琵琶湖の変化 みなさんもよくご存じのように、匕 琶湖をとりまく環境は、ここ数十年に わたって大きく変化してきました。わ たしたちの行為が、湖岸や水質を変化 させているのです。また、そのような 変化にともなって、もともと琵琶湖に すんでいた生き物たちのなかには、数 が減ったものがいくつも見られます。 いっぽうで、数を増やした生き物もい ます。さらに、琵琶湖にそれまですん カましハらレ、しゅ でいなかった生き物 ( = 外来種 ) の中 せ・レ、たレ、けし・、 にも、数を増やし、生態系の中で重要 な位置を占めるようになっているもの がいます。 ここではできるだけ新しい情報を取 湖岸の変化 自然湖岸・ヨシ帯の減少 人工湖岸の増加 「環境」 へった 生き物 、岸の群落 水産生物 セタシジミ イケチョウガイ ホンモロコ ニゴロブナ イサザ り入れるように努力しました。しかし、 わたしたちが引き起こしてきた変化は、 自然のゆるやかな変化と比べてあまり にも急速です。したがって、今、見ら れる琵琶湖の生態系は、決して安定し た状態ではないと思われます。さらに 今後もいろいろな生き物が琵琶湖に侵 入してしまうことでしよう。ですから、 ここで示した内容には、すぐに「古く」 なってしまうものがいくつも含まれて いるはずです。何か新しい「変化」に 気づかれた方は、ぜひお知らせくださ い。みなさんひとりひとりの目による 発見が、新しい大きな変化を見つける ことになるかもしれません。 水質の変化 河川からの栄養塩類の流入 「富栄養化」の傾向 外来種の侵入 意図的な導入・放流 不測の随伴・混入 ・生態系の変化 ふえた 在来種生き物 カワウ ュスリカ類 外来動物 プランクトンオオクチバス 大量発生 プルーギル アオコ・赤潮ヌマチチプ カワヒバリガイ 外来植物 オオカナダモ コカナダモ ー 102 ー
暮らしの変化と琵琶湖の環境 私たちのくらし 40 年 1960 年前後を境にして、私たちのく になってきました。新しい雑誌が刊行 らしは大きく変わりました。電化製品 され、いろいろな流行がありました。 が開発され、生活は便利になりました。 東京オリンピックのころ、アポロ 11 号 が月面に初めて着陸したころ、琵琶湖 しかし生活が便利になればなるほど、 逆に時間に追われるようになっている 富栄養化防止条例が成立したころ、昭 和から平成へと変わったころ、自分が のはなぜなのでしようか。 何をしていたかを思い出してみません この 40 年間の私たちのくらしを思い 出してみませんか。タライの手洗いか ら洗濯機の洗濯にかわり、テレビや洗 そしてくらしの変化が環境をどのよう 濯機の形は変わり、その性能も多機能 に変えたのか、考えてみましよう。 ー導 0 月ャ ー 57 ー
0 ・マダル 0 ン ティティギタ バラフォン・ チーンゴ チャフヤ トーキング・ド ム カロフェ チャカチャカ / ヾリ / 、 レンスティック マカス サンザ マラカス ( タンザニア ) 両手に持って振ると、シャカ シャカという音がします。ヒョ ウタンの中に種が入っています。 し 3 チャカチャカ ( ガーナ ) ヒョウタンのまわりに、貝が ぶら下がっていて、ふるとにぎ やかな音がします。 チャフチャ ( ボリビア ) 動物の爪ででき ていて、ひもの部 分を持って振りま す。 アンクロン ( インドネシア ) 竹でできています。柄の部分を持って振ると、やわ らかい音がします。大きさによって、音階が違います。 レインステ手ック ( チリ ) サポテンを乾かしたものの中に、 種などが入っています。振ったり、 上下を逆転すると、雨のような不 思議な音がします。 え つめ おんかい ゴピチャンド ( インド ) 弦をはじいて、 両側の支えを握 ると、弦の張り が変わって、音 が変化します。 / ヾリ / 、 ( マダガスカル ) 竹を使った、弦 楽器です。脇に抱 サンザ ( タンザニア ) えるようにして演 両手で箱を持って、親指で鉄の棒をは 奏すると、澄んだ じきます。独特の澄んだ音がします。根 きれいな音がしま 元の輪が、音に変化を持たせます。 す。 ー 129 ー
C 展示室湖の環境と人びとのくらし 人は自然にはたらきかけ、自然を利用することによって くらしてきました。その自然は豊かな恵みを人にあたえ る一方で、ときには人のくらしや命までも脅かす存在で もありました。人と自然のつきあい方に見るさまざまな 工夫や代表的な自然の姿を紹介しながら、昭和 30 年代か ら始まった水利用の変化、またそれにともなう人びとの くらし方と生活観の変化、さらには生態系の変化をたど ります。環境とは何かをともに考え、将来にわたる湖と 人間の望ましい関係を探ってみましよう。 クリーク地第の象とり かわりゆく金・ 川のき物を しらべる 市街地を画る水 水をはぐくむ第林 0 ◇〇 工リ師の・ くらしとむすびついた自然 置第のさまざまな環境と生き物 生き物コレクション 0 沖第の伝畿食 ミクロの世界 どぶ川の生き物たち 川をと の生き物 ! 健池の 生き物情、 水第の世界 査林 - 農地、 ホタルと人と境と 湖水と物質の ヨシ第のをしらべる動きをしらべる ざりにくい第 せつけん一動から学ぶこと 身近な境をみつめる人びと 水の味しらペ まわる健 出境とはなんだろう 蛇ロのあるくらし くらしのなかの水をしらべる から見た物 第・・′と不第・ ・村のくらし ようこそ變・ヘ を第なの 、と気第 近・と琵を わたしたちのくらし 40 年 川の中済の生き物 ` 、 0 小さな生き物 岸辺の生き物 岩場から沖合にすむ倉たち 里の生き物 のぞいて見よう 小さな生きの世界 ーの倉たち C 展示室淡水の生き物たち 琵琶湖にはヨシの生えた岸辺や内湖、水深が 70m 以上も ある深くて広い沖合などさまざまな環境があり、それぞ れの環境に適応した多くの生き物たちが生息しています。 その生息環境をできるだけ再現して、そこにすむ生き物 たちの姿を紹介します。また琵琶湖の生き物だけでなく、 環境の変化などから、めつきり減ってしまった希少淡水 魚や世界の代表的な湖の魚たち、さらにチョウザメなど 古代魚と呼ばれる魚にもあうことができます。 ビデオコーナー 0 外国から来た倉たち 内湖・ヨシ第にすむ倉たち 川の上の生き物 0 0 0 0 水辺の 企画展示室 琵習資の 琵習湖の主 ワコオオナマズ 0 琵習湖のアユ 少なくなった水角 世界から琵習湖へ 日本の湖沼 字宙から見た第 世界の湖と人びとのくらし ふれあい体験室 合を回遊する角ビワマス ロ 古代無 保置と増強ー保・増強センタ - 減んでしまった角ー 北アメリカの湖 五大 ふれあい水橋ー→ 東アジアの アフリカの第アジアの タンガニ - カ湖トンレサップ第 屋外展示 屋内の展示と、野外とをつなぐ空間として屋外展示があ ります。太古の森、縄文・弥生の森、生態観察水路・池、 生活実験工房、田んぼ・畑などで構成されています。屋 内の展示とともに、自分の足元にある自然やくらしに目 をむけるためのきっかけとなる場にしたいと思います。 ー 1 49 ー
変わりゆく漁業 琵琶湖の漁獲量の変化 琵琶湖ではアユやフナあるいはェビなど 1 年間に 2000 トンから 3000 トンが漁獲され ています。このうちアユの漁獲量が 1000 ト ンから 1500 トンと最も多く、佃煮などに加 工される他、養殖用や河川放流用のアユ苗 として全国に出荷させています。 琵琶湖での漁獲量は昭和 30 年頃は 1 万ト ンを越えていましたが、セタシジミなどが 激減するなどして減少しています。 琵琶湖における漁獲量の変化 12000 10000 8000 6000 4000 2000 1955 1965 1960 1980 1975 1970 1985 「琵琶湖漁業の動き」 ( 滋賀統計情報事務所 ) による 1990 近代化する漁法・漁具 琵琶湖の風物詩ともなっているエリは、 昭和 30 年代以前は全て竹を使って編まれて いました。現在ではほとんど全て化学繊維 の網にとって代わられています。また、漁 船も大型化し、エンジンも高馬力のものが 使われ、以前に比べて効率的で安全な漁業 が行えるようになっています。最近では、 漁具の漁獲効率が向上したため、魚の獲り 過ぎを防ぎ魚の資源を守るために稚魚の放 流や生産調整なども行われています。 昔の漁法・漁具 船の前に網をつけ、アユの群れをすくい 獲る「沖すくい網漁」。漁具の改良と大型 化により漁獲効率が向上している。 41 を 現在の漁法・漁具 漁船には人工衛星からの電波 で位置を測る GP S やレーダー などの近代的な装置が装備さ れている。 - 80 ー
琵琶湖の小さな生き物 琵琶湖にはコイやフナなどの大型の 魚たち以外に、ボテジャコとよばれる タナゴの仲間やメダカなどの小さな魚 あるいは貝類・エビ類など小さな生き 物がたくさんすんでいます。また、巣 をつくるかわった習性をもっ魚たちゃ 最近琵琶湖へ移りすんだ移入種なども います。 琵琶湖の岸辺 琵琶湖の岸辺の生き物 琵琶湖の岸辺には、メダカやウキゴリ・カワバタモロコなどの小さな魚たちゃ、テナガェビやスジェ ビなどのェビの仲間、あるいはヒメタニシ・オオタニシなどの巻き貝の仲間がすんでいます。 岸辺は小さな生き物のすみか ヨシや水草の茂る岸辺は姿を隠すところが多 く、また、餌となる生物も豊富で多種多様な生 きものがたくさん見られます。しかし、最近メ ダカやカワバタモロコなどの小魚たちは岸辺の 環境変化などで琵琶湖ではほとんど見られなく なってしまいました。 編を一 メダカ カワバタモロコ タニシの仲間にも見られる変化 淡水の貝としてはなじみ深いタニシの仲間に は、オオタニシ・マルタニシ・ナガタニシとヒ メタニシの 4 種が琵琶湖に分布しています。し かし、オオタニシやマルタニシ・ナガタニシの 3 種は、琵琶湖ではほとんど見られなくなりま した。かって岸辺では目立たなかったヒメタニ シが、琵琶湖のいたるところで増えています。 琵琶湖固有の小さな生き物 アプラヒガイやビワヒガイ・ウッセミカジカ・ホンモロコなどの魚たちやイケチョウガイやササノハ ガイ・セタシジミなどの二枚貝は琵琶湖固有の生き物です。 ビワヒガイ アプラヒガイ の の マルタニ 、ノ ナガタニシ オオタニシ ヒメタニ ン ウッセミカジカ セタシジミ ー 1 1 4 ー
川や池の生き物 私たちに身近な水辺である水路や河川、ため池などにはさまざまな生き物たちが すんでいます。ひと昔まえの小川や池にたくさんいたメダカや小ブナなどの小さな 魚たち、あるいはクサガメやスッポン、ゲンゴロウやタガメなどの身近な生き物は、 最近ではあまり見られなくなりました。 小フナ 里の生き物 平野部や山間の開けたところでは、かって、 田んぼに引く水や家庭で使う水のために水路や ため池がっくられてきました。メダカやドジョ ウなどの小魚やゲンゴロウやタガメなどの生き 物たちもこのような水辺に生活の場を広げ、人 の暮らしとともに生きる身近で興味深い存在で した。しかし、現在では私たちの暮らしの変化 とともに、しだいにその姿を消しています。 イモリ トノサマガ工ル クサガメ アメリカザリガニ ミズカマキリ タガメ ゲンゴロウ 第気ロ
琵琶湖のおいたち 北上する湖 かたた 堅田湖 ( 約 100-40 万年前 ) こうか 甲賀湖 ( 約 400-320 万年前 ) 大山田湖 おおやまだ ( 約 300-270 万年前 ) 阿山湖 あやま ( 約 270-250 万年前 ) 現在の琵琶湖 がもう 蒲生湖 ( 約 250-180 万年前 ) 近江盆地から上野盆地にかけて分布 する比較的やわらかな地層を、昔の琵 び 琶湖につもった地層ということで古琵 わこそうぐん 琶湖層群と呼びます。古琵琶湖層群を 調べることで琵琶湖のおいたちを明ら かにすることができます。 琵琶湖は、今の三重県上野盆地に誕 おおやまだ 生した大山田湖にまでさかのぼること ができます。その後、 400 万年かけて北 上し、現在の位置まで移動してきまし た。その間、琵琶湖とそれをとりまく 環境は様々に変化してきました。
琵琶湖の環境と生き物たち 琵琶湖の様々な環境と生き物 琵琶湖の環境は、広くて深い沖合い まです。また琵琶湖には、水没した段 丘面が湖段として沿岸から沖合いに広 と、さまざな湖岸形態を示す沿岸とが がっています。琵琶湖にすむ生物は、 あります。沖合いは、光のとどく表層 季節や昼夜など時間変化、あるいは発 と、一年中水温が一定な深層とがあり 育段階によって、いろいろな環境を利 ます。湖岸は、ヨシなど水生植物が茂 る湖岸、砂や礫でできた湖岸、岩礁や 用しますが、それぞれの環境には独特 の生物群集が見られます。 岩のころがる湖岸というようにさまざ 基竹生島 姉川 安曇川 多景島 白石島 ポーリン 地点 沖島 愛知川 10km 5 0 日野川 1 . 网 m ポーリング 地点 = 基盤岩類 第 3 湖底段丘 段丘崖 第 2 湖底段丘 / \ 等深線 ( 単位 m ) 第 1 湖底段丘 十ポーリング地点 口湖底平原 琵琶湖湖底地形図 ( 林・川辺 1993 より ) 瀬田川 ー 82 ー
変わりゆく漁業・・ 琵琶湖の環境と生き物たち 琵琶湖のさまざまな環境と生き物・・ ・・・ 82 水草の世界・・ ・・・ 84 湖水と物質の動き 地球の自転と湖水の流れ・・ 層のある湖・・ 湖水の動きと物質の循環をさぐる・・ 琵琶湖はプランクトンでいつばい / プランク トンを集める / 赤潮とアオコ / 赤潮やアオコ を作るプランクトン みつめてみよう身近な環境 石けん運動からまなぶこと・ 琵琶湖地方の生き物情報・ ホタルと人と環境と・ 近畿と琵琶湖・ 琵琶湖の変化 宇宙から見た湖・ 世界の湖と人びとのくらし・ 川や池の生きもの・ 水辺の鳥・ よみがえれ ! 日本の淡水魚・ 世界の湖の魚たち・ ・・ 118 ・・ 121 ・・ 122 ・・ 123 ティスカバリールーム ザリガニってどんな生きもの ? 世界の楽器をならしてみよう むかしの道具図鑑・ 石の下の生きもの・ 水の中の生きもの・ 動物の歯と食べもの・ 8 8 8 9 ) ・ 126 ・・ 127 ・・ 128 ・・ 130 ・ 132 ・ 134 ・・ 136 ・・・ 94 ・・・ 96 ・・ 98 ・・ 100 ・・ 102 ・・ 103 ・ 104 博物館を支える活動 基本理念 活動イメージ / 組織・ 研究・調査活動・ 交流サービス活動・ 琵琶湖博物館の舞台裏 ー資料の収集と保管ー 情報活動・ 展示活動・ ・・ 138 ・ 139 ・ 140 ・・ 142 淡水の生き物たち 琵琶湖の魚たちとそのすみか 内湖・ヨシ原にすむ魚たち・ 岩場から沖合いにすむ魚たち・ 琵琶湖の主ビワコオオナマズ・ 琵琶湖のアユ・ 沖合いを回遊する魚ビワマス・ 琵琶湖の小さな生きもの・ おもしろい習性のさかなたち・ 外国から来た魚たち・ ・ 106 ・ 107 ・・ 108 ・・ 110 施設 ・ 111 ・・ 112 ・・ 113 ・ 114 ・ 116 ・ 117 ・・ 144 ・ 146 ・・ 148 ・・ 150 利用案内・ ・・ 152 3