脆弱環境沿岸図については、これまで汕流出 事故に備えた体制を整備してきましたが、 HNS 議 定書において有害液体物質も国家緊急時計画の 対象となったこと、また、埋立てなどの事業により 各地域の海岸の地形が変化していることから、今 後も沿岸環境脆弱図の拡充及び更新を図り、適 切に管理していく必要があります。また、国家緊急 時計画に基づき、野生生物の救護・影響評価を 的確に実施できる体制の整備が必要です。 【具体的施策】 〇汕に加えて有害液体物質流出事故にも対応し た沿岸環境脆弱図の拡充、沿岸における土地 利用の変化を踏まえた、生物対象群 ( 魚類・底 生生物 ) や生態区分 ( 干潟、藻場など ) を取り入 れた脆弱図の更新を行います。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 9 節 5. 1)] 〇水鳥救護研修センターにおいて、油汚染事故が 生じた場合など一時的に多数の油汚染された 水鳥などが発生した場合に対する準備や被害 が発生した地域で迅速な対応が可能となるよ う地方公共団体職員などを対象とした研修を 引き続き実施していきます。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 9 節 5. 1 ) ( 2 章 1 節 2. 6 ) ] 2.6 南極条約 【現状と課題】 「南極条約」 ( 1959 年 ( 昭和 34 年 ) 採択 ) は、南緯 60 度以南の地域における科学調査の自由と国際 協力、領土権主張の凍結などについて定めたも ので、わが国は 1960 年 ( 昭和 35 年 ) に締結しました。 南極地域は、ロスアザラシをはじめとする極めて 希少な固有種を含む生態系を有することより、本 条約及び「環境保護に関する南極条約議定書 ( 1991 年 ( 平成 3 年 ) 採択、 1998 ( 平成 10 年 ) 年発 ◆◆ 256 効、以下「議定書」という。 ) 」に定められた規定を 各締約国が遵守し、観測隊や観光などを行う者 を指導することなどにより、その環境及び生態系 の保護がなされています。わが国においては、 1998 年 ( 平成 10 年 ) に議定書の国内担保法である 南極地域の環境の保護に関する法律を制定し、 南極地域の環境保護に積極的に取り組んでいる ところです。 議定書などの規定は、毎年開催される南極条 約協議国会議において、南極地域固有の価値が 保全されることを念頭に置いて、適宜見直しが行 われています。 わが国としても、南極条約協議国会議などで決 められた国際約東を遵守するだけでなく、自らも 南極固有の価値を保全していくための情報発信 や提案を積極的に行い、他国や国際機関などと の連携・協力のもと、さらなる南極地域の環境の 保護に取り組んでいきます。 また、南極大陸氷床とその周辺地域に生きる 生物の多様性とその生態、生理、遺伝的特性は ほとんど未解明であることから、引き続き調査研 究が必要です。 【具体的施策】 〇南極地域環境保護モニタリング技術指針作成 法の指針を作成し、わが国観測隊による定期 的な環境モニタリングを実施します。 ( 環境省、 文部科学省 ) 〇わが国初の他国基地などの査察や、締約国相 互間による議定書遵守状況のチェックを行い、 南極条約協議国会議などにおいてその結果を 報告するとともに、必要に応じ査察を含む南極 条約体制のより良いあり方についての提案を行 う予定としています。 ( 外務省、環境省、文部科
施します。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 同節 1. 1 ) ] 〇川を活用した子どもたちの体験活動の充実を 図るため、国土交通省、文部科学省及び環境 省が連携し、地域の教育関係者、地方公共団 体、民間団体が協力し、子どもの遊びやすい 水辺の登録、利用促進など ( 「子どもの水辺」再 発見プロジェクト ) を行います。 ( 国土交通省 ) [ 再掲 ( 1 章 8 節 4. 1 ) ( 同節 3. 1)] 〇水田や水路での生きもの調査など水辺環境を 学びの場や遊びの場として活用し、自然とふれ あう機会を増やし、農林水産業や生物多様性 の認識を深める活動を推進するなど、生物多 様性の保全の取組を進めるために、地域にお ける普及活動を一層推進します。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 ( 1 章 6 節 1. 6 ) ( 同節 3. 1)] 5. 人材の育成 【施策の概要】 生物多様性の保全と持続可能な利用を実現す るうえで、生物多様性に関する専門的知見と技術 を有する人材、さらには生物多様性の重要性を広 く伝えることのできる人材が強く求められていま す。また、あらゆる分野で、企業活動などの経済 社会システムのグリーン化に取り組む人材 ( 環境 人材 ) の育成も不可欠です。さらに、こうした国内 における取組を海外に向け発信したり、生物多様 性条約などの国際的な場などへの反映、最近の 知見の収集、伝達などに取り組む人材の確保・育 成も重要です。一方で、このような人材育成は大 学や NGO など多様な主体との連携によって行うこ とで高い効果が得られると考えられ、既にその取 組が進みつつあります。このため、研修や多様な 主体の協働などを通じた人材育成を推進するとと もに、登録制度などにより人材の活用を図ります。 ◆◆ 246 5 コ人材の育成 【現状と課題】 生物多様性の保全と持続可能な利用に資する 人材を育成するには、個々人が、主体的な環境 保全活動などを通じて経験や実績を積むこともも ちろん必要ですが、高等教育機関などでの専門 的な学習や、現地・現場における実習・研修、国 際的な会合への出席、国際機関などでの実務経 験や、既に取組が進められつつある NGO など民 間との連携なども必要です。なお、「環境と人間」 「社会生態学」などの環境に関する授業科目を開 設している大学は 9 割を超えています。 【具体的施策】 〇自然保護思想の普及啓発を図るため、全国の 国立公園などでパークボランティアを養成しま す。 ( 環境省 ) 〇全国の自然学校などで研修を行い、自然学校 のインストラクターやエコツアーにおけるガイドな ど指導者やガイドとして活躍できる人材を育成 します。 ( 環境省 ) 〇海辺における体験活動や環境教育における指 導者を養成するためのセミナーとして、 18 歳以 上の男女を対象とする「海辺の達人養成講座 ( 海辺の自然体験活動指導者養成セミナー ) 」 を、地方公共団体や教育機関、 NPO などと連 携しながら全国の主要な地域での開催を支援 していきます。 ( 国土交通省 ) 〇環境保全活動に取り組む地域の方々や教員を 対象に、環境教育・環境学習指導者養成基礎 講座を開催します。 ( 文部科学省、環境省 ) [ 再 掲 ( 同節 4. 1 ) ] 〇都道府県教育委員会などの指導主事、教員な どを対象に学校における環境教育に関する指 導者の養成を目的とした研修を実施します。 ( 文
区などの利用上重要な地域について、山岳地域 の安全かっ適切な利用を推進するための登山 道整備 ( 標識整備、洗掘箇所の修復、植生復元 など ) 、国立公園の主要な入口における情報提 供施設の整備のほか、誰もが安全・快適に利用 できるよう集団施設地区などにおいて施設のユ ニバーサルデザイン化を推進します。また、優れ た自然環境を有する自然公園や文化財などを有 機的に結ぶ長距離自然歩道などについて整備 を実施します。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 2 節 2.4 ) ] 〇国立公園内で、自然生態系が消失・変容した箇 所において、湿原・干潟・藻場・自然性の高い 森林などの失われた自然環境の再生を実施し ます。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 2 節 2. 4 ) ] 〇国定公園などにおいては、地方が実施する地 域の特性を活かした自然とのふれあいの場の 整備や自然環境の保全・再生について、自然環 境整備交付金により支援します。 ( 環境省 ) [ 再 掲 ( 1 章 2 節 2. 4 ) ] 〇国立公園内で、利用者の集中など過剰利用に かくらん よる植生破壊や野生動物の生息環境の攪乱な どを防止するため、湿原における木道の敷設、 高山植物群落における立入防止柵の設置など 適切な施設整備を実施します。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 2 節 2. 3 ) ] [ 森林における取組 ] 〇体験活動の場となる森林の整備、関連施設の 整備、学校林の整備・活用など森林・林業体験 活動の受入体制の整備を実施します。 ( 農林水 産省 ) [ 再掲 ( 同節 3. 1)] [ 田園地域・里地里山における取組 ] 〇生物多様性の保全に対応した合意形成を図り つつ、生物多様性の保全に対応した基盤整備 を推進するとともに、自然とふれあえる空間づく りなど田園地域や里地里山の環境整備を推進 ◆◆ 242 します。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 ( 1 章 6 節 1. 6 刃 〇都市農業の振興を通じ、身近に生きものとふれ あえる空間づくりを推進します。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 ( 1 章 6 節 1. 6 ) ] [ 都市における取組 ] 〇体験学習施設、自然生態園、動植物の保護繁 殖施設など、環境学習の活動拠点施設を備える 都市緑化植物園や環境ふれあい公園などの都 市公園などの整備を推進します。 ( 国土交通省 ) 〇都市公園以外の緑地においても、市民緑地や 条例に基づいて設置・公開される緑地などを 積極的に活用し、環境教育・環境学習の場が 創出されるよう支援します。 ( 国土交通省 ) [ 漁村における取組 ] 〇国民が親しみやすい良好な漁村景観の保全・ 形成や歴史的・文化的遺産の継承を推進しま す。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 ( 1 章 9 節 2. 3 ) ] [ 河川における取組 ] 〇必要とされる治水上の安全性を確保しつつ、 生物の良好な生息・生育・繁殖環境及び多様 な河川景観を保全・創出するため、できるだけ 改変しないようにするとともに、改変する場合で も最低限の改変にとどめ、可能な限り自然の特 性やメカニズムを活用し、良好な自然環境の復 元が可能となるような多自然川づくりを行いま す。 ( 国土交通省 ) 〇河川などが子どもたちの身近な遊び場、教育 の場となるように河川管理者、地方公共団体、 教育関係者、市民団体などから構成される推 進協議会を設置し、地域と一体となって、水辺 に近づける河岸整備、瀬や淵・せせらぎの創出 など、水辺の整備など ( 水辺の楽校プロジェクト ) を実施します。 ( 国土交通省 ) 〇魅力と活力ある地域の形成や自然とのふれあ いの場の提供に向けて、地域と共同で地域及
〇経済的措置の中でも、環境に配慮した商品や 動などを行う特定公益増進法人に対する寄付 経済活動を対象とする認証制度など、民間によ 金の優遇措置や、自然公園や保安林などに指 るより自主的な取組が生物多様性の分野でも浸 定された区域内の土地に係る所得税・法人 透することを目指し、諸外国における事例も含 税・地方税の特例などの税制上の措置が講じ め、幅広く情報を収集することなどを通じて、民 られています。 ( 環境省、農林水産省 ) 間における取組の促進を図ります。 ( 環境省 ) [ 損失補償など ] 〇事業者をはじめ、国民、 NGO 、地方公共団体 〇自然公園法、都市緑地法をはじめ、生物多様 などの幅広い主体に対し、生物多様性民間参 性の保全に資する保護地域制度に関する法律 画ガイドラインを普及広報するとともに、事業者 では、規制により生じた損失を土地所有者など に対し活用促進などを働きかけます。また、わ に補償する制度が設けられています。また、自 が国の取組を国際的にアピールするため、同ガ 然公園など、特別緑地保全地区などでは民有 イドラインを海外に向けて発信します。 ( 環境省 ) 地の買い入れの制度があります。 ( 環境省、国 [ 再掲 ( 同節 1. 1)] 土交通省 ) 〇省エネルギー、低炭素化、生物多様性などの [ 国民からの寄付など ] 環境に配慮した優良な不動産が、投資家など 〇国民からの寄付金を用いて、自然保護のため を含む多様な関係者に認識・評価され、持続 に自然の豊かな民有地を買い入れて管理を行 的な投資が促進される市場の整備を行うため い、保全を図っていこうとするナショナル・トラス の方策について検討します。 ( 国土交通省 ) ト活動や、社団法人ゴルファーの緑化推進協 [ 補助金・交付金など ] 力会による緑化事業など、国民及び企業など事 〇希少野生動植物の保全や野生鳥獣の保護管 業者の善意の寄付が生物多様性保全により一 理、外来種対策、生態系ネットワークの要となる 層有効活用されるよう普及啓発の施策を講じま 重要地域の保全・再生など、地域が主体的に す。 ( 環境省 ) 行う生物多様性の保全・再生活動や総合的な 〇社団法人国土緑化推進機構や都道府県緑化 計画づくりの取組を支援します。 ( 環境省 ) 推進員会は「緑の募金による森林整備等の推 〇都市公園の整備、緑地の保全などに対する支援 進に関する法律」に基づき「緑の募金」運動を や、緑化対策事業などに対する補助や自然環境 行っており、その募金を活用して森林の整備、 整備交付金を活用した地域整備事業の促進を 緑化を推進します。 ( 農林水産省 ) 行います。 ( 国土交通省、農林水産省、環境省 ) 3. 自然とのふれあい [ 基金などによる助成 ] 【施策の概要】 〇「地球環境基金」、「河川整備基金 ( せせらぎ・ ふれあい基金 ) 」、「緑と水の森林基金」による民 自然観察会などのイベントを通じた自然にふれ 間団体の環境保全活動への支援を行います。 あう機会の確保を進めるとともに、特に子どもたち ( 環境省、国土交通省、農林水産省 ) が自然を好きになり、生物多様性に関する知的興 味や保全活動などの行動につながるよう、また人 [ 税制上の措置など ] 〇生物多様性の保全をはじめ自然環境の保全活 として豊かな成長につながるよう「五感で感じる」 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 3 節普及と実践 23 / ◆◆
[ 調査研究の推進 ] 実に努めます。さらに、こうした地域住民との連 〇安全かつ自然と共生する質の高い海岸の実現 携を図り、海岸愛護活動の実施や環境教育の のため、海岸に関する基礎的な情報の収集・整 充実に努めます。具体的には、エコ・コースト事 理を行うとともに、広域的な海岸の侵食に関す 業においては、今後、計画段階からの住民や る調査研究、生態系などの自然環境に配慮した NGO などの参画により、地域固有の環境課題 海岸保全施設の整備に関する調査研究などに に対応した、官民一体となった環境保全の取 ついて、関係する研究機関も含め推進します。 組を進めます。 ( 農林水産省、国土交通省 ) また、保全すべき海岸環境について関係者が共 〇大規模な漂着ごみは、海岸堤防・砂浜などの 通の認識を有するよう努めます。例えば、海岸 消波機能の低下、水門の防潮機能への障害な 省庁においては、海岸保全施設が生態系や環 ど、海岸保全施設の機能阻害の原因となること 境などの自然環境へ与える影響や効果を把握 から、災害関連緊急大規模漂着流木等処理対 するとともに、自然共生型海岸づくりを踏まえた 策事業により処理を進めます。 ( 農林水産省、国 生態系に配慮した海岸整備について調査検討 土交通省 ) などを行います。 ( 農林水産省、国土交通省 ) 〇漂着状況の調査と地域特性を踏まえた対策を 〇地球温暖化に伴う気象・海象の変化や長期的 検討するため、漂流・漂着ごみに係る国内削減 な海水面の上昇が懸念されており、海岸にとっ 方策モデル調査を実施します。漂着したごみの ても海岸侵食の進行やゼロメートル地帯の増 分類、漂着経路や発生源の推定を行うとともに、 加、高潮被害の激化、生物の生息域の変化な 地元のボランティアの参加方法など効果的・効 ど深刻な影響が生ずるおそれがあることから、 率的な清掃処理処分方法、当該海浜でごみが 潮位、波浪などについて監視を行うとともに、そ 漂着する状況をモニタリングし、漂着メカニズム れらの変化に対応するため所要の検討を進め の解析や効果的な清掃の頻度、方法などの検 ます。 ( 農林水産省、国土交通省 ) [ 再掲 ( 2 章 5 討を行います。また、各検討会を実施するほか、 節 3. 5 ) ( 2 章 6 節 1. 1)] NGO などとの意見交換を行い、関係者間の連 〇これらの各種施策を通じて、海岸における生物 携の推進及び効果的な対策検討に活用しま 多様性の確保に向けた取組を、今後とも引き続 す。さらに、海岸保全区域外に漂着したごみを き行います。 ( 農林水産省、国土交通省、環境省 ) 処理する市町村に対する支援を実施します。 ( 環境省 ) 生港湾環境 〇都道府県が設置する地域グリーンニューディー 【施策の概要】 ル基金への補助により、都道府県などが地域 港湾については、平成 17 年に交通政策審議会 計画に基づき実施する海岸漂着物の回収・処 港湾分科会環境部会において、今後の港湾環境 理や発生抑制対策などの取組に対する支援を 政策の基本的な方向についての答申「港湾行政 行います。 ( 環境省 ) のグリーン化」が取りまとめられました。この答申 〇国立公園内の海岸については、地域住民の協力 では、港湾の開発・利用と環境の保全・再生・創 のもと、グリーンワーカー事業による清掃作業、漂 出を車の両輪としてとらえ「港湾行政のグリーン 着ごみの除去作業などを実施します ( 環境省 ) ◆◆第 2 部第 1 章 国土空間的施策 第 9 節沿岸・海洋 195 ◆◆
潮位、波浪などについて監視を行うとともに、そ 〇知床世界自然遺産地域について、海洋環境や れらの変化に対応するため所要の検討を進め 高山植生などの変化など、気候変動が遺産地 域の生態系や生物多様性に与える影響を把握 ます。 ( 農林水産省、国土交通省 ) [ 再掲 ( 1 章 9 節 3. 1 ) ( 2 章 5 節 3. 5 ) ] するためのモニタリングを実施するとともに、工 〇農林水産省地球温暖化対策総合戦略 ( 平成 19 ゾシカの食害をはじめとした環境影響の軽減な 年 6 月策定 ) に基づき、今後避けることができな ど、気候変動の適応策を検討・実施します。 ( 環 い地球温暖化の農林水産業への影響に対応 境省、農林水産省 ) 〇一般市民のほか、調査研究機関、民間団体、 するため、暑さに強い品種の開発などの適応 策の開発・普及に取り組みます。 ( 農林水産省 ) 専門家などを含む多様な主体の参画により、地 〇地球温暖化の進行により深刻な影響を受ける 球温暖化の影響による野生生物の分布の変化 可能性がある乾燥地域において、砂漠化対処 をはじめ、身近な自然環境に関する観察情報 条約の先進締約国として、被影響国の開発途 の収集を呼びかける市民参加型調査を実施 し、わが国の生物多様性の保全の重要性につ 上国に対して ODA などを通じ、砂漠化対策の いて普及啓発を図るとともに、自然環境データ 支援を行います。 ( 外務省、環境省、農林水産 省 ) [ 再掲 ( 2 章 4 節 2. 7 ) ] の広範な収集体制の構築を図ります。 ( 環境省 ) 〇乾燥地域における自然資源を総合的に保全・ [ 再掲 ( 2 章 3 節 1. 1 ) ( 2 章 5 節 2. 1)] 管理するための手法を検討し、研究・調査など 〇温暖化などの環境変化に際して、生物が移 を実施します。また、それにより得られた科学 動・分散する経路を確保するため、生態系ネッ 的知見を条約締約国会議や補助機関会合など トワークの形成を推進します。 ( 環境省、国土交 において提供しながら、世界の砂漠化問題に 通省、農林水産省 ) 積極的に取り組みます。 ( 外務省、環境省、農林 〇 ICRI のサンゴ礁と気候変動に関する決議を踏 水産省 ) [ 再掲 ( 2 章 4 節 2. 7 ) ] まえ、気候変動に対するサンゴ礁の回復力を 〇自然生態系分野をはじめ、食料、水環境・水資 改善させるための研究や活動実施の支援な 源、防災・沿岸大都市、健康、国民生活・都市 ど、気候変動に対する適応策を検討します。 生活などの各分野における温暖化影響評価に ( 環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 9 節 1. 4 ) ] 〇地球温暖化に伴う、感染症を媒介する蚊など 関する知見を整理し、その情報をもとに、わが 国における適応の基本的な考え方、適応策の の人の健康や生活環境に有害な影響を及ほ 立案・実施にあたっての分野横断的な留意事 す生物の分布拡大について、適切なモニタリン 項、各主体の役割などを取りまとめた適応指針 グ・調査を進め、総合的な防除策について検 を策定し、関係省庁、地方公共団体などにお 討します。 ( 環境省 ) 〇地球温暖化に伴う気象・海象の変化や長期的 ける適応策の推進を支援します。 ( 環境省 ) な海水面の上昇が懸念されており、海岸にとっ ても海岸侵食の進行やゼロメートル地帯の増 加、高潮被害の激化、生物の生息域の変化な ど深刻な影響が生するおそれがあることから、 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 6 節地球温暖化に対する取組 28 / ◆◆
営公園においては、引き続き市民参加などによ り、その環境の整備・保全に取り組むとともに、 こうした貴重な自然環境や地域の歴史文化など についての体験学習プログラムを提供するな ど、地域社会における環境負荷の小さい持続 可能な循環型社会の形成に向けた国民の環 境配慮行動の拠点としての活用を推進します。 ( 国土交通省 ) [ 都市における取組 ] 〇都市公園などでは、地域の NPO や学校などと の連携を図りつつ、各地域の特徴ある豊かな 自然環境を活用し、生きものの生態や自然の仕 組みを体験しながら学ぶ環境教育プログラムを 多数実施しており、引き続き、環境学習ボラン ティアの育成や、新たなプログラムの提供など を推進していきます。 ( 国土交通省 ) 〇都市内の水循環や公共水域に排出する汚濁負 荷の管理など、下水道の重要な役割を広く情 報発信するため、下水道管理者と地域住民と の情報共有を進めるとともに、環境学習の中で、 多様な生態系の保全などにも資する下水道の 役割を明確に位置付け、子どもたちに下水道 の仕組みや流域における下水道の役割につい て正しく理解してもらうほか、処理場見学会の 開催など下水道施設を学びの場として積極的 に活用していきます。 ( 国土交通省 ) 〇都心部に位置する国民公園 ( 皇居外苑、新宿 御苑及び京都御苑 ) の広大な緑地は、環境教 育、環境学習にとって格好のフィールドで、いず れの公園も多くの歴史的遺構や文化財を有し ており、歴史的な学習の場としても適しているこ とから、自然を活かした環境学習や文化的な関 わりを踏まえた環境教育を推進していきます。 特に、「母と子の森」などを活用し、自然資源を 活かした新たな環境教育プログラムの提供を ◆◆ 240 推進していきます。 ( 環境省 ) [ 河川における取組 ] 〇川を活用した子どもたちの体験活動の充実を 図るため、国土交通省、文部科学省及び環境 省が連携し、地域の教育関係者、地方公共団 体、民間団体が協力し、子どもの遊びやすい 水辺の登録、利用促進など ( 「子どもの水辺」再 発見プロジェクト ) を行います。 ( 国土交通省 ) [ 再掲 ( 1 章 8 節 4. 1) ( 同節 4. 2 刃 〇子どもたちに対する環境教育の取組を推進す るため、川を活かした環境教育プログラムを作 成し、インターネットで公開するなど、その取組に 対して積極的な支援を行います。 ( 国土交通省 ) 〇河川に生息する水生生物を指標とした水質の 調査は、調査を通じて身近な自然に接すること により、環境問題への関心を高める良い機会と なることから、参加型の水生生物調査を引き続 き実施します。 ( 環境省、国土交通省 ) [ 再掲 ( 1 章 8 節 5. 4 ) ] [ 漁村における取組 ] 〇豊かな生物多様性をはじめとする魅力的な地 域資源を活用した漁村づくりを推進するととも に、体験学習や自然とのふれあいなど都市と漁 村の交流・定住の推進による国民の水産業・漁 村への理解と関心を深め、漁村の活性化を図 ります。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 ( 1 章 9 節 2. 3 ) ] [ 港湾における取組 ] 〇海辺の自然環境を活かした自然体験・環境教 育を行う「海辺の自然学校」の取組を地方公共 団体や NPO などと連携しながら全国各地で展 開します。 ( 国土交通省 ) [ 工コツーリズムの推進 ] 〇平成 20 年 4 月にエコツーリズム推進法が施行さ れ、同年 6 月にエコツーリズム推進基本方針が閣 議決定されたことを踏まえ、立ち上がりの 5 年間
いきます。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 2 章 1 節 3. 2 ) ] 湖沼水質保全計画を策定しており、下水道整備 〇水生生物の保全に係る水質環境基準に関する などの各種取組により汚濁負荷量は削減される 類型指定水域は平成 19 年 11 月で 4 水域ですが、 傾向にあります。しかしながら、印旛沼などの一 平成 23 年度末には 40 水域とすることを目標とし 部湖沼で水質の改善が見られるものの、多くの湖 ます。 ( 環境省 ) 沼において、水質環境基準が達成されておらす、 〇「都道府県が行う水域類型指定事務の処理基 下水処理施設の高度処理の導入を含め、湖沼水 準」の通知 ( 平成 18 年 6 月 ) により、都道府県が 質保全施策をさらに推進する必要があります。 指定する水域の類型指定に係る普及を図りま また、今日、湖沼においては、水量、水質のみ す。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 2 章 1 節 3. 2 ) ] ならす、水辺地の植生の減少、魚などの固有種の 〇毒性値が高いとされる物質について必要な科 減少などさまざまな環境上の問題が生じてきてい 学的知見のレビューを行い、有害性評価を進 ます。 めていきます。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 2 章 1 節 3. 2 ) ] 河川の水質浄化対策として、国土交通省では、 〇水生生物の保全に係る水質環境基準の設定に 「浄化用水導入」、「浚渫」、「直接浄化施設の整備」、 応じて、その維持・達成のために排水規制など 「流水保全水路の整備」を行っています。「浄化用 の必要な環境管理施策を適切に講じるととも 水導入」は、流量が少なく汚濁した河川や湖沼に に、公共用水域における水質環境基準の達成 対して、清浄な河川水や下水の高度処理水を導 状況について常時監視を行います。 ( 環境省 ) 入するものです。汚濁した水域の希釈によって直 [ 再掲 ( 2 章 1 節 3. 2 ) ] 接的な水質改善効果を得ることができるため有効 〇「今後の河川水質管理の指標について ( 案 ) 」 な水質浄化対策手法のひとっとなっており、千葉 ( 平成 21 年 3 月改訂 ) に基づき、河川における生 県手賀沼などで大きな効果を上げています。「浚 物の生息・生育・繁殖環境の指標である「豊か 渫」は、悪臭や栄養塩類の溶出による富栄養化の な生態系の確保」の視点から調査を実施して 原因になる底泥などを除去するもので、霞ヶ浦な いきます。 ( 国土交通省 ) どの閉鎖性水域や汚濁の進んだ都市河川などで 実施されています。「直接浄化」の手法としては、 2.1.2 水質浄化対策 水槽中にレキなどの接触材を充填し、その中に水 【現状と課題】 を通すことにより汚濁物質の沈殿や吸着、微生物 平成 20 年度の公共用水域水質の測定結果で による分解などの作用を利用する接触酸化法の は、公共用水域の BOD ( 生物化学的酸素要求量 ) ほか、水生植物による吸収や土壌への吸着など 又は COD ( 化学的酸素要求量 ) の環境基準達成 を利用する植生浄化や土壌浄化などが用いられ 率は、河川においては、 92.3 % と総体的には改善 ています。「流水保全水路」は水利用が高度化し が見られ、長期的に見ると全体に上昇傾向にあり ている河川において河道内に新たに低水路を設 置し、本川の水と流入する汚濁支川の水を分離、 ます。一方で、湖沼などの閉鎖性水域においては、 達成率が海域では 76.4 % 、湖沼では 53.0 % にとど 必要に応じて浄化し、下流河川などに合流させ まっており、依然として改善が進んでいない状況 ることにより、河川の清浄な流れを創出するもの にあります。湖沼法に基づき、指定湖沼において です。東京都及び千葉県の間を流れる江戸川な ◆◆第 2 部第 1 章 国土空間的施策 第 8 節河川・湿原など 1 刀◆◆
産省 ) [ 再掲 ( 1 章 5 節 1. 12 ) ] 【具体的施策】 〇保護林について、設定後の状況を把握し、現状 〇魚類、底生動物調査についてはおおむね 5 年、 に応じた保全・管理を推進するため、森林や植 それ以外についてはおおむね 10 年でこれらの 生の現況、野生動物の生息状況、入山者の利 調査を一巡できるよう河川水辺の国勢調査を 用状況などについて保護林の区分に応じたモ 実施し、全国的な河川環境に関する情報を収 ニタリング調査を進めていきます。 ( 農林水産省 ) 集するとともに、その全国的な傾向や地域的な 〇緑の回廊について、森林の状態や野生動植物 生物の生息・生育状況の特徴などを把握しま の生息・生育実態を把握するため、林分構造 す。 ( 国土交通省 ) 調査や野生生物の生息実態などモニタリング 〇河川環境 GIS の整備及び公開を引き続き進め 調査を進めていきます。 ( 農林水産省 ) ます。また、自然環境保全基礎調査など他の全 〇地理情報システムなどを活用した情報整備にあ 国的な調査データとの相互利用を進めます。 たり、自然環境保全基礎調査やモニタリングサ ( 国土交通省、環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 8 節 5. 1)] イト 1000 など他の全国レベルの調査と情報の 2.9 海域環境データベースの構築 林水産省、環境省 ) [ 再掲 ( 1 章 5 節 1. 12 ) ] 【現状と課題】 水質改善や生態系ネットワークに配慮した自然 環境の保全・再生・創出などを計画的かつ効率 2.8 河川環境に係る情報の整備 【現状と課題】 的に実施するためには、定常的な環境データの収 河川やダムにおける自然環境に関する基礎的な 集・蓄積・解析・公表が不可欠であるため、閉鎖 情報を把握するため、河川やダム湖に生息・生育 性海域ごとに国や港湾管理者などが有する環境 する生物の生息・生育状況などを定期的・継続的 データを統括的に収集・蓄積・解析・公表するデ に調べる「河川水辺の国勢調査」を実施していま ータベースを構築しています。 す。この調査は、これまで全国の 109 の一級水系 現在までに、三大湾、有明海・八代海などの 6 と 166 の二級水系で実施されており、調査内容は、 海域について、行政機関、研究所、民間などの多 魚類、底生動物、植物、鳥類、両生類・爬虫類・ 様な主体が環境データを登録し、共有することが 哺乳類、陸上昆虫類などの生息・生育状況、瀬や できる海域環境データベースを構築しました。今 淵、水際部などの河川状況などです。 後は、各データベースへのデータの蓄積が課題と また、河川水辺の国勢調査で得られた、生物 なっています。 の生息・生育状況などの河川環境情報を政策、 学術に活かしていくためには、地理情報と関連づ 【具体的施策】 けることや網羅的に取りまとめることが必要である 〇海域環境データベースへのデータの蓄積と内 ため、河川環境 GIS を整備しています。さらに、当 容の充実化を図ります。 ( 国土交通省 ) 該情報を多くの研究者や一般市民などに提供す ることが可能となるなど情報公開や環境学習など 2 コ 0 日本海洋データセンターの運営 【現状と課題】 への利用を図っています。 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 5 節情報整備・技術開発 2 / 9 ◆◆
などの取組事例における生きものの生息・生育 でしたが、その認知度を平成 23 年度末までに 30 % 以上とすることを目標とします。 ( 環境省 ) 状況、周辺環境、営農履歴などを紹介し、農業 〇「生物多様性」という言葉が新聞紙上で用いら 者に取組への理解と意欲を呼び起こすととも れた頻度は、平成 20 年度で合計 736 件 ( 朝日、 に、生物多様性保全を重視して生産された農 毎日、読売 ) ですが、平成 23 年度には 1 , 000 件ま 林水産物であることを表す「生きものマーク」の で増加させることを目標とします。 ( 環境省 ) 活用などを通じて、こうした取組への国民の理 〇地方公共団体が、地域の自然的社会的条件に 解を促進します。また、 COPIO を契機として、わ が国の農林水産業の生物多様性保全への貢 応じた率先行動、国の施策に準じた施策、そ 献を国内外に発信します。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 れぞれの地域における企業や国民などの取組 の指針作成、その他独自の施策を主体的に行 ( 1 章 4 節 1. 1 ) ( 1 章 6 節 1. 1)] 〇全国各地で開催される環境関係の展示会に参 えるよう「生物多様性地域戦略策定の手引き」 画し、参加・来場する事業者に対し生物多様 の周知に努めるとともに、ホームページなどを通 じて地域におけるさまざまな取組事例の紹介を 性に配慮した事業活動の推進を促すとともに、 来場する国民に対し生物多様性に配慮した消 行います。平成 22 年 3 月現在、生物多様性地域 戦略を策定している都道府県は 6 県 ( 13 % ) でし 費生活の重要性や企業活動に関する情報提供 を行い、生物多様性に配慮した事業活動の活 たが、 COPII ( 2012 年 ) までにすべての都道府 性化を推進します。 ( 環境省 ) 県 ( 100 % ) が策定に着手していることを目標とし 〇生物多様性の保全に配慮した農林水産業の普 ます。 ( 環境省 ) 及・啓発など、さまざまな主体の自主的な行動 〇都道府県、市町村が、流域圏などさまざまなレ を促すための仕組みを検討します。 ( 環境省、 ベルの空間単位を重視した地域戦略を効率的 に策定するための指針について検討します。 農林水産省 ) 〇各主体のパートナーシップによる取組を支援す ( 環境省 ) るため、地球環境パートナーシッププラザ及び 〇事業者をはじめ、国民、 NGO 、地方公共団体 などの幅広い主体に対し、生物多様性民間参 地方環境パートナーシッブオフィスを拠点として、 画ガイドラインを普及広報するとともに、事業者 情報の収集・提供、交流の場の提供などを実 施します。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 同節 4. 2 ) ] に対し活用促進などを働きかけます。また、わ 〇活動を行う民間団体と土地所有者、企業、地 が国の取組を国際的にアピールするため、同ガ イドラインを海外に向けて発信します。 ( 環境省 ) 方公共団体などの関係者に情報を的確に提供 し、関係者のニーズをマッチングするような仕組 [ 再掲 ( 同節 2. 1)] みなど、地域の主体の連携による生物多様性 〇「ビジネスと生物多様性イニシアテイプ」のような、 の保全の取組を促進する仕組みを検討します。 事業者が生物多様性に配慮して活動することを 宣言する仕組みなど、生物多様性に配慮した取 ( 環境省、農林水産省、国土交通省 ) 〇人間のさまざまな働きかけを通じて自然環境が 組に対する事業者のインセンテイプを高めるため の枠組みについて検討します。 ( 環境省 ) 維持・保全されてきた地域については、行政、 〇食料生産と生物多様性保全が両立する水稲作 地域住民、農林漁業者、 NGO 、土地所有者、 235 ◆◆ ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 3 節普及と実践