ェコミュージアム - みる会図書館


検索対象: エコミュージアム : 21世紀の地域おこし
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1. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

第 3 章リンゴとワインの里のエコミ 研究機構の最初の仕事としては、サテライトを整備していく 板や解説板を設置することになるが、デザインなどがバラバラ、 もよくないし、わかりにくいということで、サイン計画 ( 朝日町工コミュ ージアム・デザイン整備計画 ) を作成した。次には、これからサテライト を順次整備していくには、サテライトを案内する仕組みを考えるべきであ るということで、見学者用の資料にも使える「楽しい生活環境観・エコミ ュージアムのまち案内プログラム」を作成した。 現在、研究機構では、いわゆる町民学芸員としてのエコミュージアム・ ガイド ( まちの案内人 ) 養成事業の推進や、来年完成予定のエコミュージ アム・コアセンターの利活用について検討している。 6. 朝日町工コミューシアムの特徴 日本で最初にエコミュージアムに取り組んだ自治体ということで、現在 も各地から問い合わせがあり、視察にもみえられているが、朝日町の特徴 的なことは次の 2 点と思われる。 ーっは、町の最上位計画である長期総合計画にエコミュージアムの理念 をとり入れていることであり、一つは、寒間のエコミュージアム研究会が 自然発生し、行政に先行しながらも、行政とともにエコミュージアムによ る町づくりを進めていることである。 ェコミュージアムの考え方で重要なことは、住民と行政が同じ目的に向 かって、おのおのの立場で役割を果たすことである。住民は知恵と情熱を、 行政は資金や施策を出し合うことであり、この「二重入力システム」が、 うまく機能することがエコミュージアムにとって重要なことである思う。 これから財政的な面などから、ますます行政だけでは町づくりは立ち行 かない、もっと住民が積極的に町づくりに参加しなければ、本当によい町 づくりはできないと思う。 朝日町では、民間活動と町がどのように手を取り合いながら事業を進め てきたかをいくつか紹介したい。 前述の国際シンポジウムであるが、これらについては民間のエコミュー ジアム研究会が企画立案し、それに町が賛同する形で資金などを出して実 77

2. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

開催の事業でさらに体験を重ねることができ、その事業を主管するグ ループ ( サークル ) にとっては、会員の増加など、活動の充実を期待 できる。 ③企画課との連携 朝日町のエコミュージアム担当課は、企画課である。学社連携教育の学 は学校教育、社は社会教育の頭文字である。生涯学習は、社会教育ばかり でなく、行政各部局の教育機能をも包括するから、生涯学習の頭文字をと がくしよう って学生連携教育と呼ぶほうがいいのかもしれない。実際、朝日町にお いても、企画課をはじめとする各課と連携しての実践である。 さて、人材が、子どもたちに対するときは「地域の先生」であり、町内 外の大人に接するときは、「エコミュージアム案内人」である。その観点 から、企画課との相互協力は欠かせないものになっている。 「地域の先生」のなかには、パネルなどの資料の蓄積が進めば、将来的に サテライトを開設したいとの考えをもつ人も出てくるだろう。そこで、現 在、企画課ともタイアップして、資料を準備するための補助を行っている。 今後は、サテライト開設のための行政による支援の必要性が、ますます高 まっていくことだろう。 9. 養蜂と蜜ローソクのサテライトの試み ( 1 ) トチノキを植えよう 「安藤さんのためにも、トチノキを植えよう」 7 年前、外部講師としてか かわらせていただいている地元立木小学校の児童たちが、せっせと集めた グリーンマークをトチノキの苗木と交換してくれた。トチノキは、この辺 りで一番の蜜源樹。花が咲く 5 月から 6 月にはたくさんのハチ蜜が収穫で きる。私たち養蜂業者にとって最もありがたい樹である。植樹会には私 ( 安藤 ) も招かれ、簡単なトチノキの説明をしながらいっしょに校庭に植 えた。そして蜜が収穫できるウン十年後、このトチノキのハチ蜜をみんな でなめようと約東もした。この出来事は、当時ェコミュージアムを模索し ていた私にとって、その確信の一片をついに見つけた気がして、とてもう れしい出来事になった。そしてこの出来事が、以後のサテライト取り組み 84

3. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

第 2 章フランスのエコミュージアム 第ロ ル・クルゾー・モンソ・レ・ ーヌ・エコミュージアム。授業の一環で多くの小学生が見学に来る 体的には、県ないし郡に届け出ることによって一定の法的能力をもつ ことができ、さらにその活動に関して公益性が認められることによっ て、国、地方公共団体からの補助金を受けることもできる。クルゾ ・エコミュージアムは、設置されるとほば同時に、運営に関して 23 条からなる「人間と産業の博物館、ル・クルゾー・モンソ・レ・ ヌ都市共同体アソシアシオン規約」を作成している。それは、「協同 体の目的と構成」「管理と運営」「財政」「規約の修正と解散」などに ついて、自律的な非営利民間団体としてのあり方が示されている。 これらのことは、エコミュージアム概念を大きく広げると同時に、後の 工コミュージアムのあり方に決定的な影響を与えた。「クルゾーの冒険 (l'aventure du Creusot) 」といわれるゆえんである。 第 1 に、環境概念の広がりである。それまでは、環境は主に自然環境を 意味していたが、こでは社会環境をも含むものとして明確に意識化され ることになった。すなわち「エコ」ミュージアムは、自然環境とともに社 会環境の意味も大きく含むことになったのである。 第 2 に、エコミュージアムの活動範囲 ( テリトリー ) は、政策的意味を 35

4. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

定款 管理機構 文化省博物館局の認定の有無 プロジェクト構想の年代 一般公開の年代 責任者 ( 個人名略 ) 職員 テリトリー 活動テーマ 保存コレクション 資料 展示 ( 常設 ) アニマシオン ( 活性化 ) 活動 場所 展示 ( 特別 ) 研究作業 1985 年の訪問者 委員会の役割 1985 年の財政状況 出版物、視聴覚資料制作 有り 1975 年 1975 年 館長 学芸員、会計事務、技術者、 良心的兵役忌避者 3 、研修者 市町村、約 3 万人 文化活動と地方開発 田舎生活の家具、道具、衣装、 農夫の家、鍛冶屋、学校、塔、 農園、薬草と染色草、果樹 繝書籍、 670 資料、図版 マルジェリド EM 1 年協同体法 7 19 世紀末のマルジェリドの農 夫、 19 世紀前半の学校、マル ジェリドの旅行 フランスのエコミュージア ム、農夫・粉ひき・パン屋・ モード、イデー、町は語る マルジェリドのロ承文学、ギ ャラビットの陸橋と集団の記 憶、マルジェリドの地質学・ 地形学・生態学、採集経済ほか 工コミュージアムの出会い、 研修の組織化、旅行展示ほか コア : 展示場、資料室、管理 室、ミュージアムショップ、 アンテナ : 農夫の家、鍛冶屋、 学校ほか コア : 31 開人、アンテナ : 1 万人 利用者委員会 ( 36 人 ) 、管理 委員会 ( 4 市町村、 1 協同体 ) 、 学術委員会 ( 11 人 ) 運営費 : 約 58 万フラン ( 市町 村 1 % 、州 9 % 、国家 65 % 、 自主財政 23 % 、私的パートナ ー 2 % ) 、投資 : 約 58 万フラ ン マルジェリドエコミュージア ム機関誌 ( 1 号農夫の家、 2 号農夫・粉ひき・パン 屋 ) 第 2 章フランスのエコミュージアム ランス山地工コミュージアム ランス山地地方自然公園 有り 1979 年 1979 年 学芸員 自然公園のスタッフ 市町村、 3 万刈人 森、職人 森の活動の道具、きこりの家 村の資料センター、森の資料 センター、公園施設に建設中 の資料室 森を知る、狐と猛威、ゴミを もう捨てないで、木骨の家 ニュ地方の硝子の シャンノヾー 調査、森の調査、林務官の歴 史と経済の調査 コア : 特別展示室、資料室、 管理室、アンテナ : きこりの 博物館、職人センター、資料 センター 7 网人 財政委員会、学術委員会、ア ンテナの管理委員会 ( ピデオ制作 ) 「シャンパー ュ地方の硝子」「ランス山地 の人と森」「硝子工の女性」 「行為と態度」「硝子工の冒 険」「塔 1 」「聖ヴァンサン」 出典 : lsabelle Lazier, 、 'Fiches signalétiques des écomusées". ECOMUSEES EN FRANCE, pp. 141-181. より作成 Agence Réginale d'Ethnologie Rhöne-Alpes Ecomusée Nord-Dauphiné, 1987 ,

5. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

第 3 章リンゴとワインの里のエコミュージアム 「おーっ」と押し殺した歓声。なにしろ 1 枚の巣板には、 3000 匹ものミッ バチがついている。巣箱 1 箱にはおよそ 3 万匹が住んでいるのだ。蜜ロー ソクの原料になる不用な巣の紹介、巣内部の仕組み、女王蜂、幼虫、成蜂 の誕生、蜜のありかを仲間に知らせる尻ふりダンス、蓄えられているハチ 蜜や花粉など、巣箱の中は感動だらけだ。そして最後には、蓄えられてあ るハチ蜜をちょっとだけ、手ですくってなめてもらうようにしている。甘 さが緊張を溶かし、みんなに笑顔が戻り、観察会は終了する。 ⑤ショップ 蜜ローソクやハチ蜜を販売している。体験したり見学して、きっとその 思い出として買ってくださるのだと思う。灯をともしたとき、あるいはハ チ蜜を食べたときに、ほんのちょっとでもいいから、 ミッパチや自然、そ してここのことを思い出してくれたら、それはこのうえなくうれしいこと である。 ⑥立木小学校とのかかわり 前述したとおり、すぐ近くの立木小学校に外部講師として毎年かかわら せていただいている。私も所属する朝日町ェコミュージアム研究会の佐竹 伸ー先生が、養蜂を通した森の学習を一年通して進めてくれたことがきっ かけだった。 畜産用セイヨウミッパチは飼育が専門的なので、野生種のニホンミッパ チを校庭で飼育した。ニホンミッパチは、群れが小さいので集蜜量が少な く神経質で逃げやすい。反面あまり刺さす、外敵や寒さに強いのでほとん ど世話がかからないのが特長だ。山暮らしだった祖父の時代は、ハチ蜜と いえばこのニホンミッパチから収穫したものであり、祖父がその後、養蜂 を始めるきっかけとなったハチでもある。養蜂用のセイヨウミッパチにつ ーこ朝日 いては、私の仕事場に観察に来て比較してもらった。ちなみに ミッパチを健康に飼え、しかもハチ蜜を収穫 町のような山あいの町でも、 できるのは、この一番山手にある立木小学校だけなのである。なぜなら、 果樹園や水田の農薬はミッパチを死なせてしまうから。幸い全滅しなくと も、ハチ数の少なくなってしまった群れでは、秋のスズメバチの襲撃や寒 い冬をもちこたえることはできす、いずれかわいそうな結果をもたらして しまうのである。 87

6. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

第 4 章空・山・川総合研究所とイーハトープ・エコミュージアム構想 素人の農家の主婦による「おふくろの味」が好評を博し、常連客や町外か ら訪れる人で賑わっている。自分たちの活動や町のことを客に話すことの 必要から、しつかりと地域のことを学び、きちんと説明できるようになり たいという向学心の旺盛な頼もしい女性たちである。最近は、同じ農家の 主婦の立場の海外出身の女性の参加も得て、定期的な「アジア料理の日」 を実現している。 ⑥ふるさと歴史資料館 ( 教育委員会 ) 1997 ( 平成 9 ) 年に、旧県立東和病院の施設を改装した、町立のふるさ と歴史資料館が開設されている。資料館は、町の歴史と文化にふさわしい 「祈りと信仰」をテーマとし、考古展示室、歴史展示室、民俗展示室のほ か、企画展示室がある。今後は、自然関係などの分野も順次整備していく 予定である。コンパクトななかにも充実した展示・解説が行われ、地域博 物館としての一層の発展・充実が期待される。空山川総研が入っている総 合情報センターとともに、来訪者・来館者が「イーハトープ・エコミュー ジアム」と東和町の全貌を理解でき、サテライトへと導かれるようなコア 施設としての性格を有することが十分可能な資料館であることから、今後 はパートナーシップの構築が求められる。 6. これまでの活動の成果・インバクト ( 1 ) 地域の豊かさと独自性への気づき 東和町で生まれ育った住民が、東和町のよさや個性に気づくのは、なか なか難しいことであるが、空山川総研は、エコミュージアムづくりを通じ て地域資源の活用に取り組む個人や団体を応援したり、地域のよさに気づ くことができるような多様な活動を自らっくり出してきた。 ( 2 ) ネットワークという豊かな財産 空山川総研は、これまでのエコミュージアムにかかわる 8 年間の地道な 活動を通じて、多彩な出会いの機会を得ながら、町内・町外に豊かな人的 ネットワークを築いてきた。 ェコミュージアムの発展を真剣に考えていこうとしている多くの市民、

7. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

第 6 章ェコミュージアムへの招待 海と山と温泉の山陰の小さな町は、深い石見銀山の歴史も潜めてそこに ある。 1998 年にこの町に「酒仙蔵人五郎之会」というグループが生まれた。も ともと、温泉街をもち、良港をもっという土地のなかで「開春」というな かなかいい酒が飲まれていた。酒文化である。森からあふれ出す水と湧水 仕立ての米、これを資源にして交流づくりをしようというものだった。 酒米は、幻の米「亀の尾」を使用、「開春」 ( 若林酒造 ) の奥村嵩杜氏を かしらに、会員はみんな蔵人になって自分で酒を作ろう、米づくりもしよ うという会だ。 およそ 150 人ほどの会員が、町内外、県内外にいて、田植えといえばや ってきて温泉に泊まって酒を飲む、稲刈りといえばやってきて飲む、酒の 仕込みといってはやってきて飲む、もちろんカラオケなどなしで話し合い が続く。宴にはさかながつきものだ、さかなは日本海の磯もの、おかずは 山でとれた農家の自信作。「あっ、このお米はおいしいね、こんどもらお うかしら」「デザートのメロン、どこで買えるの ? J A ? よろしくね」 こんな話もとびかう。北前船時代の骨董だよなどとあやしげな口上で、あ やしげな資料館をやってるおやじもいる。 酒づくりの蔵と名人の杜氏がます、資源だ。それに、仕込み水、米をつ くる農家のわざ、旅館の包丁人は心のこもった料理を出す。旅館街のおか みたちは、古い温泉街の街並み保存運動に取り組んでいる。借りものでは ない、身の丈の資源で、己れの足るを知る程度の収入を複合的に実現して、 暮らしが持続することをみんなが考えている町だ。 宇沢弘文氏は『ゆたかな国をつくる』 ( 岩波書店、 1999 年 ) のなかで、 農業分野について、次のように「ゆたかな国」に向かう方向を記す。 少し長いが引用してみよう。 「農社は、農の営みをたんに農作物の生産に限定しないで、農作物の加工、 販売、研究開発活動までひろく含めた、一つの総合的な組織です。しかも、 かなりの数の農民たちが中心となって、協同的な作業をおこない、市場経 済のなかで、経営的にもうまくやっていけるような規模と事業の多様性を もつものです。昔の村落に近い組織ですが、封建的、因襲的な遺制を廃し て、リべラリズムの思想に忠実なかたちで運営しようとするものです。 167

8. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

保存・活用する方法がとられた。そしてその「現地」をアンテナ施 設 ( サテライト ) と呼んだ。テリトリー内のアンテナ施設を結びつ ける役割を担うものとしてコア施設が必要となる。コアとアンテナ、 アンテナ同士を結ぶ道のなかに「発見の小径」 ( sentier du patrimoine) と名づけられるものが生まれてくる。 ( 3 ) 住民参加の考え方 クルゾーでは、「地域の工業遺産を保存し未来につなげていこうと する住民が中心となって設立された」といわれるほど、住民は、早 い段階から、その構想、運営、活動にかかわっていた。たとえば、 アンテナ施設の運営を考えても、住民の積極的な参加なしには、実 現不可能である。現在、エコミュージアム運営のためにアソシアシ オンを組織し、それが主体となって運営されているところも少なく みち ら、産業遺産まで、遺産の概念が拡大された。 ど産業遺産が中心的なものとなった。従来の自然・民衆文化遺産か 従来の自然公園型のものとは異なり、そこでは、鉱業、鉄鋼業な ( 4 ) 遺産の概念の拡大 なし、。 24 ジアムは成立しなくなる。 の後、一般化されていく。ともかくアソシアシオンなしには、エコミュー ジアム運営の基本的なものであり、住民参加の具体的なあり方として、そ ぞれに所属して、民主的な運営を進めていく。この 3 委員会もエコミュー オンは、「利用者委員会」「学術委員会」「管理者委員会」を組織し、それ 成された。それによると同工コミュージアムの運営母体となるアソシアシ ル・クルゾー・モンソ・レ・ ーヌ都市共同体アソシアシオン規約」が作 ル・クルゾー・エコミュージアムでは、 1973 年、「人間と産業の博物館、 ものであった。なかでも、とくに重要なのは、住民参加のあり方であった。 これらのことは、エコミュージアムのあり方に、根本的な変更を求める

9. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

研究者、コンサルタント、行政関係者との得がたい多くの出会いと広範な ネットワークは、貴重な財産であり、イーハトープ・エコミュージアムの 運動を実践・継続していくうえで、今後も大いに威力を発揮してくれるは ずである。 ( 3 ) 個人と団体の力量の向上 発足以来 10 年にも及ぶ活動の積み上げに伴って、イーハトープの地球市 民「デクノボー」としての一人ひとりの研究員と NPO としての空山川総 研の力量は、確実に増大しているといえよう。 ( 4 ) 有用な情報の集積 ィーハトープ・エコミュージアムの運動の推進母体としての空山川総研 には、町内および近隣に所在するさまざまな学習資源や活動団体に関する 有用な情報が蓄積されている。 自分たちの活動を機関紙やホームページで発信したり、町外の熱心な研 究員たちのネットワークにより、幸いなことに、現在では自動的に有用な 情報が集まってくるようにもなってきている。 7. ィーハトーブ・エコミューシアムを進化・発展させるための今後の課題 ( 1 ) ィーハトーブ・エコミュージアムのビジュアル化・顕在化 ①外来者に見えにくいエコミュージアムのビジュアル化 町内には人材も含めサテライトになる良質の資源は多いが、それぞれが つながりをもって運営されていないために、東和町を初めて来訪した人に は、それらの存在がわかりにくいままである。「毘沙門天のみち」周辺の コンパクトな『空・山・川マップ』を使って現地で実際にイーハトープ・ 工コミュージアムがわかりやすく体験できるように、さらに案内人、案内 板、案内書がほしいところである。町民向けの「文化財のしおり」などの 各種のパンフレットやリーフレットの類も、今後は「イーハトープ・エコ ミュージアム」を基軸にして整理・統合できれば理想的だ。 総合情報センターの情報受発信機能や、ふるさと歴史資料館の解説機能

10. エコミュージアム : 21世紀の地域おこし

第 2 章フランスのエコミュージアム だが、その思想的な成熟と実現は、数十年後の 1960 ~ 70 年代を待たねばな らなかった。その背景には、①伝統的博物館 ( 学 ) への挑戦②実現の直接 的契機としての地方開発政策③ェコミュージアムを実質的に支えていく 協同体運動の高まりがある。 ( 1 ) 伝統的博物館 ( 学 ) への挑戦 フランスの博物館は、その国有財を中央集権的に管理する仕組みの制度 が高度に発達したところにその特徴がある。そして、高度な専門家養成か ら得られる質の豊かな行政指導や、収集物に対する法律的規制の厳格さに よって、その文化的水準が維持されてきた。 200 年以上の歴史をもち、施 設規模、蔵品内容、学芸活動など、あらゆる点で世界でも屈指の博物館と いわれるループル美術館は、 こうした博物館制度によって守られ発展して きたその代表的なものである。 しかし、他方でそれは、博物館施設と蔵品内容さらに職員の序列化・差 別化を促してきたことは否めない。文化省博物館局の管轄下にある博物館 が、施設、収集・保存物、職員配置などあらゆる点で格差づけられ、ピラ ミッド構造を形づくってきたのであった。それは、博物館の専門職員であ る学芸員 (conservateur) とは国立系の博物館に所属する者のみをさし、 非国立系の博物館に勤務する多くの学芸員は、法制度上は学芸員と認めら れてこなかったことや、文化省博物館局傘下にある国立博物館 34 館中 24 館 がパリおよびその周辺に集中していることに端的に示されている。 ピラミッド構造の問題の根底には、博物館の機能と収集物に対する意味 づけにおいて、国有財の保存という国家的役割の絶対重視、国家的に価値 づけられた収集物への高い評価と、その収集物を通しての観衆への啓蒙的 教育、民衆の文化や地方の文化の軽視といった思想が横たわっていた。し たがって、「博物館は今日なお、権力の拡大を信じている階級の埃をかぶ った固定観念が集中している不可思議な場のままである」といった批判や、 あるいはまた「 ( 伝統的博物館の世界は、 ) 文化的には生徒を指導するとい う硬直した教育の世界であり、審美的には傑作作品に偏重する世界であり、 博物館学的には建築物と神聖な展示によるミューズの殿堂の世界として君 臨している」とその権威主義的な博物館 ( 学 ) が指摘・批判されたのであっ