( d ) 生物の多様性が減少した地域の住民による修復のた めの作業の準備及び実施を支援すること。 ( e ) 生物資源の持続可能な利用のための方法の開発に ついて、自国の政府機関と民間部門との間の協力を 促進すること。 第 11 条奨励措置 締約国は、可能な限り、かっ、適当な場合には、生物 の多様性の構成要素の保全及び持続可能な利用を奨励 することとなるような経済的及び社会的に健全な措置をと る。 第 12 条研究及び訓練 締約国は、開発途上国の特別のニーズを考慮して、次 のことを行う。 ( a ) 生物の多様性及びその構成要素の特定、保全及び持 続可能な利用のための措置に関する科学的及び技術 的な教育訓練事業のための計画を作成し及び維持す ること並びに開発途上国の特定のニーズに対応する ためこのような教育及び訓練を支援すること。 ( b ) 特に科学上及び技術上の助言に関する補助機関の勧 告により締約国会議が行う決定に従い、特に開発途 上国における生物の多様性の保全及び持続可能な利 用に貢献する研究を促進し及び奨励すること。 ( c ) 第 16 条、第 18 条及び第 20 条の規定の趣旨に沿い、生 物資源の保全及び持続可能な利用のための方法の開 発について、生物の多様性の研究における科学の進 歩の利用を促進し及びそのような利用について協力 すること。 第 13 条公衆のための教育及び啓発 締約国は、次のことを行う。 ( a ) 生物の多様性の保全の重要性及びその保全に必要 な措置についての理解、各種の情報伝達手段による そのような理解の普及並びにこのような題材の教育事 業の計画への導入を促進し及び奨励すること。 ( b ) 適当な場合には、生物の多様性の保全及び持続可能 な利用に関する教育啓発事業の計画の作成に当た 第 14 条影響の評価及び悪影響の最小化 り、他国及び国際機関と協力すること。 ◆◆ 330 手続への公衆の参加を認めること。 適当な手続を導入し、かっ、適当な場合には、当該 締約国の事業計画案に対する環境影響評価を定める するため、そのような影響を及ばすおそれのある当該 ( a ) 生物の多様性への著しい悪影響を回避し又は最小に ことを行う。 1 締約国は、可能な限り、かっ、適当な場合には、次の ( b ) 生物の多様性に著しい悪影響を及ばすおそれのある 計画及び政策の環境への影響について十分な考慮 が払われることを確保するため、適当な措置を導入 すること。 ( c ) 適宜、二国間の、地域的な又は多数国間の取極を締 結することについて、これを促進することにより、自国 の管轄又は管理の下における活動であって、他国に おける又はいずれの国の管轄にも属さない区域にお ける生物の多様性に著しい悪影響を及ばすおそれの あるものに関し、相互主義の原則に基づき、通報、情 報の交換及び協議を行うことを促進すること。 (d) 自国の管轄又は管理の下で生ずる急迫した又は重大 な危険又は損害が他国の管轄の下にある区域乂はい すれの国の管轄にも属さない区域における生物の多 様性に及ぶ場合には、このような危険又は損害を受 ける可能性のある国に直ちに通報すること及びこの ような危険又は損害を防止し又は最小にするための 行動を開始すること。 ( e ) 生物の多様性に重大なかっ急迫した危険を及ばす活 動又は事象 ( 自然に発生したものであるかないかを問 わない。 ) に対し緊急に対応するための国内的な措置 を促進し及びそのような国内的な努力を補うための 国際協力 ( 適当であり、かっ、関連する国又は地域的 な経済統合のための機関の同意が得られる場合に は、共同の緊急時計画を作成するための国際協力を 含む。 ) を促進すること。 2 締約国会議は、今後実施される研究を基礎として、 生物の多様性の損害に対する責任及び救済 ( 原状回復 及び補償を含む。 ) についての問題を検討する。ただし、 当該責任が純粋に国内問題である場合を除く。 第 1 5 条遺伝資源の取得の機会 1 各国は、自国の天然資源に対して主権的権利を有す るものと認められ、遺伝資源の取得の機会につき定め る権限は、当該遺伝資源が存する国の政府に属し、そ の国の国内法令に従う。 2 締約国は、他の締約国が遺伝資源を環境上適正に利 用するために取得することを容易にするような条件を整 えるよう努力し、また、この条約の目的に反するような制 限を課さないよう努力する。 3 この条約の適用上、締約国が提供する遺伝資源でこ の条、次条及び第 19 条に規定するものは、当該遺伝資 源の原産国である締約国又はこの条約の規定に従って 当該遺伝資源を獲得した締約国が提供するものに限る。 4 取得の機会を提供する場合には、相互に合意する条 件で、かっ、この条の規定に従ってこれを提供する。 5 遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、当該 遺伝資源の提供国である締約国が別段の決定を行う場 合を除くほか、事前の情報に基づく当該締約国の同意 を必要とする。 6 締約国は、他の締約国が提供する遺伝資源を基礎と
1 . 1 環境影響評価の充実 す、影響そのものの回避、低減を優先して検討す 【現状と課題】 べきこととされています。 環境影響評価法に基づく環境影響評価手続を 加えて、ほばすべての都道府県・政令指定都市 実施した事業 ( 手続が終了した事業及び手続中 に条例による独自の環境影響評価制度があり、地 の事業 ) は、平成 21 年 3 月末現在で 179 件です。手 域の実情を踏まえて適切な環境配慮を行うことと 続終了後、各事業は順次、工事・供用段階に入 しています。 ることとなりますが、その際には環境影響評価書 また、個別の事業の計画・実施に枠組みを与え などに基づき環境保全への適切な配慮がなされ ることとなる計画 ( 上位計画 ) や政策の策定・実施 る必要があります。 に環境配慮を組み込むための戦略的環境アセスメ 今後、より良い環境影響評価を行っていくため ントの考え方を具体化するとともに、その仕組みの には、法の施行状況の検討などを行うとともに 確立に向けて検討を推進することとされています。 技術手法のレビューや、方法書手続の機能を十 分に発揮するための検討、環境影響評価に係る 1 . 環境影響評価 関係者間のコミュニケーションを進めるための手 【施策の概要】 法開発などを進めることが必要です。 各事業の実施にあたり、環境大臣が環境影響 【具体的施策】 評価書について必要に応じて意見を述べるととも 〇各事業の実施にあたり、環境影響評価手続が に、手続終了後、環境大臣意見を述べた事業、 適切かっ円滑に行われ、「生物多様性の確保及 事後調査を実施することとされている事業などに び自然環境の体系的保全」と「人と自然との豊 ついて、適切にフォローアップを行います。 かな触れ合い」の観点も踏まえた環境保全への また、環境影響評価法の施行状況や今後の環 適切な配慮がなされるよう、環境影響評価書に 境影響評価制度の在り方について、平成 22 年 2 月 ついて、必要に応じて意見を述べます。 ( 環境省 ) に「今後の環境影響評価制度の在り方について 〇環境影響評価手続が終了した後、環境大臣意 ( 中央環境審議会答申 ) 」が取りまとめられ、戦略 見を述べた事業、事後調査を実施することとさ 的環境アセスメントの手続の新設、風力発電施設 れている事業などについて、適切にフォローア の法対象事業への追加などについて積極的に措 ップを行います。 ( 環境省、関係府省 ) 置すべきとされました。本答申を踏まえ、法の見 〇「今後の環境影響評価制度の在り方について 直しを含め必要な措置を講じます。 ( 平成 22 年 2 月中央環境審議会答申 ) 」に基づ また、基本的事項の点検を実施し、制度の充 き、戦略的環境アセスメントの手続の新設、風 実を図っていきます。環境影響の予測・評価手法、 力発電施設の法対象事業への追加などについ 環境保全措置について継続的に検討を加え、環 て、法の見直しを含め必要な措置を講じます。 境影響評価に必要な情報提供、技術的支援を実 ( 環境省 ) 施するとともに、環境影響評価に係る関係者間の 〇基本的事項は常にその妥当性についての検討 コミュニケーション促進のための手法の検討を行 を行うことが必要であり、前回の点検 ( 平成 17 っていきます。 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 8 節環境影響評価など 293 ◆◆
定に従い、認められた危険性の評価の技術を考慮して、科学的に 締約国における改変された生物の利用に関する情報 適正な方法で実施する。そのような危険性の評価は、改変された ( c ) 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ばす可能性 生物が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ばす可能 のある悪影響 ( 人の健康に対する危険も考慮したもの ) 並びに 性のある悪影響 ( 人の健康に対する危険も考慮したもの ) を特定し 危険の管理のためにとり得る措置に関する入手可能な情報 及び評価するため、少なくとも、第 8 条の規定により提供される情報 ( d ) その他の関連情報 及びその他の入手可能な科学的な証拠に基づいて実施する。 ( e ) 追加的な情報のための連絡先 2 輸入締約国は、危険性の評価が第十条の規定に従って行われ 4 締約国は、その管轄下において 1 に規定する改変された生物の る決定のために実施されることを確保する。輸入締約国は、輸出 放出が生じたときは、生物の多様性の保全及び持続可能な利用 者に対し危険性の評価を実施することを要求することができる。 に及ほす著しい悪影響 ( 人の健康に対する危険も考慮したもの ) 3 危険性の評価の費用は、輸入締約国が要求する場合には、通 を最小にするため、そのような悪影響を受け又は受ける可能性の 告をした者が負担する。 ある国が適切な対応を決定し及び緊急措置を含む必要な行動を 開始することができるよう、これらの国と直ちに協議する。 第 16 条危険の管理 1 締約国は、条約第 8 条 ( g ) の規定を考慮して、この議定書の危 第 18 条取扱い、輸送、包装及び表示 険性の評価に関する規定によって特定された危険であって、改変 1 締約国は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ば された生物の利用、取扱い及び国境を越える移動に係るものを規 す悪影響 ( 人の健康に対する危険も考慮したもの ) を回避するため、 制し、管理し及び制御するための適当な制度、措置及び戦略を 関連する国際的な規則及び基準を考慮して、意図的な国境を越 定め及び維持する。 える移動の対象となる改変された生物であってこの議定書の対象 2 危険性の評価に基づく措置は、輸入締約国の領域内において、 とされるものが安全な状況の下で取り扱われ、包装され及び輸送 改変された生物が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に されることを義務付けるために必要な措置をとる。 及ばす悪影響 ( 人の健康に対する危険も考慮したもの ) を防止する 2 締約国は、次のことを義務付ける措置をとる。 ために必要な範囲内でとる。 ( a ) 食料若しくは飼料として直接利用し又は加工することを目的と 3 締約国は、改変された生物の意図的でない国境を越える移動 する改変された生物に添付する文書において、改変された生 を防止するため、改変された生物の最初の放出に先立って危険 物を「含む可能性がある」こと及び環境への意図的な導入を 性の評価を実施することを義務付ける措置等の適当な措置をと 目的とするものではないこと並びに追加的な情報のための連 る。 絡先を明確に表示すること。このため、この議定書の締約国 4 締約国は、 2 の規定の適用を妨げることなく、輸入されたものか国 の会合としての役割を果たす締約国会議は、この議定書の効 内で作成されたものかを問わず、改変された生物が意図された利 力発生の日から 2 年以内に、これらの改変された生物の識別 用に供される前にその生活環乂は世代時間に相応する適当な期 についての情報及び統一された識別記号を明記することを含 間観察されることを確保するよう努める。 む表示に関する詳細な要件について決定する。 5 締約国は、次のことのために協力する。 ( b ) 拡散防止措置の下での利用を目的とする改変された生物に ( a ) 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響 ( 人の健 添付する文書において、これらが改変された生物であることを 康に対する危険も考慮したもの ) を及ほす可能性のある改変 明確に表示し、並びに安全な取扱い、保管、輸送及び利用に された生物又はその具体的な形質を特定すること。 関する要件並びに追加的な情報のための連絡先にれらの改 (b) ( a ) の改変された生物の取扱い又はその具体的な形質に係 変された生物の仕向先である個人又は団体の氏名又は名称 る取扱いについて適当な措置をとること。 及び住所を含む。 ) を明記すること。 ( c ) 輸入締約国の環境への意図的な導入を目的とする改変され 第 17 条意図的でない国境を越える移動及び緊急措置 た生物及びこの議定書の対象とされるその他の改変された生 1 締約国は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に著しい 物に添付する文書において、これらが改変された生物である 悪影響 ( そのような影響を受け又は受ける可能性のある国におけ ことを明確に表示し、並びにその識別についての情報及び関 る人の健康に対する危険も考慮したもの ) を及ばすおそれのある 連する形質又は特性、安全な取扱い、保管、輸送及び利用に 改変された生物の意図的でない国境を越える移動につながり又 関する要件、追加的な情報のための連絡先並びに適当な場 はつながる可能性のある放出をもたらす事態が自国の管轄下にお 合には輸入者及び輸出者の氏名又は名称及び住所を明記 いて生じたことを知った場合には、これらの国、バイオセーフティに し、また、当該文書にこれらの改変された生物の移動が輸出 関する情報交換センター及び適当な場合には関連する国際機関 者に適用されるこの議定書の規定に従って行われるものであ に通報するための適当な措置をとる。その通報は、締約国がその る旨の宣言を含めること。 ような状況を知ったときは、できる限り速やかに行う。 3 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議 2 締約国は、この議定書が自国について効力を生ずる日までに、 は、他の関連する国際機関と協議して、表示、取扱い、包装及び この条の規定に基づく通報を受領するための自国の連絡先が明 輸送の方法に関する基準を作成する必要性及び態様について検 示されている関連事項をバイオセーフティに関する情報交換センタ 寸する。 ーに対して利用可能にする。 第 19 条国内の権限のある当局及び中央連絡先 3 1 の規定に基づく通報には、次の事項を含めるべきである。 ( a ) 改変された生物の推定される量及び関連する特性又は形質 1 締約国は、自国を代表して事務局との連絡について責任を負う 国内の一の中央連絡先を指定する。また、締約国は、この議定書 に関する入手可能な関連情報 ( b ) 放出の状況及びその推定される日並びに当該放出が生じた により必要とされる行政上の任務を遂行する責任を有し及びこれ 343 ◆◆
附属書Ⅲ危険性の評価 目的 1 この議定書に基づく危険性の評価は、改変された生物が潜在 的な受容環境において生物の多様性の保全及び持続可能な利 用に及ばす可能性のある悪影響 ( 人の健康に対する危険も考慮 したもの ) を特定し及び評価することを目的とする。 危険性の評価の利用 2 危険性の評価は、特に、権限のある当局が改変された生物に ついて情報に基づく意思決定を行うために用いる。 一般原則 3 危険性の評価は、科学的に適正なかっ透明性のある方法で実 施されるべきであり、関連する国際機関の専門的な助言及びこれ らの機関によって作成された指針を考慮することができる。 4 科学的な知識又は科学的な意見の一致がないことは、必すし も、特定の水準の危険があること、危険がないこと又は危険が許 容することのできるものであることを示すと解すべきではない。 5 改変された生物又はこれに係る産品 ( 改変された生物に由来す る加工された素材であって、現代のバイオテクノロジーの利用によ って得られる複製可能な遺伝素材の新たな組合せ ( 検出すること のできるもの ) を有するもの ) に係る危険は、改変されていない受容 体生物又は親生物が潜在的な受容環境において及ばす危険との 関係において考慮すべきである。 6 危険性の評価は、個々にその事例に応じて実施すべきである。 必要とされる情報の性質及び詳細の程度は、関係する改変され た生物、その予定される用途及び潜在的な受容環境に応じて事 例ごとに異なり得る。 方法 7 危険性の評価の過程では、一方において、特定の事項に関す る追加的な情報であって評価の過程で特定され及び要請される 可能性のあるものが必要となることがあり、他方において、その他 の事項についての情報が場合によっては関係のないものとなること がある。 8 危険性の評価は、その目的を達成するために適宜次の手順に より実施する。 ( a ) 潜在的な受容環境における生物の多様性に悪影響 ( 人の健 康に対する危険も考慮したもの ) を及ばす可能性のある改変 された生物に係る新たな遺伝子型及び表現型の特性の特定 ( b ) 潜在的な受容環境の改変された生物への曝露の程度及び種 類を考慮した上での ( a ) の悪影響が現実のものとなる可能性 についての評価 (c) ( a ) の悪影響が現実のものとなった場合の結果についての評 価 ( d ) 特定された悪影響が現実のものとなる可能性及び現実のもの となった場合の結果についての評価に基づく改変された生物 が及ばす全般的な危険についての評価 ( e ) 危険が許容することのできるものであるか否か又は管理するこ とのできるものであるか否かについての勧告であって、必要な 場合にはこれらの危険を管理するための戦略の特定を含むも の ( f ) 危険の水準が確実でない場合には、特定の関心事項に関す る追加的な情報を要請し又は受容環境において適当な危険 の管理の戦略を実施し若しくは改変された生物を監視するこ とによって対応することができる。 ◆◆ 348 考慮すべき点 9 危険性の評価は、事例に応じ、次のものの特性について関連す る技術的及び科学的な詳細を考慮する。 ( a ) 受容体生物又は親生物 受容体生物又は親生物の生物学的な特性 ( 分類学上の位 置、一般名称、起原、起原の中心及び遺伝的多様性の中心が 判明している場合にはそれらの中心に関する情報並びにこれら の生物が存続し又は繁殖する可能性のある生息地に関する説 明を含む。 ) (b) 供与体生物 供与体生物の分類学上の位置、一般名称、出所及び関連 する生物学的な特性 (c) べクター べクターの特性 ( 識別についての情報がある場合にはその情 報、出所乂は起原及び宿主域を含む。 ) ( d ) 導入された核酸又は改変の特性 導入された核酸の遺伝的な特性及び導入された核酸によっ て示される機能又は導入された改変の特性 ( e ) 改変された生物 改変された生物の識別についての情報及び改変された生物 の生物学的な特性と受容体生物又は親生物の生物学的な特 性との間の差異 ( f ) 改変された生物の検出及び識別 改変された生物を検出し及び識別する方法についての提案 並びにこれらの方法の特異性、感度及び信頼性 ( g ) 予定される用途に関する情報 改変された生物の予定される用途に関する情報 ( 受容体生 物又は親生物との比較において新たな又は変更された用途を 含む。 ) ( h ) 受容環境 位置並びに地理的な、気候の及び生態学的な特性に関する 情報 ( 潜在的な受容環境の生物の多様性及び起原の中心に 関する関連情報を含む。 )
( a ) 附属書 I に列記する区分を考慮して、生物の多様性 の構成要素であって、生物の多様性の保全及び持続 可能な利用のために重要なものを特定すること。 ( b ) 生物の多様性の構成要素であって、緊急な保全措置 を必要とするもの及び持続可能な利用に最大の可能 性を有するものに特別の考慮を払いつつ、標本抽出 その他の方法により、 ( a ) の規定に従って特定される 生物の多様性の構成要素を監視すること。 ( c ) 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に著しい悪 影響を及ばし又は及ばすおそれのある作用及び活動 の種類を特定し並びに標本抽出その他の方法により それらの影響を監視すること。 (d) ( a ) から ( c ) までの規定による特定及び監視の活動か ら得られる情報を何らかの仕組みによって維持し及 び整理すること。 第 8 条生息域内保全 締約国は、可能な限り、かっ、適当な場合には、次のこ とを行う。 ( a ) 保護地域又は生物の多様性を保全するために特別の 措置をとる必要がある地域に関する制度を確立する ( b ) 必要な場合には、保護地域又は生物の多様性を保全 するために特別の措置をとる必要がある地域の選定、 設定及び管理のための指針を作成すること。 ( c ) 生物の多様性の保全のために重要な生物資源の保全 及び持続可能な利用を確保するため、保護地域の内 外を問わす、当該生物資源について規制を行い又は 管理すること。 ( d ) 生態系及び自然の生息地の保護並びに存続可能な 種の個体群の自然の生息環境における維持を促進す ること。 ( e ) 保護地域における保護を補強するため、保護地域に 隣接する地域における開発が環境上適正かっ持続可 能なものとなることを促進すること。 ( f ) 特に、計画その他管理のための戦略の作成及び実施 を通じ、劣化した生態系を修復し及び復元し並びに 脅威にさらされている種の回復を促進すること。 ( g ) バイオテクノロジーにより改変された生物であって環 境上の悪影響 ( 生物の多様性の保全及び持続可能な 利用に対して及び得るもの ) を与えるおそれのあるも のの利用及び放出に係る危険について、人の健康に 対する危険も考慮して、これを規制し、管理し又は制 御するための手段を設定し又は維持すること。 ( h ) 生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を 防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅す ること。 ( i ) 現在の利用が生物の多様性の保全及びその構成要素 の持続可能な利用と両立するために必要な条件を整 えるよう努力すること。 (j) 自国の国内法令に従い、生物の多様性の保全及び持 続可能な利用に関連する伝統的な生活様式を有する 原住民の社会及び地域社会の知識、工夫及び慣行を 尊重し、保存し及び維持すること、そのような知識、工 夫及び慣行を有する者の承認及び参加を得てそれら の一層広い適用を促進すること並びにそれらの利用 がもたらす利益の衡平な配分を奨励すること。 (k ) 脅威にさらされている種及び個体群を保護するため に必要な法令その他の規制措置を定め又は維持す ること。 ( l) 前条の規定により生物の多様性に対し著しい悪影響 があると認められる場合には、関係する作用及び活動 の種類を規制し又は管理すること。 ( m ) ( a ) から ( l) までに規定する生息域内保全のための 財政的な支援その他の支援 ( 特に開発途上国に対 するもの ) を行うことについて協力すること。 第 9 条生息域外保全 締約国は、可能な限り、かっ、適当な場合には、主とし て生息域内における措置を補完するため、次のことを行 つ。 ( a ) 生物の多様性の構成要素の生息域外保全のための 措置をとること。この措置は、生物の多様性の構成要 素の原産国においてとることが望ましい。 ( b ) 植物、動物及び微生物の生息域外保全及び研究のた めの施設を設置し及び維持すること。その設置及び 維持は、遺伝資源の原産国において行うことが望まし ( c) 脅威にさらされている種を回復し及びその機能を修 復するため並びに当該種を適当な条件の下で自然の 生息地に再導入するための措置をとること。 ( d ) ( c ) の規定により生息域外における特別な暫定的措 置が必要とされる場合を除くほか、生態系及び生息 域内における種の個体群を脅かさないようにするた め、生息域外保全を目的とする自然の生息地からの 生物資源の採取を規制し及び管理すること。 (e) ( a ) から ( d ) までに規定する生息域外保全のための財 政的な支援その他の支援を行うことについて並びに 開発途上国における生息域外保全のための施設の 設置及び維持について協力すること。 第 10 条生物の多様性の構成要素の持続可能な利用 締約国は、可能な限り、かっ、適当な場合には、次のこ とを行う。 ( a ) 生物資源の保全及び持続可能な利用についての考慮 を自国の意思決定に組み入れること。 ( b ) 生物の多様性への悪影響を回避し乂は最小にするた め、生物資源の利用に関連する措置をとること。 ( c ) 保全又は持続可能な利用の要請と両立する伝統的な 文化的慣行に沿った生物資源の利用慣行を保護し及 び奨励すること。 329 ◆◆
り、分布域の拡大は地球温暖化に関連がある可 能性も指摘されています。 影響は陸域にとどまりません。例えばオホーツ ク海北西部では、海氷の形成に伴い、冷たくて塩 分の濃い重い海水が沈み込んで大陸棚から流れ 出し、その過程でアムール川から供給される鉄分 をオホーック海南部や北太平洋まで運びます。 の鉄分は、冬季に海表面が冷やされて起こる海 水循環によって再び表層へ供給されて植物プラン クトンの増殖を引き起こし、海洋生態系や陸域の 生態系を支えていることが知られています。温暖 化によって海氷の形成が減少すれば、関連する 海洋生態系の生物生産に広域的な影響を及ば すおそれも指摘されています。 2. 地球温暖化による生物多様性の 変化を通じた人間生活への影響 また、地球温暖化は生物多様性の変化を通じ て、人間生活や社会経済へも大きな影響を及ば すことが予測されています。 世界的には、潜在的な食料の生産可能量は、 地域の平均気温の約 1 ~ 3 ℃までの上昇幅では増 加すると予測されているものの、これを超えて上昇 すれば減少に転じると予測されています。また、気 候変動に伴って干ばつや熱波などの極端な気象 現象が増加し、穀物をはじめとする世界の食料に 大きな影響を与える可能性が指摘されています。 大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴い海水に 溶け込む二酸化炭素が増加することによる海水の 酸性化が進むにつれて、炭酸カルシウムを成分とす るサンゴの骨格やプランクトンの殻をつくる石灰化 の作用が起きにくくなり、さらに、ある程度以上酸性 化が進むと骨格や殻を作れなくなる種が出てくる 可能性が懸念されるといった影響が指摘されてい ます。海洋の生物多様性を支えるこれらの生物が 失われれば、海洋の生物多様性に深刻な影響を 与えることで、私たちが漁業を通じて利用できる漁 獲物の量にも大きな影響を与えるかもしれません。 また、人の健康への影響として、ネッタイシマカや ハマダラカ、ヒトスジシマカといった感染症を媒介す る蚊が、気温上昇に伴って個体数の増加が加速し たり、生息域が北上することが予測されています。 日本の食料については、気温上昇に伴うイネへ の影響が指摘されています。地球温暖化が進行 すると、北海道を除く地域において、収量や品質 が低下する影響がでると予測されている上、ニカ メイガ、ツマグロヨコバイなど害虫の発生量の増加、 発生地域・時期の変化が生じ、イネの生育に影響 を与える可能性が指摘されています。果樹でも、 ウンシュウミカンの栽培適地が北上することにより 現在の主生産地のほとんどは栽培適地でなくなる 可能性があるなど大きな影響を受けます。 漁業においても、漁獲対象種の生息域が北上 することにより、漁場や漁期が変化する可能性が 指摘されています。北海道沿岸のウニ類について 行った 1985 年 ( 昭和 60 年 ) 以降の漁獲量調査によ ると、道南で多く獲れていたキタムラサキウニが、 より北側の宗谷地方でも多く獲れるようになったこ とが確認されています。また、亜熱帯から熱帯の 沿岸域を生息地とするナルトビエイが、有明海や 瀬戸内海で大量に生息し、アサリやタイラギへの 漁業被害が報告されるようになるなど、漁業へ悪 影響を与える生物の北上も示唆されています。 また、わが国における人の健康への影響につ いては、温暖化により直ちに大規模な感染症の流 行が起こることは予測されていませんが、温暖化 がもたらす媒介生物の分布域の拡大などにより、 感染リスクは高まると考えられています。また、本 来わが国に生息しておらず、毒を持っセアカゴケ 33 ◆◆ ◆ 2 生 1 節物部 地様第 性 2 温の章 化現 物課 多題
〇資材や生物に付着して非意図的に侵入する昆 についてホームページなどを通じ公表し、法や 虫などの外来種による影響の防止を図るため、 遺伝子組換え生物等に関する普及啓発を図り これらの外来種に係る同定マニュアルを作成す ます。 ( 財務省、文部科学省、厚生労働省、農林 るなどの侵入防止対策を検討・実施します。 ( 環 水産省、経済産業省、環境省 ) 境省 ) 3.2 化学物質など非生物的要因 〇国内の他地域から持ち込まれる外来種などに 【現状と課題】 ついては、自然公園法や自然環境保全法の適 正な運用をはじめ、生物多様性保全上重要な 化学物質審査規制法では、従来の人の健康の 地域における防除対策、飼養動物の適正管理 保護の視点に加え、生態系への影響を考慮する などを進めます。 ( 環境省 ) 観点から動植物への毒性が新たに化学物質の審 〇カエルツボカビについては、その生態系への影 査項目とされています。また、平成 21 年 5 月の法改 正において、包括的な化学物質管理の実施によ 響などに係る調査を実施した結果、国内の野 外における両生類から多様な DNA 配列のカエ り、人や動植物への悪影響を防止するため、化 ルッポカビが確認された一方、野外においてカ 学物質の安全性評価に係る措置などを見直しま ェルツボカビによる両生類の死亡事例は確認 した。さらに、化学物質排出把握管理促進法に おいても、生態系への影響も考慮して対象物質を できませんでした。これらの結果も含め、非意 選定し、化学物質排出移動量登録 ( PRTR ) 制度 図的に侵入する外来種の情報について、ホー や化学物質等安全データシート ( MSDS ) 制度とい ムページなどを通じて公表し、その普及啓発を 図ります。 ( 環境省 ) った施策を講じており、平成 20 年 11 月には化学物 〇バラスト水管理条約の発効に向けた国際海事 質の有害性に関する新たな知見などを踏まえ、対 機関 ( IMO ) の議論に、引き続き積極的に参加 象物質の見直 . しが行われました。これらの法律 の的確な実施をはじめ、さまざまな化学物質によ します。 ( 国土交通省、環境省、外務省 ) [ 再掲 る生態系に対する影響の適切な調査・評価と管 ( 1 章 9 節 5. 1 ) ( 2 章 4 節 2. 9 ) ] 理を視野に入れた化学物質対策の推進が課題と [ 遺伝子組換え生物等 ] 〇カルタへナ法の適切な施行を通じ、遺伝子組換 なっています。 さらに、世界各地で観察された野生生物の生 え生物等の使用等による生物多様性への影響 殖異常について、化学物質の暴露との関連が指 を防止するなど生物多様性の確保を図ります。 ( 財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産 摘され、その発現メカニズムとして内分泌かく乱作 省、経済産業省、環境省 ) 用がクローズアップされました。化学物質の内分 〇最新の知見に基づいた適切な生物多様性影 泌かく乱作用を含め、生態系を視野においた化 響の評価手法の検討など、カルタへナ法の適正 学物質対策を進めるうえで、野生生物の異変を把 な運用に資する科学的知見などの集積に努め 握することが重要です。 ます。 ( 財務省、文部科学省、厚生労働省、農林 環境基本法に基づく水質環境基準においても、 水産省、経済産業省、環境省 ) 水生生物の保全に係る水質環境基準を設定して 〇カルタへナ法やその施行状況、科学的知見など おり、設定された水質環境基準については、地域 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 1 節野生生物の保護と管理 2 1 5 ◆◆
グモが関西地方を中心に、ハイイロゴケグモが沖 縄県などで確認されていますが、気温上昇により 分布が拡大する可能性があります。 生物多様性の観点から見た 地球温暖化の緩和と影響への適応 気候変動は既に顕在化し始めており、温室効果 ガスの排出量と自然の吸収量とのバランスがとれた としても、既に排出された温室効果ガスにより一定 期間にわたり、気候変動は生じると考えられます。 生物種や生態系は、過去においても気候変動など 環境の変化を経験しており、その変化に合わせさら に進化を遂げてきたと考えられています。しかし、現 在起きつつある温室効果ガスの人為的な増加によ る急速な気候変動は、生物種や生態系が変化に 対応できるスピードを超え、多くの種の絶滅を含む 大規模な影響を与えるものと予測されています 地球温暖化を緩和する、つまり、温室効果ガス の排出を削減することで温暖化による影響を小さ くし、こうした変化のスピードを遅らせることは、生 物種や生態系が対応するための時間的猶予を手 にすることができることから、生物多様性の保全 にとって重要です。 多くの炭素を樹木や土壌に固定している森林 の劣化や減少を防ぎ、泥炭や土壌に炭素を貯蔵 している湿原や草原を保全し、不耕起農法など の温室効果ガスの排出を削減する農業を実施す ることなどは、生物多様性の保全だけでなく、地 球温暖化の緩和という観点からも重要です。また、 人工林の間伐、里山林の管理、水辺における草 刈り、二次草原における採草などの生態系の適 切な管理によって生じる草木質系バイオマスにつ いては、ペレットストープでの利用、バイオエタノー ル化による燃料としての利用、草資源を利用した 発電など化石燃料の代替エネルギーとして利用 することにより、化石燃料由来の温室効果ガスの 排出抑制にもつながります。さらに、木材を住宅 用資材などとして利用することは、長期にわたって 炭素を貯蔵し続けることにもなります。こうした生 物多様性の保全と地球温暖化の防止の両面に役 立つ施策を総合的な観点から推進する必要があ ります。この際、温暖化対策が生物多様性に与え るプラスの影響とマイナスの影響を考慮し、短期 の効率性や一方の側面のみが重視されることの ないよう留意することが重要です。 地球温暖化の緩和策に加えて、地球温暖化に より予測される影響への対応も考えなければなり ません。例えば、島嶼、沿岸、亜高山帯・高山帯 など脆弱な生態系においては、温暖化の進行に より深刻な影響を受ける可能性があります。また、 農林水産業や都市部における生物多様性にも影 響を与える可能性があります。多様な種や生態 系が温暖化に合わせて生活史や分布域などを変 化させていくことには限界があります。このため、 温暖化による影響を少しでも軽減することにつな がる生物多様性保全施策を、温暖化への適応策 として検討することが重要であり、温暖化による影 響に対して、効果的・効率的な適応のあり方を検 討し、実行に移していくことが必要です。温暖化 による生態系への影響は完全には避けられない こと、適応策の実施にはコストを要することなどを 前提として、対処方法について、科学的知見に基 づき、社会的な合意形成を図ることが重要です。 このため、地球温暖化によるわが国の生物多 様性への影響を把握するための継続的なモニタ リングの実施と、そのための調査体制の確立が重 要です。それにより把握された影響や今後予測さ れる影響に対応できるよう、環境の変動に対する 順応性の高い、それぞれの地域に固有の健全な 35 ◆◆ ◆ 物課 多題
れた「沈黙の春」で指摘された DDT などによる鳥 類への影響や、わが国でも発生したトリプチルス ズによる貝類への影響などの事例があります。そ れ以外の化学物質でも、生態系への影響が、未 解明なものが数多く残されており、私たちの気付 かないうちに生態系に影響を与えているおそれが あります。そのため、野生生物の変化やその前兆 をとらえる努力を積極的に行うとともに、化学物質 による生態系への影響について適切にリスク評価 を行い、リスク管理を推進することが必要です。 2. 地球温暖化による危機 こうした 3 つの危機に加えて、地球規模で生じ る地球温暖化による影響を大きな課題として挙げ る必要があります。 気候変化の科学的知見について、人為起源に よる気候変化、影響、適応及び緩和策に関し、科 学的、技術的、社会経済的な見地から包括的な 評価を行う気候変動に関する政府間パネル ( IPCC ) の第 4 次評価報告書 ( 2007 ) は、気候シス テムに温暖化が起こっていると断定するとともに 20 世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上 昇のほとんどは、人間活動による温室効果ガス濃 度の増加によってもたらされた可能性が非常に高 いとしています。同報告書によると、 20 世紀後半の 北半球の平均気温は過去 1300 年間の内で最も高 温であった可能性が高いとされています。過去 100 年間 ( 1906 ~ 2005 ) に世界の平均気温が長期的に 0.74 ( 0.56 ~ 0.92 ) ℃上昇し、最近 50 年間の平均気 温の上昇の長期傾向は、過去 100 年のほば 2 倍の 速さとされています。また、今世紀末の地球の平均 気温の上昇は、環境の保全と経済の発展が地球 規模で両立すると仮定した社会においては、約 1.8 ( 1.1 ~ 2.9 ) ℃ですが、化石燃料に依存しつつ高い 経済成長を実現すると仮定した社会では、約 4.0 ( 2.4 ~ 6.4 ) ℃にもなると予測されています。 生物多様性は、気候変動に対して特に脆弱で あり、同報告書によると、全球平均気温の上昇が 1.5 ~ 2.5 ℃を超えた場合、これまでに評価対象と なった動植物種の約 20 ~ 30 % は絶滅リスクが高 まる可能性が高く、 4 ℃以上の上昇に達した場合 は、地球規模での重大な ( 40 % 以上の種の ) 絶滅 につながると予測されています。 環境の変化をそれぞれの生きものが許容でき ない場合、「その場所での進化」、「生息できる場 所への移動」のいずれかで対応ができなければ 「絶滅」することになります。地球温暖化が進行し た場合に、わが国の生物や生態系にどのような影 響が生じるかの予測は科学的知見の蓄積が十分 ではありませんが、島嶼、沿岸、亜高山・高山地 帯など環境の変化に対して弱い地域を中心に わが国の生物多様性に深刻な影響が生じること は避けることができないと考えられています。 このため、地球温暖化による生物多様性への 影響の把握に努めるとともに、生物多様性の観点 からも地球温暖化の緩和と影響への適応策を検 討していくことが必要です。 3 1 ◆◆ ◆ 節物部 多 の状 の題 造
◆◆◆第 6 節◆◆◆ 二次草原における採草などの豊かな生物多様性 を保全するために必要な生態系管理から生じる 地球温暖化に対する取組 草木質系バイオマスを化石燃料の代替エネルギ 【基本的考え方】 ーとして熱利用するなど地域の産業の活性化にも 地球温暖化の進行により、島嶼、沿岸、亜高山 つながるような利用を推進します。 帯・高山帯、乾燥地域など脆弱な生態系におい また、地球温暖化の生物多様性への影響に対 ては、温暖化の進行により深刻な影響を受ける可 する適応について、影響が各地で大きな問題とな 能性があり、多くの種で絶滅のリスクが高まると予 る以前の現段階から調査研究を進めていくことが 測されています。他方、大気中の二酸化炭素濃度 重要であり、温暖化の影響を含むモニタリングの の上昇に伴う海水の酸性化による影響も指摘さ 充実とともに、気候変動などの環境の変化への適 れています。サンゴ礁については、約 1 ~ 3 ℃の海 応力が高い生聾系ネットワークのあり方や健全な 面温度の上昇により、白化や広範囲な死滅が頻 生態系を保全・再生するうえでの留意点など生物 多様性の保全施策の立場からの適応方策につい 発すると予測されています。また、農林水産業や 都市部における生物多様性にも影響を与える可 ての検討を進めます。 能性がありますさらに、地球温暖化は生物多様 性の変化を通て、食料や人間生活や感染症を 1 . 1 生物多様性の観点から見た 地球温暖化の緩和と影響への適応 媒介する生物などにより、社会経済へも大きな影 【現状と課題】 響を及ばすことが予測されています。 このため、地球温暖化による生物多様性への 地球温暖化に関する動きとしては、 2005 年 ( 平 影響の把握に努め、その緩和と影響への適応策 成 17 年 ) に京都議定書が発効し、国内外で取組 を検討していく必要があります。 が進められているところです。また、 2007 年 ( 平成 19 年 ) の気候変動に関する政府間パネル ( IPCC ) 1 . 生物多様性の観点から見た 第 4 次評価報告書の中で、地球温暖化による生物 地球温暖化の緩和と影響への適応 システムに有意な変化が観測されており、今後の 【施策の概要】 温暖化の進行による生物多様性への影響も大き 多くの炭素を固定している森林、草原、泥炭湿 くなるということが示されるなど、地球温暖化に関 地などの湿原、土壌などの健全な生態系を保全 する科学的知見が集積されてきました。また、 することが、生態系からの温室効果ガスの放出を 2008 年 ( 平成 20 年 ) の COP9 では、気候変動枠組 抑制し、地球温暖化を緩和することにも貢献する 条約と生物多様性条約が相互に協力することや、 という観点も踏まえつつ、生物多様性の保全の施 気候変動枠組条約の活動に対して助言を行う専 策を推進します。また、温室効果ガスの吸収源と 門家グループを設置することが決定され、各国の しての森林が持つ機能は重要であり、生物多様 専門家による対策の検討が進められています。さ 性の保全機能とともに両機能を十分に発揮させ らに、 2009 年 ( 平成 21 年 ) の G8 ラクイラ・サミット るよう森林の整備・保全を進めます。さらに、人工 ( イタリア ) で支持された生物多様性に関する「シ 林の間伐、二次林の管理、水辺における草刈り、 ラクサ宣言」では、地域・国・世界レベルでの気 ◆◆ 284