年 - みる会図書館


検索対象: 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ
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1. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

図書館は現物とデジタルの両輪 図書館は、現物とデジタルの両輪であると最近とくに思います。デジタルアーカイプは社会に対 する大学の知的資源のポータルです。最近の図書館は図書と電子プック、雑誌と電子ジャーナル、 新聞資料とデータベースと、常にアナログとデジタルの両方を提供しています。また、昔ながらの 静かな閲覧の場と、図書・雑誌・電子ジャーナルなどを用いる自立的な学習活動の場、どちらも提 供しようと環境整備にも取り組んでいます。神戸大学附属図書館は、図書館員の発想で、さまざま なデジタルアーカイプを構築してきました。その基本は、利用して活用していただくことにつきる ような気がします。 資料件数は二〇一二年一月末現在で、四万八八一〇件、デジタル化済みが四九一二件となってい ます。現在も毎月一〇〇件以上の資料が集まっています。 神戸大学附属図書館「デジタルアーカイブ」 神戸大学附属図書館では「デジタルアーカイプ」に非常に力を人れています。二〇一〇年には大 学文書史料室が図書館に設置されました。これはもともと百年史の編集室だったのですが、当面の 間図書館に設置するのがよいだろうという学長答申が出て設置されています。大学文書史料室が設 置された図書館では、公文書管理法に則り、二〇一一年三月末に国立公文書館に類する施設として 内閣総理大臣の指定を受けました。図書館のノウハウを使ったデータの作り方、データベースの公 開のしかた、それからデジタルアーカイプのノウハウにより、大学文書史料室が使いやすいものに なったと評価されています。現在、国立公文書館のデジタル横断検索への参加を検討しているとこ ろです。 第 2 部 ミュージアムの価値の実現をめぐって 140

2. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

多賀城まで行けばあると聞いて、彼は足を延ばしてやってくる。実際このときは、そのほかにも松島 、くつもの歌枕を芭蕉は見ていますが、「壷の碑」に出会ったときに、本当に心 とか末の松山とか、し から感動しています。 芭蕉の言葉を少し引用すると、「今眼前に古人の心を閲す。行脚の一徳、存命の悦び、羈旅の労を ここで芭蕉は「世の中 わすれて、泪も落ちるばかり也」と感動している。たいへん興味深いことに、 は移り行くはかないものである」と言っています。中国であれば「国破れて山河あり」、国は崩れても 山と河は変わらないと言うのですが、この天変地異の多い日本列島の人びとはそうは思わない。「山 も変わるし河も変わる」と芭蕉は言うんですね。しかし、この碑は一〇〇〇年前の人の心を捉えて、 そのままここにある。こんなにうれしいことがあるか。一〇〇〇年前の人に出会うことができる。な んと喜ばしいことかと、彼は涙を落とす。 実際の「壷の碑」とはどういうものかというと、多賀城という古代の行政の中心になった砦、つま り役所の一角にあります。碑には、ここに多賀城があった、誰それがつくって、このように運営され たという、ある意味では散文的、行政的な内容の文字が刻んであります。しかし、それでも一〇〇〇 年という歳月は芭蕉を感動させる。実物ということが感動させる。 ぼくは、二〇一一年の一一月に東北に行きました。じつを一言うと震災後の三月下旬から何度となく 行っていて、取りつかれて、なんとか逃れたいと思いながら、いまだに心がそれ以外のことに向かな この「壷の碑」の実 いようなことになっているのですが、ともかく一一月に東北を縦断したときに、 物を見てきました。東北歴史博物館のすぐ近くです。野外に建っていますが、一応屋根を掛けて覆っ てある。ともかく碑として、そこに建っているわけです。それは確かに一種の感動を呼ぶものでした。 19 基調講演 I 「過去は未来である」 ( 池澤夏樹 )

3. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

丹治雄一 ( 神奈川県立歴史博物館主任学芸員 ) 神奈川県の県立博物館は、一九九五年にリニ、ーアルし、人文系の県立歴史博物館 ( 横浜市 ) と 自然史系の県立生命の星・地球博物館 ( 小田原市 ) がオープンしました。県立公文書館は一九九三年 の開館で、こちらは県史編纂事業と県立文化資料館がべースとなっています。 神奈川県博物館協会には、県内の博物館、美術館、動物園、水族館など約一〇〇館園が加盟して いて、県立公文書館もメンバーとなっています。この協会は、全国にある博物館協会のなかでもと くに活発に活動していて、共同企画の実施など有益な交流の場となっています。 博物館と公文書館の連携ですが、資料の閲覧や展示での資料借用など日常業務での協力関係はあ りますが、県立図書館を含め連携が進んでいるとは言い難いのが現状です。東日本大震災後には、 歴史博物館の施設が狭隘で、直下型地震の際には津波浸水の危険性もあることから、施設に余裕が あり、内陸に立地する公文書館に、「地域の蔵」としての役割を期待する声が出てきています。また、 両館が蓄積した資料情報や、それぞれが持っ地域の文化財や古文書など地域資料の所在情報の共有 仮に一万点を選択して収蔵したとして、展示する作業においてそこからさらに選択する。こういう 選択的なアート・ミ、ージアムと包括を目指すアーカイプが、同じ論理で動くわけはありません。 方法論的に、哲学的に、まったく対極にあると考えておくほうがよいのです。この「 x 」は連携だけ ではなく、思想的、方法論的、歴史的闘争を示すパッテンであることも考えておくとよいと思います。 話題提供 2 神奈川県における連携の現状 神奈川県立歴史博物館〕一九 六七年に神奈川県立博物館とし て開館。一九九五年に生命の星・ 地球博物館 ( 小田原市 ) へ自然 科学分野を分離し、現在の名称 となった。「かながわの文化と 歴史」を総合的に扱う博物館と して、五つのテーマで構成され た常設展示のほか、「かながわ」 に関わるテーマ設定による特別 展を年数回開催している。 所在地【横浜市中区南仲通五・・ http:/、、éh.kanagawa ・ museum.jp 、、 135 テーマ C 話題提供

4. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

「記録」を集め・伝え・活かす 震災文庫は原則オリジナル資料を公開しています。たとえば新聞の原紙も、図書館で購読してい た八種類の新聞を、一九九五年一月一七日から翌年の三月三一日分まですべて製本保存していま す。震災という地域に特化した記事を調べたいというニーズには、新聞原紙を提供することが非常 に有効と判断しました。 そして一九九六年七月から写真資料を共有するために、神戸大学の被災写真集をデジタル公開し ました。一枚ずつキャプションをつけて公開しています。次に、一枚もの資料の画像人力を一九 九八年一月から開始しました。これはチラシやポスターを思い浮かべればおわかりかと思います 。、、非常にインパクトのある文言が並んでいます。検索して書誌データ ( 後のメタ・データ ) を見た 人が、「神戸大学にすごい資料がある」と思って神戸まで来て、実物を見ると「このチラシ一枚 ? 」 となるギャップが生じる可能性をデータ作成時に感じましたので、検索したときに画像データも出 るよう、著作権処理をしながら画像人力を開始しました。写真もどんどんデジタル化して、著作権 処理をして公開をしていき、英語のキャプションも追加しました。写真には言語の壁がなく。世界 中でデータを共有できるので、データにつけるキャプションも英語で発信しようと追加しました。 二〇〇九年一月から阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターが所蔵している図書データと横 断検索ができるようにしています。今月には兵庫県立図書館も参加する予定となっています。また、 伊丹市立博物館の企画展示には資料貸出をしています。震災文庫は一点しかない資料が多いので、 貸し出しは通常はしていませんが、伊丹市立博物館が阪急電鉄に、「被災直後に交通があちこち分 断した際の掲示物を貸してもらえないか」と問い合わせをしたところ、「すべて震災文庫に寄贈し ていて一切保存していないので、震災文庫に問い合わせてほしい」と言われたそうです。それを聞 き、震災文庫の責任は非常に重い、と感じました。 139 テーマ C 話題提供

5. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

西田由紀子 ( よこはま市民メセナ協会会長 ) 市民の協働・協創の見地から、横浜の三つの事例を紹介いたします。 協働・協創はミュージアム・リテラシーの進化の一つの姿であり、今後進むべき方向だと考えて います。横浜市では、市民・行政が全国的にみても早い段階で協働に着目し、研究会を発足させ、 二〇〇四年には基本方針が提唱されるなど、各分野での協働事業が展開されてきました。 ( 事例 1 ) 都筑アートプロジェクトは、協働から協創へ進んだ事例です。開港一五〇周年を機に ミュージアムが市民に声がけし、ミュージアム、市民実行委員会を中心として地域をあげて取り組 んだ遺跡と現代アートのコラボレーション事業です。アートを介して、これまで無関心だった若い 世代も足を運び、地域との協働によるイ。ヘントを通して相互に対話がうまれ、ニュータウンに新し いふるさと意識やアイデンティティーが生まれています。協働・協創のリテラシーが機能し、新し い価値の創造を実現した事例だと思います。 ( 事例 2 ) 横浜開港資料館は、市内各地に点在する郷土史に関心の高い市民グループや研究会を ヾーは団塊世代が中心で、質の高い 発掘し、郷土史団体連絡協議会として取りまとめました。メンノ 研究成果の刊行により、地域関連とミュージアム収蔵に貢献しています。 話題提供 1 市民の側から見たミュージアム・リテラシー テーマ 話題提供 よこはま市民メセナ協会二九 九八年設立。ボランティアによ る市民提案型メセナ団体とし て、企業や行政との連携により 地域芸術文化活動の創造と促進 普及を図る。市民文化活動の調 査研究、シンポジウムなど実施。 二〇二年、一二年全国メセナ ネットワーク幹事。 homepage2.nifty.com/、yokohama simmmesena 、、 ミュージアムの価値の実現をめぐって 108 第 2 部

6. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

らカの強いものが出てくるーーそういう時代に絞りました。 しかし、それでも過去は過去です。それが今読んで意味がある、あるいはこの先一〇年、三〇年、 一〇〇年たっても意味があるとぼくが信じるものを選び、並べて世に送りだす。ミュージアムにとて もよく似た原理であると思いました。 「壺の碑」と実物のカ ただし文字は、それ自体がデジタルです。つまり、活字あるいは文字とは、コピーが可能である。 コピーしてもオリジナリティーが保てる。そういう意味では、一番最初のデジタル技術が文字であっ たと思います。それに対して、ここで論じるミュージアムは、具体物、実物によるものです。この違 いは非常に大きい。そこに、その具体物がなければ、ミュージアムは成立しない。具体物には、それ 自体の中に履歴がすべて人っています。履歴全部をコピーすることは絶対にできない。それがオリジ ナルということの意味で、オリジナルであることが人を動かす。オリジナルであると知って、そのも のと対峙することが人を動かす。具体物にはそういう力があると思います。 少し具体的な話をしますと、芭蕉が東北の旅の途上で、今の仙台の少し北東にある多賀城で「壷の いしぶみ 碑」という大きな石碑に出会うくだりが『奥の細道』にあります。芭蕉の旅は、古来の日本の和歌の 伝統をなぞって歩きながら、それを俳句という新しい形で更新していく、そういう方法だったと思う のですが、そこで彼は歌枕を訪ねるというひとつの原理を実行しています。歌枕とは、和歌の中で用 いられる詩的な意味を込められた地名です。そのひとつが「壷の碑」と呼ばれる石碑で、その実物が ミュージアムに求められること 第 1 部いま、

7. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

テーマ a 並木美砂子 NAMIKI 、 Misako 千葉市動物公園飼育課主査。 大学では野生動物保護学を学び、動物園での博物館実習を体験したこと が、動物園の世界に人るきっかけに。子どもたちを対象とした学習プロ グラムづくりを目指して、大学院では教育心理学を専攻し、幼稚園に毎 日通って子どもたちの飼育活動を観察する機会に恵まれる。このとき、 認知心理学や状況論の面白さにも出会う。千葉市動物公園では、飼育業 務および子ども動物園での教育プログラムづくりと実践、ボランティア 担当などに従事。「動物園で埴輪づくり」「市民参加の動物カルタづく り」「動物観察シート開発」「羊毛工作」など、眺めるだけでない動物園 の楽しみ方を開発してきている。動物園での展示を介した家族間コミュ ニケーションに関する研究で博士号取得。 リソース・ガイド株式会社を設立。 被災地のミュージアム、図書館、公文書館、公民館の情報収集・発信を 行う saveMLAK プロジェクトリーダー 全体討論司会 栗原祐司 KURI 工 ARA 、 Yuji 文化庁文化財部美術学芸課長。 一九六六年生まれ。上智大学法学部、放送大学教養学部卒。 一九八九年四月文部省人省。文化庁、国土庁、北茨城市教育委員会など 勤務を経て、国際交流ディレクターとしてニューヨーク日本人学校に勤 務。全米約一六〇〇館のミュージアムを訪問。帰国後、文部科学省大臣 官房政策課企画官、生涯学習政策局社会教育課企画官を経て、一一〇〇九 年五月より現職。国内五五〇〇館以上のミュージアムを訪問している / ミュージアム・フリーク / 國學院大學大学院非常勤講師、日本ミュージアム・マネージメント学会 理事 ( 二〇〇八年学会賞受賞 ) 、日本展示学会理事。 美術館・博物館政策や滞米中に訪間したミュージアムに関するエッセイ などの著作がある。 フロアでの情報共有の進行 山石渕潤子 IWABUC エ一、 Junko 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。 カリフォルニア美術工芸大学大学院修了。アメリカ、ニューヨークのホ ィットニー美術館に給費研究員 ( ヘレナ・ルーピンスタイン・フェロー ) として在籍した後、フィレンツェ、ロンドンなどで研究生活を送る。大 学院在学中から執筆・出版活動を続けている。著書に『ニューヨーク午 前 0 時美術館は眠らない』、『美術館の誕生』、『美術館で愛を語る』ほ か多数。慶應義塾大学機構教授を経て、一一〇〇九年四月から現職。 234

8. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

端山聡子 ( 平塚市社会教育課学芸員 ) 私は平塚市美術館に二〇年勤めて、三年前に社会教育課に異動しました。美術館の中で教育や展 示、収集に携わった経験から、現在の社会教育、生涯学習まで含めた観点からお話しします。 私の現在の勤務場所は、平塚市中央公民館です。公民館について何の知識もなく異動してから三 年目を迎え、市民が自分たちの活動に適したかたちで、公民館も図書館も博物館も美術館も自主的 子どもにとって見やすい高さであれば、一人ではなかなか読めなくても、グループでなんだかんだ 言いあいながら読み取ります。傍らで聞いていてもさつばりわからないのですが、子ども同士で ちゃんと伝わる言語があるのです。事後指導としては、たとえば三、四年生は、動物園やかまぼこ 博物館に行ったときの新聞づくりをしています。二年生は絵日記をつくり、ざらざらしていたとか、 触った感じをきちんととらえて書いていました。 最後に今後のあり方です。連携するには、互いに理解するために対話が大事かと思います。たと えば、私は中学校の教員が長かったため、小学校の教頭になり、話してはじめてわかったことがた くさんありました。また、学芸員と教員がちょうどよい間合いを保つことが必要です。博物館の学 校化でもないし、博物館の学校化でもない。違うから面白く、役割はそれぞれあります。そして、 マニュアルなどの型や鑑賞のスキルが先行するのではなく、子どもたちが自らの価値をつくりだすこ とを大事にしたいのです。なぜなら私たちが育てているのは、未来をつくる子どもたちだからです。 話題提供 3 学芸員のミュージアム・リテラシー 生命の星・地球博物館展示説明 1 111 テーマ B 話題提供

9. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

は、インターネット上に作品がアップされていれば、無料にしろ有料にしろ、ワンクリックで瞬時に ダウンロードできます。このようなことは、ここ一〇年でできるようなったばかりです。アップル社 が運営する一 Tun ワで楽曲がはじめてダウンロードされたのは二〇〇一年、米国最大のレコード小売 店タワーレコードの倒産は二〇〇六年でした。 今後、音楽ディスクに関しては、地域に細分化されたレコード店が生まれ、膨大なディスクから特 定のニーズにあわせて選別された作品を展示・販売するようになるのではないでしようカ 有形の作品を持っ助成を受けたミュージアムと並び、非物質的な作品を扱う商業的ミュージアムが出 てくるでしよう。変化していくミュージアムの再定義を考えてみてもよいかもしれません。 また、アーティストやアーティスト予備軍がファンと直接つながりを持っことで、商業界とは別の ところで物事が進むようになりました。たとえば、著名なアーティスト同士がコラボレーションし、 新しい作品を生み出せるようになったのです。もっとも大きな変化は、「ホームメイド文化」の活動 範囲が爆発的に広がったことでしよう。私の知っている二五歳以下の若者は、誰もが。ハンド活動や —、ダンス、あるいは映像制作をしています。 このような活動をする際、「公式」あるいは「上質」な文化を参考にする人はほとんどいません。最 近、英国における文化的な活動 ( の参加に関するあるレポートを読んで驚いたことがあります。そこ には「アートに関わる市場調査で、『正統』な文化を利用していないと分類された調査対象者の多くが、 実際にはかなり活発に芸術や文化的行為に関わっている」という解説がありました。文化的な活動の 多くが個人的なものであり、制度的な本流から離れているため、可視化されにくいのです。 ーマーケットで。ハートタイムで働いていますが、同時に精力的な たとえばマリアは、地方のスー 、。一よかに、も、 45 基調講演Ⅱ「民主主義社会における文化の価値」 ( ジョン・ホールデン )

10. 地域に生きるミュージアム : 100人で語るミュージアムの未来Ⅱ

マネジメントの課題と経営形態 博物館のマネジメントに関わる管理職は、現在いろいろな課題を抱えています。人員や予算の確 保に展一小更新、それに高度成長期に建てられた施設の老朽化などが、多くの施設で共通する深刻な 問題となっています。 事業についても調査研究、収集、教育、保管の四つを着実に進めていけばよい落ち着いた時代も ありましたが、昨今は、それぞれの事業の拡大にも目に見える形で取り組まなくてはなりません。 さらに、点検評価、情報公開、災害などのリスクマネジメント、あるいは、学芸員の研修も含めた 職員の資質向上など課題が山積しています。 そのほか、経営形態の見直しということでの指定管理者制度導人、財団においては公益法人制度 ( の移行の問題があります。当館でも、大阪市直営のころは、現場の私たちが市の財政担当者に直 に説明して予算を要求していました。しかし当館も指定管理になり六年目、一定額の予算をポンと あてがわれるだけとなり、個々の予算要求の機会も少なくなりました。行政管理が間接的なものに なっています。 大阪市立自然史博物館 テーマ < 話題提供 山西良平 ( 大阪市立自然史博物館長 ) 大阪市立自然史博物館〕一九 五〇年に前身となる自然科学博 物館が設立されて以来、六〇余 年の歴史を有する公立自然史系 博物館。博物館友の会と連携し たユニークな研究・普及活動に 加えて、西日本を中心とする博 物館ネットワークの拠点として 名高い 所在地】大阪市東住吉区長居公 www.mus ・ nh. city.osaka.jp 博物館外観 ミュージアムの価値の実現をめぐって 82 第 2 部