キット - みる会図書館


検索対象: 「自然史博物館」を変えていく
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1. 「自然史博物館」を変えていく

ちょうど研究授業で使用させていただいたので、ほかの教員の意見 も書かせていただくと、 ◎観察キットもとても観察しやすく ( 切っているところ ) よかった。 ◎観察キットもいいが、実際の川原の石がほしいなあ。 とのことでした。 1 1 まとめ 今回紹介した「貸出用標本キット」は標本作製業者などに委託せず に、館内で手作業で作成しました。そのために教員からの要望に応じ てアレンジし直したり、仕様を変更することが容易です。利用後のア ンケートなどから、より使いやすいキットにバージョンアップしてい くことも必要でしよう。 さっそく 2005 年度からは、教科書に「発展的内容」が取り入れら れており、中学校理科では、深成岩・火山岩ともに従来通りの 3 種類 ずつが掲載されるようになっています。中学校での利用を考えると、 岩石種を増やす必要があるでしよう。 一方、博物館と学校との連携を考えるとき、博物館側のスタンスを どうとるかは、課題として残ると考えられます。当館の場合には、学 校から児童・生徒を「丸投げ」されるのではなく、「教員への支援」 に重点を置いて、教員による主体的な取り組みが進むことを期待して います。それが双方にとってよりよい結果を残すと考えるからです。 「大阪の川原の石ころキット」を使用した教員の感想に顕著に表れて いますが、授業を参観した教員からは「観察キットもいいが、実際の 川原の石がほしいなあ」という、博物館側へ「すべてお任せ」の丸投 げの姿勢が見られます。一方で、博物館の研修プログラムに参加した 教員のように、勤務校近くの川原の石ころを使う授業案を計画し、自 ら石ころの採集に出かけるという、積極的な姿勢がみてとれます。 48 第 1 章学校・教員へのアプローチ

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IO 標本キット利用者の感想など 標本キットを貸し出すときに、アンケートを同封して今後の改善に 役立てるようにしています。アンケートから、「川原の石ころ」キッ トを利用した教員の声を 2 例紹介しましよう。 1 ) 大阪府八尾市内の小学 6 年生 利用方法 : 班ごとにセットを配り、自由にルーべで観察させた。番 行とに気づいたことを述べ合い、石のプリントを配布 して答え合わせをした。 生徒の反応 : 実物はやはり大変興味を持ってみていた。特にみがか れているのが手ざわりもよく、粒の観察もしやすく、ワ イワイガャガヤと観察して、いろいろ感想を述べていた。 教員の感想 : 川原や海辺に子どもたちと出かけ、石を収集してから 授業を行えるのが一番かと思う。しかし時間的にも無理 なことが多く、また正しい同定ができるのか不安も多い。 そのなかにあってきちんと数のそろった同定された、し かもみがいてあるキットは大変ありがたかった。 こちらは意図したとおりの使用方法と感想であり、作成した甲斐が あったという利用例です。 2 ) 大阪市内の小学 6 年生 6 年、理科の単元「大地のつくり」で使用しました。先日参加させ ていただいた研修会での「川原の石ころのなかま分け」もしました ( 研 修会後に、石を木津川と石川へ、子どもが十分になかま分けできる量をひ ろいに行きました ) 。 今回は理科の授業で使用しましたが、総合学習ではまた違った使い 方もあると思います。実際に川原に行くことができない学校がほとん どなので、役に立っと思います。 1 -3 標本貸出キットの作成と運用 47

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3 TM ネットワーク 上記のようなプログラムを取り組み始めたものの、参加者が少ない ことや、博物館からの情報が先生に届いているのかという不安が出て きました。また学校現場の意見や要望を直接取り入れながら、博物館 における支援プログラムなどを実効あるものにする方策はないかと考 えてたどり着いた解答が、 TM ネットワークの設立でした。 教員 (Teacher) と博物館 (Museum) のネットワーク ( 通称 TM ネ ットワーク ) ということです。当初は、 40 名ほどの教員がネットワ ークに登録して、事務局 ( 博物館 ) でニュースレターを発行して、学 習プログラムや教員向け観察会の案内などを連絡していただけでした が、遠足見学の下見の説明会の中で、遠足時の注意事項とともに、博 物館で行っている TM ネットワークや教員向け研修プログラムも合わ せて紹介するように工夫することで、プログラムの参加者やネットワ ーク登録数が増加してきています。 ニュースレターの内容も、観察会の連絡だけでなく、学校側の情報 や教員の研究事例なども含めた双方向な内容を目指してきています。 4 標本貸出キットの作成 2002 年度からは、学校の授業で利用可能な標本貸出キットの開発 を始めました。 自然史博物館には大阪の自然に関する、観察会などのプログラムの 実施や実物標本・ガイドブック・インターネットコンテンツなどが用 意されています。しかしこれらの多くは、博物館で学芸員が指導する ことを前提として開発されています。そのために学校でそのまま利用 できるようには設定されていません。 これらの素材を学校教育で活用するには、児童・生徒の学年や教科 単元の内容を加味し、学習計画への翻訳が必要で、またそうすること で効果的な学習効果が期待されます。 標本貸出キットの開発にあたっては、小・中学校の教員にも企画検 1 -3 標本貸出キットの作成と運用 39

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討メンバーに加わっていただき、検討委員会を組織して進めていくこ とにしました。検討委員には、 TM ネットワークに呼びかけて手を挙 げた方のほか、大阪市の小・中学校教育研究会理科部会にも推薦を依 頼して、合計 4 名の教員にお願いしました。それに博物館の担当学芸 員、 NPO 大阪自然史センターの教育スタッフを加えて作業を進めま 0 4 回開催した検討委員会では、貸出キットの実際の内容、貸出・返却 の方法など、博物館職員だけで検討したのでは判断がつかない学校の事 情に配慮した、具体的な内容を話し合うことができたと考えています。 標本貸出キットの内容については、学芸員から提案したり、教員か ら候補として希望が出されたものとしては、「セミのぬけがらしらべ セット」「大阪のテントウムシ検索用標本セット」「校庭の雑草調べセ ット」「ほ乳類の頭骨比較標本 ( イヌとシカ ) 」「鳥のふんの中の実を調 べるセット」などがありました。 筆者からは博物館での担当分野である岩石標本を、理科の教科単元 で使いやすくしてもらおうと、「大阪の川原の石ころセット」を提案 しました。 2002 年度中に、それぞれについて担当学芸員が試作品を作って委 員会で検討した結果、 2003 年度に「川原の石ころ」のキットを製作 することになりました。 5 思いつきのきっかけ 筆者が、貸出キット「川原の石ころ」を作成することを発想したの は、 2002 年 9 月はじめに小学校教員からの相談電話があいついだこ とがきっかけとなっています。 「教科書に出てくる石ころの標本を貸してほしいんですが、あります よね ! 」というリクエストが 1 件と、大阪市の南に隣接する堺市の小 学校からの「教科書が変わって、地学の単元を大きく教えなくてはな らなくなったんですけど、石の見分け方がわからないし、近くの川原 40 第 1 章学校・教員へのアプローチ

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8 貸出 基本的には 1 水系について 4 箱 ( 8 セット分 ) を収納していますが、 実際には希望する水系とセット数を聞き、不足する岩石種があれば追 加しています。石ころの岩石種で示したように、どの水系でも必要な 岩石種がそろうわけではありません。れき岩は石川セットにしかなく、 逆にそこでは泥岩がみられません。一方石灰岩は芥川だけに分布して います。 そのためにたとえば、「芥川セット十れき岩」のような希望に対応 可能なように、ほかの水系でみられない岩石種については、完成セッ ト以外にも標本を余分に用意しています。 「川原の石ころ」キットの一応の完成が 2003 年 11 月になったため、 小学校では「大地のつくり」の単元が半ば終了する時期であり、この年 度の貸出実績は 2 校でした。利用したのは、後述する教員向け研修プ ログラム「河原の石ころ調べ」の参加者でした。 2004 年度の利用は 6 校と増加しました。各学校ともに同じようなペ ースで単元の学習が進むために、 10 月末から 12 月上旬にかけては完 成していた 3 水系のセットがすべて貸出中という状態もみられました。 9 教員向け研修プログラム 総合学習支援プログラムで紹介したように、博物館では教員向け研 修プログラムを実施しています。そのひとっとして、「川原の石ころ しらべ」を、「川原の石ころ」キット作成の紹介を兼ねて実施したよ うすを紹介します。 実施例 : 川原の石ころしらべ ( 2002 年 1() 月 11 日 ) 実施場所 : 京都府加茂町、木津川の川原 参加者 : 12 名 スケジュール・実施内容 1 1 : OO 河原に到着行事の趣旨・目的の解説 1 -3 標本貸出キットの作成と運用 45

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謡貸原 グループ学習でも使用しやすい数の資料 ひとうの箱には同し標本セットが 6 セット人らそいますよ。 数グル”プに分かれての授業展開にも対応できま ・身近な地域の川原の石ころで構成影 3 ま淀川い芥川など大阪に流れる川の周辺の石ころで構成し。 いま灰現地ての見学授業の後に利用すると子どもたち、の ー理解をより深めるごとができます ・石川セット ( 大和川水系 ) 、。 石ころの種類 、芥川セット ( 淀川水系 ) , 木津川セット ( 淀川水系 ) 第石ころ ( 約 8 類 ) x 6 セット ニガイド ( 川原の石の見分け方 ) x 1 冊 ・説明シートく石の見分け方 ) x ー を各セットの内容 お問い合わせ先 図 6 「川原の石ころ」標本キットを知らせるチラシ。校外学習の下見説明会などで配付してい 1 -3 標本貸出キットの作成と運用 49

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図 2 切断・研磨してラベルを貼った石ころ見本 川の石こる まキ当ト 「川原の石ころ」標本キット。プラスチックコンテナに収納した状態と解説シート ( 左 ) 、 物な第準 2 セットが入る段ボール箱 ( 右 ) 図 3 44 図 4 石ころ標本を観察するイ 第 1 章 学校・教員へのアプローチ

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まず、参加者に石ころの分類を行ってもらう。岩石の : 05 1 1 分類ではない方法で、自分なりに分類の基準を設けて 仲間分けすることを指示。 ( 例 ) 色、形、大きさ、表面 の様子 ( ざらざら、つるつるなど ) 、など。 : 30 参加者から、どういう基準で分類したか説明してもらう。 1 1 →その基準に沿って分類されているかを全員で確かめ て納得いくか判定する。 岩石を作る粒についての説明 12 : 45 砂岩、花こう岩砕屑物と鉱物の結品など。説明の後、 その粒を持つ岩石を川原からさがしてもらう。 持参した「川原の石ころキット」をよく観察してもら い、同じ種類の岩石をさがしてもらう。 まとめ、解散。 14 : 30 「ぜひ授業に取り入れたいので、ほかでも石ころが拾える 場所を教えてください」という声が複数出されました。 こ ラ ド 1 を研 第向す校 教判 章 一 J

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はじめに一一地域の「自然の情報センター」として機能するために 第 1 章学校・教員へのアプローチ 佐久間大輔 ( 大阪市立自然史博物館学芸員 ) 橘麻紀乃 ( 大阪自然史センター教育スタッフ ) 目 ー 1 2 - 2 2 ー 3 2 ー 4 次 1 ー 1 1 ー 2 1 ー 3 学校と博物館をつなぐ・・ 佐久間大輔 学校への「博物館利用のすすめ」と「よりスムーズな 利用提案」をめざして・ 橘麻紀乃 標本貸出キットの作成と運用・・ 川端清司 ( 大阪市立自然史博物館研究副主幹 ) 第 2 章子どもに楽しく、きちんと伝えるために 2 子どもと博物館をつなぐ・ 佐久間大輔 「また見に来よう」のきっかけ作り 中原まみ ( 大阪自然史センター教育スタッフ ) クイズでコミュニケーション・・ 佐久間大輔・中原まみ ー「子どもワークショップ」という語りの模索ー 次のサービスへ・・・ 樽野博幸 ( 大阪市立自然史博物館学芸課長 ) ・中原 12 1 5 ・ 36 ・ 74 ・ 63 ・・・ 55 ・ 52 ・ 5 1 まみ 目 次 9

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1 、一 3 標本貸出ットの作成と運用 イ、、・ = 、イ阪市立自然史博物館研究副主幹 ) 36 第 1 章学校・教員へのアプローチ どテーマの一つに選ばれていた時期もありました。 なります。博物館関係のシンポジウムなどでは、必ずといっていいほ の連携 ( 博学連携・博学融合 ) ということが言われだしてから久しく 学校教育と社会教育の連携 ( 融合 ) 、あるいは博物館と学校教育と 1 博物館と学校 標本貸出キットの作成と、その素材を利用しての実施例を報告します。 ここでは、学校との連携事業のひとっとして博物館で取り組んだ、 など、博物館と学校のよりよい連携の必要性が求められています。 総合的な学習の時間 ( 以下、総合学習 ) や教科理科における調べ学習 学生が、多数存在することが分かります。また展示の見学だけでなく、 このように、学校を通じて自然史博物館と接する機会をもつ小・中 60 % となります。 校団体による見学が 40 % 、個人による見学 ( 親子での見学など ) が 98 , 582 人 ( 49.4 % ) となっていることが分かります。そのうち、学 成 16 年の実績でみると、総入館者 199 , 756 人のうち小・中学生が この内訳を見ると、およそ半数を小・中学生が占めています。平 られます。 示を見学し、大阪の自然について学ぶきっかけともなっていると考え 大阪市立自然史博物館では、年間 20 万人ほどの入館者があり、展