2 ゴルフへの姿勢 も , 実は単なる形 , つまり“姿 " ではなく , むしろ体の内部でどう 構えているか , 言いかえれば体の各部の筋肉の , ある緊張度の配分 をどうと。 0 、るか , と 0 、う = とカ : , 体 0 姿勢 0 本質ある = と こで強調したいのである。 を , つまり , 姿勢の本質的なものは , 心体ともに内面的なものであっ て , 外に現われた形 , 姿というのは , 内部に秘蓄されたエネルギ , つまり , “勢”の , その結果として表に出ているものに過ぎな いのである。 姿勢とは , それに引っづいて起す行動に , よりスムーズに入って いくために , 行動の直前に体の内部にたくわえたエネルギーの配分 と準備的“勢 " なのであって , この姿勢いかんで行動の大半が決定 されると言っても過言ではなかろう。 ゴルフスイングにおいて , なぜ体の姿勢 , あるいは構えというも のが大切なのか。なぜそれがスイングの基礎として重要であり , そ れがつづいて起すスイングのほとんどを決めることになるのか。そ して , そんなに大切なことなのに , 一般の技術書では , なぜそのこ とを詳しく取上げていないのか。といった疑問について , 次章で答 えてみたいと思う。 29
3 ゴルフスイングの基礎 よい。 返し覚えておいて , ポールを打ってみるということをやってみると この軸を曲げないように肩を回し , 体を捩るフィーリングを , 繰 するだけでよい。 ラブを握ってやる必要はない。肩の回転に伴う体の動きをチェック 度に動かすのか , という感じをつかむのである。これは必ずしもク そして , その時の , 体の各部の筋肉の緊張感覚や , どこをどの程 イング中心点が左右に動いてないかを , 自分で確かめるのである。 の形にもっていく時 , 想定した中心軸が真直に保たれているか , ス って見るのがよい。構えた時の自分の体の軸を想定しつつ , トップ これを自分でチェックするには , 全身の写る鏡の前で , 実際にや つつ , 上体を右脚の上で捩るという意識のほうが正しいのである。 げると図 11 の形にならねばならない。つまり , 顔はやや右を向き がらないようにして , この軸に直角な面内で肩を回し , 体を捩り上 おいては , この軸上端部 , つまり首のうしろを固定し , かっ軸が曲 バックスイングに 直でなく , 多少飛球方向に対して後傾している。 アドレスでの構えにおいては , スイング軸は図 10 のように , 垂 あり , これは首のうしろである。 たびに変化する。この回転中心が両肩の中央 , つまり背骨の上端で バーの回転中心を固定しておかないと , クラプへッドの軌道がその ている。このレバーを体のまわりに回転させるわけだから , このレ つまり両腕 , クラブは肩につい ポールをヒットするためのレバー スイングというのが体の捩り上げ , 捩り戻しだと先に述べたが ,
2 ゴルフへの姿勢 体の構えがスイングを決める , と言ったが , 体の姿勢というの いるわけだし , それについては今迄述べてきたとおりである。 うことであろう。姿勢とは体の構えのみでなく , 心の構えも含んで ゴルフにおいても , 最も基本的に大切なことは , 姿勢を正すとい 0 姿勢とはなにか る直前の姿勢であり , 体の構えなのである。 いたいことなのである。そしてこの基礎というのが , スイングに入 というか , そのべースとなる基礎が必要なのだ。というのが私の言 いているが , これらの基本を身につけるためには , そのもうーっ下 基本というのは , 多くの技術書が一様に述べ , かっその重要さを説 スタンス , グリップ , などをはじめとする , いわゆるスイングの が , スイングの殆んどをきめてしまうということである。 姿勢である , ということだ。つまり , スイングに入る直前の構え のである。それは , 言でいえば , スイングを決めるものは , 体の それは一体何なのか , ということをここで述べておきたいと思う した , という経験がある。 グでポールを打てるようになり , 距離 , 方向 , 球質までかなり安定 ているが , その後ようやくすべてのクラブは , 全く同じフィー う気がした。それ以来 , そのことを確かめ確かめして , 今日に至っ 8 年目に至って , ある時 , 突如としてそれが何となく分ったとい 分なりの決め手がつかめなかったのである。 くなったものの , ショットそのものは依然として不安定であり , 自
3 ゴルフスイングの基礎 53 ランスというのが , スイングにとって基礎的に大切であるというの は , 今改めてここに指摘するまでもなく , むしろ周知のことだと言 ってよかろう。 すでに古く , ポビージョーンズは自己の体験から , 体の内部のカ の大切さを指摘しており , べンホーガンも各部の筋肉の働きに注目 して , 同じく体の内部の力というものを重視している。 したがって , スイングというものの基礎として , 一番大切なのは 体の内側でどうクラブを振っているかということなのだ , という指 摘をされる人も沢山いる。 ただ , その働かせ方 , つまり , 具体的にどこの筋肉を , どう働か すのか , その際の意識としては , 何を頭においてやれば , 結果とし て望ましくなるのか , それを身につけるためには , どういう順序 で , どういうやり方でやるのか。といった , 素人わかりのするよう な解説は , あまり見かけないのである。 スイングの技術的解説は , 一般に外見の形についてのものがほと んどである。しかし , 上述のような見方からすれば , 外見上の形と いうのは , スイング行動の結果として外に現われたものにすぎない と言えよう。その形のよってきたる体の内部の諸点にはふれない で , 結果の説明をどれほど聞かされても , その行動自身を身につけ ることは困難なのである。行動結果としての形の上の説明を , 詳細 にされればされるほど , ますますその行動自身の本質を知ることか らむしろ遠ざかるのである。一般ゴルファーが , これら形の上での 知識を持てば持つほど , 自分の体の内側に目を向けることなく , そ
4 学習と練習 97 とって , 自分自身との対話 , それも自分の体との対話ということ が , 基本的に必要であり , 大切なのである。つまり , こう考え , こ う意識をしたとき , 体はどう動いてくれるのか。意識を変えたと き , 行動にどういう変化が起きやすいのか。ある望ましい動きをす るとき , どんな意識をどう持てば , マッチングしやすいか , など を , 自らの体との対話の中でつかんでいくことである。 こういったことを繰返えすことによって , 心と体とのコミュニケ ーションが , よりスムーズに行われるようになる。 練習とは , いざというときに役立つ , 心と体の間の対話回路を , より太く , より強く , より豊かにすることだ , と言えるのではない だろうか。 ( 3 ) ショットは視覚化のイメージを描いて 最近の新しい心理学研究で , 注目されていることの一つに「視覚 化」というテクニックがある。これは , あらゆる人間行動の動機づ けに , すぐれた効果があると言われているものである。 つまり , 何らかの目標を設定したとき , その目標を明確に持つだ けでなく , その目標に至るプロセスをも , イメージとして具体的に 描き出すのである。 ゴルフでポールをショットする場合で言えば , ポールを運ぼうと する地点あるいは目標だけを見るのではなくて , 今から実際に行う 自分のスイングのリズム , タイミング , スイングする自分の姿のイ メージをはじめ , ポールの飛んでいく様子 , その落ちる場所 , ころ がり , 止まるであろう位置までを , 具体的に , 明確にイメージとし
56 3 ゴルフスイングの基礎 に他ならないのである。 スイングにおける体の使い方は , 捩り上げ , 捩りもどしであり , 体を捩り上げることによってパワーを蓄積するのがバックスイング の目的である。このためには , 捩りの支点 ( 固定端 ) となる地面と の接触点 , とくに右足を強く固定することと , 体を捩り上げるため に , その上端である肩をスイング軸 ( 背骨 ) のまわりに回転するこ とである。 これによって体の中に , 捩りによるエネルギーが生じるのだが , このとき , 右脚とくに右膝が外に逃げたり , あるいは大腿筋 , 腰部 筋肉 , さらに腹筋が順序正しく参加しないと , 単にパワーのロスを 来すだけでなく , 最も大切なスイング軸が動いたり , 曲ったりして しまう。 このような望ましくない結果を , 未然に防ぐために , バックスイ ングにおける体の捩り上げによって生ずべき , 主要筋肉の緊張パタ ーンを , 予め構えのときにとっておき , バックスイングにおいて は , 同じパターンで , その緊張度だけが強まるというようにすると かなり単純化することができる。単純化ということは , つまり安定 したバックスイングがとりやすくなるということだ。 このことはバックスイングを安定化するに止らず , 実は さらに , フォワードスイング自身の安定化に連がる , という点で最も大きな 意味をもつのである。 すでに何度か述べてきたように トップ附近からフォワードスイ ングに至る一連の運動は , 条件反射ないし無条件反射であり , この
4 学習と練習 77 たい。つまり , スイングの基礎である体の働かせ方と , 同時にショ ットの基本条件を満足する術を身につけることに集中することだ。 これらの基礎をいったん身につければ , むしろ練習といったもの くらもあるのである。 でも , 職場でも , ちょっとした時間を利用して , 実行する方法はい た , その練習はわざわざ練習場に行かなくても , 工夫次第で , 家庭 は時間的にも頻度的にも , かなり少なくてすむことになるし , ま このスイングの目的は , 体の筋肉の働かせ方 , つまり下半身 , オワードスイングをする。これを繰返すのである。 る。つまり , 図 12 に示したぐらいの範囲で , バックスイング , フ のかからぬ位置でよい。そして , クオータースイングをするのであ り , アドレスの構えをとる。ただし両手は体の中央付近 , 腕に無理 まず , この鉄塊を両手でつつみこむように持って , スタンスをと 持てるものがよい。 のでもよい。重量は大体 2 ~ 3kg 位 , 両手でつつみこむようにして 図 12 に示したように , できれば鉄の塊がよいが , 適当な他のも なーっの方法を述べておこう。 グとして感じながら , 学習することができる , 比較的容易かっ有効 緊張配分と , スイングの過程におけるそれらの変化を , フィー かせ方については , 今までにたびたび述べてきたが , これら各筋肉 さて , 少し具体的な話に入ろう。スイングにおける体の筋肉の働 ・フィーリングによる体の働かせ方の学習
52 3 ゴルフスイングの基礎 スを始めとする , いわゆるゴルフスイングの基本というものは , 上 述の基礎 , つまり基本的な筋肉の使い方というものが , その前提に あって , 始めてその重要さが意味をもつ , という気がするのであ る。 私もかって , スライスに悩みつづけたが , たとえばグリップをフ ックグリップにすればするほど , ますますスライスする , などとい うことがある。それは , 結局 , 体の基本的な使い方 , つまりここで 言う基礎ができていないか , つねにぐらついているからなのだ。 ゴルフスイングに大切な基本を身につけ , 望ましいショットを実 現するためには , まずその基本を生かしうるための基礎を , 身につ けねばならないということだ。基礎とはつまりこの体の筋肉の使い 方である。 図 4 の中に , スイング運動として三つのレベルを表示してある が , 基本技術というのは , よく知られているような , いわゆるスイ ングの基本的要素を身につけるものである。 それは , まさにプロや若い人々にとっては , 基本であり基礎であ るが , その下に基礎技術を加えている意味は , 大人になってからゴ ルフを始める一般ゴルファーを対象としていることから , つまり基 本技術を生かすために , そのべースとなる全体としての体の使い方 を身につけることが必要ではないか , という主張からである。 前項で述べた体の内部 , つまり各部の筋肉の緊張配分と , そのバ 0 スイングの基礎概念
2 ゴルフへの姿勢 25 とくに大人になってからゴルフを始めた多くの 一一般ゴノレファ 人びとは , 日常の仕事のやり方 , 生活のしかたの習慣から , ゴルフ をやるについても , まず必要と思われる知識や情報を集め , そして 考えながらやるという入り方をする。つまり , 知的活動が主体とな ってゴルフにとりくむ。このことは決して間違いではなかろう。必 要な知識を極力とり入れ , また頭を使って行動することは , 大いに 結構なことであり , 効率もいい筈である。 しかし , これだけでは必要条件はみたされるとしても , 十分条件 ーこにもうーっ重要な条件がある。この条件の ではないのである。 欠如ないし貧困さが , 結果として一般ゴルファーのかかえている多 くの問題の源となるものかもしれない。 ゴルフというものは心と体を使う。しか それは言うまでもなく , も別個にではなく , 心体ーっとなった行動である。これは何もゴル フに限らない。スポーツといわれるものはすべてそうだし , " 技”あ るいは“道”といわれるものもそうである。 このことは , 知識を持つだけ , 頭で考えるだけでなく , 採り入れ た知識や情報を選択しながら , 心体ーっとなってとりこみ , 実際の 行動を通じて , さらに取捨選択を行いながら , 何かを自分のものに するというプロセスが必要なのである。つまり , 体を使っての実行 と , その結果からのフィードバックを繰返す , というプロセスをふ くむことによって , いわゆる経験として身についてくるものが大切 なのである。 経験とは学習することによって , 自分自身で自分の中に育てた ,
40 3 ゴルフスイングの基礎 えは , 十分に意識的に設定しうるものなのである。 ・初期条件の設定がスイングを決める 一般に , 静止状態からある運動を起こす場合 , 体の内部つまり各 部の筋肉 , とくにその運動のために働かすべき筋肉を , 予め適度の 緊張状態におくことが必要である。 しばしば , とくにアベレージゴルファーに誤解されていることは リラックスという言葉である。緊張さすべきでない筋肉を緊張させ たり , 一部の筋肉に過度の緊張を与えたり , あるいは緊張さすべき でない時に , 緊張させたりするために , スイングの乱れを生じるこ とのいましめとして , リラックスせよとか , 力を抜けとかの指摘を 受けるわけだが , すべての筋肉をリラックスすることは , さらにそ の上に誤りを重ねることになるのである。 リラックスすることは , 精神状態において言えても , 肉体的状態 においてではないことを , まず明確にしておくことを強調したい。 なぜリラックスするのではなくて , 適度の緊張が必要なのかという と , 何らかの一連の運動 , とくにそれが連鎖的反射運動であると き , 体の各部の筋肉は , 一定のプログラムにスムーズに入れるとき のみ , 望ましい結果が得られるのである。 一般に , 世に言う , 立合いの呼吸というのは , 今から行なおうと する動作に入る直前の , 心体の準備状態と言えようが , 精神集中が 大切なことと同時に , 肉体的な " 構え " がまた非常に重要であるこ とは , いろいろのスポーツを始め , 体を使う " 術 " あるいは“技”