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検索対象: アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験
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1. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

企業の役員クラスのための短期コース チャ 1 トウ先生がプログラム長への就任後に提案したのは、エグゼクテイプ課程を作って、外から 企業の役員クラスの人々を集めることだった。企業の環境リーダーシップ・セミナ 1 ()o 「 po 「 ate Envi 「 on_ mental Leadership semina 「 ) が始まったのは九二年の春 ( 九一 / 九二年度 ) で、その後毎年、行われている。 & がコーホン・スクール長のもとで企業との関係をより強めていこうとしていたこともその背景にあ った。企業人の大半は環境分野の正式な教育を受けたことはない。弁護士や化学の専門家はいるだろうが、 しれない。足りないのは卒業生のための「市場開拓」だとチャートウ先生は考えている。 8 との合同学位をめざす学生の多くは、エネルギーに興味を持ち始めているという。初期の卒業生も 1 コノコやユナイテッド・テクノロジーズ、ゼネラル・エレクトリック (e ) などで活躍している。また、 卒業生の就職先は企業には限らない。環境保護団体も企業の環境問題にかかわることが多くなってき ている。環境保護庁や環境保護団体、国際機関などで活躍している卒業生もいる。の知識はこうした 非営利機関 (Z=o) で、企業とともに環境問題を解決していくために活かすこともできる。コンサルティ ししカらだ。 ングも一部の卒業生にとって人気がある。仕事の内容が刺激的で収入も ) ただ、産業エコロジーという先端的な理論に重点を置きつつある & のプログラムが、ほんと うに実社会が必要とする環境管理者を育成するためには、改善すべき点が多い、という卒業生もいる ( Ⅱ 1 節参照 ) 。

2. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

卒業生の進路 & 卒業生の就職環境 ( 」 ob ma 「 ket) は甘くない。九四年一一月にキャリア開発オフィス (OQO) が行った卒業後の進路調査では、一一月時点でまだ職を探している学生は一一 % に達していた ( 表Ⅱ・ 2 ) 。 九五年の卒業生についての調査でも、この数字は一〇 % に達している。自分の志向に合う仕事が見つかるま でしつくりと就職活動を続ける学生が多いという事清はあるものの、この比率はかなり高いといえるだろう。 やはりビジネススクールとは差がある。 一九九六年春、九七年春には、デューク大学環境スクールと共同でワシントンで就職説明会 ( キャリ ア・デー ) が連続して開催されている。キャリア・デーとは、 7 ・ 5 節で紹介したように、卒業生の就職活 動の便を図るために主要都市に企業関係者と & の学生を集めて開かれているものだ。の学生 に興味がある企業の採用担当者にワシントンに準備した会場に集まってもらい、そこに & の学生 たちが行くので、一度に多くの企業と面談できる。同しエール大学でも、経営・行政管理学スクールである (school ofManagement) のほうは、数多くの企業が大学を訪問して採用活動を行うが、に わざわざ来てくれる企業はあまり多くなかった。こうして、他の大学の環境スクールと共同でより大きなキ ャリア・デーを開催するというアイデアが生まれたわけだ。 & のキャリア開発ディレクター (Director ofCareer Development) のスタントンⅡ ( ピータ 1 し O Ⅱ オーティス (Stanton"Peter"C. Otis,J こさんは、ミシガン大学天然資源・環境スクール (cozxzæ) に もキャリア・デー共催の話を持ちかけたが、ミシガン大には断られた。 coZX & のキャリア計画・開拓サ 198

3. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

は、企業の環境部門にとって、非常に重要になっていく。 環境管理部門のトップは、毒物学、化学、産業衛 生学などの専門家がなるかもしれないが、の卒業生たちはこうした部門の素晴らしい学際的チ 1 ムリ ーダーになるだろう」という答えが返ってきた。 , 彼らは、それぞれの分野の用語を十分に知っているし、究 極的に何をなすべきかという全体的なアプローチのやり方も知っており、だから、非常に重要な役割を果た すことができるのだという。 あるスイスの大手企業の環境担当副社長はチャートウ先生に「最近、環境部門の人材採用で、自分が化学 専攻だということもあって化学専攻の者を採用したが、間違いだった。 & の卒業生のようなもっと広 範な訓練を受けた人材を採用したほうが良かった、と言ったという。「異分野間の相互依存関係がますますラ 強まっているなかで、 & æco のの卒業生は大きな役割を果たしうる」というのだ。 ロ プ チャートウ先生はまた、 & ( プロクター・アンド・ギャンプル ) 社のある管理職の人から「製品の背 後にある基礎科学の十分な知識があり、しかも製品への法規制のプロセスが理解できる、政策学を学んだ人管 材が欲しいのだが、という電話を受けたことがある。先生は「それはまさにわがスクールのの卒業生環 ですよ」と答えた。環境の視点から公衆衛生学、科学、政策、法律を学んでいるからだ。この管理職はいき業 企 なり数日後に現れて八人を面接し、「どの学生も採用する」ことになった。二人を正社員とし、残りの六人 は夏のインターンとして雇ってくれたのだ。「が何をやっているかわかっている企業はこんな対応も章 してくれる」と先生は強調していた。 もちろん、というプログラムでどういうことをやっているかが企業にまた理解されていないのは確 かだろう。また、今後どういった環境部門の人材が必要となるかを企業自身がわかっていない面もあるかも

4. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

。この見学でも、既存 住民の原発へのイメージも良いものとはいえず、もはや原発の新設は行われていない の原発の運転に対して住民の理解を得ることがいかに必要とされているかがよくわかった。 廃棄物を消減させるーー・モルテン・メタル・テクノロジー社 九四年一〇月一四日、モルテン・メタル・テクノロジー (Molten Metal Technology, lnc. ) という会社 ( 本社・マサチューセッツ州ウォルタム ) の施設にも見学に行った。固形廃棄物管理を教えるマリアンチャ ートウ先生を含む見学者の一行十数名は、校有ワゴン車で、二時間ほどかけてマサチューセッツ州フォ 1 ル (Fa11 Rive 「 ) の同社のリサイクル研究開発施設に到着した。 同社は、八九年設立の、企業や行政向けに廃棄物のリサイクルと減量化サービスを行う会社だ。触媒利用 の抽出処理 (catalytic Ext 「 action p 「 ocessing =OQO-) という技術を開発し、成長企業が名を連ねるナスダ ック (Z<ooQ<C= 店頭市場 ) に株式をあっという間に公開した。この事業を起こしたのは、当時マサチ ド大学在学中に有害物質の少ない燃 ューセッツ工科大学 (ä—æ) の博士課程で学んでいた学生とハ 焼技術を開発していた若い事業家たった。 私たちに説明、案内をしてくれたのは、同社の法務担当取締役のロバートⅡⅡシャッテン氏。プレゼンテ ーヘッドによるスライドやビデオを使って、 O 技 ーション・ルームに通された私たちに対して、オー 術の素晴らしさについて、手慣れた様子で説明してくれた。当時、同社は創業後わずか四年だったが、同社 についての記事を掲載した『ビジネスウィーク』誌は、「その独自のアイデアが実用可能な技術であるとい うことを急速に証明しつつある」と報じていた。九三年度の売り上げはわずか四七〇万ドルで、一一三八万 112

5. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

格を制定していくことになった。 環境への貢献を重視する企業が増えるにつれて、環境保護団体など市民の側にもすべての企業を敵視する 1 風潮に変化が始まった。「企業を敵視するのでは問題は解決しない。市民と企業が協力してこそ、環境問題 の緩和が可能になる」と考える人も増えてきた。序章と 1 ・ 2 節で紹介したバルディーズ研究会が一九九一 年に日本で設立された目的も、市民と企業の協力だった。 一方、 & においては、その使命は「次の世代の環境問題分野のリーダーを養成すること」とされて いたものの、八〇年代半ばまで、産業界 ( ビジネス ) には実際のところあまり注意が払われてこなかった。 & の学生の間でも、企業は環境を破壊する「悪者」という見方が常識であり、ビジネス自体に興味を 持っ学生はほとんどいなかった。卒業後は、企業にはほとんど就職せす、もつばら政府機関・環境保護団体 ・林業関係などに就職していた。 しかし、当時のジョンⅡゴードン (John Gordon) ・スクール長 ( 注 ) は、早くも一九八〇年代末に、この ような「企業は環境を破壊する悪者」の時代の終わりを感じ取っていた。強く感じていたのは「企業経営の 面からも環境問題をとらえなければ、世界の環境管理の問題において、置いてきばりになってしまう」とい うことだった。こうして (lndustrial Environmental Management Ⅱ産業環境管理 ) プログラムが一 九八〇年代末に始められた。プログラム ( 以下は、「企業経営者が直面する複雑で多面的な 環境問題に対処するための統合された技法を教授すること」を目的にしている。マリアン日チャートウ (Marian Chertow) ・プログラム長によると、「環境問題の将来を考えると、企業は最大のプレーヤ 1 だ。だからそれに対応したカリキュラムを作って、企業が次世代の環境を管理する方法に対して影響を与

6. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

ム グ ロ ープログラム創設 「企業は悪者」の認識が変わった プ 日本を含めた世界の企業の環境問題に対する考え方は、九〇年代初めから徐々に変わり始めた。地球規模管 境 の環境間題が注目を集め始めたこのころから、企業の環境管理は、単に公害問題を起こさなければいいと 環 う時代が終わり、事業活動や製品の環境への影響をいかに最少化するかが重要な意味を持っ時代に入ってき業 企 た。この変化を重視する企業も増え始めた。アメリカの化学大手、デュポン社は、環境との調和が企業の発 展をもたらすとする「企業の環境主義 (corporate envi 「 onmentalism) 」を唱えたし、日本の経済団体連合会章 も世界に先駆けて環境にやさしい企業活動をめざす「環境憲章」を策定した。九一年には、翌九二年の地球 サミットに向けて持続的発展のための産業人会議 (=0002) が結成され、その発案から環境管理の国際規 3 格の制定の提案がなされた。こうして国際標準化機構 (—TO) が IS014000 シリーズという国際規 盞一「の . プログラム

7. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

( 〔〕内は筆者注 ) 。 卒業生は社会に貢献できるか & における二年間の修士課程を終えた卒業生は、社会に対して十分な貢献ができると思います コーホン環境管理の分野では、米国内、そして世界全体でも、今、非常にダイナミックな変化が起きて いる。米国の法体系も今この瞬間にもどんどん変化を遂げている。企業は、法律が変わったことによる面も 大きいが、以前より社会的責任に目覚め、自発的に環境問題に対応するようになってきた。環境対策に積極 的に取り組むことでコスト削減も実現できる。こうした根本的な考え方の変化が当校卒業生への需要の増加立 にもつながってきた。 つまり、政府も企業も変わりつつある。大きな全国的環境保護団体は、法律の変化の過程にも大きな影響 レ を与えたが、自らの役割についての再検討を始めている。人気を失って会員の数が大きく減り、財政的に苦一 しくなったものもあるようだ。分裂も進んでいる。多くの地域レベルの環境団体が設立され、企業や政府たス けでなく、全国的環境団体を批判する状況も生まれている。 これらのそれぞれの変化のなかで、 & が輩出すべき卒業生とは、我々の伝統を大切にしつつ、同時章 に柔軟性を持ち時代の変化に迅速に対応していく能力を持つ人材だ。ここで必然的に学際的アプローチが重 要になる。科学を理解するとともに組織行動学、経済学、政治学、そしてもちろん社会学の面から環境問題 0 2 を理解することも重要になる。この点では、私は & の提供している教育についてはかなり満足してい カ

8. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

普段は別々に考えられている法律や化学などの問題を ( 環境間題の視点から ) 総合的に考えるのが、このセ ミナーの目的である。日本の大学で、企業などの役員を対象に環境管理のセミナーを行っている大学はない のではないだろうか。 期間は二週間で、宿泊費や教材を含む総費用は九六年のもので八五〇〇ドルたった。定員二四名だが、毎 回、そこそこの参加者を集めているようだ。対象は、主として北米で事業を行っている企業や、欧州企業で もアジア企業でも、米国の環境規制に興味がある企業や公共機関の役員クラスた。例えば、九四年には & 、デュポン、プリストル・マイヤ 1 ズなどの企業からだけでなく、国連、環境保護庁 < ) やケンタ ム ッキー州政府からも参加があった。運営する側も、多様な分野の参加者を集めることに努めているという。 グ 企業の環境管理の多くは法規制によって動かされており、企業部門と公的部門の環境とのかかわりを統合的 ロ プ に捉えることが重視されているのだ。「産業生態系 (industrial ecosystem) 」や「政治生態系 (political eco- system) 」の境目の問題 (boundary グ u ワ ) 、つまり相互作用を取り扱うことは企業の環境管理にとって重要管 だからだという。「米国では、政府と企業が協調する度合いが日本よりも低く、共和党は多くの環境規制を環 目のかたきにしている」 ( チャートウ先生 ) という状況があり、政府と企業の協調を促進することは意義の業 企 あることと考えられている。 企業や公共団体の環境関連の責任者たちがここに来ることで、 & の学生たちを見て、夏のインター章 ン生を受け入れたり、修士プロジェクトの題材になるような学生を使ったプロジェクトを提案してくれるこ とへの期待もある。たしかに、このセミナーによって産業界と & のつながりが強まれば、 v-v & の 9 修士課程との良い相乗効果が生まれることだろう。

9. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

ゴードン・新スクール長によれば「ライバル校ほどではないが、減少した」という。しかし、今後は二一世 8 糸にかけて、環境問題がより深刻化していくのは確実だ。公共政策あるいは企業戦略において、環境問題に 2 関わる部分のウェイトも確実に高まっていくだろう。日本でも、環境庁の省への格上げ論議や、企業の 014001 への取り組みの加速など、環境問題重視の傾向を示す例は多い。これからの環境問題は、政治 ・経済・法律などへの関わりがますます強まっていく。だから、活動の場が国際機関・行政・企業・非営利 組織のどこであれ、文科系の知識を含めた複数の専門分野への理解がなければ、その解決への取り組みにお いて、全体的な方向性を見誤る可能性も出てくる。この意味で、環境問題のプロフェッショナルおよび学者 予備軍を養成する学際的な環境スクールの役割は大きいと言える。環境スクール卒業生へのニーズは徐々に 高まっていくことだろう。 c-v & では、コーホン・スクール長の改革がかなりの成果をあげた。だが、卒業生へのインタビューで も明らかなように、まだまだ新しい時代への対応が十分だとは言えない。社会が本当に必要としている人材 の育成のために、 & もたえず改革を続けていく必要がある。

10. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

課程に対して、は、ビジネススクールとの連名でこの課程の責任者を出している。この他、ロー スクール、公共政策スクールや経済学部などとの合同学位課程もある。公衆衛生学スクール (public Health School) との合同学位課程設立の作業も進めている。 だから、例えばリスク・アセスメント ( 危険度評価 ) について考える場合は、公衆衛生学、工学そして投 資の専門の人々と意見交換することができる。さらに規制問題を考える時には、法律専門家も人ってくる。 「これは、エールの & などで伝統的に行われてきた大型哺乳動物の研究など狭い分野をめざすやり 方とは違う」とプルーワー氏は強調し、エール大学の & へのライバル意識を隠さない。ただ、プレ ワー氏は、エール大学の & から移籍してきた人で、 & のスクール長、。コーホン氏の友人で もある。コーホン氏が学際性の強化を含めてさまざまな改革をやっていることは承知のうえだ。 九一年にプルーワー氏がエール大学の & から移って来たときには、「ここの教授たちは、基本的に 旧態依然のやりかたに満足していた」という。そこで同氏は、新しい戦略を策定し、また、新しいプログラ ム ( 課程 ) を始めるために、四年間で約一二〇〇万ドルの寄付を集め、などを含め改革を推進した。 企業からの資金援助も行われている。九二年に国家汚染防止センターの二人の教授が米国最大級の電話会 社である & の「産業エコロジー・フローシップ」を初めて贈呈されたところから始まる。そのフ ローシップの一部は、「産業エコロジー」という講義をつくるための資金の贈呈だ「た。の産業 エコロジーの講義の主要テーマは汚染防止と環境のための事業デザインだ。、。 ヒシネススクール、工学部など 他の分野の教師もこれを教えている。ちなみに企業活動をエコロジー ( 生態学 ) 的観点から考える「産業工 コロジー」という講義は、 8 ・ 2 節で紹介するようにエール大学の & にもあり、にも 6