学修士だった。森林科学修士課程には、今回の改革では、環境学修士のような新たな履修規定は打ち出され なかった。 & に出願した時に、名称が自分の興味に合っている環境学修士にしようか、「天然資源経済学・政 策、を専攻するプログラムのある森林科学修士にしようかと、私は迷った。アドミッション・オフィスに電 話して尋ねたが、「どちらでも大した違いはありませんよ。後から変えることもできますしね」という話だ った。今回の改革で二つの修士課程には履修の条件について大きな差が出てきたが、私は林学をやりたいわ けではなかった。環境学修士課程でも環境経済学が学べるとすれば環境学修士をとったほうがいいかもしれ ないと考え、環境学修士課程への転換を検討しはじめた。 こういう問題を担当するスクール長補佐のゴードン。。ジボール ()o 「 don T. Geballe) 教授に相談に行 ったところ、「この森林科学修士という学位はべつに林学専攻以外の学生しか対象としていないわけではな 学位の名前を環境科学修士としてほしいという要望も多いがね」とのこと。「どうしても取得学位が森 林科学修士ではいやなら、アドバイザーのメンデルソン教授に相談してみなさい と言われた。アドバイザ ーの先生は、学位課程ごとに分かれているわけではないから、学位を変えてもアドバイザーを変えなければ ならないということはない。 そこで、森林科学修士課程と環境学修士課程の一一種類の履修計画を作ってメンデルソン教授に相談に行っ たところ、「課程の変更はやめなさい」と言われてしまった。「天然資源経済学・政策を専攻したいなら、森 林科学修士課程の中にしかないわけたから、変える理由はない。しかも、この課程は自由が効くしね」との こと。どうやら、アドバイザーがすれば、どのような講義も選択できるということらしかった。ジボー 6
ら、前述のように、九五年に森林科学修士課程を卒業した学生数は、九三年に森林科学修士課程に入学した 学生数よりもかなり増えている。 この「森林」という名称にはあまり深い意味はない。森林科学修士は、私がとることになった学位だが、 私は林学関係の授業にはあまり興味がなく、結局一つもとらなかった。環境学修士に移ることを試みたこと もあったが、「天然資源経済学・政策という専攻課程がこの森林科学修士課程のなかにあるのだから」とい うアドバイザーの指示で、結局は移らなかった ( 4 ・ 4 節参照 ) 。 伝統ある林学修士 (Maste 「 of F 。「 2 「 y ) 林学修士課程は、森林の運営・管理を行う林学の実務家 (practitioners) を養成するための職業教育 ( p 「。「。 2 。 n 三 4 = d 一ワ ) を行う課程である。この修士課程は、欧米諸国においてもっとも歴史のある林学課程 で、一九〇〇年以来、森林管理の専門家の養成を続けてきたとされる。 & の学校案内には、誇らしげ に「早期の北米の林業従事者のほとんどすべてが、そのルーツをエールに持っている」と書かれている。最 初の一一一人のアメリカ農務省林業局 (USDA F 。「 2 service) 局長のうち、九人が当校の出身だという。 カリキュラムは森林資源管理と政策決定の最先端で働きたい人たちのために組み立てられており、 「生態 系の生物学的な基礎に根差した真に学際的なアプローチをとることによって、資源管理教育を新しいレベル へと高めている」 ( 学校案内 ) という。本課程の卒業生のほとんどは、森林関連の一般的な実務家や管理担 当者からスタートし、管理職を経て、政策決定者などになっていくそうである。具体的な就職先としては、 ①政府・公共機関 ( 環境保護庁、農務省林業局など ) 、②国際的な開発機関や環境保護団体、③企業および 2
ーホン (Jared L. cohon) 氏は、在任した一九九二年—九七年の間、 & をよりまとまりのとれた機構 に改革することに尽力した。環境学修士の「選択必修科目 (core courses)_ や「上級研究分野 (advanced studya 「 (a) 」 ( 表 2 ・ ) を定めたことがコーホン氏が行った改革の主眼である ( 4 ・ 2 節、Ⅱ・ 3 節参照 ) 。 選択必修科目とは、数量的方法・自然科学・社会科学の三つの分野の講義群から決められた科目数を選択し て履修することが義務づけられる制度だ。また学生は五つの上級研究分野から一つを選び、その分野に関連 する四つの講義を選択し、一つ以上の独立した研究プロジェクト (lndependent p 「。」 ect Ⅱ講義の一つと位置 づけられている ) を選択する必要がある。 「自由自在」な森林科学修士 (Master of Forest science) 森林科学修士課程は、特定の専門分野に集中的に取り組む学生のためのもので、博士課程に進むための準 備として使われることが最も多いとされている。前述の 020 の進路調査では、進路が決まった九四年の森ク 林科学修士課程の卒業生一八人のうち、博士課程に進んだのは六人とかなりの割合だ。専攻分野は生態系の境 ダイナミクス ( 動態 ) ・構造・機能、生物学的多様性の保全、森林生態系の管理、海浜・集水域システム、 の 財産・組織と環境、価値評価・リスクと環境意思決定、天然資源経済学・政策が挙げられている。この課程っ には一年コースという例外はなく、必す二年の期間が必要とされている。 章 この課程には、環境学修士の選択必修科目のような、各分野の必修講義群から必ず一つずつ講義を選ばね ばならないという厳格なルールはなかった。実際私の学年では、「自由さーに魅力を感じて & の環境 学修士課程に人学したクラスメートの多くが前節で紹介した改革を嫌って森林科学修士課程に移った。だか
金融機関、④地域計画担当者などだ。また、 年年 年林学修士課程を経て博士課程へ進む卒業生も -4 = 一口 いる。前述のの進路調査では、進路が 合年 決まった九四年の林学修士の卒業生八人のう にき 5 ′ィー ち、博士課程に進んだ者は一人だった。 立ロ よの取。— o 。 皀て立 一石ニ鳥の合同学位課程 (Joint Degree Pro- 可 & え学お o 用加る gram) 呈い 部岫 二つの学位を、別々にとるよりも短い年数 ロ王 でとれるシステムが合同学位課程である。両ル 生 方のスクール ( 学部 ) に合格すれば、二つのク 済新 経ⅶ 学位を別々にとる場合よりも短期間でとるこ境 合 立学 とができる。 & との合同学位が適用さの 開 れるのは、表 2 ・ 2 の五つの学部 ( スクー レ O 0 0 ル ) ないし専攻である。出願者はそれぞれの 「 = 学 ク 0 0 学 0 係学部に個別に出願して合格しなければならな 2 。また、選択する講義はどちらかの学部の 一学済 ロ医立 = 経仇面忻国 必修条件を満たすことが必要で、で 学部 ( スクール ) 名等 経営・行政管理学スクール school of Management = S O M 2 年半 ~ 3 年
cozæ & には大学生と大学院生の両方が学んでいる。在学者数は、九四年秋学期で、大学生 ( 学士課 程 ) が三六七名、大学院生は修士課程が一四七名、博士課程が四七名で、合計五六一名である。 専攻分野は、大きく三つに分かれている。「資源生態学と管理 , は、海洋生態学、野生生物生態学、森林 生態学・管理、漁業生態学・管理、リモ 1 トセンシングから成る。「環境政策と行動」は環境教育、環境政 策・環境法、環境問題の唱道 (envi 「 onmental v 。。目を、資源計画、資源管理学、資源経済学から成る。 「風景計画とデザイン (Landscape A 「 chitectu 「。 and Design) 」は、環境デザイン・用地計画および復旧生態 学から成る。この分野の修士課程は二つある。風景計画を大学で専攻したり、仕事としての経験がある人を 対象とした職業課程と、こうした知識・経験がない人を対象とした職業課程がある。 のもっ最大の特長としては、環境保護庁に属する国家汚染防止センタ 1 (National P011ution P 「 evention cente 「 ) や環境教育と訓練のための国家コンソーシアム (National consortium 「 0 「 Envi 「 onmen ・ tal Education and T 「 aining) の本部となっていることが挙げられる。 教育施設としては、土壌、漁業、リモートセンシング、パソコン、風景計画用コンピ、ータ・グラフィッ クスなどの研究室 (laborato 「 y) がある。何らかの受賞をした環境ジャーナリズムのデータベースもある。 自然植生・風景庭園・温室を備えたマッティ植物園や一〇〇エーカー ( 約四〇・五ヘクタ 1 ル ) の野外研究三 室の他に、森林研究と実務研修に使われるスティンチ・フィ 1 ルド・ウッズと五〇もの異なる植生を持っサ ジナウ・フォレストという校有林もある。 には、教育の学際性を高める目的で大学内の他学部との連携を強めるためのシステムがある。 ケンプ 例えば、企業環境管理課程 ( CO 「 PO 「 0 En 「 0 = men 一 Management p 「 0 讐 m Ⅱという合同学位 35 2 章つの環境スクール
課程に対して、は、ビジネススクールとの連名でこの課程の責任者を出している。この他、ロー スクール、公共政策スクールや経済学部などとの合同学位課程もある。公衆衛生学スクール (public Health School) との合同学位課程設立の作業も進めている。 だから、例えばリスク・アセスメント ( 危険度評価 ) について考える場合は、公衆衛生学、工学そして投 資の専門の人々と意見交換することができる。さらに規制問題を考える時には、法律専門家も人ってくる。 「これは、エールの & などで伝統的に行われてきた大型哺乳動物の研究など狭い分野をめざすやり 方とは違う」とプルーワー氏は強調し、エール大学の & へのライバル意識を隠さない。ただ、プレ ワー氏は、エール大学の & から移籍してきた人で、 & のスクール長、。コーホン氏の友人で もある。コーホン氏が学際性の強化を含めてさまざまな改革をやっていることは承知のうえだ。 九一年にプルーワー氏がエール大学の & から移って来たときには、「ここの教授たちは、基本的に 旧態依然のやりかたに満足していた」という。そこで同氏は、新しい戦略を策定し、また、新しいプログラ ム ( 課程 ) を始めるために、四年間で約一二〇〇万ドルの寄付を集め、などを含め改革を推進した。 企業からの資金援助も行われている。九二年に国家汚染防止センターの二人の教授が米国最大級の電話会 社である & の「産業エコロジー・フローシップ」を初めて贈呈されたところから始まる。そのフ ローシップの一部は、「産業エコロジー」という講義をつくるための資金の贈呈だ「た。の産業 エコロジーの講義の主要テーマは汚染防止と環境のための事業デザインだ。、。 ヒシネススクール、工学部など 他の分野の教師もこれを教えている。ちなみに企業活動をエコロジー ( 生態学 ) 的観点から考える「産業工 コロジー」という講義は、 8 ・ 2 節で紹介するようにエール大学の & にもあり、にも 6
と政策、のような中級ミク 0 経済学 ( ぎ。「 m 。」蕓。 Mic 「 oeconomics) で、易しい微分・積分を使 0 て経済学 の基礎を学べる。さらに経済学を学びたい場合は、数理経済学—、そして数理経済学Ⅱ〈と進み大学レベル幻 は終了。さらに大学院レベルで高度な経済学を学ぶこともできる。このような「階段」を一歩一歩上が「て いけば、生物学でも、化学でも、地質学でも、全く未知の分野に & の学生は挑戦し、自分が取り組み たい環境問題に対処するための専門性を高めることができるのである。すでに何度か触れたように、 に十分な講義メ = 、ーがそろ「ていたとはいえない面はある。しかし、他の学部で開講されている講義を 使うことで、かなりカバーできるのである。 日系 ( 1 フの友人、ケリー。カネダ ( K 。「「』 K 当。」しさんは、博士課程に進んで環境経済学を専攻するつ もりで、修士課程では、その基礎固めのための勉強をしていた。ケリーは大学では経済学専攻だ「たが、博 士課程に行くには経済学や数学の知識が不足していた。そこで微分・積分の講義を入門から応用まで順々に とって基礎固めをした。同時に彼女は、 ) しくつかの環境科学の分野の講義も重点的にとっていた。こうして まさにいろいろな階段かついたピラミッドのように、 いくつもの分野で準備をして、頂点である目標に着実 に近づいてい「た。彼女はその後、無事 & の博士課程に進学し、経済学部博士課程の計量経済学やミ クロ経済学を学び、さらに勉強を続けている。 }— < とオフィスアワーがあれば恐いものはないー すでに何度も紹介したように、授業がよくわからなか「たり、宿題の解き方がわからない学生は、 ( ( 。冐三一 4 当 ( Ⅱ教務アシスタント ) や先生の面会時間 ( オフィスアワー ) に個別に教えてもらうこと
は最低一年半学ぶことが要求される。 & への人学後に他の学部に出願して合同学位課程に人るケースも少なくない。就職の有利性を考慮 してか、ビジネススクールに相当する oooäとの合同学位の学生が最も多く、後はやとの合同 学位が続いているとみられる。こうした課程は合同学位課程や二学位課程 (dual degree p 「 ogram) といった 名称で、以下のデューク大学やミシガン大学の環境スクールにもある。 ミシガン大学の天然資源・環境スクール ミシガン大学は、一八四一年に設立された国際的に有名な公立大学である。ミシガン大学では天然資源と 環境問題の研究は一〇〇年以上にわたって続けられてきたが、環境スクールの源は、一九二七年に設立され た林学・資源保全スクール (school 。「 F 。「。第 and conse 「 vation) だ。この林学・資源保全スクールをもと ミシガン大学は一九五〇年に正式に天然資源スクール (school 。「 Natu 「 al R ワ。 u 「。ワ ) を設立した。こ うした資源問題に取り組む教育機関は当時、世界でも初めてのものだったという。時代の変化に応じて、一 九九二年には、天然資源スクールは、天然資源・環境スクール (school 。「 Natu 「 al Resou 「 ces and Envi 「 on. ment=coZXodæ) と名前を変えた。「実際にやっていることはもはや単なる天然資源学ではないわけだか ら、『環境』という言葉を入れる必要があると感じたからだ。過去に取り組んできたことは『天然資源』に 関する分野が大きかったが、これからは『環境』がメインだ」と、ゲーリー】ブルーワー・スクール長は 説明する。 ′ 4
境学修士から森林科学修士課程に乗り換えた学生が多かったことがうかがえる。 環境学修士と森林科学修士の学位を取るには、卒業までに少なくとも一つの独自の修士プロジェクトをア ドバイザーの教授の指導のもとで行う必要がある。これは、普通の講義では探求できない問題について個人 かグループによって実験、野外調査、文献調査、またはケ 1 ススタディ分析などに取り組むというものだ。 以下の節で、これら三つの学位を取得するそれぞれの課程の内容を紹介する。 実務教育重視の環境学修士 (Maste 「 of Envi 「 onmental Studies) 環境学修士は環境・天然資源の分野における法規制、社会的責務 (stewa 「 dship) 、教育、コンサルティン グや管理などの仕事に興味がある学生のための学位である。私が学校選びの時に参考にした古い学校案内で は、環境学修士のカリキュラムは、「それぞれの学生が個別の学習計画を選択できるように、最大限の柔軟ル 性を持つ、とされていた。 ク 環境学修士課程は、複雑な生態学的・社会的システムを管理するために、さまざまな政策が社会的・生態境 環 学的にどのような潜在的リスクを持っているかを評価する能力を修得することを目的としている。このため、 の 特定の学問分野にとらわれない学際性が重視されている。実務教育を重視した学位であり、卒業生の大半はっ 就職する。 & のキャリア開発事務所 ()a 「 ee 「 Deve10pment Office=OQO) が九四年一一月に行っ 章 た卒業後の進路調査 ( 回答率九割 ) では、進路が決まった環境学修士の卒業生五八人のうち、博士課程に進 んだのは七人だけだった ( Ⅱ・ 2 節参照 ) 。 9 2 ここで、九三年に発表された改革について簡単に触れておく必要がある。スクール長のジャラッド日日コ
私は少しすっリラックスしていった。 木曜の夜には地図の発表が行われた。模造紙ほどの大きな紙に、どの場所にどういう植物が生えていたか という植生をイラスト付きでユーモアたつぶりに描き、各グループの代表が発表した。シラバスに書かれて いた課題は相当に堅苦しそうに見えたが、和気あいあいと楽しい発表会だった。 モジュールの途中には、木材の伐採現場に行って現場の作業監督に話を聞く時間もあった。息抜きの時間 もとってあり、 ハイキングもしたし、フリスビーやサッカーをしたり、近くの湖に泳ぎに行ったりする時間 もあった。こうして多くのクラスメ 1 トたちと仲良くなることができた。 草の根分けてサンショウウオを数えるーー「生態系の計測」 次の週は生態系の調査を定量的に行う練習だった。このモジュールでは、コネチカット州ュニオンにある三 エール・マイヤーズの森という校有林を使って、木材伐採、学生教育の場、動植物の生育環境の保全など複 数の目的のために森林を管理するうえでの諸問題を扱う。いろいろな林地における生態系の状況を数量化す訓 森 るために、さまざまなサンプリング ( 標本調査 ) の計画法および技法が使われる。 講師は、多数の利害がからみあう環境政策の決定問題を博士課程で研究していたクリス】スティヴ ( K 「』 , 章 stave) さんが務めた。彼女は、ユーモアにあふれ内容も抜群の楽しいモジュール・プログラムを作り上げ ていた。シラバスによると、このモジュールの目的は、野外のデータの収集法を習得または復習することに あるとされていた。習得の範囲には、サンプル調査の計画、誤差の発生源の検討、およびデータの精度と正