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検索対象: 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略
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1. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

伝統的農民 ・郷土の分類学 ・、営農知識 ・自然周期と気候周期 = 民族生態学者 ・種の適応にづいての、 知識ゞ、 、知識、 ・、植物の潜在的利用 材云統的資源管理技術 ・局地的農耕システム 農業生態学者。の設計と経営 作物と明作物植生の 、利用 ・、 : 地域品種の選抜 , 管 、、、理 ' ・保全、 農民のツるク 軽減 文化と民族科学の保存。 イ伝統的農業生態系、の保存 在来遺伝資源の保全 食を自給カ特続農業投入財べ 0 。 可能性の促進、 依存の下イ農業。 イヒ学肥料 : ッ機械第 変化する環境ヾ べの適応力 不安定な経済状、 : 下での生残 図 16 伝統的な資源管理システムは、生物多様性の効果的な保全と構成要素の持続可能な利用 をもたらす。 ( 出典 : Primack, R. B. 1993. Es 厩な Co 〃 s の宅〃〃召あん g. ). Sinauer Associates, SunderIand, Massachusetts, USA ) 。 179

2. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

生種も含め、 2000 年に 25 万点の保全を目標としている。 なお、遺伝資源の保全は国際的な協調の下に進められるべきであり、我が国はこれまで も FAO 、国際植物遺伝資源研究所 (IPGRI) に対する協力や JICA によるプロジェク トの実施を通じて遺伝資源の保全に向けた国際協力を行ってきたところであり、今後とも 我が国が国際社会の中で期待される役割を果たしていく。 このほか、国税庁醸造研究所では、酵母、糸状菌等の酒類醸造関連微生物についての保 存機関として収集・保存を行っており、菌種目録等のデータベースについて、国際的な ネットワークに参加し情報提供を行う。 また、科学技術庁では、理化学研究所において、動・植物細胞材料および遺伝子材料の 収集・保存・分譲等を行うジーンバンク事業、微生物の収集・同定 ( 分類 ) ・分譲等を行 う微生物系統保存事業を実施している。 厚生省においても、薬用植物全般の収集、保存等に関する研究を行っている。 60

3. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

法」に基づく天然記念物を対象とした事業を行う場合にあっても、十分な計画に沿って適 切かつ効果的な事業の推進に努める。 この場合、野生下での取組との連携を確保しつつ、全体として効果的な種の保存対策が 講じられるよう努めるものとし、国、地方公共団体、動物園、水族館、植物園、試験研究 機関、研究者等の関係者間の連携・協力のもとに効果的に事業を実施するための体制整備 を進める。 また、種の存続が脅かされている野生水生動植物種については、自然水域における絶滅 の危機に対応するため、人工飼育下での系統保存及び増殖技術開発を推進する。 第 2 節動植物園、水族館等における生息域外保全 動植物園、水族館等は、飼育繁殖等のための施設や専門的な知識技術を備えた専門家を 有すること、複数の園で分散して飼育することによる個体群維持のリスクマネージメント や地域的な変異集団の維持が行い易いこと等から、野生動植物種の生息域外保全に資する ことのできる機関である。 ( 社 ) 日本動物園水族館協会においては、動物園、水族館として種の絶滅の防止に積極的 に貢献していくため、同協会のもとに種の保存委員会等の組織を設けて、関係園間で近交 弱勢 ( 近親交配による遺伝的劣化 ) を防ぐための血統登録や飼育動物の移動・管理を行い つつ、飼育繁殖のための取組を進めている。 植物園においても、 部の園では、植物種の系統保存、増殖技術の開発、自生地への植 栽等の取組を実施している。 第 1 節に述べたように、これらの動植物園、水族館等の取組と生息域内での取組との連 携を強化し、全体として効果的な種の保存を図る。 第 3 節遺伝資源保存施設における生息域外保全 地球的視野で生物遺伝資源の賦存状況をみた場合、品種の均一化、熱帯林の減少等によ り、貴重な生物遺伝資源が急速に滅失してしまうおそれがあり、生物遺伝資源の保存が緊 急の課題となっている。このような情勢に対処するため、我が国は、それまでの収集保存 全利用システムである 体制を抜本的に再編強化し、生遺伝資う総ム、 「農林水産ジーンバンク」を整備した 1985 年 ) 。農林水産ジーンバンクは、 ( 物をの 、林澡類中心とする欠産生物を保全対象とし、生物遺伝資源の収集、 物、微 特性評価及び保存等を行うものである。 同バンクに保全されている生物遺伝資源を活用し、新たに栽培されるべき作物新品種を 育成したり、栽培が途絶えてしまった作物を復活させる等、農林水産ジーンバンクは、生 物多様性の確保という観点からも大きな成果を上げている ( 例えば植物種では 20 万点を保 全。なお、その大部分は、「生物多様性条約」の発効以前に収集されたものである。 ) 。 ジーンバンクの業務は、長期的な計画に沿って実施していくことが大切であり、現在、 1993 年から 2000 年までの事業計画 ( 第 2 期計画 ) にしたがって推進中である。第 2 期計画で は、作物の近縁野生種の保全にも力をいれることとしている。植物については、これら野 59

4. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

第 3 節野生動植物の保護管理 1 基本的考え方 野生動植物は、生態系の基本的構成要素であり、その多様性によって生態系のバランス を維持している。我が国は自然環境の変化に恵まれ、狭い国土にもかかわらす、数多くの 固有種を含む多様な野生動植物種を有している。しかし、第 1 部で記述したように、現在 我が国では多くの動植物の種がその存続を脅かされている。我が国に存在するような野生 動植物の多様性を維持するためには、少なくとも生物種及び独特な生物群集を人為的に消 滅させてはならない。また、絶滅のおそれのある種や希少な種を保全するだけでなく、地 域の自然に根ざして生息・生育している普通種も含めた多様な動植物相を全体として保全 していくことが必要である。また、遺伝資源としての野生動植物種の利用に当たっては、 持続可能な利用を基本とすることにより、その多様性の確保を図ることが必要である。ま た、鳥獣の急激な増加等による生態系の攪乱を適切な管理のもとに防止することも多様性 を保全するという観点から大きな意義がある。 2 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存 生物の種は、生物圏における基本単位であり、その絶滅は種レベルの生物多様性の減少 を引き起こすだけでなく、その種が構成要素となる生態系のバランスを変化させるおそれ があること等から、種の保存は極めて重要であり、種の絶滅の防止のための施策の推進は 緊急の課題である。 日本でも数多くの種が絶滅の危機に瀕している現状が明らかにされたことを受け、種の 保存のための積極的かっ総合的な対策を講するため 1992 年に「絶滅のおそれのある野生動 植物の種の保存に関する法律」 ( 以下、「種の保存法」という。 ) が制定された。 絶滅のおそれのある野生生物の保護対策の基本は、自然状態における個体群の安定的な 存続を保証することにある。このため、「種の保存法」に基づく「国内希少野生動植物 種」の指定、捕獲・流通等の規制、生息地等保護区の指定、保護増殖事業の実施をはじめ とする各種施策を総合的に推進する必要がある。また、絶滅のおそれのある野生生物種の 保存を適切に推進する上で、各種調査研究により、科学的な知見を集積することが重要で ある。さらに、種の保存施策を実効あるものにするためには、国民の種の保存への適切な 配慮や協力が不可欠であるので、種の保存の重要性に関する国民の理解を促進し、普及啓 発活動を積極的に推進する。 ( 1 ) 国内希少野生動植物種の指定、捕獲・譲渡し等の規制 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図るためには、個体に対する過度の捕獲・ 採取等の直接的な圧迫要因の除去が必要である。このため、国内において絶滅のおそれの ある野生動植物の種を国内希少野生動植物種に指定し、捕獲、譲渡し等を規制し、種の保 存を図っている。捕獲、譲渡し等については、その種の保存の重要性にかんがみ、学術研 究又は繁殖の目的その他その種の保存に資する目的で行うものとして許可を受けた場合を 36

5. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

大する。また、緑のオーナー制度の普及、国民の手による植林等、国民が直接森林づくり に参加する機会の拡大を推進するため、体験林業や森林教室の開催等各種の普及啓発活動 等の森林・林業教育の充実を図る。 また、国民と国・地方公共団体等が共同して森林を育てる分収林制度を推進する。 ( 2 ) 森林の保全、整備の推進 ア森林資源整備の推進 1992 年に新たに策定した : 「森林整備事業計画」に基づき、造林・林道事業を計画的に推 進する等、国民のニーズにこたえる多様で質の高い森林の整備を推進することとし、具体 的には、①再造林、保育、間伐等の実施による健全な森林の造成、複層林施業、長伐期施 業の推進、②育成天然林施業の推進、保健・文化・教育的活動の場としての整備、③流域 林業活性化、森林の整備、維持、管理のための林道ネットワーク及び高密度な林内路網の 形成、④山村の活性化に資するための林道の開設等と併せて行う生活環境施設の整備のた めに計画的な投資を推進する。 イ林木育種の推進 森林資源整備の基本となる貴重な遺伝資源の確保等を図りつつ、国民のニーズに即応し て、生長、材質、病虫害抵抗性等に優れた品種の育成及びこれらに必要な技術開発を推進 する。 ウ治山事業の推進 「治山事業五箇年計画」に基づき、重要な水源地域における森林を「緑のダム」として 面的、総合的に整備するとともに、集落の生活用水確保に資する身近な森林及び良質な水 の供給に資する森林の整備、都市周辺等における広域的な生活・防災空間としてのグリー ンベルトの整備、身近な生活環境を保全する森林の整備、貴重な自然、景観の保全等近年 の環境保全の要請の高まりに対応する森林の整備等を計画的に推進する。 工森林の保全対策の充実 ( ア ) 森林の保全を図り、その有する多面的機能の確保に資するため、森林病害虫 等の防除を実施する。特に、松くい虫被害対策については、保安林に指定された松林等の 「保全する松林」について、被害木の除去等の各種防除を総合的に実施するとともに 「保全する松林」の周辺松林について、広葉樹林等への樹種転換を積極的に推進する。 ( イ ) 森林の適正な保全管理を図るため、保安林や林野火災等の森林被害が多発す るおそれのある森林について森林パトロールを実施するとともに、全国山火事予防運動の 実施等林野火災の未然防止についての啓発活動、林野火災多発危険地域への林野火災予防 資機材の配備等を実施する。 ( ウ ) 酸性雨等による森林への影響を早期に把握し、必要な対策を講じるため、酸 性雨等森林被害に関するモニタリングを実施するとともに、酸性雨の発生機構及び森林へ の影響に関する調査・研究結果を踏まえ、酸性雨による影響の未然防止を目標に大気保全 施策と連携を図りつつ森林を健全に保っための施業技術の確立に努める。 オ都市近郊林、里山林の整備 生活環境保全、保健休養機能の向上のため、都市近郊及び集落周辺の森林において景観 の保全、森林とのふれあいや休暇拠点の広域的な整備を推進する。

6. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

を図っており、我が国の生物多様性の保全に寄与している。 ( 2 ) 天然記念物保護制度の充実 天然記念物が我が国の代表的な自然として国民の間に広く親しまれ自然環境の保護思想 のさらなる普及のための素材として機能しうること、生物多様性の保全にも寄与してきた こと等にかんがみれば、その一層の充実を図ることは、自然との共生の考え方の理解の促 進に大いに資するものと言える。 そのため、多様性に富んだ我が国の生物種の体系的な保護にも配慮した天然記念物の指 定の推進を図り、一方で適切な天然記念物の保護管理及びその活用による自然環境の保護 思想の普及啓発に役立つ施設の整備等を、地方公共団体等との連携も図りつつ一層推進す る必要がある。 なお、地域を定めすに指定されている 72 種の野生動物については、生息環境との一体的 な保護によってより適切な保護措置が期待できることから、一定の地域を定めた指定形態 への移行を検討することの必要性も指摘されている。 8 保護林等 国有林のうち、原生的な森林生態系等自然環境の保全を第一に図るべき森林について は、「国有林野経営規程」に基づき、「自然維持林」として区分し、原則として人為を加え ず、自然の推移にゆだねた保護・管理を行うこととしている。 1995 年 4 月 1 日現在、「自 然維持林」として区分された森林は、国有林総面積の約 18 % に当たる約 141 万 ha となって いる。 さらに、「自然維持林」の中でも、希少な野生動植物の保護、遺伝資源の保存等自然環 境の保全の上で特に重要な森林については、「国有林野経営規程」「保護林設定要領」等に 基づき、「保護林」に指定して積極的にその保全を図っている。保護林は、その保護を図 るべき対象や保護の目的に応じて、「森林生態系保護地域」「森林生物遺伝資源保存林」「林 木遺伝資源保存林」「植物群落保護林」「特定動物生息地保護林」「特定地理等保護林」「郷 土の森」の 7 種類に区分されており、 1995 年 4 月 1 日現在、合計で 787 箇所、約 47 万 ha が 指定されている。 これら「自然維持林」や「保護林」については、「国有林野経営規程」「保護林設定要 領」等に区域の選定・設定手続きや取扱いの指針を定め、適切な保護管理を図っていると ころである。具体的には、森林官等の営林署職員による巡視を通じた保護対象の状況の把 握や人り込み者に対する指導・啓蒙、山火事・病虫害等の被害の防除、大規模な林地崩壊 や地すべり等の災害の復旧措置等を実施しているほか、個別の保護対象の特性に応じて個 体の保護や生息・生育地の維持・保全に必要な措置を講じている。 7 種の保護林のそれぞれの概要は、以下のとおりである。 ( 1 ) 森林生態系保護地域 森林生態系保護地域は、我が国の主要な森林帯を代表する原生的な天然林、またはその 地域でしか見られない特徴を持っ希少な原生的な天然林を保存することにより、森林生態 第す新すま物新マ

7. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

図る。特にアジア地域については、共通の渡り鳥が生息する等生物の分布や生息・生育環 境の観点から相互依存関係が特に深く、重点的に協力を展開する対象地域である。また、 その他の地域については、特に、生物多様性保全上重要な地域における生態系、種、個体 群の保全を中心に協力を進める。 生物多様性保全の総合的なプロジェクトとしては、日・米・インドネシア三国協力の下 に、インドネシアで実施している保護地域の管理と情報の整備を支援する生物多様性保全 プロジェクトがあげられる。 ( 2 ) 農業分野 我が国は、 FAO の植物遺伝資源委員会等への参加、アジア・太平洋地域動物遺伝資源 保存対策強化事業に対しての信託基金への拠出等を通じて、途上国の農業及び食糧増産に 寄与できる遺伝資源の保全問題の解決及び持続可能な利用の促進に取り組んでおり、今後 ともこのような協力を積極的に推進していく。 将来の飛躍的な農業等の発展に寄与しうる有用な生物資源の滅失・逸散が懸念されてい る多くの開発途上国においては、生物資源の評価、保全及びその適切な利用への協力が重 要となっている。現在、農林水産省国際農林水産業研究センター等が開発途上地域やロシ アにおいて、地域に適した品種育成等に関する共同研究を推進しているところであるが、 今後とも、生物資源の保存・評価・利用等に関する国際共同研究を積極的に推進する。 ( 3 ) 林業分野 熱帯林の持続可能な経営の推進に資するためぐ国際熱帯木材機関 (ITTO) に対して資 金提供等積極的な協力を行っているほか、同機関との共催で天然林施業、生物多様性の保 全等をテーマとしたセミナーを開催し、技術的、制度的検討を実施している。 また、熱帯林の持続可能な経営の確立に資するため、植生遷移に着目した森林施業方 法、野生生物の生息地の保全のための森林管理手法及び地域住民の定住環境等に配慮した 森林管理計画の策定方法に関する調査を実施している。 生物多様性に関連する二国間協力としては、インドネシアにおける「熱帯降雨林研究計 画フェーズ 3 玉プラジルにおける「アマゾン森林研究計画亠等のプロジェクト方式技術 協力を実施しているほか、マラウィにおいて「コタコタ地域持続的資源管理計画調査」を 開発調査として実施している。 今後は、①天然林の生態系に関する基礎的な研究を積み重ね天然林施業技術の体系化を 推進していくとともに、これらを実際の現場での施業技術の的確な運用に結びつけていく ための実行体制の整備とその核となる森林・林業技術者の確保・養成に必要な技術協力・ 資金協力を拡充強化する、②代表的な生態系や景観を有した森林や、絶滅のおそれのある 種が生息する森林の管理に関する技術協力、資金協力を推進する。 ( 4 ) 漁業分野 近年、開発途上国においては、沿岸域の有用資源の最適利用に強い関心を示しているも のの技術的、経済的な面において適切な対応ができすに苦慮しているほか、いまだ当面の 食糧確保、就業の場の確保のため漁獲努力量の投人を優先せざるを得ない状況にあるとこ 117

8. 多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略

としており、これにより多様な鳥獣と生息環境の確保が図られている。 設定された鳥獣保護区においては、定期的な巡視、鳥獣の生息状況の調査等の管理を実 施するとともに、水鳥の餌となるマコモ等の植栽や生息する池に水を安定して供給する水 路を設置する等、生息環境の保全や改善のための事業を積極的に実施している。 ( 2 ) 鳥獣保護区の設定の推進 島獣保護区の設定は、鳥獣の保護を図る上で根幹となる制度であり、この設定や特別保 護地区の指定により、植生や鳥獣の餌生物等を含む生息環境が一体として保全されるとい う効果もあることから、今後とも積極的に設定の推進を図るものとする。 その際、鳥獣の生息状況や生息環境等の保全を進めるほか、渡り鳥等にあっては、その 移動性等を踏まえ国設及び都道府県設の鳥獣保護区が適切に配置されるよう留意する。 また、我が国には変化に富んだ自然環境を反映して、多様な生態系が存在し、多種多様 な生物群集がみられるが、鳥獣保護区の設定に当たっては、多様な鳥獣の生息環境を確保 するという視点に立って、多様な生物群集のタイプが含まれるよう努める。 ( 3 ) 鳥獣保護区の管理の充実 鳥獣保護区においては、今後も調査及び巡視を主体とした管理を充実するとともに、設 定区分、鳥獣の生息状況に応じ、営巣環境の整備や水鳥類の渡来地における水路の整備、 植栽等の生息環境改善を推進する等、きめ細かい管理を実施する。 7 天然記念物 ( 1 ) 天然記念物の指定と保護管理 我が国では現在「文化財保護法」に基づき、多様性に富み固有の文化の形成にも与って いる自然を記念し、学術的に貴重な自然を天然記念物として指定しその保存を図ることと しているが、その歴史は、 1918 年の「史蹟名勝天然紀念物保存法」に始まる。希少な種を 含む我が国固有の動植物や極相を異にする自然林の原生林及び湿地や山地の様々な植生等 自然度の高い動植物のほか、人為的にもたらされた里山の二次的自然環境等を指定し、そ の保存を図る天然記念物は総数で 955 件にのばり、我が国の生物多様性の保全にも大きく 寄与してきた。 特に一定の地域内の動植物及び地質・地形にいたるすべての自然を生態系として指定す る「天然保護区域」は、我が国の多様な生態系の保護に大きな役割を果たしてきた。 天然記念物に指定された区域においては生育・生息環境の現状を変更する行為を規制 し、また指定された貴重な動物種にあっては捕獲を規制し繁殖や生息に影響を及ばすおそ れのある行為の予防等を通じてそれらの保護を図ることになっている。 さらに、指定された天然記念物については、その適切な保護管理を期すため、現状の把 握調査、保存管理計画の策定、生育・生息環境の維持・改善や給餌等による個体数の回復 措置の実施、農作物等の総合的な食害防止対策の実施、民有地の買い上げ等を、地方公共 団体等との連携により行っている。 なお、地方公共団体においても条例により特異で貴重な自然を天然記念物に指定し保護

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各地で地域の条件に適応しオ云統的な在来種保全が一部の農家等により行われている。 在来種は一般的に遺伝的な多様性をしており、新たな植物品種の育成等において貴重な ものであり、その収集と特性調査が求められている 9 なお、その一部については種苗供給 が行われている。 また、国では農林水産ジーンバンク事業により植物等の遺伝資源を国内外から収集し、 分類・同定、特性評価、増殖及び保存するとともに、遺伝資源及び遺伝資源に関する情報 を研究用として提供している。ジーンバンクに保存されている遺伝資源は病害虫抵抗性品 種等の新たな品種の育成の素材として利用される等持続的利用が図られている。 なお、国、都道府県、民間によって育成された新品種について丁種苗法」に基づく保護 が行われている等遺伝資源の適正な利用が図られている。 このような植物遺伝資源の保存と持続的利用を図ることは、人類の貴重な財産である植 物の種・遺伝子レベルの多様性を保全する上でも、食料生産の上でも重要であることを踏 2 環境保全型農業の推進 まえ、今後ともこれらの取組の充実を図ることとする。 たな農法の推進、④家畜ふん尿の適切な処理と有効利用等を基本としたリサイクルの促 境負荷の軽減、③土づくり等を基礎とした、新たな技術を取り人れた技術指針の策定等新 等における推進体制の整備、②農薬の使用基準の見直し・化学肥料の適正使用等による環 基本理念、行動指針等を定める「憲章」策定等民間レベルの運動の展開及び国、都道府県 全国・プロック推進会議による優良事例を表彰するコンクールの実施、環境保全型農業の ,. 況の - フ -- オ、ロ - = 、推進目標と達成法の明確化を掲げ、その達成に向けた具体策として、① 的な目標として、社会的コンセンサスづくり、一推準の拡大と定着化、対策の強化と進捗状 化・定着 ( 第三段階 : 1998 年度 ~ ) の三つの段階的な流れを示した。その上で、短・中期 増加・面的に拡大 ( 第二段階 : 1994 ~ 1998 年度 ) 、環境保全型農業の取組を全体に一般 環境保全型農業の準備的取組 ( 第一段階 : ~ 1993 年度 ) 、環境保全型農業の取組を各地に せて、段階的かっ着実に推進しなければならないとしている。都道府県段階を中心とした るとともに、生産・流通・消費の幅広い関係者の合意を得ながら、技術開発の進展に合わ この中で環境保全型農業の推進は、営農現場における多様な条件に応じて行う必要があ 国では、 1994 年度に「環境保全型農業推進の基本的考え方」を示した。 農業の推進を重要な柱として位置付け、現在、その全国的な展開を図っている。 このため、「新しい食料・農業・農村政策の方向」 ( 1992 年 6 月 ) において、環境保全型 は、環境 ( 生態系 ) に悪影響を及ばすという面もある。 て、化学肥料、農薬が不適切に使用されたり、家畜ふん尿が不適切に処理された場合等に 酸性窒素による地下水汚染は生じにくい特徴を持っている。しかしながら、農業全般とし 公益的機能を有している。また、水田土壌は窒素をアンモニア態として吸着するため、硝 高い生産システムであり、土壌浸食がなく、洪水調節機能、地下水かん養機能等の多様な これに対し、我が国の農業の大宗を占める水田農業は、基本的に、連作可能な持続性の 水汚染が農業問題にとどまらす、大きな社会問題となっている。 近年、欧米の農業生産活動においては、土壌浸食 ( ェロージョン ) 、肥料等による地下

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第 4 節保護地域周召豐開発の適正化 1 基本的考え方 我が国の保護地域には必すしも生態系保全の観点から十分な面積を有していないものが ある。また、湿原等保護対象の生態系に周囲 ( 湿原では主に上流部 ) の広大な地域の開発 行為が大きな影響を及ばす場合がある。 こうした保護地域においては、保護対象の自然を適切に保護するために、保護地域の周 辺地域の開発を適切に誘導することが必要である。 保護地域の周辺地域に何らかの規制がある場合には、保護地域の保全にも資するように その適切な運用を図ることが重要である。 また、保護地域内の生物多様性に大きな影響を及ばす行為が行われないように、周辺地 域の管理者及び土地所有者の理解と協力を得ることが必要である。このため、ます、保護 地域の生物多様性への理解を深めるために関連情報の積極的な提供等により普及啓発に努 めるとともに、特に周辺地域の開発行為が保護地域に影響を及ばすおそれのある地域につ いては、関係者を含めた連絡調整のための組織の設置等により、関係者の理解と協力の下 に保護地域の周辺地域の開発が適切に行われるように努める。 さらに、必要に応じて、保護地域の生物多様性を保全するための広域的な環境管理の指 針作成や奨励措置についても検討する。 2 各種取組 ( 1 ) 森林 第 1 節で記述した国有林の「保護林」に外接する森林においては、「保護林設定要領」 業を行うこととし、一堡埜内 2 第の効果的 , な維持形成を図る。 「保護林」の中でも「森林生態系保護地域」については、 UNESCO の「人間と生物圏 計画」 (MAB 計画 ) の考え方を参考にしつつ、森林生態系の厳正な維持を図るべき地区 ( 「保存地区 ( コア ) 」 ) と、保存地区の森林に外部の環境変化の影響が直接及ばないよう 緩衝の役割を果たすべき地区 ( 「保全利用地区 ( バッファーゾーン ) 」 ) とに区分してい る。この「保全利用地区」は、自然条件等に応じて、森林の教育的利用や、大規模な開発 行為を伴わない森林レクリエーションの場として活用することとしている。保全利用地区 においては、人り込み者が一部地域へ集中することを防止するとともに原生的な森林の中 で森林の働きと森林との接し方を学ぶ機会を提供することを目的として、良 ) 休 みー案内板等の教育用施設を整備するとともに、パンフレッりを 2 置里資を , 一 - ー して積極的な普及啓発に努める森林生態系保護地域バッファーゾーン整備事業」を実施 ( 2 ) 農地 している。 42 貴重な野生動植物の宝庫である湿原を、周辺農地の影響から保全するために、農地から