第 3 章リンゴとワインの里のエコミュージアム セイヨウミッパチの観察 ( 立木小 ) リンゴの玉まわし
第 3 章リンゴとワインの里のエコミュージアム 三→学一朝物な第を ) をす第ミ、 ゞを「〔にた ソ第 : 1 当 : ! ー 空気神社 リンゴ園 69
第 3 章 リンゴとワインの里のエコミュージアム 苜井正人・橋間友則・佐竹伸ー・安藤竜二 ー山形県朝日町一
第 3 章 おわりに リンゴとワインの里のエコミュージアム 工コミュージアムを展開するうえでの課題 工コミュージアム・コアセンターが来年完成する予定だが、 これからサ テライトの整備や案内する仕組みづくりといったことに本格的に取り組ん でいく必要があるだろう。ソフト面の整備を優先させながら、町全体を視 野に入れ、その多面的機能を再評価し都市と共生できる町づくりを、町民 と行政がともに手を取り合いながら進めるべきだろう。これからも、日本 で最初にエコミュージアムに取り組んだ町としての責任を自覚しながら、 着実に楽しく味わい深い町にしたいと願っている。
1. なぜ朝日町でエコミューシアムなのか 朝日町では、 1990 ( 平成 2 ) 年度に策定された第 3 次総合開発基本構想 において、エコミュージアムの考え方をとり入れ「楽しい生活環境観」と 新しく意訳し特性をいかした町づくりの基本理念とした。 わが町に住む人々が、それぞれ、この町の文化や自然、生活に誇りをも ち、いかしながら、楽しく生き生きと暮らせる生活スタイルの確立を達成 するために「楽しい生活環境観・エコミュージアムのまち」考え方を示し、 実践展開している。 わが町がこの方法をとり入れた理由は、 ( 1 ) 当町は、旧西五百川村、旧宮宿町、旧大谷村という三様の自然と文 化、歴史をもつ地域から成り立っていることである。 ( 2 ) 当町には、生活や環境をたいせつにする考え方や暮らし方がある。 その現れとして、地球にやさしい町の宣言、朝日自然観、空気神社、 川に清流を取り戻す運動、のんばかの森、世界のりんご園、名勝・大 沼の浮島、などがある。 ( 3 ) 当町には、味わいのある楽しい暮らし方があることを認識させる人 と朝日町資源があるということである。 朝日町の町づくり ①りんごとワインの里 朝日町は地域の特性をいかした独自の農業経営を確立することにより、 年々進む過疎化に歯止めをかけ、活力ある町づくりをめざして、リンゴと ブドウを中心として、ホップ、畜産をとり入れ複合経営を推進し、 1970 ( 昭和 45 ) 年以降の減反政策を十分考慮し、生産基盤整備や遊休農地・桑 園からの果樹園造成を行い、果樹を中心とした農業所得の増大を図ってき 0 その結果、当時の常識であったリンゴの有袋栽培から、無袋栽培への転 換を図った。有袋に比べると糖度が高く食味もすぐれている「無袋ふじ」 66
第 4 章空・山・川総合研究所とイーハトープ・エコミュージアム構想 ・目標を実現のための方策として「自治活動の推進・援助」「ボランティ ア活動の推進」「多彩な人材の育成」など 7 つの項目があげられている。 この構想をわかりやすくイメージできるように、東和町の生涯学習のま ちづくりを「ふるさと共生運動」として、 〇学校教育の視点だけでなく「生涯学習の視点」から 〇青少年の問題だけでなく「大人の問題」として 〇教育の問題だけでなく、それも含めた「地域の問題」としてとらえる という視点で進めている。 ・従来から全県的に続けられている教育振興運動のなかに、次の 3 つの具 体的な視点を設定して「ふるさと共生運動」の推進を提起している。 〇ふるさとを学ぶ学習的な視点から 「ふるさとを知る活動、ふるさとを大切にする活動、ふるさとをつく る運動」 〇環境 ( 自然 ) にやさしい町づくりの視点から、 「環境 ( 自然 ) を知る活動、守り育てる活動、共生する運動」 〇人にやさしい町づくりの視点から、 「文化・歴史・地域福祉を継承する活動、創造する活動、発展させる 運動」 ②グリーン・ツーリズムの推進 ( 農政課 ) ・「東和町グリーン・ツーリズム・モデル整備構想」 ( 1995 く平成 7 〉年度 農林課 ) 東和町では、都市農村交流として、長年にわたり川崎市との交流を続 けている。この交流は、 1986 ( 昭和 61 ) 年に雹害に見舞われた東和町の リンゴを、「えくばリンゴ」と称して、川崎市民に歳暮用に使ってもら ったことがきっかけとなった。その翌年から、小学 5 ~ 6 年生を対象と したサマーキャンプ ( 夏休みに 80 人ほどの児童が 3 泊 4 日の日程で滞在 ) が行われるようになったほか、中学生や高校生の農村体験の修学旅行の 受け入れにも発展している。この取り組みは、グリーンツーリズムを新 しい農業のスタイルの一部として組み入れる試みでもあり、すでに「東 和町グリーン・ツーリズムモデル整備構想」の策定へと進んでいる。 ・グリーン・ツーリズム推進農家登録制度 1 1 1
第 3 章リンゴとワインの里のエコミュージアム や結婚難とあいまって、平成になってからは社会減に加えて自然減による 人口減少が加速傾向にあることで、これまでと違った新たな発想による定 住対策が大きな課題となっている。 産業別の就業人口は、第 1 次産業人口の減少、第 2 次、第 3 次産業人口 の増加という形で大きく変化している。山形県の平均と比べてみれば第 1 次産業人口の割合が高く、朝日町が農業をたいせつにしてきたことの表れ だが、農家の高齢化や後継者不足、農産物の消費や価格の低迷など、基幹 産業として朝日町を支えてきた農業の抱えている問題はより深刻になって いる。 ( 2 ) 課題解決に向けた取り組み こうした課題の解決のために、町ではリンゴを中心とした果樹の振興を、 町の基幹産業と位置づけ積極的に支援してきた。遊休農地や桑園を果樹団 地に切り替えるなど、農業振興にはとくに力を入れてきた。 また、工業面でも 1970 ( 昭和 45 ) 年以降、積極的に工場誘致を行い、多 くの企業を迎え入れることにも成功している。 観光面では、家族旅行村「朝日自然観」を開設し、生涯教育・学習のま ちづくりにも取り組み、定住対策のための係の設置など、考えられるほと んどの手を打ってきた。 しかし、これらですべて解決するといったものではない。 都市と地方の関係は変わらず、地方の活性化は容易ではない。こ、 つし、つ た経済状況のなかでは、ますます困難になりつつあるというのが実感であ る。 1989 ( 平成元 ) 年度から第 3 次総合開発基本構想・基本計画の策定の検 討が進められ、町民参画により 2 年間討議され 1991 ( 平成 3 ) 年 3 月に策 定された。 この構想の理念は「自然と人間の共生」をかかげ、エコミュージアムが 大きく反映されている。その結果、町づくりの基本テーマは「楽しい生活 環境観・エコミュージアムのまち」、キャッチフレーズは「地球にやさし い活力のまち」とされた。 朝日町に住んでいる人々が、自分たちの生活に誇りをもち、自分たちの 75
ージアム 21 世紀の地域おこし 工コュ はじめに 第 1 章 工コミュージアムの原点 はじめに 1 . 工コミュージアムの実態にふれて・ 2 . G. H. リヴィエールと博物館 3 . 工コミュージアムの成立・ 4 . 工コミュージアムの概念・ おわりに 第 2 章 フランスのエコミュージアム はじめに 1 . 工コミュージアムの誕生とその背景・ 2 . 地域特性による多様な活動の展開・・ まとめにかえて一日本への指針ー 第 3 章 リンゴとワインの里のエコミュージアム ( 山形県朝日町 ) ・ LO 0 一 LO 、 6 一 1 ワ」ワ 3 ワ 3 ・・・ 29 っ 0 っ 0 一 .0 ・・・ 65 1 . なぜ朝日町でエコミュージアムなのカ 2 . 朝日町の町づくり・ 3 . ふりかえれば見える地域づくりを・ 4 . 朝日町にとってのエコミュージアム・ 5 . ェコミュージアムへの取り組みの経緯・ っ 6 0 ワ朝 -4 4 4
表 2-3 ペイ・ドウ・レンヌ EM 定款 管理機構 工コュ ージアム ( EM ) の事例一覧 文化省博物館局の認定の有無 プロジェクト構想の年代 一般公開の年代 責任者 ( 個人名略 ) 職員 アニマシオン ( 活性化 ) 活動 テリトリー 活動テーマ 保存コレクション 資料 展示 ( 常設 ) 展示 ( 特別 ) 研究作業 場所 1985 年の訪問者 委員会の役割 1985 年の財政状況 出版物、視聴覚資料制作 60 バス・セーヌ EM プロトン地方自然公園 有り 1975 年 1979 年 学芸員 学術班 2 、運営班、受付班 17 プロントン地方自然公園、 40 市町村、 4 万人 熟練仕事、セーヌ川の活動、 リンゴ 動産 : 7 网、不動産 : 昔の建 造物 5 ( 風車・パン焼きの家、 司祭館、鍛冶場 ) 図書室、写真資料室、音響ラ イプラリー、ピデオライプラ 木靴の家、パン焼きの竈、熟 練仕事の家、リンゴの家、風 車、鍛冶場 ノルマンジーの風車、もし卵 が私に話したら、バスセーヌ の漁業 ウールのリポン、ノルマンデ ィの風車、熟練仕事、バスセ ーヌの漁業 巡回展示、遺産のアトリエ、 遺産の分類、地方生産物の市 場 コア : 445 ⅲ、アンテナ : 保 存コレクション項目参照 コア : 1 万 8320 人、アンテ ナ : 3 万 1250 人 学術委員会、利用者委員会、 管理者委員会、アニマトゥー ル委員会 運営費 : 約 112 万フラン ( 公 園・市町村 22 % 、州 6 % 、国 家 7 % 、自主財政 62 % 、私的 パートナー 3 % ) 投資 : 120 万フラン 「陳列台、リポン」「マンビル の意志の風車」「バスセーヌ 川の漁業」 プレス・プーギニョン EM 1 年協同体法 1980 年 1984 年 学芸員 絵葉書の作成など 紙と錬鉄」「麦・パン・人間」、 「ピエール・ド・プレス城の壁 投資 : 1 浦万フラン 5 % ) 主財政 15 % 、私的パートナー 10 % 、州 15 % 、国家 55 % 、自 運営費 : 約 170 万フラン ( 県 会合 ) 、学術委員会 利用者委員会 ( 1 年に 1 回の 8 网人 コア : 8000 人、アンテナ : 設展示項目参照 コア : 1940 市、アンテナ : 常 館整備 育セミナー、住民宅での博物 教育的活動、学校教師との教 展望と開発、農業の継承 水車の目録作成、地方住民の ウ園労働者とブドウ園、水車 ンクール、農業の継承、ブド ら職人、プレス地方の農業コ ランシーの椅子製造職人とわ ( 以上アンテナ ) にみる人生、麦・パン・人間 ア ) 、プレス地方の森、日記 展示会のための 12 の思想 ( コ 地方資料センター 点 動産 : 家具、道具、衣装 1 网 農業、職人、水力網 115 市町村、 6 万人 ア・研修生など ニマトウリス 1 、ボランティ 研究担当 1 、会計秘書 1 、ア レンヌ市 1979 年 1987 年 学芸員 レンヌ史についての EM での 農業の進展 プルターニュ特有の建築物、 の歴史 16 世紀から今日までのレンヌ 家屋 ( 10 ヘクタールと 20n イ ) 菜の種、不動産 : 農場と付属 動産 : レンヌで培養された野 レンヌの郷土史と近年の進展 28 市町村、 30 万人 ームと職員 プルターニュ博物館の学術チ 用者委員会 ( 計画中 ) 理者委員会ルンヌ市 ) 、利 学術委員会 ( 最も重要 ) 、管 バンティネの農場 祭りと工業の組織化ほか プログラム化 ヌ川の漁業」の制作 「町と田舎の交流」「パスセー 視聴覚資料「リンゴ酒の製造」
第 3 章 リンゴとワインの里のエコミュージアム 、↓世界のりんご園、・ , ここには、ヨーロッパを靉の りト心が載されています . 「世界のりんご園」 り出すことも可能になる。そのなかで、地域資源は、まさしくふりかえれ ば見える資源であり、大きなお金を使わないで生活や産業基盤を整えるこ ともできる。 これからの地域づくりは、身の回りの資源や知恵と技を駆使していくこ とがたいせつになる。大きな資金や企画力を使用するのは、中央や企業の 力に過度に依存することになり、金やモノが大きな魅力をもっていた時代 の考え方と体質に戻ってしまう。 ふりかえれば見えてくるのは、よいことばかりでなく、いやなことも当 然見えてくるので、注意して仕分けする必要がある。 ( 2 ) 身の丈のエコミュージアム活動を 工コミュージアム活動は、地域に暮らす生活者が主体となり、地域の自 然や歴史文化、そして、独自の地域資源を用いて、身の丈サイズの生活 面・産業面と 2 つの領域で行うものである。身の丈サイズとは分相応とい うこともあるが、からだのもつ五感に地域資源などから発せられる独自の 73