料理店 - みる会図書館


検索対象: 交流文化 volume03
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1. 交流文化 volume03

ているのではないかということが間題になったことかある。こ らす、そして地元の人と同じメニューを食べることができない れは、ホテルと旅行会社のあいだで取り決められる部屋タイプのではないか、と思ってしまうのは想像に難くない や眺望の指定などの条件も関わっており、一概にはその是非を 「盆菜」 間うことのできない間題でもあった。 同じことが香港を訪れる観光客が注文する料理についても一言 地元らしい伝統的な家庭料理 える。それは香港の大部分のレストランは二つ以上メニューを それぞれの上地には、地元の文化的伝統を象徴する再創造さ 持っており、それによって外国からの訪間者が違う値段設定が ほかにもあることに気づいてしまうということである。もちろれた料理がある。このような料理はガイドブックや観光客向け んここで私が言いたいのは香港のすべてのレストランが正しい のウエプサイト、旅行雑誌などでよく取り上げられているが、 価格表示をしているのかどうかということではない。重要なの香港では一般的に、それらは地元のアイデンティティを求める は、観光客と観光地それぞれの誤解によって、香港を訪れた観地元香港の観光客に人気となっている。「盆菜 (puhn choi) 」と 呼ばれる伝統的な特別料理はその一例である。 光客に悪い印象を与えかねないということである 私の知る限りでも、香港のレストランには通常テープルに複 伝統的な側面から見れば「盆菜」はハレの食事であり、香 数のメニューがおいてあることが多い。たとえば、「本日のオ港の新界地区に古くから住む人々が法事や結婚式の時に広間に ススメ」「シェフのオススメ」「お値打ちメニュー」「新メニュー」集まって食べる料理である。それはメイン料理であり、通常は 洗面器やお盆に人っている。そ 「特別料金のディナーセット」 剰一してそこから銘々が小皿に取り 「定番メニュー」などといった 具合である。ただし、そのなか 分ける。「盆菜」を食べるとい 料 統 でもアワビやフカヒレ、新鮮な う伝統は一九九〇年以降、外国 伝 港からの観光客よりも地元香港の シーフードとい , つよ、つな ~ 咼級な 観光客に人気を博している。 , ) 定番料理だけは中国語、英語、 れ ゲの料理は、香港が植民地化され 日本語それぞれで書かれている 割る以前から続く歴史を持ってお のである。そうすると、観光客 、観光の発展にともなって、 は自分たちは地元の人々に比べ 面 洗 メディアを通じて、その起源に 高価な料金を支払わなければな つん

2. 交流文化 volume03

世界中から観光客が訪れる香港。ここでは現在、三つの異な統や文化の独自性を表象するために創造、ないし再創造された るタイプのメニューが観光客向けに用意されている という側面を持っている。 一つめは観光客向けに英語や日本語で書かれたメニューであ 三つ目は、隠れ家レストラン的なプライベートキッチンで提 る。それは地元の一「ロ葉で書かれたものを「第一メニュー とす供される「独自メニュー」である。これらの料理は一般の個人 ると「第二メニュー」 ということができるだろう。これらは香宅で顧客の好みに合わせながら提供されることが多い 港ではよく目にするものだが、まれにその値段が地元向けと観 これら三種類の観光客向け料理について考えることで、ホス 光客向けで違っていることなどによって、様々な誤解を生じさ ピタリテイや観光政策、文化的アイデンティティの形成などと せている。この「第二メニュー」は、観光客が料理を注文する関連させながら、観光客と観光地の関係についてより理解を深 助けになるという意味で香港での食事に好印象を抱かせるよ、つめることができるのではないかと私は考えている。 になるものなのだろうか、それとも、それらの誤解によって悪 印象を抱かせるものなのだろうか 二つめは、最近香港の地元旅行者に人気で、ガイドブックな 外国人観光客向け料金 どでもたびたび紹介されている新界地区の農村の伝統的な料理、 すなわち「特別メニュー」である。この料理は、香港社会の伝 以前、香港のホテルが日本人観光客向けに高い料金設定をし 香港における観光客向けメニューの研究 弓 ( 香港中文大学 ) 訳 / 鈴木涼太郎 「第ニメニュー」「盆菜」「私房菜」。 近年、香港で人気を博している観光客向けメニューを事例に 観光客と観光地の関係について考える。 写真 / 張展鴻 0 0 25 特集交流が生む食のかたち香港における観光客向けメニューの研究

3. 交流文化 volume03

特集に関連する書籍の中から今回選んだのは、 交流文化としての食を考えるのに最適のニ冊 驚くほど多様化した 「中国外の中国料理」の現在 アジア遊学行 特集「世界の中華料理」 勉誠出版 ( ニ〇〇五 ) 一八〇〇円十税 Book Review 読書案内 者らによる詳細な事例をもとに解た中華料理が海外に伝播していく だけでなく、中国内でも外からの 説している 日本をはじめ韓国、インドネシ食文化が流入することで本家の中 アといった周辺アジア諸国から北華料理に変容が起こっていること だ。本書が注視するのは「料理を 米ヨーロツ。ハに及ぶ豊富な事例が 紹介されるが、多様化には大きく文化としてとらえ、そうした文化 が多文化と接触し、受容、拒否、 三つの類型が見られる。第一に、 幾分「現地化」されながらも伝統解釈といったプロセスを経て変容 の姿を保とうとする高級レストラしていく姿」なのである。 なかでも「日本の『国民食』と ンの「正統」中華料理。第ニに、 チャプスイ ( 北米風中華雑炊 ) やしての中華」という論考では、も ラーメンのような中国には存在しともと中国伝来の食文化がいかに ないほど「現地化」した料理。第日本食として一般化し「国民食」 三に、東南アジアに見られるようとなるかというプロセスに注目し ている。本号における「ラーメン なほとんど中華料理とは思えない 編者によると、中華料理には北 という近代」と問題意識の重なる 京料理や広東料理といった「大伝ほど「土着化」した料理。 一般にこうした料理は正統を知部分も多いので、併せて読んでみ 統」以外にも、見落とすことので る者の目からは「まがいもの」とると面白いだろう。 きない一群の「小伝統」があり、 なお、本号に寄稿いただいた香 その一潮流が「中国外の中国料見られがちだが、日常的にそれを 理」だという。それはまさに本号食している人々にとっては、これ港中文大学の張展鴻準教授も「返 還後の香港広東料理」という論考 こそが中華料理だと認知されてい 号の特集「交流が生における日本のラーメンであり、 を執筆している。香港の観光客向 む食のかたち」というスリナムのチャオミンにほかならるのである。 テーマについて、もつない。本書ではその全世界的な規興味深いのは、多様化の諸相はけ料理の流行の背景にある中国返 と突っ込んで知りたいと思われた模で驚くほど多様化した中華料理単純に地理的な距離ではなく、交還がもたらした香港人のアイデン 読者に恰好の題材を提供しているの現在の姿を、それぞれの特定地流の生じた歴史的文化的な状況のティティ危機について理解を深め 域を専門にした人類学者や社会学違いに大きくよっていること。まることができるだろう。 のが本書である。

4. 交流文化 volume03

楽しんでいたのである。地元の伝統を強調した「盆菜」は地元 の観光宣伝でエキゾティシズムを売りにする一方で、一九九〇 「私房菜」 年代の香港におけるイギリスによる支配の終焉のメタファーと 隠れ家風プライベートキッチン しても理解されている。言い換えれば、政治的な文脈において 「盆菜」は新界地区の親族の絆を深めるものから、香港全体の 香港では「私房菜」と呼ばれている独自のメニューを目にす シンボルとして変化してきたのである。 る。それらは家庭的な雰囲気を強調した料理で、その料理店の 「盆菜」は大きなボウルを親族一〇、・一二人でとりわけるとい オーナー独自の個性が反映されるものである。中国料理やヨー う伝統的な食事のスタイルだけにとどまらす、今では村の宴会 ロッパ料理などさまざまな「私房菜」料理店があり、それらは 場ではなく市街地の家庭でも食されるようになっている。興味皆、香港の普通料理である広東料理ではないことやヨーロッパ 深いことに、二〇〇三年の旧暦の正月、「盆菜」は不況下におのホームスタイルの料理であることを売りにしている。有名な けるヒット商品とメディアに報じられた。特に正月の二日に家英ガイドブック『ロンリーフラネット・ワールドフード・ホ 族が集まったときに食べる料理として買い求められた。現在ンコン』は、このような新しい食事の形について、禁酒法時代 「盆菜」は、家族が集まって食べる料理というイメージや、香のアメリカにおける地下クラブになぞらえるとともに、「私房 港のシンボルであるというようなイメージによって、日常的な菜」料理店はビジネスではなくアートであると論じている ものとなってきている。たとえば、「、 , 、ニ盆菜」 ( 容器がわりに小 香港において「私房菜」料理店は単に非認可の料理店である さなかばちやを使い鶏肉やキノコ、野菜などがいくつか人っているよう だけではなく、中流階級の人だけに許された秘密の食事の場で なもの ) が地元のファストフードチェーンから売り出されておあるともいえる。それらは通常企業登記されておらす、普通の 一人用の「盆菜セット」なるものまであるほどだ。 マンションの一室にある。通りすがりのお客が人ることはなく、

5. 交流文化 volume03

, ) れら料理店の特徴である、非Ⅱ広東料理を家庭料理として 必す予約が必要で、時には一カ月以上前から予約しなければい ート」であると けないこともある。そこではメニューはオーナーにお任せであ提供すること、非認可であることを「プライベ る。そしてサービス料は不要で、クレジットカードは使えない 説明すること、秘密で親しみやすいというイメージを売りにす 値段は、だいたい二〇〇香港ドルから四〇〇香港ドル ( 三〇〇ることは、観光客にとっても大きな魅力である。実際あるレス トランのオーナーは、「日本の航空会社の機内誌で取り上げられ、 〇・、・六〇〇〇円くらい ) であり、同じような料理を出すほかのレ ロケーションについて言日本のテレビ番組でも取り上げられたことで多くの観光客が来 ストランと比べて安いとはいえない えば、ほとんどが普通のマンションの一室にあり、周りには普るようになりました」と話している。 通に住民が暮らしている。街中のレストランと比べれば、家賃 は比較的安い。ほとんどの「私房菜」料理店は夕食のみを提供し、観光と食の関わり 不定期の営業であることも多い。室内の装飾は、普通はシンプ ・。いたとしても、旅行中に一度も食事 上産物を買わない観光客カ ルでありながらも芸術的な雰囲気を醸し出そうとしており、実 際オーナーが芸術家の店もある。これらの場所のいくつかは家をとらない観光客はいない。それほど観光において、料理や食事 は重要な構成要素である。そして観光客が観光地の料理に寄せる 庭的な雰囲気を作り出していて、薄暗い照明でスタイリッシュ 関心は、現代の観光において重要な文化的・経済的影響力をもっ な家具が調度されている。 秘密めいた、特権階級にのみ許されたかのようなその営業方ている。なぜなら、料理は単に観光客を受け人れる地一兀の社会に 法によって「私房菜」は家庭的な雰囲気の中で提供される。そ伝わる伝統であるだけでなく、その社会に短期間しか滞在しない 観光客に対して地元の伝統や文化を表現するひとつの手段でもあ こに来る客は中流階級であり、時にはセレプリテイやアーティ ストたちも来る。彼らはこの家庭的な料理の雰囲気と、ほかのるからである。重要なのは、旅行中に食べる料理やその経験が、 その観光地の印象として観光客のなかに長く残されるという , ) と 店にはない個人的なオーナーとの関係のなかで料理を食べるこ とに魅了されている。二〇〇三年には、一〇〇以上ものこのよである。そのため観光にかかわる者は、観光客が料理から受ける し力ないのである。 うなレストランがあるといわれていたそのうちのいくつかは印象が観光にもたらす影響を軽視するわけには、 : 今となっては秘密めいたものではなくなってしまっているか、 本稿は以下の論文に基づくものである。 それにともない非認可骨ロ業か、りきちんと認可を受けた上での畳ロ Sidney Cheung 、 Food ま「 Tou ュ 0 second Menus 、 special Menus and specific Menus. Cultu 「 a y Desa 「「 0=0 NO. 5 (Special lssue on Cultu 「 al Dive 「 sity and 業になっている。ただし、なかには秘密めいたイメージにこだ Tou 「 ism)Tomke C. Lask ed. 工 a く ana, Cuba: UNESCO Regional Office ま「 Cultu 「 e in Latin America and the Caribbean 、 2005 ( ゴ Spanish) わっているところもある。 29 特集交流が生む食のかたち香港における観光客向けメニューの研究

6. 交流文化 volume03

南米大陸北東部、大西洋沿岸の熱帯地域にされた、ほば一世紀前に刷られた絵葉書には、基本である。大抵の場合、肉は調理済みで冷 スリナム共和国という小さな国がある 中国系・ヨーロッパ系・インド系・ジャワ系・たいが、熱帯では苦にならない。野菜にはナ 首都バラマリボの中央市場にはいろいろなアフリカ系という当時の主要五集団を用いてガササゲが使われることが多いナガササゲ 飲食店が軒を連ねている。「平記賓館」なるスリナム社会の多元性が表現されている は、ナシゴレンやローティの付け合せとして 中国系食堂の看板には、「チャオ、 , 、ン ( 焼きソ , ) うした歴史的・社会的背景から、スリナも多用されており、スリナム料理で不可欠の パこ、焼き飯、そしてソフトドリンクというムにはさまざまな地域に山来する料理が存在食材となっている この食堂の主な商品の名が記されている。そする。「中国料理」のチャオ、 , 、ンや、「ジャワ さらに、キュウリの酢漬けと激辛唐辛子の して、食堂の店先では、ジャワ系とインド系料理」のナシゴレン、「インド料理」のローティスライスも付いてくる。この唐辛子はハバ、、 と思われる人々が燻製魚を売っている。 は、最も人気のある外食メニューだ。スリナロの一種で、スリナム料理屋ならどこでも置 スリナムは、世界でも珍しい多民族国家でム人が、ユダヤ系企業フェルナンデスのソフ しているものだ。スリナム人にはそれくらい ある。旧宗主国のオランダ王国が一七世紀中 トドリンクを飲みながらこれらの料理を食べ辛い物好きが多く、「そこがオランダ人とス 葉から二〇世紀前半までの間に、プランテー ている姿は、ランチであろうがディナーであリナム人の大きな違い」と言う人もいるくら いである。 ション産業の必要に応じて、世界のさまざまろうが、きわめて日常的な光景である な地域ーーアフリカ大陸西岸、現在のインド さて、このチャオ、 , 、ンであるが、実際には こうしてみると、「中国料理」のチャオ、 , 、 やインドネシア、中国大陸南部など に労単に焼きソバと形容するだけでは物足りない ンにもスリナム的な側面が多々備わっている 働力を求めたからだ。したがって、スリナム山盛りの麺の上にブッ切りのトリ肉が表面を ことが分かる。熱帯の木陰でフェルナンデス 共和国の人口は、黒人奴隷やアジア人労働者覆うようにテンコ盛りになっている。注文にを片手にチャオ、 , 、ンで腹を膨らませつつ、ス の子孫で構成されていて、きわめてモザイク応じて豚肉や牛肉が加えられることもあるが、 リナムの友人とするおしゃべり。私にとって、 的である。「我らスリナムの子供たち」と題スリナム人が大好きなトリ肉が使われるのが日本ではできない贅沢である 0

7. 交流文化 volume03

「似て非なるもの」 という問題提起 日本の焼肉 朝倉敏夫著 韓国の刺身韓 農文協 ( 一九九四 ) 一九 0 〇円 ( 税込 ) 日本の焼肉 韓国の刺身 朝倉敏夫 文化か ナイて れるとき 国で食べる焼肉は日本身を題材に選び、それぞれの国のを抽出し、日本的特質を導き出し の焼肉とどうしてこん料理がどのように受容され、変容ていることだ。 さらに、同じ手法でソウルの日 していったか、その展開過程を明 なに違うのだろう ? 本料理店の分析も行っており、両 こうした誰もが一度は感じたこらかにしている。 とのある素朴な疑問をもとに、文面白いのはその分析手法。東京国の文化的相違が見事に描き出さ 化人類学の立場から日本と韓国のニ三区内の韓国料理店を電話番号れる。日本における在日韓国人・ 新食文化の違い、その「似て非なる簿からその数的推移や地域的分朝鮮人の存在、韓国における日本 もの」の背景を考察した一冊。そ布、店名傾向を分析したり、経営の植民地体験という要素が両国の れを明らかにするために、著者はマニュアルやメニューの内容から食文化に微妙な影響を与えあって 日本においては焼肉、韓国では刺「ジャパナイズ ( 日本化 ) 」の諸相いることも興味深い 37 読書案内

8. 交流文化 volume03

らない大部分の香港住民にとっ ついてさまざまな物語が宣伝さ てはエキゾチックなものでもあ れてきた。その伝説的な起源に る。地元ならではのものでもあ よって「盆菜」は香港新界の独 りエキゾチックでもあるという 特な家族制度の文化的伝統を表 その性格によって、地元の観光 象する「再創造された」家庭料 においては「伝統の味」として 理としてみなされている。 広く宣伝されている。 「盆菜」の起源や歴史をめぐる この香港の伝統の探求は、実 ンヨ 物には、さまざまなバ 当第際のところ一九九七年の返還を ンが存在している。たとえば、 契機にしたものである。地元香 ある言い伝えでは「盆菜」は清 の乾隆帝が広東を訪れたときに村に伝えたといわれている。ま港の観光においては、地元らしさや田舎つばさ、植民地以前の た別のバージョンでは南宋の最後の皇帝衛王と彼の側近が、モ特性が重要視されている。私が観察した一般的なパッケージッ ンゴル人の侵略によって南下した際に伝えられたとも言われてアーは、たいてい地元ならではの料理や伝統的な村落・寺院 ~ おり、そのとき大勢の兵士に十分な量の料理を出すために洗面の訪間などを行程の中に取り込んでいた新界地区の村落への 旅は、香港の住民にとって自分探しの旅でもあるのだ。 器で料理を出したのが、後に「盆菜」と呼ばれるようになった 一九九〇年代の初頭から、香港の都市住民は明らかにアイデ という。いすれにせよ、これらの物語は地元の人々の歴史観を ンティティ危機を経験していたそしてそんな彼らは、エキゾ 反映したものとなっている。 「盆菜」は地元の料理ではあるが、新界地区の文化的伝統を知ティシズムを期待して香港新界の伝統 ~ の「冒険」 ~ の参加を 一豐ゑロ新ゞ。ス」一」 0 27 特集交流が生む食のかたち香港における観光客向けメニューの研究

9. 交流文化 volume03

乞れ 4 襯 ベトナムのフランスパン しヾイン・ミー 大橋健一 ( 観光学部 ) おかずに御飯を食べるというべトナム料理のスタイルに見られるよう た麺の入ったフォー、そして豊富な肉や野菜を使ったさまざまな料理を イスペーパーで海老や香草を巻いた生春巻や濃厚なスープに米で作っ だ。注文をすると、パンを軽く炭火で炙って外皮をバリっとさ できるが、一般的なサンドイッチとはだいたい以下のようなもの 金額を指定することによってシンプルなものから豪華版まで作ってもらうことも ハム、肉団子、チーズなどの具材が用意されていて、自分の好みに応じて注文する。 中の定番で、街のあちこちに多くの屋台が出ている。屋台には、何種類ものバテや ー」のベトナム式サンドイッチは、バンの食べ方としては定番 特に「バイン・ でサンドイッチにして食べることが一般的だ。 浸して食べたり、牛肉の煮込みと一緒に食べるほか、バテやチーズ、野菜をはさん ー」は、朝食の目玉焼きの半熟の黄身にちぎって ペバン程の大きさの「バイン・ がある。かっての植民地支配の名残りかフランス式のパゲットを小型にしたコッ ー」、すなわちパン びとの日常の生活に深く根を下ろしているものに「バイン・ に、米はベトナムの食においてとても重要なものである。しかし、それと並んで人 たら、ティクアウト用サンドイッチの完成だ。 を振りかける。雑誌やノートの切れ端で包んで輪ゴムでとめ 漬け、香菜や葱をはさみ、仕上げにヌクマム ( ベトナムの魚醤 ) 子ペースト、パテを塗り、数種類のハム、人参と大根の甘酢 せてから、切り込みを入れてバンを開き、マーガリン、唐辛 道端で大胆にかぶりつくと、パリっとした外皮の食感の後、ロの 22 けとめながら人びとが編み出してきた文化を感じざるを得ない。 に広がるこの味の複雑さにこそ、ベトナムの経験してきた交流の歴史とそれを受 理では決してないが、人びとが日常的に食べ続けているフランス式パゲットの中 中に多様な具材の豊かな味が広がる。「ベトナム料理」と言って真っ先にあがる料

10. 交流文化 volume03

旅先でお土産を買わない旅行者はいても、 一度も食事をしない旅行者はいな 食はその上地固有の歴史や文化のありようを反映した 最も魅力的な観光資源の一つである。 しかも、観光による人の移動や交流に伴い 食は素材や味付け、調理法、食べ方など、 そのかたちを大きく変えていく。 本号では、福岡の「とんこっラーメン」、 ハワイの「オックステールスープ」、 南米スリナムの「チャオ、 , 、ン ( 焼ソバ ) 」 ( フランスパン ) 」、 ベトナムの「バイン・ そして香港における観光客向け料理など、 さまざまな事例を通して 「交流文化」としての食を考える。 交流が生む 食のかたち 1 3 特集交流が生む食のかたち