(a) 生物の多様性の保全と生物資源の持続可能な利用に関する情報を定期的に照合・ 評価・交換すること。 (b) 国内調査によって識別した生物の多様性の構成要素を国家レベルにて体系的なサ ンプリングと評価を行う観点に立った方法論を展開すること。 ( c ) 生態系の現況に関するしかるべきレベルにおける調査についてその方法を研究あ るいは展開し、その調査を開始あるいは続行すること、ならびに地域住民や先住民、その 地域社会の参加を得て作成する資源台帳をはじめ、陸生・水生・沿岸・海洋の生態系の生 物資源と遺伝資源をふくむこれら資源に関する基本的情報を確立すること。 (d) 国内調査の成果をふまえ、各国の陸生種・水生種の保全と持続可能な利用に潜在 している経済的・社会的意義と便益を識別・評価すること。 ( e ) 上記の識別・サンプリング・評価などの活動から得られるデータの更新・分析・ 解釈に着手すること。 ( f) 地域住民や先住民、その地域社会の完全なる支持と参加のもとに時宜を得た方法 にて、かつあらゆるレベルの意志決定にふさわしい形式にて信頼できる適正な情報を収集 ・評価・提供すること。 ( c ) 国際間・地域間の協力と調整 1 5 . 7 政府はしかるべきレベルの自治体や、関係する国連機関、該当する場合には 政府間機関と協力して、先住民とその地域社会、 N G 0 、その他業界・学会をふくむ団体 の支援を得て、かつ国際法の求めるところに従って、該当する場合には、下記の各項目を 実施するものとする。 ( a ) 生物の多様性の保全や生物資源・遺伝資源の持続可能な利用にとってふさわしい データや情報を交換できるよう、国内的・国際的な能力とネットワークを確立し、強化す ることを検討すること。 ( b ) すべての国家における国内アセスメントの成果に基づく生物の多様性に関する世 界報告書を定期的に更新して発行すること。 (c) 生物の多様性の保全や生物資源・遺伝資源の持続可能な利用の分野における技術 的・学術的協力を推進すること。生物の多様性の保全に関連する、植物標本館・博物館・ 遺伝子銀行・研究所などの研究管理施設の展開および / もしくは技術移転をふくむ、人材 開発や組織設置などによる各国の能力開発や強化に特に注目すること。 ー 92 ー
に影響を及ぼし合っている。 国際法に関わる状況 植物遺伝資源の保全と公益的活用のための F A 0 全世界システム 遺伝子銀行における植物遺伝資源の収集 ・保全事業が各国の国内や国際的規模で著 しい増大を遂げた 1 9 7 0 年代の末に うした収集・保全資料の ( 保管で損なわれ ないという ) 安全性、保有コレクションの 所有権、生殖質の入手の可能性を制限する ような国内法の制定、新品種に関する 1 p R ( 知的所有権 ) などについての問題が浮 上し、これらをめぐる論争は今もなお続い ている。植物遺伝資源に関する活動の数が 増えるにつれ、政府間活動を全世界レベル で調整するために何らかの機構を創設する 必要のあることが明らかになった。 これらの論議を踏まえ、 F A 0 ( 国際食 糧農業機関 ) は 1 9 8 3 年に F A 0 グロー バル PGR システム ( 植物遺伝資源の保全 と公益的活用のための全世界システム ) を 創設したが、 このシステムは拘束力を持た ない法的枠組である I U P G R ( 植物遺伝 資源に関する国際共同約定 ) や政府間討論 の場である植物遺伝資源委員会などから成 るものである。国際社会の関心の高さを示 すものとして、 F A 0 グローバル p G R シ ステムは現在までに世界の 1 2 8 カ国が加 盟しており、植物遺伝資源委員会にはこの うち 1 1 0 カ国が、また、植物遺伝資源に 関する I U P G R には 1 0 2 カ国が参加し ている。この枠組の一環として策定された 取り決めを更に詳しく紹介すれば次のよう になる。 まず植物遺伝資源委員会だが、これは一 国一票の票決原則に基づいて機能しており 国際植物遺伝資源委員会や他の関係専門機 関あるいは他の国連機関や国際地域の開発 銀行、 N G 0 などの代表たちも委員会の会 合にはオブザーパー参加している。植物遺 伝資源委員会は植物遺伝資源に関わる諸事 項を論じ合う集いの場の役目を果たし、 のグローパル P G R システムの包括的で効 率的な働きを保ち続けるために必要であっ たり望ましい手段を勧告するとともに U P G R の実施を監視する役目を担う。同 委員会は 1 9 9 3 年に「植物遺伝資源に関 する第 4 回国際専門家会議」を開く予定で あり、そこで「植物遺伝資源に関する世界 現況報告書」の第 1 号と「植物遺伝資源に 関する活動案」の検討・見直しが行われる とになっている。 I U P G R は拘束力を持たない法的協定 文書であり、植物遺伝資源一経済的または 社会的重要性を現在有しているか、将来有 する可能性のある生産種の遺伝資源一を育 種や学術研究を目的とする限りにおいて一 切の規制なしで探索・収集・保存・評価・ 利用・人手できるよう保障して行くことが 目的となっている。この I U p G R は。植 物遺伝資源は人類全体の歴史的財産であり 未来の世代のために保全しておかなければ ならない " という原則的認識の上に成り立 っている。この原則は国家がその領土内に 植物遺伝資源に及ぼす最優先の権利一即ち 国家主権一に対しては従属すべき性質のも のであるけれども、 F A 0 総会と植物遺伝 資源委員会がそれぞれに行ない、現在は 1 U P G R の付帯決議扱いとなっている 2 っ の決議によって国際的な認知と効力を得て いる。なお、この両決議では次のことが認 知された一即ち ( 新品種に対する ) p B R ( 植物育種者の権利 ) と I U P G R とは両 立不可能ではないし「伝統農民の権利」と いう新たな権利概念によって植物生殖質の 保有者たちは植物遺伝資源の質的向上に貢 献したことへの補償・報酬を受けるべきで あるという確認である。これらの決議が励 ー 149 ー
国家規模、地域規模、地球規模のコンタクトボイントを網羅した国際ネ ットワークを確立すること。 情報ネットワークやデータベース、情報手続きを活用して、上記国際ネ ットワークを通じてなされる要請には、直接援助を提供すること。 リスク評価・リスク管理を含む、パイオテクノロジーの解禁の安全性に 国際的な合意の必要性と実現性を考慮すること、また、義務と権利に関 すること 関して、 ( d ) ( c ) ( b ) ( b ) 学術的、技術的手段 に依存する。 払いは、条件のないものもすべて含めて、当該政府が施行する個々の作戦や事業 ているが、各政府による検討はまだなされていない。とりわけ具体的な代価や支 資による約 2 0 0 万ドルと見積った。これらは重要な見積り評価段階で提示され るこの事業の実施にかかる平均年間費用を国際融資団体からの補助金や条件付融 U N C E D 事務局は 1 9 9 3 年から 2 0 0 0 年までの期間におけ ( a ) 融資およびコスト評価 実施手段 する国内法を促進するガイドラインの可能性の研究を行なうこと。 3 5 節を参照するものとする。 ・経営・企画・行政能力を開発途上国が蓄積できるよう、しかるべき国際的な技 本事業計画分野における活動を支援するための国家レベルの技術 3 5 節を参照するものとする。 1 6 . 4 2 ( d ) 能力蓄積 1 6 . 4 1 ( c ) 人材開発 1 6 . 4 0 事業計画分野 E を参照するものとする。 術的財務的援助を提供し、開発途上国に対する技術協力を推進するものとする。 E . パイオテクノロジーの発展と環境的に健全な応用を可能にする機構を確立 行動基盤 1 6 . 4 3 特に開発途上国においてバイオテクノロジーの発展と応用が加速 されるためには、国家・地域レベルの制度的能力蓄積を図る大きな努力が必要で あろう。開発途上国においては、研修能力やノウハウ、研究開発施設資金、べン チャーキャピタルを含む起業資本、知的所有権保護、マーケットリサーチ・テク - 108 ー
のマドラスにある「持続可能な農業開発に 関する研究センター」所長であるとともに キーストン会議の国際運営会議議長 ) が提 唱している「植物遺伝資源と生物の多様性 の持続可能な管理運用のための N ・ I ・ ビロフ研究訓練センター・ネットワーク」 も現在構築が進められている。このネット ワークは国境を越えた広域的人材育成事業 や農村共同体の人々の参加を得て行う研究 調査活動に全力をあげて取り組むことにな る予定である。 各種の作物研究ネットワークは、植物遺 伝資源の保全と公益的活用とを効果的に結 びつけるものであるから、全ての国際地域 に拡張されるべきである。 こうしたネット ワークによって、植物遺伝資源に関する各 国の保全体制と BGCS ( 植物園保全事務 局 ) IUCN ( 国際自然保護連合 ) 、 ww F ( 世界自然保護基金 ) 、あるいはそれ以 外の各種の専門的団体・組織との協力関係 の形成が促されるわけである。また、 F A 0 の I B P G R も、 こうしたネットワーク 作りの促進に携わっている。これらの組織 は全て共同プロジェクト事業や教育訓練の 場を設定したり、専門的助言などの提供を 通して国際地域的な植物遺伝資源保全ネッ トワークの支援が行えるよう方向付けが与 えられるべきである。 国際地域的な事業計画が行うに当たって は、参加各国が国内に組織した 1 B p G R から議長を派遣し、それらの議長から成る 国際地域植物遺伝資源助言委員会を結成す れば有益であろう。また国際連合が進めて いる TDCC ( 開発途上国間技術協力事業 ) や ECDC ( 開発途上国間経済協力事業 ) のような事業計画も効果的に利用すべきで ある。そして山岳や沿岸の生態系のように すでに壊滅の危機を迎えた生態系の保全対 策こそが、国際地域協力による最優先の課 題に据えられなければならない。 ー 177 ー 全世界レベル 植物遺伝資源の保全と公益的活用に 関する行政・政策の監督、資金の動員 と分配、明確に規定された業務の履行 を促進するために全世界規模の実施機 構を構築するのであれば、そうした機 構はどのようなものであれ、次の基準 を満たす必要がある : ・植物遺伝資源の貴重な貯蔵庫となっ ている全ての国々の信頼を得たもの であること。 ・生殖質、情報、資金、技術のいずれ の貢献者に対しても励ましとなり、 いずれの支持をも得られるものであ ること。 ・実施承諾を得た事業計画については 効果的で経済的で時勢に適した履行 が確実に出来るものであること。 上記の課題を達成するためには、 制度面で。 4 本柱 " を据える必要が あると本会議の参加者は確信してい “ 4 本柱 " の制度とは以下のよ る。 うなものである。 ・ I GC ( 政府間協議会 ) ー原則とし て一国が一票の投票権を持ち、活動 方針・政策やその優先順位を協議・ 決定するほか、年に 2 回の活動案、 事業計画、予算の承諾を行う。なお I G C には準会員を置く。準会員は 植物遺伝資源の広範な関係者から募 った者で情報提供の役目を担う ・ EB ( 執行委員会 ) ー執行委員会は I G C の執行部分であり、 1 G c で 承認された活動案に明示された優先 事項の履行に関して、その執行を行 う権限を与えられている。 ・ STAC ( 学術助言委員会 ) ーいず れの利害集団にも属さない有識者た
( b ) 可能な限り、特に地域的な、既存の実行メカニズムに基づき、現在の努 力を倍加する手段方法を識別し、特に開発途上国に関しては、付加的なイニシア テイプの必要性の正確なる種類を判定し、かつ新たなる国際メカニズムに対する 提案を含む、適正な対応戦略を展開すること。 ( c ) 該当する場合には、国家・地域・地球レベルにおける安全評価、リスク 評価に対する適正なるメカニズムを確立あるいは改善すること。 行動 ( a ) 管理関連行動 1 6 . 4 6 織や地方組織、 るものとする。 国、地方自治体などしかるべきレベルの政府は、関連する国際組 民間部門、 N G 0 、学術団体の援助のもとに、次の各項を実施す ( a ) 開発途上国による、開発途上国の間における新たなるバイオテクノロジ ーへのアクセスを促進するための政策を展開し、追加資源を提供すること。 バイオテクノロジーの環境的に健全 ( b ) 一般国民と主要政策決定者の間に、 な応用における相対的な、または可能性のある便益とリスクについていっそう認 識を深めさせるための事業計画を実行すること。 ( c ) 国家・地域・地球レベルにおいて既存の実行メカニズム、事業計画、活 動についてその長所、短所、落差を見極め、開発途上国における必要性の優先順 位を判定するために緊急に見直しを図ること。 ( d ) 既存の能力に基づく、食料・飼料・再生可能資源 ; 保健 ; 環境保護の各 分野において見いだされる障害を克服する戦略を確定し実行すること。 ( e ) パイオテクノロジーの環境的に健全な応用に対する開発途上国内および 開発途上国間の内在的能力を強化する手段方法を確定するためにフォローアップ と批評をかねた緊急の見直しに着手すること。かかる手段方法には、第一ステッ プとして特に地域レベルにおける既存メカニズムを改善する方法、次のステップ として地域バイオテクノロジーセンターのような新たなる国際的メカニズムの検 討を含むものとする。 ( f ) 適正なる研究・製品開発・マーケティングによって目標となる障害の克 服のための戦略計画を開発すること。 ( g ) 必要な場合には、バイオテクノロジー応用技術や製品に対する付加的な ( b ) データおよび情報 品質保証基準を確立すること。 1 6 . 4 7 下記の行動に着手するものとする : - 110 ー 特に開発途上国間における
既存の情報伝搬システムのアクセスの推進 ; 該当する場合にはかかるアクセス の改善 ; 情報ディレクトリー開発の検討。 ( c ) 国際的・地域的な協力と調整 ー 111 ー きである。 の開発と応用がもたらす社会的・文化的インパクトについて社会に周知徹底すへ レベルにおいてサービス条件を完全する必要がある。さらに パイテクノロジー おくという観点でかかる人材を奨励育成するために、開発途上国においては国家 がある ( 1 6 . 5 0 節を参照すること ) 。研修を受けた人材を地域内にとどめて 報奨、インセンテイプ、顕彰を科学者や技術者に与えるシステムも確立する必要 技術者の研修に当たる講師の研修事業計画も開発の必要があり、またしかるべき じて支援して行くべきである。世界各国の先進の研究機関において科学者や工学 などあらゆるレベルにおける研修を強化し、技師やサポートスタッフの研修を通 の分野における研修を受けた人材の育成に特に重点を置いて、学士、修士、博士 かる事業計画はコンサルタントサービス・設計・工学研究・マーケティング研究 材開発ニーズを見極め、付加的な研修事業計画を開発することが必要である。か 国家・地域・地球レベルにおいて、特に開発途上国において、人 ( c ) 人材開発 る。 既存学術工学面の人材を最大限に活用し、かかる交流などを組織化する必要があ るワークショップ、シンポジウム、セミナー、その他の交流を実現すべく各国の 5 0 特定優先テーマに関して地域レベル、地球レベルの学会間におけ ( b ) 学術的、技術的手段 々の作戦や事業に依存する。 ( 注 1 1 ) 体的な代価や支払いは、条件のないものもすべて含めて、当該政府が執行する個 価段階で提示されているが、各政府による検討はまだされていない。 とりわけ具 付融資による約 5 0 0 万ドルから得られるものと見積った。 これら重要な見積評 けるこの事業の実施にかかる平均年間費用を、国際融資団体からの補助金や条件 1 6 . 4 9 U N c E D 事務局は、 1 9 9 3 年から 2 0 0 0 年までの期間にお ( a ) 融資およびコスト予測 実施手段 発するものとする。 たなるパイオテクノロジーのアクセスの促進を図る新規のイニシアテイプを開 開発途上国内の関連事業間における特定問題に基づく優先研究分野の確定と、新 の構築を支援する目的で、特に開発途上国による、開発途上国間における、また 織の援助のもとに、開発途上国における内部能力の強化と研究能力と制度的能力 1 6 . 4 8 国、地方自治体などしかるべきレベルの政府は国際組織や地方組
行動計画 4 2 遺伝資源の収集は、 いて行うこと。 公平なる報酬を約束する契約などの合意形態に基づ v 11. 人的環境を通じての生物の多様性の管理 目標 1 1 行動計画 43 行動計画 44 行動計画 45 行動計画 4 6 目 標 1 2 行動計画 47 行動計画 48 目標 1 3 行動計画 4 9 行動計画 50 行動計画 51 地域生物圏の保全と開発に関する制度的条件を整えること。 地域生物圏レベルにおいて、意見交換、計画立案、紛争解決に関する新 たなる方法と機構を開発すること。 地域生物圏の資源管理流通方法に影響を及ぼす手段を弱小で系列化され ていないグループに与えること。 地域生物圏計画立案と行動実行を容易にするために、部門間や政府機関 間にまたがるタスクフォースを設置すること。 国民の意識を高め、生物の多様性の保全を支援するために地域生物圏情 報センターを設置すること。 民間部門における生物の多様性保全に関する率先的な動きを支援するこ 保全に対する税制上の優遇措置を確立すること。 民間の生物の多様性保全信託の設立を支援すること。 天然資源管理に生物の多様性保全の原則を導人すること。 あらゆる森林の管理に生物の多様性保全の慣行を組み込むこと。 生物の多様性の保全を図る農業慣行を推進すること。 劣化した土地については生産性と生物の多様性の向上を図った方法で回 復させること。 V I I I 目 保護地域の強化 標 1 4 行動計画 52 行動計画 5 3 行動計画 5 4 行動計画 55 行動計画 56 目 標 1 5 行動計画 57 保護地域の強化と生物の多様性保全におけるその役割の強化を目指した 国内的・国際的優先順位を決定すること。 各国において保護地域制度の見直しを図ること。 保護地域の確立と増強に向けた緊急行動と長期行動を提案すること。 現在および将来における保護地域の必要性に関する国際的評価に取り組 むこと。 民間の保護地域の設定に対するインセンテイプを提供すること。 保護地域の管理に関する国際協力を推進すること。 保護地域の持続可能性とその生物の多様性保全に対する貢献を確保する 保護地域管理計画の策定に広範囲の人々を参加させ、その計画が取り組 むべき問題の範囲を広げること。 ー 126 ー
拘束力のない森林憲章のテキストを提出し 具体的な貢献を行う必要があります。資金 て交渉にのぞみ、現在その方向で内容のっ 問題についてはさらに、 G E F ( 地球環境 めが行われています。森林については、私 資金制度 ) を活用するか、新しい基金を設 けるか、またバイオテクノロジーを含む技 たちが横浜に誘致した I T T 0 ( 国際熱帯 木材機関 ) があります。 I T T 0 の役割は 術をいかなる条件で開発途上国に移転すべ 森林の保全だけではなく、熱帯木材の商業 きかという点などが条約交渉上の主要争点 的活用や情報交換なども行っていますが、 になっていますが、この点について何か質 その後、熱帯雨林が環境保護の面から非常 問があれば、あとでお答えしたいと思って に重要になってきたということもあり、 I います。 T T 0 でも環境面に重点をおいた作業が行 伊藤生物の多様性の重要性については われています。 9 1 年 1 0 月に発表された「 C a r i n g f or 外務省地球環境・アジア太平 the Earth 」 ( 新・世界環境保全戦略 ) の基 洋協力担当大使。 1937 年岐阜県 本原則に示され、また U N C E D の条約交 生まれ。 1961 年京都大学法学部 卒業、同年外務省入省。経済局、 渉の対象にもなっています。環境庁も生物 情報文化局などを経て、 1987 年 在米大使館公使、 1990 年国際連 の多様性条約の採択に向けて積極的にサポ 合局長を歴任。 1991 年地球環境・ ートしていきたいと考えています。 アジア太平洋協力担当大使に就 任、地球サミットをはじめ環境に では、日本は生物の多様性の保全につい 関する国際会議の運営を担当。 てどのような取組みをしているのかお話し ます。 赤尾信敏 第 1 点は、自然環境保全基礎調査の実施 生物の多様性の保全の一環として、絶滅 です。これは、環境庁が発足当時から始め の危機に瀕した野生動植物に保護を目的と た緑の国勢調査のことで、全国の自然環境 の状況を把握しています。これらのデータ したワシントン条約がありますがこの分野 でも日本は評判が余りよくありません。象 は、開発あるいは政策決定の際に活用され 牙については留保撤回したので、現在は輸 ています。自然環境の調査に当たっては、 人されていません。ウミガメについても来 専門家の協力もさることながら、多数のボ 年いつばいで輸人を禁止するという決定を ランティアの方々に参加していただくとい 行ないました。ワシントン条約に関して日 うユニークな調査方法をとっています。 本は、鯨類以外は全て留保撤回をして、条 のことが今後の行政をすすめていく上での 約を履行するということになっています。 貴重な財産になっているといえます。 鯨類については I W C ( 国際捕鯨委員会 ) 第 2 点は、 1 9 8 9 年から環境庁で調査 を行い、最近野生動物に関するレッド・デ があり、そこの科学委員会で議論していま ータ・ブックをまとめたことです。植物に すので、国際捕鯨委員会の専門家の判断を 基準に日本の対応を決めていこうというこ 関しては、日本自然保護協会でレッド・デ ータ・ブックを発行しました。このような とです。ワシントン条約に関しては、日本 の積極的な協力姿勢を示す意味でも、 9 2 調査報告に基づいて、環境庁は野生生物の 年 3 月に締約国会議を京都で開催すること 保護を進めていく必要がありますが、今日 になっています。 の段階では絶滅の恐れのある野生鳥獣につ 日本は、資金協力や技術移転の分野でも いての調査研究や保護増殖事業などを行っ ー 35 ー
施するための機関ですから、政策を決める のは省庁レベルの援助関係者です。ですか ら、さまざまな機関を含めて開発援助につ いて総合的に考えていただきたいと思いま す。 オリンド 思います。 私は 2 つコメントをしたいと 1 つは、 J I C A の世界国立公 園保護地域会議の参加についての議論です が、この問題に対する進展はかなりあった と思います。今回パネリストたちは、日本 の科学者集団に対して課題を投げかけたわ けです。 また、開発途上国に対して先進国が基金 を設立し自由に使えるようにすればいいと 言いましたが、開発途上国がその基金をパ イオテクノロジーの買収・購入に使うと言 ったのではありません。先進国のパイオテ クノロジーの技術を、自由に、無料で開発 途上国の方に移転してもらえないかという ことを言った訳です。私が関心を持ってい るのは、パイオテクノロジーの技術によっ て資源管理を行うということです。ですか ら、本当は無料でも有料でも関係ないので すが。 国際アフリカソウ保護基金代 表、国際自然保護連合 (IIJCN) 地域評議員・種の保存委員会・ 国立公園保護地域委員会副委員 長。 1977 ヨ 988 年まてケニア国立 公園局長としてケニアの国立公 園および野生動物管理の指導に あたるとともに、全アフリカの 野生動物専門官および技術者に ペレツ・ M ・オリンド マクニ 対し野生動物管理と密猟対策に 対する指導と助言を与える。 1988 年国連環境計画 (IJNEP) のグローバル 500 賞を受賞。 1990 年、国際アフリカゾウ保護基金 を設立し代表に就任。 私たちは、今まで生物の 多様性条約について、開発途上国に向けて 一体なにができるのか話し合ってきました。 また、先進工業国がどのように ( 開発途上 国に対して ) 支援できるのかについても話 しました。しかし、先進国も開発途上国と 同様に多くの生物の多様性を失いつつある と思います。そして、絶滅の危機が最も高 い種は先進国に集中しています。科学的な 専門知識や技術、資金などを持っている国 々の中には、生物の多様性を失っている国 もあるということなのです。ある国の生物 の多様性を効果的に守る上でも、生物の多 様性の保護のための条約が、先進国に対し て何ができるのかということを問わなけれ ばなりません。これは先進国に対する一つ の挑戦だと思います。先進国は、もっと生 産的な形で開発途上国に対して協力し、彼 らが共有している生活様式を支えている生 物の多様性を守るということが必要です。 司会 この件について何かコメントはあ りませんか。 沼田先進国であろうと、開発途上国で あろうと、生物の多様性は開発の方法によ って失われていきます。日本の場合は ( 生 物の多様性について ) 調査をしてから実体 を明らかにしたわけですから、それがなに に基づくのかということについて、いくつ か推定されています。そういう推定がされ れば、それに対して、はっきりとした対応 策をとることができると思います。 伊藤従来の法律や制度でカバーしきれ ない国内の個別の種の保護について、環境 庁では「絶滅のおそれのある動植物の種の 保存に関する法律」を現在審議会で検討し ています。しかし、マクニーリーさんがお っしやったのは、国内で生物の多様性に関 する制度を整備するとともに、私たちの生 活様式が開発途上国に影響を与えているこ とについての反省も必要だということでし よう。現在の愛知環境庁長官がこの点を特 に主張しており、私たちが今後進むべき道 ー 45 ー
アジェンダ 2 1 第 1 5 章 生物の多様性の保全 背景 アジェンダ 2 1 第 1 5 章の目的および活動は生物の多様性の保全、生物資源 の持続可能な利用について改善を図り、かっ生物多様性条約案に対するサポートを目指し たものである。この条約に関する協議が継続しているので、これらの目的および活動は、 条約案に直接関係する場合には、かかる協議に影響を及ぼすものではないものとする。 1 5 . 2 わが惑星の基本的な財産・機能は、遺伝子・生物種・個体群・生態系の多様 さと変異性に依存している。われわれは生物資源から衣食住を得、さらに薬品や心の糧ま で受けている。地球上の生物の多様性は大半が森林・サバンナ・牧場牧草地・砂漠・ツン ドラ・河川・湖沼・海洋などの自然の生態系に包含されている。田畑や庭園も生物の多様 性を維持する場所としてたいへん重要である一方、遺伝子銀行・植物園・動物園・その他 の生殖質保管場所も小規模ながら重要な役割を担っている。今日、生物の多様性の減少が 見られるのは、主として人類の活動の結果であり、人類の発展にとって深刻なる脅威とな っている。 生物の多様性の保全のためのプログラムエリア 行動の基礎 1 5 . 3 過去 2 0 年以上にわたり努力を重ねてきたにもかかわらず、ハビタートの破 壊・過収穫・汚染・移人動植物の適切さを欠く導人などを主な原因として、世界の生物の 多様性は失われ続けている。ところが、生物資源は持続可能な便益をもたらす高い可能性 を持った資産を構成するものである。したがって、生物資源の持続可能な管理と利用とを 念頭におけば、遺伝子や種、生態系の保全と維持には緊急かっ決定的な行動を取る必要が ある。そのためには生物の多様性のアセスメント・調査や体系的観察・価値判断を行う能 力を国内レベル・国際レベルで強化する必要がある。生態系の現地保存・生物資源や遺伝 資源の現地外保存・生態系の機能の向上などのためには、効果的な国内行動や国際協力が 必要である。そしてこのようなアプローチの成功にとっては、地域社会の参加とサポート とが基本要件である。近年、パイオテクノロジーが発達するにつれ、農業・保健・福祉の 面で、また植物や動物、微生物にふくまれる遺伝物質の環境目的の面で、パイオテクノロ ジーが適用できそうであるという見通しが示されてきた。この点については同時に、各国 がそれぞれの環境政策に従って、自国の生物資源を開発する主権と、生物の多様性の保全 と、生物資源の持続可能な利用に対する責任とを持っことを強調し、また自国の統治権・ 88 ー