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検索対象: (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集
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1. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

うのは幾つもの国家レベルの事業になると いう前提である。それぞれの国が現在手が けている品種改良事業 ( それに伴う生殖質 のコレクション ) を維持するために遺伝的 変異を必要としているわけだが、それは各 国が自らの責任で対応すべき問題と考える べきであろう。従って、新規財源は植物遺 伝資源そのものの重要性を判断基準に据え その植物遺伝資源が見い出される国に対し てその国自身が進めている育種事業のよう な短期的な資金の必要性とは無関係に供与 すべきものであると見なした。 その結果、植物遺伝資源の多様性の中心 地として認知された地域 ( 図 1 : バビロフ センター ( 地図 ) 参照 ) に位置する国々が 財源の主な供与先となるはずである。植物 遺伝資源の保全や利用に関わる国家レベル の事業では、遺伝子銀行を一カ所に設置し その他に近隣共同体レベルの保全活動が複 数行われている。これらの成り立ちは国に よって異なるので、資金配分の都合のため に切り離して考えるわけには行かない。 主要な先進工業国の大部分は植物遺伝資 源の多様性の中心となっている地域から外 れた場所にあるので、財源の主要な受け手 となる資格は与えられないであろう。しか し資金配分を決める際に、候補に挙げられ ている受け手の国の経済力まで考慮に人れ るべきかどうかについては検討を要する。 今のところ「資金供与国」対「生殖質供与 国」という対立図式で考えるのが常識のよ うになっているが、今後は各国の発展に伴 こうした常識は次第に通用しなくなる であろう。さらに、地球規模の保全体制が 機能するようになれば既存の生殖質ばかり でなく品種改良で得られた素材や情報や技 術も「現物供与」の対象として次第に重要 性が増すであろうし、地球規模の植物遺伝 資源保全体制の構成要素となる多様な活動 の一つ一つが、 この先重要な役割と責任を 担って行くことになるからである。しかし、 こうした事がらは大半が可能性の段階にと どまっているに過ぎない。従って必要な財 源の見積りも 1 9 9 3 ~ 2 0 0 0 年の間に 限定して行われてきた。西暦 2 0 0 0 年以 降については、 1 9 9 2 年開催の U N C E D ( 国連環境開発会議 ) で決まった成果が 実施されているであろうし、十分に検討し て算定された財源が利用できるようになっ ているであろう。 資金供与が必要な各種活動の内訳 以下に論ずる財源配分額の見積りは、す べて、利用できる財源に占める百分率で示 した。なお、利用できる財源の総額は 1 9 9 3 ~ 2 0 0 0 年の間 ( 1 9 9 1 年現在の 米国ドル換算で ) 年間 3 億ドルを維持して 行く必要がある。 I BPGR ( 国際植物遺伝資源理事会 ) の現地外保存データベースによれば植物遺 伝資源の登録標本の保有点数は現在およそ 3 5 0 万点に達しているが、そのうちの 5 0 パーセントは中・長期的な貯蔵条件の下 で ( 摂氏マイナス 1 0 ~ 2 0 度の低温下で ) 保存されている。 国家事業 . 現存する多様な植物遺伝資源 に関して、十分な量の標本の収集・貯蔵・ 維持・資料作成を行ったり、種子の冷凍貯 蔵を続けて行くために必要な資金の額を算 出するに当たり以下の条件を前提にした。 ・代替のきかない非常に貴重な標本のうち 現在保存されているものは全標本のごく 一部 ( おそらくは 5 0 パーセント以下 ) にすぎない。 このような貴重な標本は、今後少なくと も二カ所の遺伝子銀行に分納されて保存 されなければならない。 ・複数の遺伝子銀行に収められることにな った標本のうちの不必要な分については ー 169 ー

2. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

1 7 のであれば、 主要伝染病の予防にむけての進展が来世紀の初めまでに見られる 上記の目標達成のためにこれらの活動を緊急に実施する必要がある。 ある種の病気が世界全体に蔓延すれば地球規模の対策が求められる。また地域が 限定されている場合は、地域別あるいは国別の政策を実施することが適正であろ この目標達成のためには、以下の項目が必要である。 ( a ) 国際的コミットメントの継続。 ( b ) 明確なる時間的枠組みによる国別優先順位。 ( c ) 地球規模、国家規模における科学的、財務的インブット。 ( a ) 融資およびコスト予測 U N C E D 事務局は 1 9 9 3 年から 2 0 0 0 年までの期間におけ るこの事業の実施にかかる平均年間費用を国際融資団体からの補助金や条件付融 これらは重要 資による約 1 億 3 千万ドルを含めて、約 1 4 0 億ドルと見積った。 な見積り評価段階で提示されているが、各政府による検討はまだなされていない。 とりわけ具体的な代価や支払いは、条件のないものもすべて含めて、当該政府が 施行する個々の作戦や事業に依存する。 ( b ) 学術的技術的手段 1 9 科学者、金融機関、企業などの間の協力を含む、学際的努力を充 1 9 . 分調整する必要がある。このことを地球規模において言えば、政府間レベルで融 資を行い、できれば国家レベルにおける類似の協力でサポートされるような各国 の研究機関の協力を意味する。研究開発に対するサポートは、関連テクノロジー の移転を図るメカニズムと一体化して、強化を図る必要がある。 ( c ) 人材開発 2 0 情報や専門技術、特に先住民の知識や伝統的な知識、ならびにそ れに関連したバイオテクノロジーを所有し、その交換に参加する地域や国々に関 しては、地球規模の研修と技術移転とが必要である。また開発途上国がパイオテ クノロジー生産プロセスに積極的に参加できるようその内生的能力を作りだし、 高めることが肝要である。人材育成は次の 3 つの段階で実施できる。 ー 102 ー ( d ) 能力蓄積 ( c ) 現場への導入に必要な第三レベルの技術要員の育成。 しての ) 保健要員と、学術管理者の育成。 ( b ) 複雑な学際的研究に必要な ( 新製品の安全なる使用に関する研修対象と ( a ) 基礎研究、製品関連研究に必要な科学者の育成。

3. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

現 - 今 - び ) 」考・察・課題、 はじめに 本会議の参加者たちは、全世界の植 物遺伝資源が直面している危機的状況 に即応した活動が明らかに必要だと確 信している。また参加者たちは、植物 遺伝資源に関わる問題の数々が農業の みならず環境にとっても極めて重要で あることを認識している。 今や脚光を浴びるに到ったこの重要 問題は、環境と開発の問題に特有の結 びつきを考慮することなく、効果的に 取り組むことはできない。 キーストン総会およびマドラス総会の両 報告書はこれらの結びつきを探り、近隣共 同体・国家・国際地域・全世界レベルの各 段階における植物遺伝資源の保全と利用に 関する具体的な勧告の数々を系統立てて提 示した。 これまでの知見および勧告の数々は 慎重に考慮され実施に移されるべきで あるとオスロ総会の参加者たちは訴え ている。しかし、同時に参加者たちは 本報告書がグローパル P G R イニシア チプ ( 植物遺伝資源を守るための地球 規模の先導的試行 ) の実現に向けた勧 告に焦点を合わせるよう強く要請した グローバル p G R イニシアチプは、 れまでのキーストン会議報告書で提起 されてきた合意済みの諸勧告を実行に 移したうえで決定的に重要になるであ キーストン会議シリーズをこれまで積み 重ねてきた結果、幾つかの非常に重要な考 [ 事実・認およて勧 察課題を明確に認識することが出来た。そ れらがなぜ非常に重要かと言えば、植物遺 伝資源が直面している問題の重要な要囚に なっているからである。 こうした考察課題 の例を挙げると、所有権・ ( I P R ) 知的 所有権問題、植物遺伝資源に関する現行制 度の脆弱性財源の深刻な欠如などを見るこ とができる。本報告書ではこれらの決定的 に重要な考察課題に関してオスロ総会でと りあげられた 知見と勧告の数々を以下に提示して行くこ とにする。 植物遺伝資源の保全と利用に関わる諸問題 と役割 はじめに 植物遺伝資源の貯蔵と保全と利用に関わ る活動のすべての領域は I P R 、植物生殖 質の所有権、および遺伝子銀行における植 物生殖質の管理統制の問題を念頭に置いて 検討しない限りは論じることが出来ない。 そして、これらの考察課題はこの 2 0 年近 くの間、数多くの国際的会合で大きな論争 を呼び、数多くの文書を生み出してきた。 近年、これらの問題への関心が高まり、 さまざまな美辞麗句を見かけるようになっ た。少なくともその原因の一部は公共およ び民間機関が一それらは主に経済先進諸国 のものであるが一営利を求めて莫大な資金 を投入したパイオテクノロジーの研究事業 を行うようになったからである。植物遺伝 資源は、パイオテクノロジーによる植物の 改良や金銭的価値のある生化学物質の生産 に役立っ主要な源泉である。これに対して 開発途上国は、その国の民衆たちが植物遺 所有権と I PR ( 知的所有権 ) ー 152 ー

4. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

業者や研究者も人れる機会を与えました。 3 番目に重要な点は、持続的な開発のた めに長期的な戦略を策定していくというこ とです。ミラー博士が話した通り、「世界 保全戦略」はその補完のため、国の保全戦 略が必要なのです。長期的な視野にたって どのようにコスタリカの持続的な成長が可 能であるか考えてきました。コスタリカは 国の中心の山岳地帯に大きな回廊を形成し ているので、生物の多様性がこの上を移行 していくことができます。また、保護区域 のシステムと保全戦略に加えて、新しい財 政的メカニズムが必要になってきたので、 自然保護債務スワップ計画をつくりました。 オランダ政府およびスウェーデン政府の拠 出により、私たちは約 1 億ドルのコスタリ 力の債務を、外国からの拠出金によって買 ったということになります。 その方法はまず、 1 5 0 0 万ドルを寄付 金で集め、そのお金をつかってコスタリカ の対外債務を、およそ 1 億ドルほど債権の 形で買いました。そしてこれと引き換えに コスタリカ中央銀行から約 4 5 0 0 万ドル が現地通貨でコスタリカに提供されました。 これは 1 ドルに対して政府が 3 ドル出した ということです。つまり、単なる外国から の寄付というのではなく、国内政府も外国 からの寄付を何倍にも大きくしていく役割 を果たしたわけです。スウェーデン政府は コスタリカの国立公園全体の分をまかなえ るだけの拠出、寄付をしてくれました。コ スタリカ国内で最も大きい国立公園はすで に買い取られていましたが、私たちはあら たに 5 万 h a ぐらいをこの公園に付け加え ました。本当に、多くの人たちがこの保護 区域にあるモンテ・ベルデに貢献してくれ ました。この保全地区は 1 9 4 9 年にアメ リカから移民したクエーカー教徒が始めた ものです。彼らはコスタリカがすでに軍を 廃止したということを知り、この場所に定 住をしました。そして 4 0 0 ヘクタールの 保護地を 1 9 5 4 年に開拓し始めました。 この居留地がさらに拡大して約 1 3 0 0 0 ヘクタールの敷地になり、現在多くの人が サポートしています。例えばスウェーデン の子供達のグループは国内キャンペーンを 行い、約 1 5 0 万ドルをモンテ・ベルデの 保護のために募金してくれています。つま り、コスタリカは多くの人たちの心に、協 力して何かをやろうという気持ちを引き起 こしたといえます。そして、最後に重要な 点は I N B i 0 をつくったことです。 保全科学がコスタリカで始まったのは約 1 0 0 年前です。コスタリカは小さな国で すが大きな生物資源を持っており、世界中 の科学者がこの保全地域で野心的なプロジ ェクトを始め、保全地域の生物の目録づく りや分類を行うことを考えました。 I N B i 。のある場所は国内でも主要な保全地区 です。私たちはこの保全地区を、経済的・ 知的ューザーと結びつけていこうと考えま した。そのメカニズムとは、まず現地の人 を訓練し、分類学者にしようということで す。だからといって必ずしも科学的な訓練 は必要ありません。現地の人たちの多くは 農民や主婦、生徒などです。このような人 たちはこの仕事 ( 作業 ) に関心を持ってい ます。そこで、収集のための訓練をはじめ ました。まず、昆虫や植物などかれらの興 味を引きそうなものについて収集しはじめ ました。 3 0 人から 3 5 人程の「裸足の分 類学者」が I N B i 。の 1 9 ヶ所の事務所 にいます。彼らが集めてきた標本から新し い種が発見されました。収集されたものは 専門家が分類しますが、数多くの種を分類 出来る専門家は世界的にも 4 、 5 人しかい ないという状況です。ですから生物の多様 性を保全していく上で重要な点は、コスタ リカだけではなく、世界中の科学者の努力 が集まってはじめて可能といえます。 ー 26 ー

5. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

が埋蔵されていました。また、生物的に豊 かで鉱物資源も豊富でした。金が埋蔵され ているということになると簡単に採取され てしまいます。川の中にザルを持っていく と砂金は簡単にとれます。時に、非常に大 きな砂金が取れます。ですから、大勢の人 々が金を求めて来る、大変魅力的な場所だ ったわけです。 ところが、このような事情に対応する政 府の行動が遅く、その結果多くの人々が国 立公園の中に侵人してしまいました。コス タリカは、軍隊を持たない国なので、これ に対して素早い対策がとれませんでした。 ですから、国立公園の中に大勢の人間が人 ってしまったことに政府が気がついた時に はすでに遅かったわけです。現在プラジル では、 1 0 万人から 2 0 万人が鉱物資源を 掘っており、全くコントロールがきかない 状態になっています。コスタリカは小さい 国ですが、問題の深刻さに変わりはありま せん。そこで政府がどのような対策をとっ たかというと、侵入した人々に対して、公 園から出るかわりに代価を支払うと言いま した。代価とは、公園の中で採掘を行わな いことに対して、補償金を支払うという仕 組みですが、公園から外に出ていってもら うために 8 0 0 家族に対して 3 0 0 万ドル を支払わなくてはなりませんでした。しか しその後、国立公園の中に人間が侵入して くることはありませんでした。 ここで重要なことは、もし国立公園を保 護しようと考えるのであれば、まず国立公 園のまわりを見なければならないというこ とです。どこの国においても、兵士を動員 したり、柵を作ることで国立公園を守るこ とはできません。唯一の方法は、公園の近 隣に住む人がその公園の重要さを認識する ことです。地域社会の認識がないと、何ら かの形で破壊されてしまいます。これは大 変重要なことの一つです。 そこで私たちは、パッファーゾーンにお ける持続的な開発の推進が、公園の保護に 必要であると考えました。先ほど述べたよ うに、生物の多様性は責任ある形で利用す ることによって守られます。もしそれが熱 帯地域における開発プロセスの一部分とな れば、生物の多様性は守られるということ です。従って、コスタリカから私たちが学 んだ教訓は、他の国にも当てはまると思わ れます。 最初に私たちが行ったことは、環境に対 して閣僚レベルの地位を与えることでした。 なぜならば、保全の場合、高いレベルでの 政府のリーダーシップが必要だからです。 しかし、他の省庁が問題を十分に理解して いないということがありました。例えば当 時、ある農業地帯でイナゴが発生するとい う問題が生じました。農業省はさっそく国 立公園に D D T を散布しようとしましたが 閣僚レベルにおいて D D T を撒くかどうか の議論が行われました。そこで、科学的に みて害虫というのは自然の環境の中でずっ と生き延び繁栄することはできないと考え 散布しないという決定を内閣は下しました。 その結果、国立公園に散布の必要はなくな りました。 2 番目に重要なのは、保全地区をつくる ことです。コスタリカは 9 0 程の保全地区 や保護区をもっていますがこれらの地区は 政府のさまざまな管轄によって保護されて います。コスタリカは資源が少ないので、 地域ごとに分散化し保護システムを設立し なくてはならないと考えました。それには 森林サービスや国立公園サービス担当の人 たちが協力しなければなりません。そこで 私たちは、生態的に類似している地域保全 ユニットというのをつくりました。そして 人々が共同で力を合わせて何をするのが最 も重要であるか、地域に住む彼ら自身が決 定できるようにし、それぞれの地域に観光 ー 25 ー

6. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

(j) 遺伝資源の原産国あるいは遺伝資源を供給する国々ー特に開発途上国のパイオテ クノロジーの発展と、かかる資源に由来する製品の商業的活用から便益を受ける権利を実 効のあるものとするための対策や取り決めを展開すること。 行動 ( a ) 管理関連活動 しかるべきレベルの政府や自治体は、自国の政策と慣行に従って、また関係 1 5 . 5 する国連機関、該当する場合には政府間機関と協力して、必要な場合には国内政府組織と 先住民とその地域社会、 NGO 、その他業界・学会をふくむ団体の支援を得て、かつ国際 法の求めるところに従って、該当する場合には、下記の各項目を実施するものとする。 (a) 教育や研修の必要性を考慮に人れつつ、生物の多様性の保全や生物資源の持続可 能な利用のための戦略・計画・行動計画を新たに展開し、あるいは既存のものについては これを強化すること。 (b) 食糧や農業に対する陸生・水生の生物資源や、遺伝資源の特別な重要性に格段の 注意を払いつつ、生物の多様性の保全や生物資源の持続可能な利用に対する戦略を、該当 する部門別・部門間の計画・プログラム・政策に取り込むこと。 (c) 生物の多様性の保全や生物資源の持続可能な利用にとって重要な生物の多様性の 構成要素を識別し ; 生物資源や遺伝子資源に価値を与えるとともに生物の多様性に対し有 意の影響を及ぼすプロセスや活動を明示し ; 生物の多様性の保全や生物資源・遺伝資源の 持続可能な利用の潜在的な経済的意義を評価し ; かっ優先すべき行動を提案するために国 内調査その他の方法を採用すること。 (d) 生物の多様性の利用・維持・増加に資する農業・農林業・林業・放牧・野生生物 管理に関する伝統的な手法などの、持続可能な生産システムの推進をふくむ生物の多様性 の保全や、生物資源の持続可能な利用を奨励するために有効な、経済的・社会的・その他 のインセンテイプを実施すること。 (e) 生物の多様性の保全や、生物資源の持続可能な利用によって生ずる便益の公平か つ公正な分配を行う観点から、かかる保全や利用に対する伝統的ライフスタイルを具現す る先住民や各地域住民の社会の知識・工夫・慣行を尊重・記録・保護するとともに幅広い 応用を推進する、各国の法律体系に応した行動を取ること、また女性をふくむこのような 地域社会に対し生態系の保全と管理に関わらせるメカニズムの実現を推進すること。 (f) 在来種・栽培種・培養種 ( cultur species) を含む、陸生・水生の主要種の生物 学的特徴や繁殖能力 ; 観察や調査台帳作成に関する新技法 ; 生物の多様性の保全や進化の ー 90 ー

7. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

が必要です。ホットスポットというのは、 生命が生まれ出ている場所のことで、海洋 生物の重要な生命の源です。例えば、生産 性の高い沿岸地域、特に河口域・汽水域・ マングロープ林・サンゴ礁などがそうです。 沿岸の保護地域は、陸上の集水域を含むと 同時に、遠洋生態系まで伸びるものでなく てはなりません。ですからサンゴ礁を保全 しても、その近くの島の森林を伐採したと いうことになると、土が流れ出てサンゴ礁 は破壊されてしまいます。サンゴ礁を保全 するためには沿岸地域だけではなく、遠洋 地域・分水嶺・深海についても考慮しなけ ればなりません。このように、海洋の保全 となると、陸上の保全に比べてかなり大が かりなものになります。 2 番目に、日本には漁業権というすぐれ た政策があるので、現在海洋で行われてい る管理は大変すばらしいものだと思います。 このような政策や管理、そして割当などが 種の保全にとって重要だと思います。たと えば、少数の種に関しての割当なども重要 で、これが北海での共同市場の政策になっ ています。北米地域においても、このよう な傾向にあります。国際的な協力について も現在は少しずつ進んでいるといえるでし よう。 結論として、私たちは科学的な知識を より一層収集しなければいけないと思いま す。 1 9 7 7 年から 7 8 年にかけて、ガラ パゴス海溝において、生命の重要なシステ ムが深海の中にあることを発見しました。 世界の生物のほとんどが光合成による葉緑 素の生成と食物連鎖を通じて生命を営んで います。しかし、そこでの調査結果 1 4 年 前に地球上にはまったく異なった生態系の システムがあり、深海にはメタンガスや二 酸化炭素で生きている生物がいるというこ とがわかりました。これらの生物は、深海 の温泉がわくところで暮らしています。温 泉の温度は 3 0 度から 3 0 () 度あります。 このパクテリアは 2 0 0 度から 2 5 0 度の 温度でも生きることができます。つまり、 さまざまなミネラルが溶け込んだ残留物や 温泉の中で、光合成も行わないで生きてい る生物の存在がわかりました。それらが、 現在の地球の生態系の一部をつくっている わけです。 その後、日本海溝において、海溝のキャ ンペーンが行われました。そして現在、日 本とフランスは南太平洋のフィジーの海溝 とトンガの海溝において、共同研究を行っ ています。そして、アメリカが 6 0 パーセ ント、フランスが 4 0 パーセント、日本が 1 0 パーセントを拠出した共同研究を行っ ています。そこで、私たちは約 6 0 0 種の 新種を発見しました。私たちは将来のため にもこういった種を保全していかなければ なりません。たとえば「核の冬」による海 洋及び陸上の生物がすべて死滅してしまっ た場合、生命を地上で維持するためには深 海の熱が必要なわけです。海洋の温泉源に は、貴金属や石油、炭素なども含まれてい ます。私たちはこういった点も検討してい かなければなりません。つまり、深海の貴 金属の開発などに関しては、モラトリアム ( 停止期間 ) が制定されなければなりませ ん。テレビで、ロシア・ドイツ・フランス ・アメリカの鉱山担当局が共同で深海探査 を行っているのを見ましたが、この探査は 3 0 0 0 メートルから 5 0 0 0 メートルに すんでいる深海生物にとっては破壊的なこ とにつながりかねません。北極海、太平洋 などにおいてコパルトなどが発見されると 破壊につながりかねない開発が進みます。 例えばカナダの鉱業会社は、クワンデフカ 海溝において、銅・亜鉛・金・銀などを探 査しています。これらの鉱物は、世界にと っては重要ですが、そのまわりにある生物 を破壊してしまい、地球全体の生命の危機 ー 20 ー

8. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

性を持っているか ? ガイドライン 2 : インセンテイプの便益を 受け取る当該地域社会の能力を測定するこ インセンテイプから便益を受け取る村落 や地域社会の能力は非常にまちまちなもの である。ある特定地域社会を対象としたイ ンセンテイプパッケージが効果的であるか 否かは次のような要素によって定まる。 a ) インセンテイプ計画の主要目的 ( ここ でもっとも重要な問題はインセンテイプ が達成すべき保全目的が明白かっ明確で あることである ) b ) インセンテイプを吸収する地域社会の 能力 ( 村落に発展の度合いの高い制度が 存在すれば、制度化の遅れている村落に 比べて、インセンテイプの吸収が効果的 に行われるのが普通である。後者の村落 についてはまず適切な制度の開発が必要 であろう ) c) 管理すべき生物資源の初期状態 ( 既存 資源を管理するインセンテイプは枯渇し た資源を回復するインセンテイプとは異 なるものである ) d) 地域社会の動機付けのレベル ( 協力意 欲や観光などの機会の活用意欲の高い地 域社会は、協力することが自分達の利益 になることであると納得させる必要のあ る地域社会に比べ、はるかに高いレベル にある。後者の場合には、初歩的な推進 キャンペーンが必要な場合もある ) e ) インセンテイプが克服すべき制約事項 ( たとえば、①土地所有権の欠如、②保 全すべき生物資源に対する責任の所在の 不明確さ、③法律に基づいて利用できる はずのオプションや権利に関する情報不 足、④資源・専門技術・適正な市場など の欠如、⑤保全活動から得られる便益に 対する認識不足など ) 。 f ) インセンテイプに対する時間的効果 ( インセンテイプを適用するに必要な時間、 インセンテイプを適用し続ける期間、イ ンセンテイプが望ましい行動変化をもた らすに必要な時間、回収可能な投資の回 収に必要な時間など ) 。 g) 地域社会に対するインセンテイプの分 配方法 ( 確固たる制度を有する地域社会 はその制度によってインセンテイプの分 配を行うことができるが、そうでない場 合には何らかの機構が必要である場合も ある。これはその目的や動機付けの程度 によって変化することは明らかである ) ガイドライン 3 : インセンテイプを内蔵す るプロジェクトにはインセンテイプを成功 に導く上で必要な要素をすべて含めること。 経済的インセンテイプを内蔵するプロジ ェクトの設計や評価においては、疑問に答 えておかなければならない。答えが「ノー」 となる場合は、それに対する説明を加える このような疑問に対する回 べきであろう。 答を求めるよう設計したプロジェクトもあ る。 a ) 管理能力を向上させる必要がある生物 資源が何であるかをプロジェクトは明確 にしているか ? b ) インセンテイプを通じて管理体制を向 上すべき資源の経済価値をプロジェクト は評価しているか ? c ) インセンテイプやディスインセンティ プのパッケージに対し、明白かっ明確な 保全目的が確立されているか ? d ) プロジェクトでは見当ちがいのインセ ンテイプ ( すなわち、生物資源の過剰開 発を奨励する社会的、経済的国家政策な ど ) を識別し、この見当ちがいのインセ ンテイプを克服する手段も明確にしてい ー 59 ー

9. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

2 3 移動性の種が必要とするもの 社会的、経済的、文化的又は科学的に重要であるもの 代表的であるもの、特異なもの又は重要な進化上その他生物学上の過程に 関係しているもの 種及び群集 脅威にさらされているもの 飼育種又は栽培種と近縁の野生のもの 医学上、農業上その他経済上の価値を有するもの 社会的、科学的又は文化的に重要であるもの 指標種のように生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する研究のた めに重要であるもの 社会的、科学的又は経済的に重要であり、かっ、記載がされたゲノム及び遺 第一条 第一部仲裁 附属書Ⅱ 伝子 申立国である締約国は、紛争当事国が、 争を仲裁に付する旨を事務局に通告する。 この条約第二十七条の規定に従って紛 通告には、仲裁の対象である事項を明 示するものとし、特に、その解釈又は適用が問題となっているこの条約又は議定 書の条文を含む。仲裁の対象である事項について、仲裁裁判所の裁判長が指名さ れる前に紛争当事国が合意しない場合には、仲裁裁判所がこれを決定する。事務 局は、受領した情報をこの条約又は当該議定書のすべての締約国に送付する。 第二条 二の当事国間の紛争の場合については、仲裁裁判所は、三人の仲裁人で構成 する。各紛争当事国は、各一人の仲裁人を任命し、このようにして任命された 二人の仲裁人は、合意により第三の仲裁人を指名し、第三の仲裁人は、当該仲 裁裁判所において裁判長となる。裁判長は、いずれかの紛争当事国の国民であ ってはならず、いずれかの紛争当事国の領域に日常の住居を有してはならず、 いずれの紛争当事国によっても雇用されてはならず、及び仲裁に付された紛争 を仲裁人以外のいかなる資格においても取り扱ったことがあってはならない。 二を越える当事国間の紛争については、同一の利害関係を有する紛争当事国 が合意により共同で一人の仲裁人を任命する。 3 仲裁人が欠けたときは、当該仲裁人の任命の場合と同様の方法によって空席 を補充する。 1 2 ー 81 ー

10. (財)日本自然保護協会資料集第33号 生物多様性条約資料集

生物の多様性に関する条約 前文 締約国は、 生物の多様性が有する内在的な価値並びに生物の多様性及びその構成要素が有 する生態学上、遺伝上、社会上、経済上、科学上、教育上、文化上、レクリエー ション上及び芸術上の価値を意識し、 生物の多様性が進化及び生物圏における生命保持の機構の維持のため重要であ ることを意識し、 生物の多様性の保全が人類の共通の関心事であることを確認し、 諸国が自国の生物資源について主権的権利を有することを再確認し、 諸国が、自国の生物の多様性の保全及び自国の生物資源の持続可能な利用につ いて責任を有することを再確認し、 生物の多様性がある種の人間活動によって著しく減少していることを懸念し、 生物の多様性に関する情報及び知見が一般的に不足していること並びに適当な 措置を計画し及び実施するための基本的な知識を与える科学的、技術的及び制度 的能力を緊急に開発する必要があることを認識し、 生物の多様性の著しい減少又は喪失の根本原因を予想し、防止し及び取り除く とが不可欠であることに留意し、 生物の多様性の著しい減少又は喪失のおそれがある場合には、科学的な確実性 が十分にないことをもって、そのようなおそれを回避し又は最小にするための措 置をとることを延期する理由とすべきではないことに留意し、 史に、生物の多様性の保全のための基本的な要件は、生態系及び自然の生息地 の生息域内保全並びに存続可能な種の個体群の自然の生息環境における維持及び 回復であることに留意し、 更に、生息域外における措置も重要な役割を果たすこと及びこの措置は原産国 においてとることが望ましいことに留意し、 伝統的な生活様式を有する多くの原住民の社会及び地域社会が生物資源に緊密 にかっ伝統的に依存していること並びに生物の多様性の保全及びその構成要素の 持続可能な利用に関して伝統的な知識、工夫及び慣行の利用がもたらす利益を衡 平に配分することが望ましいことを認識し、 生物の多様性の保全及び持続可能な利用において女子が不可欠の役割を果たす ことを認識し、また、生物の多様性の保全のための政策の決定及び実施のすべて の段階における女子の完全な参加が必要であることを確認し、 生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用のため、国家、政府間 機関及び民間部門の間の国際的、地域的及び世界的な協力が重要であること並び にそのような協力の促進が必要であることを強調し、 新規のかっ追加的な資金の供与及び関連のある技術の取得の適当な機会の提供 が生物の多様性の喪失に取り組むための世界の能力を実質的に高めることが期待 ー 62 ー