活用 - みる会図書館


検索対象: 生物多様性国家戦略2010
290件見つかりました。

1. 生物多様性国家戦略2010

や自然界における適正な物質循環の確保に向 このため、里地里山を持続的に管理し、利用す け、短期的な資源の生産性や生産効率のみを重 る新たな枠組みの構築が必要になっており、低炭 視するだけでなく、生物多様性に与える影響に十 素社会の実現に向けたバイオマス資源の生産の 分配慮しながら、天然資源のうち化石燃料や鉱 場としての貢献も期待されています。 物資源などの自然界での再生が不可能な資源の 資源採取などの社会経済活動に伴い、目的の 代替材料開発、効率的な使用、使用量の増大の 資源以外の物質が採取・採掘されるか又は廃棄 抑制を進めます。また、自然界から新たに採取す 物などとして排出されています。自然界からの新 る資源については、製品をできる限り長期間社会 たな資源の採取を少なくし、資源の循環利用を で使用することを推進するとともに、使用済みとな 推進していくことは、この「隠れたフロー・ TM R ったものでも循環資源としての利用やエネルギー (TotaI MateriaI Requirement 、関与物質総量 ) 」 回収を徹底することにより、廃棄物の最終処分量 を減少させることにつながります。 の抑制を図ります。 例えば、電子部品に使われるレアメタルなどの また、自然界での再生可能な資源の活用にあ 金属の採掘に伴い、森林伐採、野生生物の生息 たっては、短期的な資源の生産性や生産効率の 地の減少、水質汚濁、塩害、住民の健康被害な みを重視するだけでなく、生物多様性に与える影 どが報告されています。一方、国内の電子部品な 響に十分配慮しながら、持続可能な利用を推進 ど、いわゆる「都市鉱山」に蓄積された金属の世 することが必要です。このような観点も踏まえ、バ 界の埋蔵量に占める割合は、金属により異なるも イオマス・ニッポン総合戦略 ( 平成 18 年 3 月閣議決 のの、数 % から数十 % にも及びます。このため、 定 ) やバイオマス活用推進基本法 ( 平成 21 年法律 使用済み製品からレアメタルなどの金属を回収し 第 52 号 ) に基づくバイオマスなどの利活用の促進 利用する取組は、持続的な自然環境及び生活環 や森林の適切な整備・保全、木材利用の推進を 境の保全のためにも必要です。 図ります。さらに、化学肥料や化学合成農薬の使 また、ごみは、最終的には最終処分場に埋め 用低減などによる環境保全型農業や漁場環境の 立てることになります。最終処分場の建設方法に 改善に資する持続的な養殖業など環境保全を重 は、山間や平地での陸上埋立て、干潟や臨海部 視した農林水産業を推進するとともに、都市部に での海上埋立てなどがありますが、いかなる方法 でも、環境への負荷をゼロにすることはできません。 おける雨水・再生水、農山村における稲わら、里 地里山などの利用・管理によって生じる草木質資 このため、廃棄物の最終処分量を減少させること 源など未利用自然資源の利用を促進します。 で既存の最終処分場の残余年数を増加させ、可 能な限りの最終処分場の新規建設を抑制するこ 【現状と課題】 とが求められています。 かっては持続可能な資源の生産の場として利 【具体的施策】 用された里地里山では、農業形態や生活様式の 著しい変化、過疎化や高齢化の進行により、利用 〇里地里山の新たな利活用の方策について、環 境教育やエコツーリズムの場の提供、間伐材や の減少や管理の担い手不足が生じ、里地里山に 特有の生物の生息・生育環境も悪化しています。 ススキなどのバイオマス利用など具体的な地域 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 7 節循環型社会、低炭素社会 の形成に向けた取組 289 ◆◆

2. 生物多様性国家戦略2010

帰を目指す新潟県佐渡島で行われているように、 希少な動物の餌となる生きものだけでなく、多様 な野生生物をはぐくむ空間づくりを地域の人々と 協力しながら行います。 在来の野生生物に大きな影響を与えている外 来種については、防除などの対策を進めていくこ とが必要です。アライグマ、オオクチバスなど広範 囲に分布を拡大し、影響を及ばしている種につ いて、より効果的な防除の方法を開発・普及する ことを通じて多くの地域での対策につなげます。 奄美大島では、人が持ち込んだジャワマングース によりアマミノクロウサギなどの希少生物が影響を 受けていますが、防除のための対策を継続的に 進めることで効果があがってきており、ジャワマン グース根絶に向けた努力をさらに続けます。また、 島嶼部において固有の野生生物に絶滅のおそれ が生じないよう島外からの外来種の持ち込みを 防ぐ対策など外来種の国内での移動への対策に ついて検討を進めます。さらに、資材や生物に付 着して意図せすに持ち込まれる外来種による影 響の防止対策について検討を進めます。 【自然共生社会、循環型社会、低炭素社会の統 合的な取組の推進】 生物多様性の恵みは、太陽エネルギーを源とし た光合成による有機物生産、食物連鎖、分解、個 体の移動などの生物自らの働きと地球の大気、水、 土壌などの間を物質が循環することによって支え られています。また、森林や草原などに炭素が蓄 積されることで地球温暖化が緩和され、さらに れらのバイオマス資源を適切に活用することによ って、化石燃料の使用の抑制につながります。 生命と物質の循環を健全な状態で維持し、地 球温暖化を緩和するためには、生物多様性の保 全と持続可能な利用、天然資源の消費抑制と環 ◆◆ 86 境負荷の低減、地球温暖化対策の相互の関係を とらえて、自然共生社会、循環型社会、低炭素社 会の構築に向けて統合的な取組を進めていくこ とが重要です。 資源採取に伴う生息・生育環境の損失を防止 し、自然界における適正な物質循環を確保するた め、自然界での再生が不可能な化石燃料や鉱物 資源の使用量、廃棄物の最終処分量を抑制し、自 然界での再生が可能であるバイオマスなどの持続 可能な利活用を推進するといった取組を進めます。 化石燃料や鉱物資源の使用量、廃棄物の最終 処分量の抑制のためには、自然界から新たに採 取する資源を用いる製品についてはできる限り長 期間使用することを推進するとともに、使用済みと なったものでも循環資源としての利用やエネルギ 一回収を徹底します。 また、バイオマスの利活用の促進については、 森林の適切な整備・保全による木材・木質バイオ マス資源の利用の推進を図るほか、都市部にお ける雨水や農山村における稲わら、里地里山など の適切な管理によって生じる草木質資源など未 利用自然資源の利用を進めます。 3. 森・里・川・海のつながりを確保する 森林と海は河川でつながっており、土砂の移動 により干潟・砂浜などが形成されるほか、森林か ら供給される栄養塩類は川や海の魚をはじめと する生きものをはぐくみ、豊かな里海を創ります。 また、海の栄養塩類はサケなどの遡上によって森 林に運ばれてきます。里においては、河川や湿原 のほか、水田、ため池や水路などの人が築いてき た水系も含めてネットワークが形成されており、魚 類などが移動などに利用しています。こうした生き ものの生息の基盤となっている場所のつながりを 確保するため、将来にわたり保全すべき自然環境

3. 生物多様性国家戦略2010

基盤機構に約 5.3 万株の微生物及び 5.6 万個の により、農地を農地として維持し、生物多様性の 微生物由来の DNA クローンを保存し、研究開 保全に貢献します。さらに、未利用であったり、廃 発や産業利用のため提供を行っています。 ( 経 棄物として出されるバイオマスを活用することは、 済産業省 ) 生物資源の有効利用に資するものです。一方、海 〇微生物資源の保存については、独立行政法人 外からのバイオ燃料の利用にあたっては、森林破 農業生物資源研究所の保存点数 2.4 万点 ( 平成 壊など原産国における生物多様性への影響や食 18 年度末 ) を 2.5 万点 ( 平成 22 年度 ) とします。 ( 農 料との競合などに留意することも必要です。 政府では、平成 14 年 12 月に、「バイオマス・ニッ 林水産省 ) ポン総合戦略」を閣議決定し、その後、実効性の 3. バイオマス資源の利用 ある地球温暖化対策の実施が喫緊の課題となる 【施策の概要】 など、バイオマスの利活用をめぐる情勢が変化し バイオマスは、植物が光合成により無機物であ たことを受け、平成 18 年 3 月に新たな「バイオマ る水と二酸化炭素から合成した有機物を起源と ス・ニッポン総合戦略」を閣議決定しました。また、 平成 21 年 6 月にはバイオマスの活用の一層の推進 するものであり、植物由来のものだけでなく、これ らを食べた家畜の糞尿や、食品残渣などを含め を図るため、基本理念を定めることなどにより、バ イオマスの活用の推進に関する施策の総合的か てバイオマスと呼ばれています。バイオマスの利 つ計画的な推進を図る「バイオマス活用推進基本 用は大気中の二酸化炭素を循環させるものであ り、石油・石炭のように新たな大気中への二酸化 法」が成立しました。 炭素の放出は生じません。上手に利用すれば、 さらに、平成 21 年 7 月には、バイオマスを含む非 化石エネルギー源の利用の拡大を図るため、電 枯渇することがないため、持続的に再生可能な資 気、ガス、石油などのエネルギー供給事業者の計 源であるといえます。 画的な取組を促す「エネルギー供給事業者による このため、バイオマスの利活用は、①地球温暖 化の防止、②循環型社会の形成、③エネルギー 非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー 原料の有効な利用の促進に関する法律」 ( エネル 源の多様化、④バイオマス利活用技術の開発な ギー供給構造高度化法 ) も成立しました。 どによる競争力のある新たな戦略的産業の育成、 ⑤エネルギーや工業製品の供給という農林漁業 の新たな領域の開拓などによる農林漁業、農山 3 コバイオマスタウンなど、地域に おけるバイオマス利活用の推進 漁村の活性化に貢献します。 【現状と課題】 特に、わが国の生物多様性との関係について わが国のバイオマスの賦存量及び利用率 ( 平 見てみると、人工林の間伐、里山林の管理、水辺 成 21 年 3 月時点で把握できるデータに基づく ) は、 や二次草原における草刈り・採草などの生態系の 廃棄物系バイオマス ( 家畜排せつ物、下水汚泥、 適切な管理によって生じるバイオマスの利用は、 黒液、廃棄紙、食品廃棄物、建設発生木材、製材 豊かな生物多様性の保全につながります。また、 食料供給と両立する稲わらなどのセルロース系バ 工場など残材 ) は約 3 億トン、利用率は 74 % ( 平成 22 年目標 80 % ) 、未利用パイオマス ( 農作物非食用 イオマスや資源作物をバイオ燃料に活用すること ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 2 節遺伝資源などの 持続可能な利用 229 ◆◆

4. 生物多様性国家戦略2010

オマスの利活用技術などを用い、関係機関・団体、 国民などが連携して対応を図る必要があります。 その際、科学的検討を踏まえて社会的合意形成 を図ることも重要です。 1 . 田園地域・里地里山 【施策の概要】 国民に安全で良質な食料を供給するだけでな く、多様な生物の生息・生育空間や自然とのふれ あいの場としても重要な役割を持っ田園地域・里 地里山を将来にわたり保全・利用していくため、 「食料・農業・農村基本法」により平成 17 年 3 月に 閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」に 基づき、農業生産活動に伴う環境への負荷の低 減、担い手の育成・確保や農地の有効利用の促 進、農村環境の保全・形成に配慮した基盤整備、 都市と農村の交流の促進による農村地域の活性 化などに取り組みます。また、「バイオマス・ニッポ ン総合戦略」 ( 平成 18 年 3 月 ) に基づき、バイオマス の利活用を通じ田園地域・里地里山の活性化に 取り組みます。 また、人々の憩いの場や居住環境の一部であ り、生物の重要な生息・生育の場でもある里山林 については、「森林・林業基本法」により平成 18 年 9 月に閣議決定された「森林・林業基本計画」に基 づき、林業の振興などを図る中で多様な生物の生 息・生育地などの保全を図りつつ、地域とボランテ ィア、 NPO などとの連携により、里山林の多面的利 用に向けた森林づくり活動を推進するとともに、森 林セラピーなどの多様な利用活動を促進します。 さらに、田園地域・里地里山の保全再生活動の担 い手の育成を図る取組を推進していきます。 ◆◆凵 6 1 . 1 生物多様性保全をより重視した 農業生産の推進 【現状と課題】 適切な農業生産活動が行われることによって生 物多様性保全、良好な景観の形成などの機能が 発揮されます。一方、農薬や肥料の不適切な使用 は、田園地域・里地里山の自然環境ばかりでなく、 川などを通じた水質悪化による漁場環境への影響 など生物多様性への影響が懸念されることから、 田園地域や里地里山の生物多様性保全をより重 視した有機農業をはじめとする環境保全型農業を 推進し、生きものと共生する農業生産の推進を図 る視点でさらに取組を進めることが必要です。 【具体的施策】 〇農薬・肥料などの生産資材の適正使用などを推 進することが重要であり、農業者ひとりひとりが環 境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境 規範の普及・定着を図ります。 ( 農林水産省 ) 〇農薬については、毒性、水質汚濁性、水産動 植物への影響、残留性などを厳格に検査をし たうえで登録されており、さらに環境への影響 が生じないよう、農薬ごとに農薬使用基準を定 め、その遵守を義務づけながら適正な使用の 推進を図ります。 ( 農林水産省 ) 〇「農薬取締法」に基づき、水産動植物の被害 防止に係る農薬登録保留基準の設定を進めま す。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 2 章 1 節 3. 2 ) ] 〇農薬による陸域生態系へのリスク評価・管理の 導入に向け、その手法を確立します。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 2 章 1 節 3. 2 ) ] 〇農用地及びその周辺環境の生物多様性を保 全・確保できるよう、農薬の生物多様性への影 響評価手法を開発します。 ( 環境省 ) [ 再掲 ( 2 章 1 節 3. 2 ) ]

5. 生物多様性国家戦略2010

km のうち、現在までに約 3 分の 2 の区間の改善が なされています。 【具体的施策】 〇清流回復の一例として、信濃川中流域では、夏 期の水温上昇の防止、秋期のサケの遡上に配 慮した試験放流を実施し、これによりサケの遡 上が復活するなどの効果を確認しています。引 き続き、水利権更新の機会などをとらえ、発電 に伴う減水区間の清流回復に取り組みます。 ( 国土交通省 ) 2.2.3 環境用水の導水による水路の清流の 復活 【現状と課題】 地域内の水路などに残された清流は、うるおい、 遊びや語らいの場となる空間であるとともに、生 物の貴重な生息空間を提供する場でもあります。 しかし、水利用形態の変化などにより、身近な河 川や水路などを流れる清流が失われてきた地域 も多くあります。 【具体的施策】 〇これまでも、各地で浄化用水の導入などが検 討・実施されてきていましたが、平成 17 年より全 国 7 モデル地域において、下水再生水、雨水貯 留水、地下水などの水源、水質などを調査する とともに、その結果に基づき、平常時の流量回復、 水質改善のための水路の整備、維持管理及び 活用方策などについての検討を進め、「都市の 水辺整備ガイドブック」 ( 平成 21 年 2 月 ) を作成し ています。また、「環境用水に係る水利使用許可 の取扱いについて」 ( 平成 18 年 3 月 ) により、河川 の流水を使用して環境用水を通水使用する場 合に必要となる、河川法上の取扱いに関する基 ◆◆ 1 / 4 準が明確化されており、地域の特徴に応じた清 流の再生が期待されています。 ( 国土交通省 ) 〇農業水利施設を有効活用し、環境用水などを 導水することにより、地域の清流を再生させる 取組を支援します。 ( 農林水産省 ) 2.3 ダムの弾力的管理試験による 河川環境の改善 【現状と課題】 ダムの建設に伴い、下流河川流量の減少や流 況の平滑化により、魚類など水生生物の生息・生 育環境への影響などが見られるダムがあることか ら、ダム下流河川の環境保全を図るため、平成 9 年度よりダムの弾力的管理試験を開始し、平成 20 年度には 20 ダムにおいて実施しました。 洪水調節を目的に持っ多目的ダムでは、洪水期 には洪水調節のための貯水池の水位を下げて空 き容量を確保しています。ダムの弾力的管理試験 は、一時的に洪水調節容量へ流水を貯留し、そ の貯留水を活用して下流河川の清流回復や流況 改善を図る放流を行うものです。なお、気象予測 などにより洪水が予想される場合に、直ちに放流 して洪水調節のための容量を安全、かっ完全に 確保できることを前提としています。 【具体的施策】 〇ダムの弾力的管理試験による河川環境改善に 向けた取組を進めるとともに、放流方法の検討 をより進め、さらに効果的なものとします。 ( 国土 交通省 ) 3. 住民との連携・協働 【施策の概要】 河川は、多様な生物をはぐくみ、地域固有の生 態系を支える自然公物であるとともに、「地域共通

6. 生物多様性国家戦略2010

用済小型家電に係るレアメタルの含有実態の把 〇食品が廃棄物として処分されることを未然に防 握や、使用済小型家電のリサイクルに係る有害 ぐ取組などをしても、どうしても発生してしまう食 性の評価及び適正処理などについての検討な 品廃棄物について、食品廃棄物の生物化学的 どを行います。また、製品の長寿命化やリサイク 変換、特にメタン菌などの微生物の働きによる ルが簡単な製品の設計・製造技術の開発など メタン発酵による処理が挙げられます。このよう のため、「革新的構造材料を用いた新構造シス な処理を行うメタンガス化施設に対し、循環型 テム建築物研究開発」、「希少金属等高効率回 社会の形成を図ることを目的とし、市町村を対 収システム開発」などのほか、レアメタルの代替・ 象に「循環型社会形成推進交付金」を交付して 使用量低減技術などの開発のため「元素戦略 / います。当該交付金の交付率は、平成 17 年度 希少金属代替材料開発プロジェクト」を推進し から 3 分の 1 を 2 分の 1 に嵩上げして重点的に支 ていきます。 ( 環境省、文部科学省、経済産業省 ) 援しています。また、平成 19 年度からはメタンガ 〇下水道は希少な有用資源が含まれる都市鉱山 ス化施設及びメタン発酵残渣とその他のごみ の一種であり、循環型社会の構築に向けて、 焼却を行う施設を組み合わせた方式について 需要先と連携して回収、資源化の取組を推進 交付率 2 分の 1 の対象に加えたところです。さら します。 ( 国土交通省 ) に、市町村がメタンガス化施設整備を検討する 〇自然界から新たに採取する資源の抑制に向 際に必要な情報を提供し、支援することを目的 け、長期にわたって使用可能な質の高い住宅 に平成 20 年 1 月に作成したメタンガス化 ( 生ごみ メタン ) 施設整備マニュアルについて、幅広く周 ストックを形成するため、長期優良住宅等推進 事業の実施などの取組を引き続き推進してい 知を行っていきます。 ( 環境省 ) きます。 ( 国土交通省 ) 〇たい肥などによる土づくりと化学肥料・化学合 〇バイオマスの利活用の促進のため、第 2 部第 2 章 成農薬の低減に一体的に取り組む持続性の高 第 2 節「 3. バイオマス資源の利用」に記述してい い農業生産方式の導入の促進を図り、地域で るバイオマス関連施策、「バイオマス・三ッポン総 まとまりをもって、化学肥料と化学合成農薬の使 合戦略 ( 平成 18 年 3 月閣議決定 ) 」やバイオマス 用を地域で通常行われているレベルから原則 5 活用推進基本法 ( 平成 21 年法律第 52 号 ) に基 割以上低減するなどの先進的な取組を推進し ます。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 ( 1 章 6 節 1. 1)] づくバイオマスの利活用の加速化、バイオマスタ ウンなど地域におけるバイオマス利活用の推進、 〇化学肥料、農薬を使用しないことを基本として、 国産バイオ燃料の推進などを図ります。 ( 内閣府、 農業生産活動に由来する環境への負荷を大幅 総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、 に低減し、多様な生きものをはぐくむ有機農業 国土交通省、環境省 ) [ 再掲 ( 2 章 2 節 3 ) ] について、有機農業の技術体系の確立や普及 〇下水処理によって発生する下水汚泥について、 指導体制の整備、消費者の有機農業に関する 固形燃料化による化石燃料の代替や、メタン発 理解と関心の増進など農業者が有機農業に積 酵により生じたバイオガスの天然ガス自動車へ 極的に取り組めるような条件整備を推進します。 ( 農林水産省 ) [ 再掲 ( 1 章 6 節 1. 1 ) ] の供給などのバイオマスとしての特徴を活かし た取組を推進します。 ( 国土交通省 ) 〇養殖業については、漁場環境を悪化させない ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 7 節循環型社会、低炭素社会 の形成に向けた取組 291 ◆◆

7. 生物多様性国家戦略2010

機関 ) 合同食品規格計画 ( コーデックス委員会 ) ウスや遺伝子材料などの遺伝資源は、実験動物 バイオテクノロジー応用食品特別部会において、 のほか、ヒトや動物の遺伝子や研究用標準化細 遺伝子組換え動物由来食品、栄養又は健康に 胞などとして遺伝子機能の解明や生体機能解明 資する遺伝子組換え植物由来食品、輸出国で などのために利用されており、遺伝資源を適切に は承認されているが輸入国では承認されてい 収集・保存し、利用できる体制を整えることは本 ない遺伝子組換え植物が微量に存在する場合 分野の研究開発の推進に不可欠です。 の安全性評価などについて検討が行われまし 特に、 2003 年 ( 平成 15 年 ) 4 月にヒトゲノムの塩基 た。その結果、平成 20 年のコーデックス総会で、 配列の解読が完了したほか、他の生物種におい 遺伝子組換え動物由来食品の安全性評価の てもゲノム情報の解析が急速に進みつつあり、 実施に関するガイドラインなどが採択されまし うしたゲノム情報を利用するポストゲノム研究にお た。 ( 厚生労働省 ) いて国際的な研究競争が激化する中、遺伝資源 の重要性はますます高まっています。 1 . 1 . 4 工業分野での遺伝資源の利用 【現状と課題】 【具体的施策】 近年の石油高騰や二酸化炭素など排出物の環 〇各種遺伝資源に関する情報の総合的な収集・ 境への影響が懸念されている中、環境負荷の少な 発信などを行う情報・システム研究機構国立遺 い生物資源を活用した物質生産並びに処理技術 伝学研究所、理化学研究所バイオリソースセン の開発が必要とされています。そこで、遺伝資源の ターにおいて収集、保存、提供を行います。ま 生物機能を活用した基盤技術の開発により、環境 た、平成 14 年度より開始された「ナショナルバイ 調和型循環産業システムの構築を行っています。 オリソースプロジェクト」において、国家的視野 に立ち、わが国の知的基盤を 2010 年 ( 平成 22 【具体的施策】 年 ) に世界最高水準にすることを目標にした「第 〇植物による工業原料や、高付加価値タンパク質 3 期科学技術基本計画」 ( 平成 18 年 3 月閣議決 などの有用物質生産 ( モノづくり ) に必要な基盤 定 ) を踏まえ、戦略的に整備することが重要な 技術を開発し、植物機能を活用したモノづくり ものについて継続的な収集・保存・提供体制の 技術の基盤を構築します。 ( 経済産業省 ) 整備を行います。 ( 文部科学省 ) 〇微生物を活用した効率な有用物質生産プロセ 1 .2 道伝資源の保存 開発するとともに、微生物を活用した廃水・廃 1.2.1 医療分野における遺伝資源の保存 棄物などの環境バイオ処理技術を高度化させ 【現状と課題】 ます。 ( 経済産業省 ) 現在使われている薬用植物は、先人が自然界 から選び出した貴重な財産です。また、世界中に 1 . 1 . 5 研究基盤としての遺伝資源の利用 はさまざまな植物があり、その中には薬としての潜 【現状と課題】 在的な価値を持っているものがまだたくさんある ライフサイエンス分野の研究開発において、マ と考えられ、薬用植物とそれに関する知識を収 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 2 節遺伝資源などの 持続可能な利用 223 ◆◆

8. 生物多様性国家戦略2010

として、エコツーリズムを推進する地域に対して どの情報を都市住民に提供するとともに、各種 支援を図ります。また、地域固有の魅力を見直 メディアの活用や大都市圏でのグリーン・ツー リズムフェアの開催など農山漁村との出会いの し、活力ある持続的な地域づくりを進めるため、 場を提供します。 ( 農林水産省 ) 法に基づく「全体構想」の策定を支援します。 ( 環 境省、国土交通省、文部科学省、農林水産省 ) 3 泡自然とのぶれあいの場の提供 【現状と課題】 成するエコツーリズム推進連絡会議において、 工コツーリズムの総合的かつ効果的な推進を 日本のありのままの自然とふれあい、自然の仕 組みを学ぶことができる自然公園、森林が有する 図るための連絡調整を行います。 ( 環境省、国 多面的機能や林業及び木材利用の意義などにつ 土交通省、文部科学省、農林水産省 ) 〇工コツーリズムに関する特に優れた取組の表彰 いての理解と関心を深める森林環境教育の場と や全国セミナーを開催し、地域資源の活用方 しての森林、人と自然が向き合う「業」を通じて自 法や保全などに係るノウハウの蓄積とその情報 然にふれあえる田園地域・里地里山、漁村、身近 の共有化を図ります。 ( 環境省 ) な自然環境を安全かっ容易に利用することがで きる都市公園など、生活の基盤であり、身近な自 〇旅行者の好みに応じたエコツアーを紹介する Web サイトの運営により国内向けに情報を提供 然環境でもある河川、港湾、海岸などの水辺など の地域を対象として、自然のふれあいの場として しつつ、その英語版サイトを新設し、美しい日 の活用を推進します。国民のニーズに応え、安全 本の自然の魅力を世界へ発信します。 ( 環境省 ) 〇自然とふれあい、その仕組みを理解する活動 で快適な利用を推進するとともに、過剰利用によ る植生・生息地の破壊などの問題が生じないよ の一環として、水辺を散策するためのフットパス う、利用の適正化に向けた取組を進めていくこと を整備するなど、自然保護に配慮した観光の推 進を図ります。 ( 国土交通省 ) が必要です。 また、森林や河川、沿岸地域、田園風景や町 [ グリーン・ツーリズムの推進 ] 並みなどのさまざまな自然環境や歴史・文化資源 〇緑豊かな農山漁村でゆとりある休暇を楽しむグ を結ぶ長距離自然歩道を歩くことは、多様な生態 リーン・ツーリズムを通じて、農林漁業体験や農 山漁村での各種生活体験を推進するため、各 系や自然・文化景観とのふれあいにつながります。 これまでに全国 26 , 000km に及ぶ長距離自然歩道 種体験活動を指導するインストラクター ( 体験指 のネットワークが整備されていますが、生物多様 導者 ) や地域を分かりやすく紹介するエスコー ター ( 地域案内人 ) 、体験活動の企画、調整な 性の諸相を肌で感じ理解を深めるツールとして、 どを行うコーディネーター ( 企画立案者 ) などの より一層の活用が期待されます。 グリーン・ツーリズムインストラクターの育成を引 【具体的施策】 き続き実施します。 ( 農林水産省 ) [ 自然公園などにおける取組 ] 〇インターネットのホームページを活用して、グリ ーン・ツーリズムや農山漁村の情報をはじめ、 〇国立公園においては、特別保護地区、第 1 種特 各種農林漁業体験メニュー、農林漁家民宿な 別地域などの保護上重要な地域や集団施設地 ◆◆第 2 部第 2 章 横断的・基盤的施策 第 3 節普及と実践 241 ◆◆

9. 生物多様性国家戦略2010

部、林地残材 ) は約 2 , 200 万トン、利用率は 17 % ( 平成 22 年目標 25 % ) となっています。 バイオマスは、生物によって生産されるため、 「広く、薄く」存在する特性を持ちます。バイオマス の利活用を推進するためには、この特性を踏まえ、 地域で効率的にエネルギーや製品として利用す る地域分散型の利用システムを構築することが重 要です。このため、市町村が中心となって、広く地 域の関係者の連携のもと、総合的なバイオマス利 活用システムを構築する「バイオマスタウン」 ( 廃棄 物系バイオマスを炭素量換算で 90 % 以上又は未 利用パイオマスを炭素量換算で 40 % 以上利活用 することを目指す構想を作成し、取り組む地域 ) を 推進しています。平成 21 年 3 月には、バイオマスタ ウン構想の実現及び一層の普及に向けた具体的 な方策「バイオマスタウン加速化戦略」を取りまと めました。平成 22 年にはバイオマスタウンを 300 地 区程度構築することを目指しています ( 平成 22 年 2 月末現在 237 地区 ) 。 また、市町村における一般廃棄物の処理にお いて、廃棄物系バイオマスの利活用を推進するこ ととしています。 さらに、平成 21 年 7 月に成立したエネルギー供 給構造高度化法に基づき、バイオマスを含む非化 石エネルギー源の利用の拡大を図るため、エネ ルギー供給事業者の計画的な取組を促す必要が あります。 【具体的施策】 〇バイオマスタウン構想の公表、バイオマスタウン の構築を関係省庁が一体となって着実に進め ます。 ( 内閣府、総務省、文部科学省、農林水産 省、経済産業省、国土交通省、環境省 ) 0 バイオマスタウン構想の策定、バイオマスの変 換・利用施設などの一体的な整備などを実施 ◆◆ 230 し、地域の創意工夫を凝らした主体的な取組 を支援します。 ( 農林水産省 ) 〇循環型社会形成推進交付金により、市町村に おける廃棄物系バイオマスの堆肥化、飼料化、 メタン化などを行う施設の整備を推進します。 ( 環境省 ) 〇下水処理によって発生する下水汚泥のバイオマ ス利用を促進します。 ( 国土交通省 ) 〇平成 21 年 7 月に成立したエネルギー供給構造高 度化法に基づき、バイオマスを含む非化石エネ ルギー源の利用の拡大を図るため、エネルギ ー供給事業者の計画的な取組を促進します。 ( 経済産業省 ) [ 再掲 ( 2 章 6 節 1. 1)] 3.2 国産バイオ燃料の推進 【現状と課題】 平成 19 年 2 月に、バイオマスを原料とする国産バ イオ燃料の大幅な生産拡大を図るための課題を 整理し、実現に向けた技術開発などの工程表を 関係 7 府省 ( 内閣府、総務省、文部科学省、農林 水産省、経済産業省、国土交通省、環境省 ) で作 成し、総理大臣に報告しました。工程表において は、当面は、食料の供給や飼料との両立にも留意 して、さとうきび糖みつなどの糖質原料や規格外小 麦などのでん粉質原料など、安価な原料や廃棄物 処理費用を徴収しつつ原料として調達できる廃棄 物を原料としてバイオ燃料の生産を行います。中 長期的には、食料の供給や飼料と両立する未利 用の稲わら、間伐材などのセルロース系原料や資 源作物全体を原料として生産することとしています。 また、平成 20 年 10 月には、農林漁業に由来する バイオマスのバイオ燃料向け利用を通じた農林漁 業の持続的かっ健全な発展やエネルギー供給源 の多様化を目的とした「農林漁業バイオ燃料法」 が施行されました。

10. 生物多様性国家戦略2010

3. 1 、 4. 2 ) ] 1 .7 草地の整備・保全・利用の推進 〇里地里山保全再生モデル事業 ( 平成 16 年度 ~ 【現状と課題】 19 年度 ) の成果と里地里山保全・活用検討会 草地は貴重な生態系を形成し、多くの動植物 議での検討を踏まえ「里地里山保全・活用行動 に生存の場を提供しています。草地のほとんどは、 計画 ( 仮称 ) 」を策定し、全国での里地里山の 放牧や採草などの目的を持って人為的に管理す 保全再生活動の展開につなげます。 ( 環境省 ) ることにより、特有の自然環境が形成・維持されて 〇全国の里地里山保全活動の取組の参考とする おり、生態系の保全、遺伝資源の保全、野生生物 ため、特徴的な取組を行う里地里山の調査・ 保護など生物多様性保全機能を有しています。 分析を行い、未来に引き継ぎたい里地里山とし 例えば、阿蘇・久住高原の草地は、放牧や採草 て情報発信します。また、各地域の取組の課題 などの農業生産活動など人の手を加えることによ を解決するため、平成 19 年度に策定した「里地 って、ハナシノブやヒゴタイなどの植物、オオルリシ 里山保全再生計画策定の手引き」の活用を推 ジミのような希少なチョウの生息・生育地として維 進しつつ、研修会の開催や講師の派遣による 持されています。 助言・ノウハウの提供などの技術支援を実施し 一方、草地は、採草や放牧による自給飼料基盤 ます。 ( 環境省、文部科学省、農林水産省、国土 として、土ー牧草一家畜をめぐる物質循環が成立 交通省 ) し、飼料自給率向上を通じた食料自給率の向上、 〇里地里山の新たな利活用の方策について、環 国土の有効利用、循環型畜産の確立が図られる 境教育やエコツーリズムの場の提供、間伐材や とともに、持続的な畜産物の生産、畜産経営の維 ススキなどのバイオマス利用など具体的な地域 持を図ることが可能となることから引き続き適切 での試行的な取組を通じて検討します。また、 な維持管理が重要です。 都市住民や企業など多様な主体が共有の資源 ( コモンズ ) として管理し、持続的に利用する枠 【具体的施策】 組みを構築します。 ( 環境省、文部科学省、農林 〇生産者や集落ぐるみによる草地の生産性・機能 水産省、国土交通省 ) [ 再掲 ( 2 章 7 節 1 ) ] を維持するための放牧の取組推進や草地の整 〇里地里山の保全再生活動の担い手育成の支 備・保全に対する活動について支援を行いま 援として、活動団体や活動場所の紹介、里地里 す。 ( 農林水産省 ) 山の生態系管理などに関する専門家などの人 〇草地における生物多様性の確保を通じて自然 材登録・派遣、技術研修を実施します。 ( 環境省 ) と共生する社会の実現を図るため、例えば阿 〇里地里山の保全・利用のあり方を全国に発 蘇の草原においては、①多様な動植物が生 信・普及する中で、不法投棄などの生物の生 息・生育できる草原環境の保全と再生、②理 息・生育環境を悪化させる行為を防止するた 解・愛着を持つ人々を増やす草原環境学習を 推進します。また、牧野の葆全に配慮した土地 めの意識向上を図るとともに、不法投棄の防止 に向けて地方公共団体などとの情報交換・相 利用と管理の推進を図るため、草地の整備・ 互協力のネットワークを強化します。 ( 環境省 ) 保全・利用に向けた取組を進めます。 ( 環境省、 農林水産省 ) ◆◆第 2 部第 1 章 国土空間的施策 第 6 節田園地域・里地里山 1 5 1 ◆◆