図るとともに、森林認証の取得など現場での取 開を図ります。 ( 農林水産省 ) 組事例を紹介し、森林施業の実施に際しての 〇自然の中で緑を愛し、守り育てる心と健康で明 生物多様性保全への配慮を推進します。 ( 農林 るい心を持った人間に育てることを目的に結成 水産省 ) された全国各地の「緑の少年団」などの活動を 核とした次代を担う子どもたちに対する森林の 重要性の普及啓発を図ります ( 農林水産省 ) 〇巨樹・古木林や、里山林な言の市民に身近な 森林・樹木の適切な保全・管理のために必要 な技術の開発と普及啓発を推進します。 ( 農林 水産省 ) 1 .8 国民参加の森林づくりと森林の 多様な利用の推進 【現状と課題】 近年、森林づくりや環境教育に取り組む企業や NPO などの活動が活発化するとともに、森林を保 健・文化・教育活動に利用する国民が増加するな ど、森林に対する国民の理解や関心には一定の 1 .9 森林環境教育・森林との ぶれあいなどの充実 進展が見られています。地球温暖化防止や生物 【現状と課題】 多様性の保全をはじめとする多面的機能を有す る森林の整備・保全を社会全体で支えるという気 現代社会では、普段の生活の中で森林と関わ 運を醸成していくため、広範な国民による自発的 ったり木材の利用などについて体験し、学んだり な森林づくり活動を促進することが重要です。 する機会が少なくなってきています。このことから、 森林の中でのさまざまな体験活動などを通じて森 【具体的施策】 林が有する多面的機能や林業及び木材利用の意 〇企業や NPO などによる森林の整備・保全活動 義などについての理解と関心を深める森林環境 を促すため、活動内容の企画・提案、サポート 教育や森林とのふれあいの機会などを、子どもた 体制の整備、フィールドや技術などの各種情報 ちをはじめ国民に広く提供することが重要になっ 収集・提供など企業などが森林づくりに参加し ています。 やすい環境を整備します。 ( 農林水産省 ) 【具体的施策】 〇国有林野においては、企業が社会貢献活動の 一環として森林づくりを行う「法人の森林」の設 〇森林環境教育を推進するために必要な人材の育 定、自ら森林づくりを行いたいという国民の要望 成や普及啓発などを推進します ( 農林水産省 ) に応えるためフィールドを提供する「ふれあいの 〇国有林野においては、学校が行う体験活動の 森」の設定、地域の歴史的建造物や伝統文化 ためのフィールドを提供する「遊々の森」の設定 の継承に貢献するための国民参加による「木の や、森林管理局・署による森林・林業体験活動、 文化を支える森づくり」などを推進します。 ( 農林 情報提供や技術指導などを推進します。 ( 農林 水産省 ) 水産省 ) 〇森林の有する多面的機能や森林の現況などに 〇全国植樹祭、緑の募金などの国土緑化運動や 「みどりの日」 ( 5 月 4 日 ) 、「みどりの月間」 ( 4 月 15 日 関する情報を、各種メディアを通じて広く PR し、 ~ 5 月 14 日 ) を中心とした緑化活動の一層の展 国民の森林及び林業に対する理解と関心を深 ◆◆第 2 部第 1 章 国土空間的施策 第 5 節森林 139 ◆◆
24 年の 6 年間で 330 万 ha の間伐を実施し、さらに 多様な森林づくりを推進することを目標に、①木材 利用を通じ適切な森林整備を推進する緑豊かな 循環型社会の構築、②森林を支える活き活きとし た担い手・地域づくり、③都市住民や企業など幅 広い主体の森林づくりへの参画を総合的に進め ていくこととしています。 これらの森林整備を進めるにあたっては、森林 に生息・生育する動植物や生態系の保全につい て配慮した施業を推進します。 [ 森林の適切な保全・管理の推進 ] 森林の有する公益的機能の発揮が特に要請さ れる森林を保安林として指定し、立木の伐採や転 用を規制するとともに、荒廃地などにおける治山施 設の設置や機能の低下した森林の整備などを推 進します。また、森林病害虫や林野火災による森 林被害については、発生状況や地域の状況を踏 まえつつ、森林所有者、地域住民、関係機関など が連携・協力した的確かつ効率的な対策を推進 します。さらに、シカなどの野生鳥獣による森林被 害については、鳥獣保護管理施策との連携を図り つつ、被害や生息の状況を踏まえた広域的かっ 効果的な対策を推進するとともに、野生鳥獣との 共存にも配慮した対策を適切に推進します。 [ 山村の活性化 ] わが国の山村は過疎化や高齢化が進み、その 生活基盤は都市部と比較して依然として低位で あることから、森林の適切な整備・保全や生物多 様性の保全を行うためには、山村地域の活力を 維持することが必要です。 このため、新規就業者の確保、都市と山村の交 流・定住を促進し、山村の活性化を推進します。 ◆◆ 130 [ 国民参加の森林づくりと森林の多様な利用の 推進 ] 企業や NPO などが森林づくりに参加しやすい 環境の整備、森林環境教育の推進に必要な人材 の育成や普及啓発、体験活動のためのフィールド 提供や技術指導などにより、国民参加の森林づく りや森林環境教育などの森林の多様な利用を推 進します。 [ 林業・木材産業の発展 ] 生物多様性などの森林の有する多面的機能を 発揮させるためには、森林の適正な整備を進め る必要があり、そのためには、適切な生産活動を 通じて供給された木材が最終的に消費者に利用 され、その収益により森林所有者の負担したコス トを回収し、森林の整備及び保全に再投資され ることが重要です。 このため、素材生産・流通・加工の低コスト化や 品質・性能の確かな製品の安定供給体制の整備 を中心とする構造改革を進め、国産材の利用拡 大を軸とした林業・木材産業の発展を図ります。 [ 国有林野の管理経営の推進 ] せきりよう 国有林野は、奥地脊梁山脈や水源地域を中心 に里山まで全国各地に広く所在しています。これ らは、青森ヒバ、秋田スギ、木曽ヒノキの日本三大 美林や魚梁瀬スギ、北海道の工ゾマツやトドマッ からなる混交林、日本アルプスの山岳地帯、古くは 百年以上前から植栽され手入れが行われてきた 人工林、京都東山のアカマッ林や薪炭林といった 里山林、小笠原諸島固有の生態系を持っ森林、 九州綾地方の照葉樹林、そして世界自然遺産にも 登録されている屋久島や白神山地、知床半島のよ うな原生的な天然林など多様な森林で構成され ており、水源のかん養や山地災害の防止などの役
しかしながら、近年の林業採算性の悪化や山村 の活力低下に伴い、間伐などが行われず森林の公 益的機能の低下が懸念される状況となっています。 このような中で、森林の公益的機能の発揮を図るた めには、特に森林の 4 割を占める育成林について、 適切な間伐を実施したうえで広葉樹林化など多様 な森林への誘導を進めていく必要があります。 一方、わが国の森林資源は、戦後築き上げて きた育成林を中心に利用可能な状況になりつつ あり、国際的に木材需要が増大しているなか、適 切な間伐などの推進による整備・保全と国産材の 利用拡大を通じた森林・林業の再生を図っていく ことが重要です。 このため、関係省庁の連携を図りつつ、適切な 森林の整備・保全、国産材利用、担い手・地域づ くりなどを総合的に推進する「美しい森林づくり推 進国民運動」の取組を、幅広い主体の理解と協 力のもと、促進していくことが重要です。 【具体的施策】 〇所有者への施業提案などによる施業の集約 化、高性能林業機械と路網整備の組合せによ る低コスト作業システムの普及・定着、流通の 効率化や製材・加工の大規模化などを推進す ることによって、品質・性能の確かな木材製品 の安定供給に向けた木材の生産・流通体制の 構造改革を図ります。 ( 農林水産省、関係省庁 ) 〇住宅分野、エネルギー分野、公共工事などで の木材利用の推進を図ります。また、消費者ニ ーズに対応した新たな製品・技術の開発、消 費者重視の新たな市場の形成と拡大、木の良 さの普及などの取組を推進します。 ( 農林水産 省、関係省庁 ) 〇 U ・ J ・ I ターン者を含む森林整備・保全に意欲を 有する者に対する研修などを推進することによっ ◆◆ 136 て、将来にわたって地域の森林整備・保全を担 う人材の確保・育成を図ります。また、今後増加 する定年退職者などのふるさと回帰に向けた取 組と連携した森林整備・保全への担い手の確 保・育成を進めます。さらに、森林整備・保全の 推進と併せ、境界の整備など森林管理の適正 化を図ります。 ( 農林水産省、関係省庁 ) 〇優れた自然や文化、伝統などの山村特有の資 源を保全するとともに、これらを幅広く活用した 新たな産業の創出や魅力ある地域づくり、山村 地域の生活基盤の整備や定住者の受入体制 の整備などを推進することによって、山村地域 の活性化を図ります。 ( 農林水産省、関係省庁 ) 〇企業や NPO 、都市住民などによるボランタリーな 森林づくりを促進するとともに、森林環境教育や 森林セラピー、身近な里山林の保全・利用活動 などを通じた国民の森林に対する理解の醸成 などを図ることによって、森林整備・保全への幅 広い参画を進めます。 ( 農林水産省、関係省庁 ) 〇森林所有者による適切な森林経営を推進する とともに、私有林、公有林、国有林の各主体間 の連携を図り、地域ごとに効率的な森林経営 を推進します。 ( 農林水産省、関係省庁 ) 1 .4 森林の適切な保全・管理の推進 【現状と課題】 水源のかん養など、森林の持つ公益的機能の発 揮が特に要請される森林について、保安林の計画 的な指定を進めるとともに、立木の伐採や転用の規 制などの適切な運用により保全を図ってきました。 一方、集中豪雨などによる山地災害が依然とし て発生しているほか、多雨年と少雨年の降水量 差が拡大傾向にあることから地域的な洪水や渇 水も発生しやすい状況にあります。 また、松くい虫やナラ枯れといったまん延力の
地域空間施策 ◆◆第 5 節◆◆ 森林 1. 森林・・ 1.1 重視すべき機能区分に応じた 望ましい姿とその誘導の考え方・・ 1.2 多様な森林づくりの推進・・ 1.3 「美しい森林づくり推進国民運動」の 促進・・ 1.4 森林の適切な保全・管理の推進・・ 1.5 野生鳥獣による森林被害対策の推進・・ 137 1.6 担い手の確保・育成、都市と山村の交流・ ・・ 138 ・・ 133 ・・ 131 ・・ 129 ・・ 128 ・・ 138 ・・ 136 ・・ 135 土づくりや施肥、防除などの推進・・ 1.2 生物多様性保全をより重視した 農業生産の推進・・ 1.1 生物多様性保全をより重視した 1. 田園地域・里地里山・・ 田園地域・里地里山 ◆◆第 6 節◆◆ 1.13 世界の持続可能な森林経営の推進・・ 144 1.12 森林資源のモニタリングの推進・ 国有林野の管理経営の推進・・ 1.11 保護林や緑の回廊をはじめとする 林業・木材産業の発展・・ 1.10 国産材の利用拡大を基軸とした などの充実・ 1.9 森林環境教育・森林とのふれあい 多様な利用の推進・・ 1.8 国民参加の森林づくりと森林の 配慮・・ 1.7 施業現場における生物多様性への 定住の促進・・ ・・ 146 ・・ 146 ・・ 145 ・・ 147 ・・ 140 ・・ 139 ・・ 139 ・・ 144 ・・ 140 1.3 鳥獣被害を軽減するための里地里山の 生態系のネットワークの保全の推進・・・・ 149 1.4 水田や水路、ため池などの水と 整備・保全の推進・・ ・・ 148 1.5 農村環境の保全・利用と地域資源活用 1.7 草地の整備・保全・利用の推進・ 空間づくりの推進・ 1.6 希少な野生生物など自然とふれあえる による農業振興・・ ・・ 149 ・・ 151 ・・ 150 ◆◆ 8 1.8 里山林の整備・保全・利用活動の推進 152 ◆◆第 7 節◆◆ 都市 1.1 緑の基本計画・・ 総合的な計画の策定・・ 1. 緑地の保全・再生・創出・管理に係る ・・ 152 ・・ 153 ・・ 153 2. 緑地、水辺の保全・再生・創出・管理に係る 諸施策の推進・ 2.1 都市公園の整備など・ 22 道路整備における生物多様性の 保全への配慮・ 2.3 下水道事業における生物多様性の 保全への取組・・ 2.4 緑地保全地域、特別緑地保全地区・・・ 157 2.5 近郊緑地保全区域、 近郊緑地特別保全地区・・ 2.6 歴史的風土保存区域、 歴史的風土特別保存地区・・ 2.7 風致地区・・ 2.8 市民緑地・・ 2.9 生産緑地地区・・ 2.10 屋敷林、雑木林などの保全・ 2.11 民有地における緑の創出、 屋上緑化・壁面緑化の推進・・ 3. 緑の保全・再生・創出・管理に係る 普及啓発など・ 3.1 緑に関する普及啓発の推進・ 3.2 下水道における生物多様性の保全に 関する普及啓発・ ・・ 156 ・・ 154 ・・ 154 ・・ 155 ・・ 158 ・・ 158 ・・ 159 ・・ 159 ・・ 160 ・・ 160 ・・ 161 ・・ 161 ・・ 161 ・・ 162 ◆◆第 8 節◆◆ 河川・湿原など・ 1. 生物の生息・生育環境の保全・再生・・ 12 自然再生事業・ 1.1 多自然川づくり・・ ・・ 163 ・・ 164 ・・ 164 ・・ 165 1.3 河川・湿地などにおける連続性の確保・・ 166 1.4 タム整備などにあたっての環境配慮・・・・ 166 1.5 渓流・斜面などにおける土砂災害対策に 1.9 河川・湿原などにおける外来種対策・・・ 169 1.8 内水面における漁場の保全・・ 1.7 湿地の指定・保全・・ 土砂管理・・ 1.6 山地から海岸まで一貫した総合的な あたっての環境配慮・ ・・ 167 ・・ 169 ・・ 168 ・・ 167
【具体的施策】 の低下した森林の整備などを治山事業により 保安林などにおいて、治山施設の設置や機能 森林の持っ公益的機能の確保が特に必要な 保全、水源のかん養、生活環境の保全などの 〇「森林整備保全事業計画」に基づき、国土の らの適切な保全管理を行います。 ( 農林水産省 ) に指定されており、指定目的の達成のためこれ 割にあたる 679 万 ha ( 平成 20 年度末 ) が保安林 うえで重要な位置にあり、国有林野面積の約 9 〇国有林野は国土保全、水源かん養などを図る ( 農林水産省 ) 誘導するなど、多様な森林の整備を推進します。 を進めるための抜き伐りを行い針広混交林へ 工林において天然力を活用した広葉樹の導入 つ効率的な間伐の推進を図るほか、針葉樹人 〇多面的機能が十分に発揮されるよう、計画的か [ 国有林野の適切な森林の整備・保全の推進 ] 推進します。 ( 農林水産省 ) ◆◆ 142 域づくりに取り組むため、地方公共団体、 NPO 〇住民と鳥獣の棲み分け、共生を可能とする地 す。 ( 農林水産省 ) 広葉樹林など里山林の整備・保全を推進しま マッ林や九州で薪炭林として整備されていた 〇京都東山の世界文化遺産の背景林であるアカ クトを推進します。 ( 農林水産省 ) や自然保護団体などと協働したモデルプロジェ クト」など地域の自然環境保全のため地域住民 の照葉樹林に復元する「綾の照葉樹林プロジェ 分断するように存在する二次林や人工林をもと 葉樹林を厳正に保護するとともに、照葉樹林を や ) プロジェクト」や、日本最大級の原生的な照 続可能な地域社会づくりを目指す「赤谷 : あか 林野庁が協定を結び、生物多様性の復元と持 〇地元住民からなる地域協議会、自然保護団体、 などと連携し、奥地国有林における野生鳥獣 の生息状況・被害状況の調査、生息環境の整 備と鳥獣の個体数管理などの総合的な対策を 全国 8 か所のモデル地域で進めます。 ( 農林水 産省 ) [ 再掲 ( 同節 1. 5 ) ( 2 章 1 節 2. 3 、 2. 4 ) ] [ 国有林野の維持及び保全 ] 〇国有林野には原生的な森林生態系や貴重な動 植物が生息・生育する森林が多く残されており、 このような特別な保全・管理が必要な森林につ いて希少な野生動植物種の分布状況などを踏 まえ、よりきめ細やかな保護林の設定や区域の 見直しを推進します。保護林については、森林 生態系の保護や遺伝資源の保存、高山植物な ど植物群落の保護など設定の目的に応じて 7 っ に分類し、基本的には自然の推移にゆだねるな どの取扱いを進めます。また、設定後の保護林 の状況を的確に把握し、現状に応じた保全・管 理を推進するため、全国の保護林においてモニ タリング調査を実施します。さらに、保全・管理 の一環として、保護対象種の保護や生息・生育 地の維持・保全のため、その特性に応じて、植 生の回復やシカなどによる食害を防ぐための保 護柵の設置などを実施します。 ( 農林水産省 ) 〇保護林相互を連結してネットワークを形成する 「緑の回廊」を設定するなど、より広範囲で効果 的な森林生態系の保護に努めます。また、渓 流沿いや尾根筋の森林などの保護樹帯の充実 による、よりきめ細かな森林生態系ネットワーク の形成に努めます。緑の回廊においては、針 葉樹や広葉樹に偏らない樹種構成、林齢や樹 冠層の多様化を図ることとし、優れた林分の維 持を図りつつ人工林の中に自然に生えた広葉 樹を積極的に保残するなど、野生動植物の生 息・生育環境に配慮した施業を行うとともに 森林の状態と野生動植物の生息・生育実態の
1 - 8 里山林の整備・保全・利用活動の推進 【現状と課題】 里山林は、林業生産活動、薪炭材利用や落葉 の採取など地域住民の利用による適度な働きか けが加わることによって、その環境に適応したさま ざまな野生動植物が生息・生育するなど生物多 様性の保全上重要な場所であるとともに、その立 地などを活かした人と自然とのふれあい・教育の 場としての役割も期待されています。 しかし、近年の山村の過疎化・高齢化や生活 様式の変化に伴ってその利用が低下しており、多 様な主体による里山林への新たな働きかけを推 進していくことが必要です。 【具体的施策】 〇林業の振興を図る中で多様な生物の生息・生 育環境を保全します。 ( 農林水産省 ) 〇地域とボランティア、 NPO などとの連携による植 栽、下刈、間伐、里山林の多面的利用にむけ た整備活動などを通じた国民参加の森林づく り活動を推進します。 ( 農林水産省 ) 〇森林と親しみ生物多様性保全に対する認識と 理解を深め自然との共生のあり方を学ぶ取組 の推進、都市と山村との交流活動を行う森林 ボランティア団体などへの支援などにより、里山 林の整備活動の重要性への理解を広めます。 ( 農林水産省 ) ◆◆ 152 ◆◆◆第 7 節◆◆◆ 都市 【基本的考え方】 高密度な土地利用、高い環境負荷が集中する 都市においては、生物の生息・生育の場は水や 緑豊かな自然的環境を有する空間に限定されま す。これまで、都市公園の整備や特別緑地保全 地区などの指定などにより、その保全・創出を図 ってきましたが、民有の緑地は開発などに伴い 年々減少してきました。都市における生物多様性 の保全を図るうえでは、これらの空間について、よ り一層適切な保全・再生・創出・管理を行う必要 があります。 そのためには、生態系ネットワーク ( ェコロジカ ル・ネットワーク ) の形成の視点から、生物の生息・ 生育の核となる地区、生物の生息・生育環境を保 全・再生し分布域を拡大する地区、これらの地区 を結ぶ生物の移動空間となる回廊、これらが安定 して存続するための緩衝帯など、それぞれの空間 が有する役割について配慮する必要があります。 また、今後の人口減少・超高齢社会において は、都市機能の集約化や交通結節点を中心とし た利便化、エネルギー利用の効率化などによる集 約型都市構造 ( 工コ・コンパクトシティ ) を目指すこ とが望まれますが、その機をとらえ、都市の骨格 形成や分節化に資する緑地などについても、上記 の観点から、その保全・再生・創出を図る必要が あります。 生物多様性の保全に資する自然的環境の保 全・再生・創出・管理のため、水と緑の将来像を 位置付けた都市の総合的な計画である、都市計 画区域マスタープランや緑の基本計画などに即し て、都市の形態や自然的環境の様態に応じ、総 合的かっ体系的な施策の実施を推進します。
ており、利用拡大を通じた国内の森林・林業・木 まえた順応的な森林管理を推進し、以下のような 材産業の再生を図ることで間伐などの森林の適 施策を総合的に実施することが重要です。 切な整備・保全を進めていく必要があります。 1 . 森林 わが国の国土面積の 2 割、森林面積の 3 割を占 せきりよう める国有林野は、奥地脊梁山脈や水源地域に位 【施策の概要】 置し原生的な天然林から人工林まで多様な森林 森林は、生物多様性の保全を含む多面的機能 が広がり、生物多様性を保全し国民が豊かな暮 を有し、「緑の社会資本」として広く国民に恩恵を らしを送るために重要な役割を果たしています。 もたらしています。また、京都議定書の第一約束 国有林野の管理経営にあたっては、「国民の森林」 期間 ( 2008 ~ 2012 年 ( 平成 20 ~ 24 年 ) ) を迎え、森 として公益的機能の発揮を基本とし、世界自然遺 林整備などによる二酸化炭素吸収量の確保への 産に登録されるような原生的な天然生林や貴重な 期待が高まってきているほか、森林環境教育や森 野生動植物が生息・生育する森林については「保 林セラピーの場としての期待など、森林に対する 護林」や「緑の回廊」として貴重な自然環境の保 国民のニーズは多様化してきています。 全・管理を行うとともに、人工林については間伐や 針広混交林化などを推進するなど適切に森林を [ 多様な森林づくりの推進 ] 整備・保全していくことが必要です。あわせて、市 森林・林業基本法に基づき、平成 18 年 9 月に策 民団体などと協働・連携しながら地域の特色を活 定した新たな森林・林業基本計画においてば、重 かした森林づくりの取組や、森林とのふれあいの 視すべき機能に応じて森林を水源かん養機能又 場の提供なども重要な要素となってきています。 は山地災害防止機能を重視す引水土保全林」、 加えて、木材の多くを輸入しているわが国にお 生活環境保全機能又は保健文化機能を重視する いては、海外における森林の保全や持続可能な 「森林と人との共生林」、木材などの生産機能ご 森林経営の支援を通じて、地球規模での森林に 重視する「資源の循環利用林」に 3 区分し、その おける生物多様性保全に貢献することも重要です。 区分にふさわしい森林の整備及び保全を推進す 農林水産省においては、多様な主体の参画を ることとされ、今後急増していく高齢級の人工林 通じ、適切な森林の整備・保全を推進していくた について、生物多様性の保全を含めた森林の多 め、平成 20 年 12 月に外部有識者からなる「森林に 面的機能を持続的に発揮させつつ、多様化する おける生物多様性保全の推進方策検討会」を設 国民のニーズに応えるため、 100 年先を見通し、 置し、「森林における生物多様性の保全及び持続 間伐などの推進に加え針広混交林化や広葉樹林 可能な利用の推進方策」について検討を行いま 化、長伐期化などにより多様で健全な森林へ誘 導していく方針のもと、森林計画制度などを通じ した。今後は、平成 21 年 7 月に取りまとめられた本 検討会の成果を踏まえ、森林・林業関係者をはじ てさまざまな施策を推進しています。 めとする国民の生物多様性に対する理解の促進 また、平成 19 年 2 月に、幅広い国民の理解と協 を図るとともに、森林における生物多様性の保全 力のもと、官民一体となった運動として「美しい森 と持続可能な利用に向け、森林生態系のモニタ 林づくり推進国民運動」を展開していくことが関係 リングを行いつつ、森林生態系の不確実性を踏 閣僚の会合において決定され、平成 19 年 ~ 平成 ◆◆第 2 部第 1 章 国土空間的施策 第 5 節森林 129 ◆◆
すべき機能が併存する場合が多いことから、自然 的条件や地域のニーズなどに応じ、重視すべき 機能を考慮しつつ、より適切な森林の整備及び保 全を進める必要があります。 また、わが国の森林は、戦後の積極的な人工 林造成の結果、量的には充実してきており、今後 は、望ましい森林の姿に誘導するため、森林の現 況、立地条件、国民のニーズなどを踏まえつつ施 業方法を適切に選択し、計画的な森林の整備及 び保全を進めていく必要があります。 【具体的施策】 〇森林・林業基本計画において、「水土保全林」、 「森林と人との共生林」並びに「資源の循環利 用林」の 3 区分の望ましい森林の姿を明らかに するとともに、森林計画制度などを通じてそれ ぞれの望ましい森林の姿に向けた森林の整備 及び保全を推進します。 ( 農林水産省 ) 3 区分ごとの望ましい森林の姿は次のとおりです。 水土保全林の望ましい姿とは、樹木間の空間 が確保され適度な光が射し込むことにより下層植 生が生育し、落葉などの有機物が土壌に豊富に 供給されており、また、下層植生とともに樹木の根 が深く広く発達することにより土壌を保持する能力 に優れ、さらに、水を浸透させる土壌中のすき間 が十分に形成されることにより保水する能力に優 れた森林であり、必要に応じて土砂の流出及び 崩壊を防止する施設などの治山施設が整備され ている森林です。 森林と人との共生林の望ましい姿とは、原生的 な自然環境を構成し、貴重な動植物の生息・生 育に適している森林、街並み、史跡、名勝などと 一体となってうるおいのある自然景観や歴史的風 致を構成している森林、騒音や風などを防ぎ生活 にうるおいと安心を与える森林、身近な自然との ◆◆ 132 ふれあいの場として適切に管理され、住民などに 憩いと学びの場を提供している森林であり、必要 に応じて保健・文化・教育的活動に適した施設が 整備されている森林です。 資源の循環利用林の望ましい姿とは、樹木の 生育に適した土壌を有し、木材として利用するう えで良好な樹木により構成され、成長量が高く二 酸化炭素の固定能力が高い森林であって、一定 のまとまりがあり、林道などの基盤施設が適切に 整備されている森林です。 〇 3 区分の望ましい森林の姿への誘導への考え方 を明らかにするとともに、森林計画制度などを通 じて、それぞれの誘導への考え方に基づいた森 林の整備及び保全を推進します。 ( 農林水産省 ) 3 区分ごとの望ましい森林の姿への誘導の考 え方は次のとおりです。 水土保全林の望ましい姿への誘導の考え方に ついては、高齢級の森林への誘導や伐採に伴っ て発生する裸地の縮小及び分散を基本とするとと もに、施業方法別に次のような考え方に基づいて 適正な整備及び保全を図ります。 育成複層林施業では、土砂の流出又は崩壊の 防止に特に留意して施業すべき針葉樹単層林な どについては、既存の立木を上層木として高齢級 に移行させつつ抜き伐りを繰り返し、徐々に更新 を図るとともに、景観の保全など社会的ニーズや 立地条件に応じて天然力を活用した広葉樹の導 入による針広混交林化を図ることなどにより複層 状態の森林へ誘導して育成管理します。 水土保全機能の発揮のために継続的な育成管 理が必要な天然生林については、一部植栽や更 新補助、本数調整や保育などを行うことにより複 層状態の森林へ誘導します。 育成単層林施業では、緩傾斜地に位置し比較 的高い成長量を有する一定のまとまりのある針葉
割を果たすとともに、わが国の生物多様性の保全 あわせて、このような取組を幅広い市民の参画を を図るうえでも重要な位置を占めています。 得て行うことができるよう、「森林環境保全ふれあい また、近年では、地球温暖化防止や生物多様 センター」などを通じて地域の活動を支援します。 性の保全など森林に対する国民の期待が多様化 [ 世界の持続可能な森林経営の推進 ] しており、国民共通の財産である「国民の森林」 として公益的機能の発揮を基本とし、国民が豊か 近年の地球規模での環境問題への関心の高ま な暮らしを送ることができるよう、国民の多様な意 りから、「持続可能な森林経営」の推進が重要な 見を聴いて国有林野の管理経営を行っています。 課題として認識されるようになり、国際的なプロセス さらに、平成 20 年 12 月に「国有林野の管理経営 を通じて策定された「持続可能な森林経営」の「基 に関する基本計画」を改定し、生物多様性の保全 準・指標」を用いて世界各国が自国の森林の状況 を管理経営の基本方針において明確に位置付け をモニタリングし評価する取組が行われています。 ました。 このようなことから、わが国が実施する森林資 具体的な管理経営にあたっては、重点的に発 源調査において、非商業樹種や生物多様性に関 揮させるべき機能に応じて個々の国有林野を区 するデータについても十分に把握する必要があり、 分し森林の取扱などを定め、これを踏まえて森林 木材生産のみならず、生物の多様性、炭素循環、 の整備・保全を推進するとともに、流域を単位とし 流域の水資源の保全など、国際的な「基準・指標」 て民有林との連携を図りつつ多様な課題やニ に係るデータを統一した手法により収集・分析す ズに対応するため、関係者間の合意形成や上下 る森林資源のモニタリングを推進します。 流の連携強化に向けた取組などを行います。 また、世界の持続可能な森林経営の推進のた 特に、森林生態系の保護や遺伝資源の保存、 め、 UNFF などの国際対話への参画、二国間・多 植物群落の保護などのため特に貴重な森林につ 国間支援などを推進し、地球規模での生物多様 いては「保護林」を設定し、モニタリングなどを行 性保全に寄与します。 いつつ維持及び保全を図ります。あわせて、種や 遺伝的な多様性を保全するため、保護林相互を . 1 重視すべき機能区分に応じた望ましい 姿とその誘導の考え方 連結する「緑の回廊」の設定をはじめ、渓流沿い や尾根筋の森林などの保護樹帯の充実による、 【現状と課題】 よりきめ細かな森林生態系ネットワークの形成に すべての森林は、森林の有する多面的機能の 努めるとともに、野生動植物の生息・生育環境に 発揮を通じて、さまざまな面で国民生活の維持・ 配慮した施業を推進します。 向上に寄与しています。したがって、それぞれの あかや また、「赤谷プロジェクト」や「綾の照葉樹林プ 森林について、要請されるさまざまな機能が高度 ロジェクト」など地域の特色を活かした森林づくり に発揮されるよう、その整備及び保全を進めなけ を地域と協働して行う取組を展開します。さらに、 ればなりません。 国民参加の森林づくりや森林環境教育のための しかしながら、狭小かっ急峻な国土に多くの人 フィールド提供などにより、森林の多様な利用を 口を擁し、高度な経済・文化活動が展開されてい 推進する取組を行います。 るわが国においては、個々の森林に高度に発揮 1 3 1 ◆◆ ◆◆第 2 部第 1 章 国土空間的施策 第 5 節森林
なかったこと、間伐の一層の推進や育成複層林施 業などに対応できる効率的な作業システムの導 入・普及や路網の整備が不十分であり、路網の配 置も効率的な作業システムに完全に対応したもの ではなかったことなどが考えられます。 今後、わが国の森林資源は高齢級の人工林が 増加すると見込まれ、森林に対する国民のニーズ を踏まえた多様な森林整備を推進していくための 分岐点となる時期を迎えていることから、森林の 有する多面的機能を持続的に発揮できるよう、健 全な森林の育成のための間伐はもとより、立地条 件や社会的ニーズに応じた多様な森林整備を効 率的かつ効果的に推進する必要があります。 また、このような多様な森林づくりを進めていく ためには、間伐などの森林整備を行うことはもとよ り、木で創られた製品を利用したりするなど、都 市住民も含め幅広く国民が、それぞれの状況に 応じて森林づくりに関わっていく必要があります。 【具体的施策】 [ 広葉樹林化、長伐期化などによる多様な森林 への誘導 ] 〇広葉樹林化・針広混交林化、長伐期化などに よる多様な森林に向けた整備を推進するため、 森林所有者などが施業を選択する際の目安と なるよう、施業方法の提示や効率的な施業技 術の体系的な普及、多様な森林整備への取組 を加速するためのコンセンサスの醸成や対象適 地の選定などの取組の推進とその全国的な普 及を図るとともに、帯状又は群状の伐採などの 効率的な施業を推進します。また、森林所有者 の負担の軽減を図るため、造林・保育の効率 化・低コスト化を推進するための技術の普及及 び定着を図ります。 ( 農林水産省 ) [ 施業の効率的かつ効果的な実施 ] ◆◆ 134 〇林道などの路網と高性能林業機械の一体的な 組合せによる低コスト・高効率の作業システム の整備、普及及び定着を推進します。 ( 農林水 産省 ) 〇路網整備については、自然条件や導入する作業 システムに応じて、林道、作業道及び作業路の適 切な組合せによる整備を推進します。特に、林道 については、計画、設計、施工すべての段階での 周囲の環境との調和を図ります。 ( 農林水産省 ) [ 森林整備の適切な実施に必要な地域における 活動の確保 ] 〇計画的かつ一体的な森林施業が適時適切に 行われるよう、林業事業体などによる森林施業 の集約化に必要となる「森林情報の収集活動」、 森林所有者などによる森林施業の実施に必要 となる「施業実施区域の明確化作業」などの地 域における活動を確保するための支援措置を 実施します。 ( 農林水産省 ) [ 公的な関与による森林整備の促進 ] 〇国民の安全・安心を確保するため、森林所有 者などが自助努力を行っても適正な整備が進 み難い森林については、市町村及び都道府県 が、森林組合などの林業事業体による施業な どの集約化や間伐の効果的な実施を促進しま す。これによっても適時かっ適正な整備が進み 難い森林のうち、公益的機能の発揮に対する 要請が高く、その適正な整備が必要な場合に は、治山事業などにより必要な整備を行うこと とし、その際、立地条件を踏まえて針広混交林 化などを推進します。 ( 農林水産省 ) 〇植栽が行われない伐採跡地については、その新 たな発生を抑制しつつ、早期に適切な更新を確 保するための対策を推進します。 ( 農林水産省 ) [ 研究・技術開発及び普及 ] 〇将来の森林、林業及び木材産業の発展の可能