博物館つくりと地域おこし一 博物館つくりと地域おこし岩井宏實一 ・日本列島活性化シリーズ〕、冖 ~ 岩井宏實編著一 博物館づくりと 地域おこし「 定価 1 、 600 円 ( 本体 1 、 553 円 ) 〔 5103515 ー 00 ー 000 〕 I S B N 4 ー 3 2 4 ー 0 2 5 01 ー O C 0 0 3 9 P 1 6 0 0 E 上 , 鋼第
でいるのもまた、地域おこしの視点の多様性を物語っており、全体として見た時に、地域おこし と博物館の関係の輪郭を感得していただけるものと思う。 一九九〇年十一月 編者
序章地域おこしと博物館 岩井宏實
博物館づくりと 地域おこし岩井宏實 ・日本列島活性化シリーズ きようせい
「地域おこし」あるいは「地域活性化」が叫ばれるのは、 ) しまや地域の経済・文化 2 が地盤沈下し、低迷しているからである。したがって、地域おこし・地域活性化は、 今更新しいことをするのではなく、まず低迷している経済・文化を再生させることで なければならない。 我々の祖先は、それぞれの村や町、また地域において、長い歴史のなかで時に成長 し、また時に落ち込みながら営々と生活を続け、そのなかからさまざまな地域の仕組 みや経済のありようを模索し、地域の風土に適した生活体系をつくりあげてきた。地 域によっては、それが古代社会であり中世社会であり、さらに近世社会であり近代社 会においてであり、それぞれ時代が異なり、また性格も異なった。しかし、そこにお いて地域の特性をもとにした、「ムラの個性」ともいうべきものを築きあげ、我が地 域社会を特色づけ、それによって、幾多の苦難をのりこえてきたのであった。 今こそ、そうした教訓をいかす時である。したがって、まず地域の個性を再認識し、 それを再生させることが基本になると考えられる。そのはじめは地域の歴史と文化を 知ることにある。今ここにひとつの例として、讃岐の琴平をあげることができる。琴
簿物館づくりと 地域おこし岩井宏實 ・日本列島活性化シリーズ 研究所を中心に した角銀マップ きようせい
民俗資料館として、昭和五十三年十一月三日に開館し、一括収蔵、展示されるに至っ 8 町民の自発的な民具収集からひとつの町に二つの民俗資料館ができたわけで、こう 也こ見ることができない。さらに資料館だけでなく紙漉の地としての特性を した例はイ。 いかして紙の館がつくられ、そこでは紙に関するあらゆる資料が展示され、また実際 に紙漉の体験学習がいつでもおこなえるようになっている。自ら漉いた紙は展示を見 終わった頃には乾いており、もち帰ることができるようになっていて、入館者に好評 を得ている。この金城町民俗資料館、金城町歴史民俗資料館、紙の館は一カ所にかた まっていて、そこがひとつの文化ゾーンとなっている。この三つの博物館的施設がま さに町の活性化、地域おこしのシンボルであり、またセンターとしての役割を果たし ている。町民の自主的自発的地域おこしの貴重な例である。まさに博物館づくりは、 新しいタイプの市民運動である。 博物館といえば、「博物館行き」という一言葉があるように、従来は古いもの、すな こ 0
係者以外にも多くの学者や企画専門家の助力も得なくてはならないので、美星町の内 2 と外をつなぐ役目か必要であろう、と思い直して引きうけることにした。「地域おこし」 には、きっと筆者のような立場 ( その土地の出身者 ) の人間も必要なのであろう。 計画策定集団は、美星町のワーキンググループ ( 総務課・地域振興室・企画開発班 から一五人 ) と計画策定を専門に手がけているコンサルタント二社 ( 株ぎようせい・ 株三井情報開発 ) で組織した。ふつう、この種の計画策定は、コンサルタントに一括 委託する例が圧倒的に多いが、筆者たちは、あえて三者を競合させることにした。そ れは、再三いうように「まちづくり」は「人づくり」であるからである。外部の専門 家の知識や手法に誘発されて、内部の人材が育っことが何よりも望ましい。幸い、美 星町では若い人材が育ちつつある。そして、自治省のリーディングプロジェクトは、 あくまでも美星町の「地域おこし」の一歩にすぎないのである。ここは、コンサルタ ント二社に「人づくり」にも協力してもらうべきなのだ。 なかでも、功を奏したのは、計画策定がすすんだ段階ごとに、町民シンポジウム形 式 ( 各種の団体リーダーを中心に呼びかける形式 ) の会を催したことである。
3 章は、若い研究者たちが、農村文化研究所という民間の研究所により集まって、民間の博物 館を核として地域を活性化させるためのディテ 1 ルを試みた共同研究の一班である。 4 章は、知的レクリエ】ション施設として位置づけた、特異な県立博物館の構想と、その実現 についての綿密な紹介である。 5 章は、都市、ことに東京下町の地域おこしをめざした博物館のありようと、都市に適した新 しい展示手法の提案と実験例である。 6 章は、ダム水没集落による新集落の形成と、その活性化のための博物館建設に伴う問題点と、 将来の課題についての提言である。 7 章は、高原地帯の平凡な町が、その自然環境と歴史的景観をいかして、町全体を野外博物館 として地域を活性化させる構想と、推進のプロセスである。 8 章は、生活環境博物館構想の視点から、地域おこしと博物館の関係とそのあり方を、実例を あげて論じたものである。 以上のような構成であるため、全体として統一を欠く点も見られぬことはない。叙述方法もそ れぞれ異なり、時に思い入れがあり、時に淡淡たる語りであり、ある者は冷静な目での観察であ り、指摘であり、提言であり、またある者は学術的な論考でもある。かようにバラエティに富ん 3
あとかき 8 章「ふるさと村」の創設による地域の活性化 コー・ミュージアムの視点から 5 ▽エコー・ミュージアムの概要 / 「地域おこし」の動向 ▽岡山県における「ふるさと村」の創設 / エコー・ミュージアム構想への転換 / 226 松崎憲三