上海 - みる会図書館


検索対象: 交流文化 volume 08
9件見つかりました。

1. 交流文化 volume 08

を醸し出している。これを踏まえて訪日旅行年から上海発 ( 〇七年から天津発を追加 ) 福岡、 江省 ) 、南京市 ( 江蘇省 ) の旅行業界に新規旅行 市場は富裕層の集中する都市単位でとらえな長崎、鹿児島、沖縄と済州島に寄港するクルー商品を導人し、商品やルート、品質の多様化 ければな、りない また、これら都市の市場のズを開始し、〇八年からは米国のロイヤルカを中・長期的に推し進めるモデル事業を開始 発展の状況は、現在まで団体観光旅行査証のレビアン社が済州島と福岡に八万トン級のクすることにした。これが前述の中央道ツアー 解禁の時期によりグループ分けするとわかり ルーズを就航させた、両社で年間一一万以上を商品開発事業である。 やすい ( 表中国市場におけるツアー商品造成・販送客したが、今後増便や船の大型化も狙って各都市の主要旅行会社四 5 五社すつに商品 売の状況三三ページ参照 ) 。 造成・販売をしてもらうことに漕ぎ着け、開 広東省、北京市、上海市の第一グループが このほか主要市場では年に一 5 数回日本の始年の二〇〇五年度に一一十団体四百四十九人、 先進市場であり、初来日の旅行客が参加する地方都市にチャーター便が就航している都市〇六年度に五十六団体千八百四十四人、〇七 コールデンルート ( 東京、箱根、富士山、京都、大阪 ) もあるが、定期便を持たない内陸部の都市か年度には七十九団体一一千二百七十二人と年々 のほか、上海では北海道や中央道ルート ( 名古らの誘客に有効な手段となっている。 実績を伸ばし、今では定番商品として旅行会 屋から中央高速沿いに八ヶ岳、山梨県へと結ぶ ) 、沖上海では既にリピーターが観光客の二 5 三社が進んで販売してくれるようになった。特 縄ツアーが定番として催行されている。広東割くらいに達し、また高価格・高品質のツアー に第二グループの南京市では、中央道ルート 省では東北、九州、立山黒部方面へのツアー商品も安定して販売されている。上海を中心 が「新ゴールデンルート」として従来のゴール 商品が催行されている。これらの三大市場周として第一グループでは、〇六年くらいからデンルートに取って替わった ( 注一 ) 。また、ア 辺に位置する第二グループの都市では、まだ観光旅行ルートや品質の多様化が始まってい モイや福州市 ( 福建省 ) 、青島市 ( 山東省 ) 、北京 初来日客がほとんどであるため、ゴールデンる。揺籃期から成長期に移行しつつある。実は、市にも中央道ツアー商品が導人され、も、つ一つ ルート以外は北海道ツアーくらいしか催行実筆者が上海に赴任した〇四年には、中国からの戦略である他の市場への拡大も進んだ 績は出ていない日本との直行便がほとんどの訪日観光といえばほとんどがゴールデンルー 中央道ツアー開発が軌道に乗ると、 なく、経済発展も沿岸部より遅れている内陸トであり、安売り競争で旅行会社の利幅は減—Z+O 上海事務所は、ツアールートのさら 部に位置する第三グループでは、ゴールデンるとともに、宿泊施設や食事、サービスの質なる多様化を推し進めるため、〇七年度から ルートが市場のほとんどを占めている の低下が旅行客に及んでいた。—Zk*O 上海東京を人れない関西起点のツアー開発を企画 主に第一および第一一グループで注目すべきは、事務所では長野県と愛知県の協力も得て、こし、上海の主要旅行会社に販売を開始しても 日中韓を結ぶクルーズが年々活発化しているの動きに歯止めをかけ、日本への観光客数をらった。一年目は八百人と苦労したが、〇八年 , ) とである。イタリアのコスタ社は、一一〇〇六伸ばすには、ます上海市とその周辺の杭州市 ( 浙度には半年で既に約九百人の送客があり、当 0

2. 交流文化 volume 08

0 第。嘉 0 発展段階誘客活 文平田真幸 ( 日本政府観光局 (JNTO) 海外プロモーション部次長 ) 写真町川秀人一 上海でいま「日旅行プ、一ム」が起きているという。台湾海にて 訪日旅行誘数事業に従事してきた筆者は、中国を中心とけ : 東アジア域 の海外旅 ? 成長期に遭遇した。 2000 年代の上海と 90 年筏の台湾。のニ つの市場を比較することで、効果的な誘客活動のヒうトが見えてく 、朝行 JAPAN 筆者はこれまで、台湾 ( 一九九〇、・九六年は日 本観光協会台湾事務所、以下「日観台」 ) 及び上海 三〇〇四、・〇八年は—ZF*C 上海事務所 ) におい て、日本への旅行客誘致事業に従事してきた。 れ海外旅行の成長期に遭遇し、市場の変化の 様子をつぶさに体験することができた。そして、 最も注力したのは短期的には訪日客の増大で あるが、中期的には訪日旅行市場を開拓し発 展させることであった。一一〇〇〇年代の中国本 上と九〇年代以降の台湾という一一つの市場を 比較することによって、訪日旅行市場の発展 段階の一般論のようなものが見えてくるように なり、今後の訪日客誘致の重要なヒントが隠 されていることに気づかされる。 中国の海外旅行の歩み 従来から中国政府は、自国の経済発展に振 り向ける外貨獲得を優先するため、「外国人に よる中国旅行は強力に、中国人の国内旅行は 積極的に、中国人の海外旅行は適度に推進す る」政策をとってきた。中国本上からは公務 や商務のほか親族訪問目的で、一九八一一一年から 順次香港、マカオ、東南アジア諸国に渡航が できるようになった。一九九〇年代に人り、毎

3. 交流文化 volume 08

迎 日 Q) 善一 年一一桁の経済成長が続き、「世界の工場」とし て国民の可処分所得も増大した。さらに海外 の情報が国内に人るようになると、中国政府 は人々の海外への好奇心や旅行の願望は抑え きれす、一九九七年に団体というかたちであ るが観光旅行を解禁した。日本への第一陣は 一一〇〇〇年九月に到着し、その後も各国への 渡航解禁が続く。一一〇〇八年には米国に続き、 ついに政治的懸案を抱えながらも台湾への観 光旅行が解禁となった。 揺籃期から成長期への兆し 上海の旅行会社の言葉を借りると、現在、 上海では「日本旅行プーム」が起こっている という。世界各方面への旅行の中でも、季節靴 感溢れる自然や国際級のテーマパーク、日本 独特で保存状態がいい文化・歴史遺産、最新場 の商品が割安で購人できるショッピングに加え、 安全、清潔、時間を守る信頼性、サービスの 良さ等がツアー客にも旅行会社にも好評で、 公の情報をあまり信頼しない国柄ゆえ、特に 中国は日本の一一十六倍ある広大で地形の変 化の富む国上、悠久の歴史、そして多くの民 族や文化が各地の旅行市場においても地域差 2008 中国国際旅游交易会 ( 2008 年 11 月 20 日 ~ 23 日上海新国際博覧センター )

4. 交流文化 volume 08

中国における団体観光旅行商品の造成・販売の状況 ( 2008 年 4 月現在 ) 第 3 グループ 第 2 グループ 第 1 グループ 市場の進展度 第 1 、第 2 グ 日杭州、南京、 天津、瀋陽、 広東省 蘇州、福州、 ループ以外の 対象市場 ( 主要都市 ) 大連、青島 都市 アモイ 主力商品 ( ー ゴールデンルート 主力商品 主力商品 部都市は共同 主力商品 主力商品 主力商品 ( 東京 0 大阪 ) 集客で実績 ) 「北海道十東京」 「北海道」はリ ゴールデンルー 一部旅行会 一部旅行会社 はリピーター向一部旅行会 トに次ぐ定番商ピーター向け商 け商品として定社に実績社に実績 に実績 ロロ ( 特に冬季 ) 品として定番化 番化 東京滞在、 東京滞在型は 中央道は定番化 一部旅行会南京では中 一部旅行会社に定番化 関西周遊、九州 社に実績 ( 中央道が定番検討段階 実績 ( 九州、東北、関西周遊は季節 北部は季節商品 部縦断 ) 商品として一部 立山黒部 ) として一部旅行 旅行会社に実績 会社に実績 一部旅行会社に一一部旅行会社に一一部旅行会社で一部旅行会一部旅行会 クルーズツアー 社に実績社に実績 実績 定番化 実績 一部旅行会社に 一部旅行会社に 一部旅行会 一部旅行会社に テーマ型ツアー 実績 ( 雪遊びを 実績 ( ゴルフ、一部旅行会 社に実績 ( 豪検討段階 実績 ( スキー アニメ、美容ツ社に実績 中心としたス 華ツアー ) 太極拳 ) スキーツアーなど ) キーツアー ) 備考 : 1. 「一部旅行会社に実績」 : 旅行会社がツアーを販売しても、 催行に至らないツアーが非常に多い。 2. 「検討段階」 : 旅行会社がツアー造成・販売を検討中もしくは 試験的に販売開始。 3. 「その他の地方」へのツアーは、チャーター便などを利用した ツアー開発について旅行会社の関心が寄せられている。 出典 : 国際観光白書 2008 ( 広州、深蜩等 ) 上海 北京 北海道 その他の地方 検討段階 ( ゴルフツアー ◎第 1 グループ ( 2000 年 9 月解禁 ) ◆第 2 グループ ( 2004 年 9 月 / 05 年 7 月解禁福州、アモイを含む ) △第 3 グループ ( 2005 年 7 月解禁 ) △ハルビン △長春 ◆瀋陽 ◎北京 ◆天津◆大連 ◆青島 △鄭州 南京 ◆◆蘇州 △武漢◆◎上海 杭州 ◆福州 ◆アモイ 台湾 北海道 ゴールテン丿し一ト 考える。 市場の成熟化を促進する外的環境は、ます 市場地域の経済発展である。所得が増え、生 活レベルが上がり物的欲求が満たされれば、 精神的、知的欲求の充足を求め、海外旅行が 一つの有効な手段となる。特に、揺籃期の市場 では、海外旅行自体がステータスシンポルと なり、知名度の高く先進国や憧れの対象の国、 有名観光地に行ってきたことが他者への自慢 となり、自己欲求の実現とともに旅行の主要 京 富士山 名古屋 大 △西安 △成都 △重慶 △昆明 ◎広東省 ( 広州、深切 l) 33 特集観光グローバル vs. ローカル訪日旅行市場の発展段階と誘客活動

5. 交流文化 volume 08

著書紹介 へのツアー企画に関心を寄せている。 展段階を提示することだが、前述のように進 ( 注一 ) 中央道ツアー商品の導入の経緯と詳細な分析については、 「揺籃期における訪日旅行商品開発の事業モデル」を参考にさ アジアや欧米の様々な市場の進展の度合を展する方向はある程度決まっているとはいえ、 れたい。 グロー バルに見渡して最適な市場を選択する観光はすべて人間がかかわる現象である。市 ( 注 (l) 九州運輸局調べ。 ( 注三 ) 北海道庁調べ。 ことにより、効率的に具体的成果を上げるこ場を動かす大きな力が働けば旅行会社や観光 ( 注四 ) 特定のテーマ、目的のために催行される旅行。訪日旅 」行では、博物館・美術館めぐり、有名建築家の作品巡り、ス とができる。となると、揺籃期の中国市場で客は動くのである。中国や台湾の誘客成功 キー・ゴルフ等のスポーツ系旅行等がある。 ゴールデンルートや北海道以外の地域が、時期では、自治体や事業者の特定の人物によるカ ( 注五 ) 中国や台湾における修学旅行 ( 教育旅行 ) は、日本と異 なり生徒全員が参加する学校行事ではない。旅行会社が企画し、 が熟すまで取り組みを控えることが賢明では強いリーダーシップが発揮されている。冷静な 学校を通して募集し、希望する生徒が参加する。複数の学校の生 ある。しかし、訴求力のある観光資源が備わり、市場の分析力とともにインバウンドに取り組徒からなる混成団が多く、日本の学校〈の訪問と交流活動が重要 なプログラムとなっている。 送客旅行会社、クルーズ、航空会社 ( チャーター む強力なリーダーシップを期待したい。 参考文献 便 ) のニーズに合致した強い働きかけを行えば、 平田真幸著『国際観光マーケティングの理論と実践 5 日本の異 誘客が実現できる可能性が高くなる。 文化理解とアイデンティティ追求への挑戦』国際観光サービスセ ンター発行、ニ 00 六年。 今回筆者が試みたのは、訪日旅行市場の発 平田真幸、薬丸裕著「揺籃期における訪日旅行商品開発の事業 モデル 5 中国上海市を事例として」 ( 溝尾良隆編『観光地の持続的 発展とまちづくり』ニ 00 七年 ) 。 日本政府観光局 ( z 0 ) 「国際観光白書 2 0 0 8 」 ニ 00 八年 国際観光マーケティングの 理論と実践 日本の興文化理解とアイデンティティ追求への挑載ー、 『国際観光マーケティングの理論と実践 ~ 日本の異文化理解と アイデンティティ追求への挑戦』 平田真幸著 国際観光サービスセンター (2006) 2800 円 ビジット・ジャパン・キャンペーンの推進により、日本 各地で外客誘致活動が活発化している。本書は外客誘 致を「国際観光マーケティング」として学問的に位置づ け、日本国内外の豊富な事例の成功・失敗要因を数値 データにもとづき理論的に分析している。また、日本の インバウンド史黎明期から中国の訪日観光旅行解禁ま での一世紀を俯瞰しつつ、先達の労苦から教訓を抽出 する。さらに、筆者自身の台湾と上海市場の現場経験 をもとに、東西世界をバランスよく、国際会議誘致まで およそインバウンド関連のテーマを網羅的にカバーして いる。外客誘致は海外と日本の異文化理解であり、ま た地域のアイデンティティの確認と追及でもある。筆者 は専門分野にとどまらず、国際化の中の日本人の生き 方も示唆している。 35 特集観光グローバル vs. ローカル訪日旅行市場の発展段階と誘客活動

6. 交流文化 volume 08

な動機のひとっとなっている。アジアでは、日うなことが少なくなかった。しかし、一一〇〇五も台湾では定着し、中国でもそれが急速に築 本はアジアの先進国として認知され、日本人年の愛知万博を契機に査証免除が施行され隔かれつつある。日本の関係者は、日本の豊富 がヨーロッパに行く際、ロンドンやパリをはす世の感がある。中国では、まだ団体観光査証な観光資源をどのように情報発信し、また現 ナられているが、中国地旅行会社や航空会社と協力して、消費者の せないと同様に、自分の周辺の多くの人が知っという特殊な査証が設 ( ている東京、富士山、ディズニーランド、京都、人旅行客が日本の法律を遵守して実績を積んニーズに合った旅行を企画・商品化し、日本に 大阪、北海道等のへます行くこととなる でいけば、ある程度の時間はかかるであろう来てもらうかが重要である。 海外情報の浸透も消費者の旅行意欲を喚起が着実に緩和が進められると考える。 市場の発展段階の し市場の発展を促す。台湾では、九〇年代後交通アクセスの充実も重要である。九〇年 分析と強力なリーダーシップ 半に日本の芸能、ファッション情報がリアルタ代は日台間の定期路線は成田、関空、名古屋、 効果的な誘客活動を行うには、対象国や地 イムで流れ、日本の熱烈ファンである「哈日族」福岡、那覇に限られていた。九〇年後半とな ーリーズ ) が登場した。ファッション雑誌『ノるとその他の空港へのチャーター便が多く飛ぶ域の市場の状況を把握することは言うまでも ンノ』が日本で売られているそのままの姿で台ようになり、今や日台四社が日本各地に定期ない。 , ) れを中国の市場の状況を示す表のよ うに「空間的」に行い、自分たちの持っ観光 湾のコンビニのキャッシュカウンターに置かれ、路線を持っている。沖縄への大型クルーズ船も よく売れていた。 一方、中国では一一〇〇七年四就航して長い。一方中国では、上海から日本の魅力や交通アクセス、既存のツアールートと 月の温家宝総理の日本訪間以来、日本の文化、十七空港に週三百便もの定期便が飛び、日中の位置関係を踏まえて最適の市場を選ぶ。さ 生活、芸能に関する報道量が急増した。中国間で総計週約八百便が飛んでいる。現在、日本らに「時間的」に市場を捉え、揺籃期、成長 への地方路線の多くは日本人客向けであるが、期、成熟期のどの発展段階にあるか判断して 女性は日本のファッションや化粧品が大好きな ここまで分析し ため、女性誌では、日本の雑誌 ( 日本語版の中いすれは中国人が主役になる日が来る。訪日市場を選ぶことが望ましい。 て誘客活動を行っている日本の関係者は少な 国語訳が大半であるが、一部現地作成 ) が上位を占クルーズも定着し、毎年送客数が増えている。 めている。 く、これを是非お薦めしたい。 最後に旅行市場の発展を促すのは、日本か 中国の第三グループでゴールデンルート周辺 外的環境が整っていても人国許可となる査らの観光魅力自体とそれら素材を旅行商品と 以外の地域に働きかけても効果はあまり期待 証の緩和が進まなければ旅行者の増加にはっして企画し発信するマーケティングカである。 なかりにく、。 九〇年代前半の台湾では日本台湾や中国本上を問わす、特に若者は日本のできないだろう。一方、成熟が進む台湾市場 への査証審査は仔細にわたる厳しい審査が行ファッション、音楽、食に対する関心は非常にでは日本各地への旅行商品が市場に出ており、 われ、申請者や旅行会社が強い不満を抱くよ強い。また観光目的地としての日本の高評価最近では台湾の旅行会社は、中国・四国地方

7. 交流文化 volume 08

次号予 2009 年 6 月刊行予定 特集 温泉クロニクル 父流文化 08 2008 年 12 月 25 日発行 発行人 編集人 デザイン 印刷 豊田由貴夫 大橋健一 望月昭秀、戸田寛 こだま印刷株式会社 問い合わせ先 立教大学観光学部 〒 352 ー 8558 埼玉県新座市北野 1 ー 2 ー 26 TEL 048 ー 471 ー 7375 http://www.tr.rikkyo ・ ac. jp * 本誌掲載記事の無断転載を禁じます。 ISBN 4 ー 9902598 ー 5 ー 8 ◎ 2008 Rikkyo University, College ofTourism. printed in Japan. 筆者紹介 ( 50 音順 ) 小沢健市 ( おざわ・けんいち ) 観光学部教授 1998 年 4 月より現職。経済学博士。主な論文に「観光振興によ る経済効果について」『自治体学研究』神奈川県自治総合研究 センター ( 第 94 号、 2007 年 3 月所収 ) 、「観光のインパクトと統 48 スリランカのリゾ - ト地ニゴンボで観光振興に取り組む。 配を担当。 2008 年より国際協力機構の青年海外協力隊に参加。 旅行、視察・研修旅行、スポーツ競技大会観戦ツアーなどの手 務。ヨーロッパ、中東、アフリカを扱う。修学旅行、企業の報償 立教大学観光学部卒業後、 2003 年よりランドオペレーターに勤 青年海外協力隊員 古川舞 ( ふるかわ・まい ) 業モデル ~ 上海市を対象として」。 務めた。近著は「揺籃期市場における訪日旅行商品開発の事 で観光行政・政策、観光マーケティング ( ゼミ ) の非常勤講師も て中央道ツアーの開発・誘致を手掛ける。立教大学観光学部 北海道」、九州テーマパークツアー、 JNTO 上海事務所長とし 修士課程卒業。日本観光協会台湾事務所長として「冬以外の 米国オレゴン大学地理学科、筑波大学教育研究科 ( 地理教育 ) 海外プロモーション部次長 ( アジア担当 ) 日本政府観光局 (JNTO) 平田真幸 ( ひらた・まさき ) ってきた。 ーリズムや先住民運動・環境運動に関する民族誌的調査を行な 地域研究。主にタイ北部の山地民カレン社会のあいだで、エコッ 了。博士 ( 観光学 ) 。専門領域は、文化人類学・観光人類学・タイ 1977 年生まれ。立教大学大学院観光学研究科博士後期課程修 立教大学観光学部プログラム・コーディネーター 須永和博 ( すなが・かずひろ ) メントの研究。 業における新商品開発組織とイノベーション・プロセス・マネジ ーマン・リソース・マネジメント。近年の研究テーマは、観光産 2002 年より現職。専門は産業社会学、経営組織論およびヒュ 観光学部准教授 庄司貴彳テ ( しようじ・たかゆき ) 博士 ( 観光学 ) 。専門は観光・レジャーの文化研究。 り現職。 ( 学部改組前の 2006 年度は産業社会学部助教授 ) 。 後期課程修了後、立教大学観光学部助手をつとめ、 2006 年よ リーアナウンサーを経て、 1998 年立教大学観光学研究科入学。 1989 年立教大学文学部史学科卒業後、岩手放送株式会社、フ 長野大学環境ツーリズム学部准教授 小長谷悠紀にながや・ゆき ) 合観光学会編『新時代の観光』 ( 第 8 章所収 ) 同文舘、 2007 年。 源としての Common P06 Resource の有効利用へ向けて」総 計」『統計』 ( 第 57 巻第 12 号 ) 、 2007 年 12 月所収 ) 、「観光資

8. 交流文化 volume 08

光地が定着していくプロセスにおいて早期国の観光誘致事業においてもむしろ出色で泊以上の客は原則 1 泊朝食 x 宿泊日数の形 に来訪したゲストが、その観光地が整備さある。 で受けることとし、施設内に飲み屋は設けす、 れてくるにつれ、他をめざすと指摘している。 白馬村観光局は、観光振興において「 ( 地上産物販売もしない。そうすることで、「街 長野県でも、かってカナダ人宣教師に見出さ 元の ) みんなでやるという意識を育てる」こ並み」のなかへ滞在客を送り出すのである。 れた軽井沢が、一旦滞日外国人の避暑リゾー とを目指している。マップや案内標識を統観光局では、エリア内の飲食店をまわる トとして定着した後、彼らにならった日本人一し ( 写真緑色に統一された道路沿いの案内標シャトルバス「元気号」を開通させ、英語版 の別荘購人があいついで雰囲気が変わって識、タウン内ではアルファベットと数字で外国人に の店案内パンフレットも作成、宿泊客の夕食 いったことで、外国人が新たに野尻湖を目指も現在地確認が容易となる案内標識を配置 ) 、取り選択肢の拡大を実現した。バス運行には、当 したという事例がある。 組み初年度は宿泊業などを営む観光サービ初地元タクシー業者の警戒感が強かったが、 ニセコを母国にアピールしてくれたフィス関係者、次年度はバス・タクシー運転手をフタをあけてみれば、五輪以降初めて増車す ンドレーは、その波及効果として、白馬にも対象に外客対応の研修を実施した。宿泊業版、るまでにタクシー業にも寄与した。終バスの 先々への希望をもたらしてくれた。ただ、そ飲食業版、総合版、三種の外客接遇マニュア時間を早めに設定することで、杯を重ねる客 こにはやはり、白馬という地に、「次になる」ルも作成した。「日本へよ、つこそ」というよは帰路タクシー利用になるように計画した うな一般的な会話から地元産品の説明まで、のだ元気号は内外観光客に歓迎され、昨年 素地、条件が揃っていたとも言えるだろう。 四カ国語 ( 英・ハングル・中国・台湾 ) を記載は九〇〇〇人強の利用があった。 白馬の取り組みと外客動向 した。カウンターでやりとりするような会話 白馬への外客は、域内スキー場の全体シェ については、日本語を見る側と外国語を読むアでは約 5 % にとどまるも、日本人スキー 最後に、白馬で聞きとったオーストラリア 人を中心とする外客の動向、それを受けて目側との記載上下を逆にすることで、指差しでヤーが減少傾向を続けるなか、増加が続いて いる。白馬へはオーストラリア人に先んじて、 下奏功しているとみられる主な施策などものやりとりが容易なようにした。 観光局とともに地域の取り組みを牽引し韓国人スキーヤーの増加もある。 報告しておこう。 たグループに、外国人対応に積極的な「ハ 平均的な消費額は、韓国人スキーヤーで一 「ビジット・ジャパン」で足固めとしての感 パ・ツーリズム」がある。当初、有志宿泊二食六〇〇〇円。オーストラリア人は一泊 触を得た後も、資金のほとんどが地元負担ヘク と移行していきつつも、継続されてきた。こ泊施設九館で結成されたこのグループは、朝食で七五〇〇円であり、夕食単価がお酒を れは補助金支給の終了にともなって、取り組二〇〇八年現在、一四軒まで拡大している。飲む人だと約一一五〇〇円、昼食が約六五〇円 みも終了してしまうことも少なくない、わか 加盟施設では、英語対応は必須。また、三 ( みそラーメンやチキンカツなど ) 、スキー場での 0

9. 交流文化 volume 08

Pie し d note 8 初めてのフィールドワーク ~ 局柳順一 ( 観光学研究科博士課程前期ニ年 ) 今回の北タイにおけるフィールドワークは、異なる方法論をとる私にとって は初めての現地調査の体験であった。初日の民泊は簡素ながらも何とか大丈夫、 しかし次の日から乾期にも拘わらず降り始めた雨で様子が一変、移動用の車ニ 台の内、四輪駆動車は泥道の上り坂でタイヤがスリップ、どろどろになりなが ら皆で押しても引いても動かない。最初の難関は対向車からチェーンを借りて 何とか坂を登りきった。もう一台のピックアップ・トラックは、荷台に乗った 仲間達が左右に車体を揺らしながら坂を越えた。ついに何カ所目かの坂で四 輪駆動車をギブアップ、全員がビックアップに乗り、ニつ目の村に漸く到着した。 途中、家族を乗せたまま動けないでいる車を見ましたが、助けてあげように も、出来ませんでした。この村はすべて泥の道。急病人が出たらどうするのだ ろう、日本だったら真っ先に公共事業で舗装道路つくりなのに、などと考えな がら、雨で気温が下がり隙間風が吹き込む民宿小屋で眠れない夜を過ごした。 その後、チェンマイ大学でカレン族の民宿をオーガナイズする zæo を訪ね、 カレンの観光を今日まで育て上げ ルてきた背景や歴史を聞き取りし た。自然とカレン族の文化をその まま残して旅行者に見せるのが、 彼らの目指すエコ・ツーリズムと のことである。道路が良くなれば、 カレン族の生活は便利になるし旅 行者も増えて潤うであろう。しか し、ど一つもそれはこの ZQ-O が目 指すところではない。観光を利用・ー、 しながら地域の問題を考えていく としても、様々な立場や発想があ る。こうした現実を肌で感じた一 、・ ~ 週間であ。た。 現地側の発信するメッセージを聞く ゼイヤーウイン ( 観光学研究科博士課程前期ニ年 ) タイにおけるフィールド実習プログラムに参加し、北タイのメーホンソーン 県にあるカレン族やバダウン族などの集落を訪問した。ゲートウェイである チャンマイから現地入りし、メーホンソーンを経て、ミャンマー国境近くのファ プーケン村 ( 工 uapu Keng) に至った。フアプーケン村は人口一五〇人ほどの 集落で、ことに観光の対象になりやすい首長族と呼ばれるバダウン族や、カヤー 族の一部族であるカヨー族 ( 耳に大きな装飾しており耳長族と呼ばれる ) など が混住している。 集落内でバダウンの伝統的な首の装飾していない若い女性と話し合う機会 があった。ビルマ語による聞き取りによれば、その集落のバダウン族はタイ政 府から難民扱いをされており、高校を卒業しても町の大学には自由に進学で きないとのことで、現在は近くの難民キャンプの学校で高校の教師として勤め ているという。更に彼女は伝統的な習慣である首の装飾は尊敬し守りたいと 思うものの、それがイメージの固定化につながり、自らの将来を不自由にさせ ているのではと、伝統的な首飾りを しない理由を語ってくれた。タイ北部 のエスニックツアーでは英語の通訳ガ イドが付き、英語が話せない現地の い人々と観光客を仲介する。カルチュラ ルプローカーとしてもガイドの存在は 、、対象に対する認識を左右してしまう。 現地の発信するメッセージはなかな か聞こえてこない。 今回の経験は観光の影響力の大き さと可能性、同時にその問題点を実 、 ~ 感させてくれる貴重なものであ 0 た。 ( 文中「バダウン族」とは「カヤン族」 のミャンマーにおける呼称 ) 1 27 「交流文化」フィールドノートタイ北部フィールドワーク実習報告