめると増えていく。 タダユキはメインのキャラ クターとして本作には登場 しないが、イヅナの内側にいる彼の 存在との関係性をサププロットとし て想定している。 サププロットの構築 所詮、物語の理解などは、目の前 にある情報を受け止めることが中心 で、印象の強弱によってバッフアさ れた以前の情報で補完することで成 " 立しているにすぎない。したがって、 軸を増やせば増やすほど、理解が困・ 難になっていく。 だから、サププロットはメインの キャラクターとの関係性でつくって いくべきだし、そうでないと受け手 のほうの情報整理がうまくできなく なってしまう。サブプロットが終盤 において本筋へ回収される必要があ るのも、このためだ。 ておくことをいう。ここでいう趣向よ 今【とは歌舞伎浄瑠璃の作劇用語で、作 品の背景として選ばれた類型的な 「世界」に対し、作者が当時の事件か ら取り入れたり、創作したりして盛 り込む劇的工夫を指す。 伏線に近いが、より間接的なもの 「襯染」と書いて「しんぜん」と読む。 「襯染は下染冖したそめ〕にて、此間に【と解したほうがよいだろう。展開を 理解するための情報を事前に出して いふしこみの事なり」 重要な事柄の趣向を出すために、【おく、設定の事前説明として捉える 数回前から事物の原因や経緯を入れ ~ とわかりやすい 脇役の分担があることを常に意識せ よ、ということ。主役が脇役に、脇役 が主役になるといった形で役割を変 えることもある。これは物語上の視 点移動や、誰が中心になってそのエ 禪」史七彎 ピソードが動いていくかをちゃんと 「主客」は能楽のシテ ( 主役 ) 、ワキ ( 脇】考えるうえで、意識しておくべき原 役 ) の意味。エピソードことに主役・ ~ 則。 視点をタダユキ ( 脇役 ) とし て、イヅナ ( 主役 ) を描くこ とで、この。フロックは主客が入れ替 わったものになっていると見做して もよいだろう。 過去の物語はそのままではか なり長大になってしまうた め、場面によって展開させる手法で はなく、省筆を用いることにした。 回想的に挿入したが、一一人称を用い、 タダユキがイヅナへ語りかける形で 情感を持たせるよう配慮してある。 女教師が機装戦騎への生体移 植に言及する部分は、「謎」 に関連したことを言及する襯染の手 物語の軸を 意識する ! 事前に 情報を出す ィッナたちがいなく なった後、機装心臓が 暴走し、女教師を遅う。 葦矢の働きで事なきを 得る ( 原因がイツナの 特別な力だとわかって いる ) 。 機装心臓の暴走はイヅナの特 別な力を示す伏線でもある。 ー ' 寮住まいのイツナのも とへスイネとキリネが 押しかけ、同居するこ とになる。 機匠のオリエンテーれ「 ションでイツナはエミ リたちとともに、機装 心臓を扱う。 だが、イツナは何をし ていいかわからす、戸 惑う。 円① 3 小学生のころ、仲間は ずれになっていたイツ ナはタダユキと出会 う。 タダユキは「魔法使い」 のような力で怪我をし ていた猫を助ける。 家に車が突っ込んでき てイツナは死にかける が、タダユキは彼を助 け、自分の力を託した。 機装心臓の暴走 ィッナの過去 オリエンテーション 1 カフェテリアの P ① 19 カフェテリアで弓削は ィッナばかりか、キリ一【、 ネやスイネを揶揄す る。 ィッナはスイネを人形 とは思えないと主張す る。 弓削とキリネの対立は 死合へと発展する。 契約の儀 ( 機装戦騎を 整備する専属機匠を決 める儀式 ) 。 冖同じ新入生の機匠・ エミリが教える〕 機装戦騎・《ファイヤー アゲート》を持っ名門 機師の弓削は、キリネ に敵愾心を剥き出しに している。 、イツナは無名の機匠で ありながら、名機・ス ィネの専属に選ばれて しまう。 円 11 転換となる 工ビソード ヤフレで ー存在感を増せ ! 「稗史七則」は滝沢馬琴が記した作劇テクニック 江戸時代の手法だけど、みんなが無意識のうちに 使っていたりもする基本中の基本ー 初めての夜 オリンで 感動させる ! そこで、トラブルをつくる。これは 序破急を意識した構成 ~ 邪魔する人間が現れるという形でも・ しいし、「謎」でもいい。 プロットを立てやすいログライン < 地点から O 地点へ向かうとき、 は、中盤以降の絵 ( 何をするか、ど ~ 直接、向かわせるのではなく、地 んな場面があるか ) が出てくるもの ~ 点を経由させる。それも、 0 地点へ だ。ここに自分の泣きツボ、燃えッ向かう道がなんらかの障害で塞がっ ボといったものがあるなら、あとはているために、迂回する羽目になる そこへ向けて組み立てていけばい : 作劇とはそうしたものだ。何事 もなく、 < から O へ向かうと予定の ただ、作劇初心者のつくる物語の【消化作業にしかならない。 特徴は、「転」「結」しかないという ここで障害を突破することも地 ものが多い。「起」「承」で積み重ね ~ 点へ迂回するのと同じことだ、何も たものが「転」でひっくり返るとい ~ 起こらないことは ( そして、そこに 演出的な意味がないときは ) 描く必 う構成ができてない。常に、すとー ん、すとーんと流れていく。 要のないことだということを肝に銘 これを解消するには、「トラブル ~ じておこう。 ただし、留意すべきは、こうした をつくる」と「トラブルに決着をつ ける」を意識することだ。いってみ ~ トラブルがトラブルを起こすための れば「承」は風呂敷を広げていく過 " トラブルにならないようにすること 程。主人公が目的達成のための行動 ~ だ。あくまでも主人公の目的達成を をするだけでは、ここに波乱はない。 阻む事件でなければならない。 主人公の気持ちをいったん下げて から上げてやることで、振れ幅をつ くってやるわけだ。 失意の中にある主人公が描かれる つイ ことを、「鬱展開」といって敬遠する ト鹵条 ・読者もいるが、ヤブレの場面がない ャブレは「破れ」であり、乱調をい " と、主人公の存在感が希薄になった う。物語の途中にある失敗や危機、落】り、平板な印象を与えることになる。 ち目がこれにあたる。 ャ。フレでの気持ちを引っ張る ことで、ここをオリンとした。 する。つまり、感動的な場面という ことだ。 笠原はこれを、ヤプレの後、ヤマ の一歩手前あたりに配置するよう 提案している。 帋弘ト鹵条。冫 主人公の気持ちをャプレで落と 昔、「母もの映画」といわれた作品 ~ し、オリンをきっかけに奮い立ち、 では、母子の別れの場面で感動を盛】サンボウで決意し、ヤマへと向かう ・ : おそらく、笠原の骨法十箇条で り上げるためにバイオリンが奏で 一番効果的な配置の仕方がこの流 られた。「オリンをコスる」などとい われ、笠原の「オリン」はここに由来【れだろう。 亠豊 ャプリ 角 角 前後の。フロックをつなぐ形 メ。でひねることがこの部分の 目的。前段までで才能の片鱗を表し たイヅナだが、それでもうまくでき ないというのがトラブル。 このエピソードの目的はイヅナを 落ち込ませる ( ャプレ ) ことだが、 それだけで終わってしまうと読者に はストレスになってしまうため、暴 走のエピソードで「本当はすごいこ とができる」ということを匂わせる ようにした ( 彼自身の気持ちは上が らないが、 読者の側に一定の安堵感 を与える ) 。 これを強調するための序破急は次 の通りーーー機匠と機装心臓について の説明 ( 序 ) / 機装心臓を扱えない イヅナ ( 破 ) / イヅナの知らないと ころで機装心臓が暴走 ( 急 ) ャブレを有効に使用するな ら、転のプロックにある「心 の闇」がよいだろう。しかし、本作 では主人公を早い段階で精神的に持 ち上げてやりたいと考えていたの で、あえて承のプロックに配した。