清治 - みる会図書館


検索対象: 月刊 みんなねっと 通巻第128号 2017年12月号
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1. 月刊 みんなねっと 通巻第128号 2017年12月号

であきは気が急いているようの恰幅のいい長髪の男性の施設がどこか落ち着いてきた。そし な、しかし、そこへ行くのが怖長らしき人ともう一人女性職員て菊山を見て、清治と同じくら いような、ずっと昔の高校の合だけだ。入ってすぐの来訪者用 いの年だし、もし清治が病気に 格発表の時に似た気がした。早のノートの置いてあるカウンならなかったらこうやって社会 足になりそうなのをやっと我慢ターのところまで出て来た男性で働いているんだろうにと思っ した。支援センターは繁華街かを福岡が「こちらが施設長の菊た。他の職員の方はと聞くと、 「一人暮らしの障害者の家で ら一歩入った住宅街との境にあ山さん」とあきに紹介し、あき るべージュ色の三階建ての建物の事も向こうに紹介した。あき軒に蜂の巣があって、気持ち悪 いから取ってくれと言われて出 だった。その一一階と三階が施設は挨拶しながら、持参した菓子 のもので、一階は美容室でその折りを渡した。 ているんです。冬だから蜂なん 脇を鉄製の広い階段が一一階に通 「そんな気を使われる事はなていないと思うんですけどね」 じている。入り口には「 z O かったのに。でも有り難く頂い 菊山は良く通る大きな声で人 法人敬愛会地域活動支援センておきます」 の顔をじっと見て言うと、あき ター灯の家」という丸い小さ菊山は人当たりの良さそうな達を三階の相談室に案内した。 な女子高生がデザインしたよう穏やかな感じで言い受け取っ 小さいテープルと華奢な椅子だ な表札があった。自動ドアを開 た。髪を七三に分けて背広を着けの狭い部屋だった。女性職員 の け福岡について入って行くと、てというかたくるしさとは無縁がお茶を持ってきて、菊山は前 族 家 職員の机のかたまった事務室でで、ワークシャツにジャケット置きもそこそこに話し出した。 と ノートパソコンが並んでいた。 というラフな格好の菊山に親し ( 次号へつづく ) 職員は一一人しかおらず、五十代みを感じ、あせっていた気持ち ( きたむらまさき ) 者にとって病棟の外へ出られる数ジオには眠い目をこすりなが清治の病気の度合いが重いという 少ないチャンスの一つだ。前に言っらでも参加する串が多い。 事であり、その事があきの計画を号 月 たように一一一階の社会復帰病棟の患 いつもはそんな事をしない清治大きく左右するのだが、あきはそ 年 者は決められた時間ならエ収婦に が何か忘れ物してきたのに気が付の事も知らない。 言って鍵を開けてもらい病院の いた時のような慌て方で参加しょ と 市街地まで出かけることもできるうしたのを見て、椎野が珍しい事も っ ね のだが、清治のいる一階の一般あるものだという目を向けていた 亠な 病棟では外出といってもせいぜい が、外に出ようとした清治は椎野 相談の日は街並みの上に灰色ん 限られた串著が病院の敷地内に出と同じように意外な顔をした当番の雲が何段にも垂れ込めた寒 られる院庭散歩くらいだ。外に出の看護婦に止められた。看護婦は い日だった。『天気予報の曇り た串は歩いて 3 分くらいの外来患者の情報をまとめたファイルをマークに小さい傘マークが付い 棟まで行って、そこの自販機で缶開いてしばらく調べていたが、困ったような天気だ』あきはそんな コーヒーを買ってべンチに座ってたようなを浮かべて言った。 事を思ってから私は何をトンチ 気晴らしをする。病状が良くなる 「淵川さんはダメなの、許可がンカンな事を考えているのだろ と保雍右同伴で市街地へ出る事も下りてないわ」 うと首を振った。福岡が昼過ぎ 可能なのだが、そこまで認められ清治は清治なりに不満を表した に迎えに来てバスで十五分ほど る串旧は稀で、それ以外で外に出のかあさっての方を向いて虚ろなの茅ヶ崎駅へ向かった。駅の南 るチャンスといったら腫物ができ顔をしていたが、何も一一一一口わずに引ロでバスを降りて、駅舎を通り た時の清治のような場合くらいでき下がった。ラジオ体操でも外へ抜け北へ歩くと数分で支援セン ある。だから外の空気の吸える一フ出られないというのは、それだけターに着いた。そこへ着くま 4

2. 月刊 みんなねっと 通巻第128号 2017年12月号

不支給を手にした多くの人過去に障害年金を請求して不 給としている旨の内容が書かれ ていることもありました。 支給になった人たち、そして今、 は、諦めてしまったのではない 号 月 まさに不支給になった人たち また、他にも精神遅滞の方がでしようか。 へ、不支給理由を探りその理由年 過去に不支給になった診断書 以前に不支給になったとのこと に対してしつかりと闘える材料 とほとんど変わらぬ内容で障害 で、認定調書を取り寄せると、 が台であるにもかかわら年金を請求した方が現在、障害をもってその先の審査請求、再っ ず、過去に厚生年金加入での就年金 2 級を受給されている例も審査請求、または障害年金請求な の出し直しをするという策を考み 労が確認できることから、日常あります。 えて欲しいと思います。 生活には著しい支障をきたして 国は、障害年金支給の当否に いるとは判断できないとの理由年金の手綱を国が握っている 私は、こういった状況を目の対して認定基準という盾と矛を で不支給になっていたこともあ りました。 当たりにするたびに、障害年金もっているのですから、障害年 という手綱を国が握り、緩めた金を請求する時に何も知識ない 今は、東京での一括審査にな りましたから、これほどまでのり強めたりしているのだと感じ丸裸の状態では挑まないで欲し いと思うばかりです。 理不尽な理由で不支給を出さなずにはいられません。 安心して暮らせる社会である いと信じていますが、納得でき ために、本来ならこのようなこ ない理由で以前に不支給になっ た人は、どうするのでしようとが起こっていてはいけないと 思います。 語 北村昌紀 その 6 しかし、普段ほとんど人間的活ペーパーをちぎりだしたのだ。椎 動というものをしない清治が急に野が驚いて、「なっ、何するんだよ」 と言っても注仙は、「うん、うん」 慌てたように動き出す事がある。 と生返事をしながら、トイレット 病棟のトイレの話だが、そこには ペーパーを三〇センチくらいの長 パーが置かれてい トイレットペ 1 ない。置いておいても患者が滅茶さに五、六枚ちぎるとそれを持っ 苦茶にしてしまうだけだからだ。て部屋から出て行った。理由の分 それでどうするかと一一一一口うと串旧一かった椎野はあきれて腹立たし気 につぶやいた。 人一人が自分用のトイレットペー 「自分の物と他人の物が分から ーを持たされている。用を足す ないのか、自分のが無いならナース ときはそれを持って行く訳だ。ト イレは当然のように汚く鍵も掛かセンターで貰えば良いじゃないか」 そういうふうに清治は突発的に らない。この病院が初めての入院 である椎野に至ってはトイレに行何か行動を起こし、それが自分 くのが嫌になって便秘になってしとしては理由のあることであって も、周りから見ると非宀吊識にしか まったくらいだ。 その椎野が畳んだ布団を枕にし映らない事が多い 別の日、朝のラジオ体操に清治 て寝転がっていると、隣に寝てい た清治が何かに憑かれたように急が突然気負いこんで参加しようと に立ち上がり、椎野のトイレットした事がある。閉鎖病棟の入院患 ( しらいしみさこ ) 21 私と家族の手記