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検索対象: アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験
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1. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

初めてわかった ミクロ経済学理論と政策 ( M 「 oeconom Theo 「 y and policy) 天然資源経済学および環境経済学の理解にはミクロ経済学の知識が不可欠だが、ミクロ経済学に関する書 物で、私が独学でまともに理解できたのは、アメリカ人が書いた入門書のみだった。そこで、基礎固めのた めにミクロ経済学の講義をとることにした。講師は、前の学期に計量経済学を教わったマイケル日プーザー (Michael Boozer) 先生たった。 この講義は、中級ミクロ経済学 (lnte 「 mediate Mic 「 oeconomics) と位置づけられており、微分・積分を使 わない入門ミクロ経済学 (lnt 「 oducto 「 y Mic 「 oeconomics) を学んだ学生向けのもので、私にはちょうど良か った。テキストは」く誉、ミ co 0 ミ誉 T 、き 0 、 ). ・ Basic p 、 c 、 0 E. ミ e 0 ( ミクロ経済学の理論〕基本原理 と拡張 ) 、 5th ed. by walter Nicholson, D 「 yden p 「 ess というもので、易しい微分・積分を使って基本概念を 説明していた。これがとてもわかりやすい。文章が堅苦しくないだけでなく、単純な例を使った例題がたく さん載っていて、自習してもよく頭に入った。宿題などかなりハ ードではあったが、この講義を通じて、ミ クロ経済学の基本がしつかりと身についたと感じた。 これは難しい 環境と天然資源についてのワークショップ ( 「 0 円 kshop on Environment and NaturaI Resources) 九三年六月、どの環境スクールに行こうかと悩んでいた時に、私を & に行くことに決めさせたのは、 158

2. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

この講義の目的は「土地管理者 (land m 目皛。フ ) や環境科学専門家 (envi 「 onmental を。 n 色をめざす 学生に水資源問題の包括的な概観をしてもらう」こととされており、水文学の基本原理とその同水系地域 (watershed) の多目的管理〈の適用方法が解説された。は三人もいて、月曜、水曜、木曜に別々に一時 間ずつオフィスアワーがとってあったのはありがたかった。 テキストはきミ、。、。 g ) ) を。 M ミミ g 。ミ。ミ三ミ。、。 d 』 ( 水文学と同水系地域の管理 )' by K. N. B 「。。グ et. 巳。 lowa 。 U = . p 「。第 Ames0 配点 (Grading) は、一一回の試験が四〇 % 、四回の課題 ( 宿 題 ) が六〇 % だった。 ーテン (paul K. Barten) 教授という冗談を連発 この講義は聞き取りにくかった。担当したのはポール。バ 1 ヘッド・プロジェクタで次々と図を見せながら、軽快な口調で話を進めていく。 する楽しい先生で、オー ちょっと聞いた感じでは、理解できそうなのだが、なぜかなかなか頭に人らない。冗談が出るたびに、教室 は笑いに包まれるが、私はきよとんとするしかなく、悔しかった。それで、たまに聞き取れる冗談があると、 私はここぞとばかりに思いっきり大っていた。 ーヘッドを見せるべースが速すぎるということだった。 聞き取りを難しくしていた理由の一つは、オ 1 という不満が少なか アメリカ人の学生からも、「スライドを書き写していると、講義がよく頭に人らない らず出ていたが、私のほうは全くついていけない気がしてきた。そこで、先生に会いに行ってオー ドをコピーさせてもらえないか、と頼んでみた。だが、「前はやっていたが、スライドが紛失したりするこ ともあって、今年からはやらないことにした」という。約束をとって先生の研究室に行きスライドを書き写 。いいか、それ以上はだめだということだった。いつも先生が在室とは限らないし、迷惑をかけるので、 4

3. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

とも多くなった。デパ 1 トに惣菜を買いに行くのに、時には自前の弁当箱を持って行くようになった。割り 箸や包装容器を使わないで済んだと思うと無性に嬉しくなるのである。根っからの貧乏性なのたろう。 その後、環境と人間の経済活動の調和を図ることを訴える主張が多く聞かれるようになった。同時に「企 という声が内外で高まっていった。企業は、ある地域への 業活動も、地球環境への配慮をせざるをえない ロ 1 カルな環境問題を起こさないたけでなく、人類全体の「持続可能な発展」に貢献することを求められる よ一つになった。、、 こみ問題も、焼却能力や最終処分場の不足などが各地で深刻化してきていた。 「二一世紀にかけて、大量生産・大量消費社会が見直されていかざるをえない状況のなかで、ごみ問題を 含む環境問題は、企業や消費者の収人や行動様式に大きな影響を与えることになるだろう。」こうした関心 から、私は、企業の環境管理やごみ問題を含む環境問題に関する記事を、経済や企業活動との関連のなかで、 たびたび書くようになった。だが、記事を書いていくうちに、環境と経済の両立を考えるうえで、環境経済 び 学、企業の環境管理、廃棄物管理などのさまざまな分野の知識の不足を痛感するようになった。「もっと本学 という気持ちは日増しに強くなり、こうした知識をしつかり学ぶために「大学院に進学 済 格的に勉強したいー 経 レ」 したい」と考えるようになった。 環境経済学関係の書籍や論文などの筆者をみると、環境経済学の専門家はアメリカやイギリスに多いこと境 がわかった。どうせ大学院に行くなら、留学しようと考えた。アメリカ人やイギリス人と環境と経済の両立 について思いっきり議論もしたいと思った。こうして私は留学への挑戦を決意した。一九九〇年のことだっ序 9

4. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

企画されていた。これは ( 産業環境管理プログラムⅡ 8 章参照 ) 事務局など校内の各種の団体が主催 するもので、ワゴン車で行ける範囲なら無料だった。私は、講義についていくのに忙しく、こうした見学旅 行に頻繁には参加しなかったが、い くつかの面白そうなものに参加した。 ニューヘイプンの地ビール工場 一九九三年一〇月一五日には、地元で人気のある地ビールづくりを行うエルム・ストリ 1 ト・プルワリ 1 (Elm St 「 eet B 「 ewe 「この見学に行った。ニューヘイプンの別称「エルム・シティ」をプランドにした黒ビ ールで有名だ。と cooä ( 経営・行政管理学スクール ) の環境に関心のある学生グループ主催で、同 社の環境プログラムと環境管理の実際を知ることが目的だった。アメリカのビン入りのビールは、日本のビ ールのようにビンを洗って再使用はしないが、コネチカット州など多くの州ではビン・缶にデポジット制度生 があるからリサイクルのための回収がしやすくなっている。つまり飲みおわったビンや缶を酒屋に持ってい学 けば五セントが返してもらえるのだ。こうして集められたビンや缶は、もとのビンや缶に再生されるとは限の 以 らす、幅広い用途に利用される。 小さな地ビール工場であるにもかかわらず、廃棄物のリサイクルなど、環境にやさしいビ 1 ル製造をめざ講 す同社の意気込みが理解でき、ビールを何本ももらって喜んで帰ってきた。 章 9 ミルストーン原子力発電所 0 九四年一月二一日に、コネチカット州ウォーターフォード (wate 「 fo 「 d) にあるミルストーン (Mill-

5. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

と政策、のような中級ミク 0 経済学 ( ぎ。「 m 。」蕓。 Mic 「 oeconomics) で、易しい微分・積分を使 0 て経済学 の基礎を学べる。さらに経済学を学びたい場合は、数理経済学—、そして数理経済学Ⅱ〈と進み大学レベル幻 は終了。さらに大学院レベルで高度な経済学を学ぶこともできる。このような「階段」を一歩一歩上が「て いけば、生物学でも、化学でも、地質学でも、全く未知の分野に & の学生は挑戦し、自分が取り組み たい環境問題に対処するための専門性を高めることができるのである。すでに何度か触れたように、 に十分な講義メ = 、ーがそろ「ていたとはいえない面はある。しかし、他の学部で開講されている講義を 使うことで、かなりカバーできるのである。 日系 ( 1 フの友人、ケリー。カネダ ( K 。「「』 K 当。」しさんは、博士課程に進んで環境経済学を専攻するつ もりで、修士課程では、その基礎固めのための勉強をしていた。ケリーは大学では経済学専攻だ「たが、博 士課程に行くには経済学や数学の知識が不足していた。そこで微分・積分の講義を入門から応用まで順々に とって基礎固めをした。同時に彼女は、 ) しくつかの環境科学の分野の講義も重点的にとっていた。こうして まさにいろいろな階段かついたピラミッドのように、 いくつもの分野で準備をして、頂点である目標に着実 に近づいてい「た。彼女はその後、無事 & の博士課程に進学し、経済学部博士課程の計量経済学やミ クロ経済学を学び、さらに勉強を続けている。 }— < とオフィスアワーがあれば恐いものはないー すでに何度も紹介したように、授業がよくわからなか「たり、宿題の解き方がわからない学生は、 ( ( 。冐三一 4 当 ( Ⅱ教務アシスタント ) や先生の面会時間 ( オフィスアワー ) に個別に教えてもらうこと

6. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

七面倒くさい出願作業 話は前後するが、日本でフルプライト・プログラムを運営する日米教育委員会のほうからは、フルプライ ト奨学金の合否を待たずに個々の大学への出願手続きを進めるようにと、アドバイスされていた。また、奨 学金合格後は、少なくとも五つの大学にアプライ ( 出願 ) するようにと言われた。つまり、出願する大学が 少数だと、全部不合格になってせつかく合格した奨学金が水のアワになるケースがあるからだそうである。 奨学金を翌年に繰り越すということは、特殊事情がない限りできないようだ。 私が出願したのは、三つの環境スクールと、二つの一般的な大学院だった。環境スクールは、エール大学 の、デュ 1 ク大学の環境スクール、そしてミシガン大学の天然資源・環境スクール 1 クレー校のエネルギー・資源グループと、 だった。残り二つの大学院は、カリフォルニア大学 (>0) ポストンにあるタフツ大学の都市・環境政策学部 (Depa 「 tment 0 「 U 「 ban and EnvironmentaI policy) だ た。第一志望はバークレー校だった。雑然としたキャンパスが自分にびったりの雰囲気で、会ってもら ード大学のケネディ・スク 1 ルは、前述のよう った先生もとても好感が持てたからだ。見学に行ったハー な理由もあり、学費も高く、自分の行くところではないと思い、出願しないことにした。 「アプリケーション ( 出願 ) の作業はとても面倒です。だから留学にはほんとうにエネルギ 1 がいりま くつかのランクがあり、私は下から二番目くらいではあったが、留学中は収人がなくなるわけだから、貴重 な資金源だった。 8

7. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

私は少しすっリラックスしていった。 木曜の夜には地図の発表が行われた。模造紙ほどの大きな紙に、どの場所にどういう植物が生えていたか という植生をイラスト付きでユーモアたつぶりに描き、各グループの代表が発表した。シラバスに書かれて いた課題は相当に堅苦しそうに見えたが、和気あいあいと楽しい発表会だった。 モジュールの途中には、木材の伐採現場に行って現場の作業監督に話を聞く時間もあった。息抜きの時間 もとってあり、 ハイキングもしたし、フリスビーやサッカーをしたり、近くの湖に泳ぎに行ったりする時間 もあった。こうして多くのクラスメ 1 トたちと仲良くなることができた。 草の根分けてサンショウウオを数えるーー「生態系の計測」 次の週は生態系の調査を定量的に行う練習だった。このモジュールでは、コネチカット州ュニオンにある三 エール・マイヤーズの森という校有林を使って、木材伐採、学生教育の場、動植物の生育環境の保全など複 数の目的のために森林を管理するうえでの諸問題を扱う。いろいろな林地における生態系の状況を数量化す訓 森 るために、さまざまなサンプリング ( 標本調査 ) の計画法および技法が使われる。 講師は、多数の利害がからみあう環境政策の決定問題を博士課程で研究していたクリス】スティヴ ( K 「』 , 章 stave) さんが務めた。彼女は、ユーモアにあふれ内容も抜群の楽しいモジュール・プログラムを作り上げ ていた。シラバスによると、このモジュールの目的は、野外のデータの収集法を習得または復習することに あるとされていた。習得の範囲には、サンプル調査の計画、誤差の発生源の検討、およびデータの精度と正

8. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

一みんなにやさしいシステム ム ここまで紹介してきたように、 & には改善の余地も少なくない。しかしながら、もし自分が学びたス シ い分野の教授陣・講義が十分で、一定の基礎知識 ( 巻末資料 2 参照 ) があれば、 & は環境学のさまざ し まな分野についてかなり学びやすいところであると思う。環境スクールでの二年間を振り返ると「よくぞこ さ や こまで学べたなあ」というのが実感だ。ほとんどの講義が、次々に出される宿題をがんばってこなしていく 4 は うちにすいすいと頭に入っていった。手順を踏んでコッコツやれば何でも学べるこの教育システムを体験す ん る過程には、苦しいなかにも大きな充実感があった。すでに述べたように、自分には遠い存在だったさまざみ まな経済学を学ぶことができたし、環境疫学や水文学という、なんのことかさえ知らなかった自分とかけは章 なれた分野にも人門できた。こうした学びやすさはどこからくるのか。 & での二年間で印象に残った 9 最も大きなポイントであるから、最後にこの点を改めてまとめておきたい。 0 2 私が学んだ講義の範囲で感じた & の良さは、次の五点にまとめられるだろう。①社会人が人学しゃ

9. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

やすことになった。前半では、数理経済学で学んだ非線形計画法の方法を、競争的市場経済の一般均衡分 析に使う。教科書は、経済学部の修士や博士課程の初年度によく使われる Ha 一 R. va 「 ian のき・ c 、ミ co 0 きゝ、ミ ( こ ( ミクロ経済分析 ) という本だった。後半では、」 . Hi 「 shleife 「 and J. Riley の The 当ミ言ヴ 3 ミミミ三ミミさミミぎ ( 不確実生と情報の分析論 ) を使って、不確実な情報のもとで行 麦者は、大学レベルのテキストとされるものだったが、見るからに難し われる意思決定の理論を勉強した。彳 そうだった。 一般均衡分析とは、他の経済活動は無視して関心のある領域のみを扱う部分均衡分析と違って、経済活動 のすべてが市場での取引を通して相互に規制し合う側面を分析するものだ。経済学をやるからには、現実に より近い一般均衡分析を学んでおきたかったし、ともかく環境経済学の議論を理解するためには数理経済学結 へ を学ぶ必要があると思った。 ク 教えるのは、オーストラリアからの客員教授であるサイモンⅡグラント (Simon G 「 ant) 先生だった。高 工 ジ 度な理論を探求している学者だったが、やさしそうな方であった。「数理経済学—をとっていないが大丈夫 ロ でしようか、と聞くと、「数理経済学—で教える『ミクロ経済分析』の前半に書かれている非線形計画法のプ 内容に違和感がない .com 「。「 table) ならいいです」と言われた。ヴァリアンのテキストは読んだこともな修 かったし、すでに学んだ中級ミクロ経済学のテキストに比べて、抽象的ではるかに読みにくそうだった。大章 しに悩んだが、「不安は大きいか、ここは一発やってみるか」ということで挑戦することにした。前述のよ うに、途中でついていけなくなるリスクがあったので、講義をもう一つ選択することにした。 -6 数理経済学Ⅱは、やはり相当に手強かった。この講義をとった学生は一〇人ちょっとと少なく、数学や経

10. アメリカの環境スクール : 開かれた教育システムの体験

り、ぜひとりたいと思った。この講義はコ 1 ホン・スクール長が担当していた。シラバスによると、この講 義の目的は、学生が「システム分析兌 e ラ ana 一乏し、の専門家と効果的に共同作業ができるようにシステ ム分析の方法と技法を紹介することである。システム分析とは、ある目的を達成するための代替的方針や戦 略の系統的な再検討、そして代替案を比較することによって、将来の好ましい選択を決定していくことをい 重点が置かれるのはいろいろなシステム分析の技法の目的・原理そして実用法などを理解することだ。こ れらの技法には、表 5 ・ 2 の講義スケジュールにあるようにさまざまなものがある。シラバスでは、必要な 前提知識 (p 「 e 「 equisite) は微分・積分学または教官の許可とされていたが、実際には、微分・積分がわか らない学生でもついていけるようになっていた。 コーホン・スクール長は、講義ノ 1 トをきれいに黒板に書いていくので、多少説明が聞き取れなくても大 丈夫だった。全部で八回出された宿題は、毎回、二—四ページほどあり、線形計画法 (linea 「 p 「 og 「 am ・恐 ming) などの計算ができるなどの分析用ソフトウェアを実際に動かすものもあった。宿題をこ なすのはけっこう大変で、まる二日以上かかることも多かった。わからない点は、 E-" << に質問にいくととも に、クラスメートで集まって相談して何とかこなすことができた。本来とつつきにくい数量的な意思決定の 技法が、密度の濃い宿題をこなしていくうちに身についていった。私は、記号やパソコンを使った「数量 章 的方法ーがとても好きになっている自分に気がついた。 シラバスには、実用例は水資源、大気汚染の管理、エネルギー・廃棄物設備の立地、土地取得、そして生 態系に関するものだとされていたが、内容は、環境に関することよりも、日本でもよく知られている意思決