活性化 - みる会図書館


検索対象: 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし
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1. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

「地域おこし」あるいは「地域活性化」が叫ばれるのは、 ) しまや地域の経済・文化 2 が地盤沈下し、低迷しているからである。したがって、地域おこし・地域活性化は、 今更新しいことをするのではなく、まず低迷している経済・文化を再生させることで なければならない。 我々の祖先は、それぞれの村や町、また地域において、長い歴史のなかで時に成長 し、また時に落ち込みながら営々と生活を続け、そのなかからさまざまな地域の仕組 みや経済のありようを模索し、地域の風土に適した生活体系をつくりあげてきた。地 域によっては、それが古代社会であり中世社会であり、さらに近世社会であり近代社 会においてであり、それぞれ時代が異なり、また性格も異なった。しかし、そこにお いて地域の特性をもとにした、「ムラの個性」ともいうべきものを築きあげ、我が地 域社会を特色づけ、それによって、幾多の苦難をのりこえてきたのであった。 今こそ、そうした教訓をいかす時である。したがって、まず地域の個性を再認識し、 それを再生させることが基本になると考えられる。そのはじめは地域の歴史と文化を 知ることにある。今ここにひとつの例として、讃岐の琴平をあげることができる。琴

2. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

まりをもった連合体を形成する、「農山漁村の複合化」こそが、地域の活性化のひと銘 つの方向を示しているように思われる。 ところで、むらおこしに見られる地域の個性をいかした再開発は、情報化・国際化 時代に対応して、農村と都市との交流による地域づくり、あるいは外国との交流によ る地域づくりというように、異地域・異文化との交流を基調としたものが多い。都市 と農村との交流についてみれば、その事業内容によって、 1 「ふるさと村」 ( 博物館 ) の創設 2 「ふるさと会員制度」「ふるさとオーナー制度」「産地直送ふるさとパ 3 「文化的イベント」の開催 に区分される。いうまでもなく、これらの活動はさまざまな組み合わせによって実 施されている。 2 についていえば、「一村一品運動」とも関連して全国津々浦々の市 町村がこの事業にとり組んでいるし、さらに昨年のふるさとプームにのって、大手企

3. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

はじめに 「博物館」というものが、果たして地域活性化・地域おこしに役立つのであろうか。従来の博 物館、博物館に対する既成観念からすると、否定的に考えざるを得ないであろう。しかし、今日 においては博物館そのものが大きく転換しつつあり、博物館に対する観念も一変しつつある。博 物館は住民の憩いの場であり、知的交流の場であり、情報交換の場であると考えられるようにな り、地域活性化の重要な機関であるとされるようになった。 こうした考え方は、すでに十数年前から芽ばえている。高度経済成長の終焉に伴う地域経済・ 文化の地盤沈下の傾向の兆しと、それに対するかのように台頭してきた高度情報化社会の到来と、 軌を一にしている。そうした時、高度情報化社会に対応しながら、地域活性化の一翼を担うべく 志向して、全国各地でさまざまなかたちでの博物館構想が生まれてきた。 それは、時に個人の熱情による広域にわたる野外博物館の構想。長年にわたり資料をこっこっ と収集し、手づくりの博物館をつくる試み。共同研究により博物館を核として、地域を活性化す

4. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

マ平凡なまちの活性化 筆者の郷里である美星町 ( 岡山県小田郡 ) で、まちの活性化についてのさまざまな 論議がなされるようになったのは、極最近のことである。 それまでにも、美星町に住む人たちが、それぞれの立場で美星町の将来を考え、高 齢化や過疎化がすすむにつれて何らかの手立てを講じ、さらに活性化を望むーーもち ろん、そうした姿勢が潜在してはいた。しかし、それがより具体的な提案とか施策と して表面にあらわれるには至っていなかった。 それは、美星町が比較的恵まれた土地柄であり、歴史を通じて暮らし向きのよいと ころであった、ということが大きく起因していよう。 ちなみに、美星町は、準平原としては日本でも代表的な吉備高原の南端部にある。 総面積は七三・一、うち山林 ( 主に赤松林 ) が六割方を占め、耕地は水田が七・六、 796

5. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

なくとも、地域の特産物として地域活性化のための一助となることもできるであろう。 2 要するに、地域の博物館は自己認識の場であるということである。すなわち地域の 歴史とそこに営みを続けてきた祖先のつくりだした文化を理解し、そこから地域的特 性を見出して、将来への展望を考えるシンクタンクとしての役割をもつものである。 こうした博物館を考えるならば、ここで従来一般におこなわれてきた展示方法とい うものを再考せねばならなくなる。すなわち構造展示が求められるのである。ただ資 料を形式分類したり編年順に並べるのではなく、ひとつの「もの」を通してその背後 にある人間の知恵なり思考・思想までもが表現できる展示が求められるのである。そ のためには民俗資料、考古資料、文献資料、美術資料などが有機的に統合された構成 が必要になってくる。そこには極めて高い学術性が求められるが、それにも増して情 感性を求められる。博物館というのは一種の知的遊戯場であり、そこに行けば情念が かきたてられるような空間構成が必要である。 地域づくりの核として博物館が考えられ、今まで見てきたような視点で構成、展示 されるならば、他地域から訪れた人たちもまず博物館を訪れて、そこでその地の特性

6. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

3 章は、若い研究者たちが、農村文化研究所という民間の研究所により集まって、民間の博物 館を核として地域を活性化させるためのディテ 1 ルを試みた共同研究の一班である。 4 章は、知的レクリエ】ション施設として位置づけた、特異な県立博物館の構想と、その実現 についての綿密な紹介である。 5 章は、都市、ことに東京下町の地域おこしをめざした博物館のありようと、都市に適した新 しい展示手法の提案と実験例である。 6 章は、ダム水没集落による新集落の形成と、その活性化のための博物館建設に伴う問題点と、 将来の課題についての提言である。 7 章は、高原地帯の平凡な町が、その自然環境と歴史的景観をいかして、町全体を野外博物館 として地域を活性化させる構想と、推進のプロセスである。 8 章は、生活環境博物館構想の視点から、地域おこしと博物館の関係とそのあり方を、実例を あげて論じたものである。 以上のような構成であるため、全体として統一を欠く点も見られぬことはない。叙述方法もそ れぞれ異なり、時に思い入れがあり、時に淡淡たる語りであり、ある者は冷静な目での観察であ り、指摘であり、提言であり、またある者は学術的な論考でもある。かようにバラエティに富ん 3

7. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

近年イベントは大流行りで、この他展示会、見本市、スポーツィベント、パフォー マンス等々が各地で目白押しである。しかし、それらの多くは一回起性・一過性のも ので、実際どの程度地域の活性化に結びついているかといえば、極めて否定的である。 そうした反省から近年は、イベントの企画を一過性のものに終わらせず、末長く地方 文化振興の土台に据える方途を模索していく傾向にある点を指摘するにとどめ、イベ ントのあり方については本稿では言及をさし控えたい。 最後に 1 の「ふるさと村」構想であるが、これは水郷の抒情や白壁、掘割の美で売っ た福岡県柳川市・岡山県倉敷市、また武家屋敷や城下町、土蔵の町や職人街を復活さ せて観光の目玉とした秋田県角館町・福島県会津若松市・喜多方市・埼玉県川越市な どの発想と共通している。伝統的建造物群という文化財をいかして観光化をはかり、 それによって地域を活性化しようとするものであるが、これらの地域と「ふるさと村」 また、民俗博物 の観光価値の差は歴然としており、十分な効果を発揮してはいない。 館の建設を核に、地域の活性化をはかろうとする計画もいくつか見られる。新潟県佐 渡郡小木町、沖縄県中頭郡読谷村などの例がそれであるが、こうした事業も「ふるさ 234

8. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

8 章「ふるさと村」の創設による地域の活性化 ・歩道の整備 ・案内板・説明板等の整備 ・便所・駐車場・ごみ焼却施設等の整備 ・その他 要するに藁ぶき屋根の民家、水車小屋等が比較的多く残っている地区を指定し、そ れらの風物を保存・復元し、観光資源として活用することによって郷土の活性化をは かるのがその狙いなのである。しかし、果たして藁ぶき屋根の民家、水車小屋といっ た故郷グッズの寄せ集めが観光資源たり得るのだろうか。都市人の故郷志向を満足さ せ得るものなのだろうか。 生態学者の品田穣氏は現在の故郷プームについて興味深い指摘をしている。氏によ れば、故郷プームの背後には常に都市があり、都市には分化・特殊化の結果おこった 総合化への志向があるという。都市化による分化・特殊化とは、氏の言によれば次の よ、つな現象をいう。 24 7

9. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

8 章「ふるさと村」の創設による地域の活性化 民の高齢化に伴うコミュニティ自体の弱体化や、若者の定住促進対策が最重要課題と して横たわっているからである。 以上、岡山県下の二つの「ふるさと村」の現状を報告したが、地域住民の取り組み 姿勢、「ふるさと村」建設以降の意識乃至は生活の変化については調査不足で報告で きなかった。それはともかく、この二例をくらべてみると一応の成功をおさめている 越畑と、その途上にある吹屋とは好対照を見せている。しかし、越畑のケースも企業 に依存する一方で、自主的な運営も必要な時期にきているといえよう。それに対して 吹屋の場合、越畑ふるさと村の方法がひとつの参考となる。といっても企業は田舎と 都市の媒介を果たしているにすぎず、企業との提携をめざすというよりは、より望ま しい都市との交流を積極的に推しすすめながら、地域の活性化をはかる方策を模索し ていかなければならない。 5 5 2

10. 日本列島活性化シリーズ 博物館づくりと地域おこし

博物館づくりと 地域おこし岩井宏實 ・日本列島活性化シリーズ きようせい