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検索対象: 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門
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1. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

流入河川の上川 ( 六斗川 ) 河口部および流入河川の多い豊田地 先 ( 葭崎 ) などの流水域で , 常に溶存酸素の豊富な所で多量に 採集されていたが , 30 年前には非常に少なくなり , 現今では稀 にしか採れない。これは富栄養化の進行に伴う , 夏季底層水の 酸素欠乏によるものであろう。マシジミの激減により琵琶湖か ら多量のセタシジミが移殖放流されたが , 原産地での不漁で 10 年位前に中止され , 現在の漁獲物中のシジミが , 大部分は , 毎 年放流されている汽水性のヤマトシジミ ( 原産地は木曾三川河 ロ部 ) で占められている。しかし , このヤマトシジミの淡水湖 内での自然増殖は望まれないので , 水揚げ量は放流量を大幅に 下回る有様である。 夏季の深底部からは , 赤色血色素をもつ酸素耐乏性のユスリ とカワニナ ( 下 ) カ類やイトミミズ類が , 70 年前より今日に至るまで豊富に採集 ヒメタ されている。 ニシ ( 上 ) 図 5 ー 10 第 5 章湖沼の汚染ー諏訪湖を例として 289

2. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

4 流入河川の汚濁の生物学的水質判定 河川の植物プランクトン , 付着藻類 , 底生動物の種類組成を 観察して , 汚水生物学的指標生物表と照合して , 清洌な河川水 を貧腐水性 (os), 汚れのひどいものを強腐水性 (ps), 中間 を中腐水性 Cms) の生物学的水質階級にあてはめる方法が , 生物学的水質判定法である。 諏訪湖と流入する主要河川は図 5 ー 4 のようである。 1960 ~ 1972 年間における湖への流入河口で観察した , 各河川の生物学 的水質判定結果の汚染の経年推移を図 5 ー 5 に示した。これに よると 1960 年代初期の河川汚濁化の速度はあまり目立たない が , 1966 年以降のそれは急速である。すなわち , 1963 年には砥 川 , 横河川および大堀川の 3 本の貧腐水性河川は , 1968 年には 皆無となり , これらはー中腐水性に変わり , 他の河川はすべ 下諏訪町承知川 五 岡谷市塚沢 ロ 水 間川 門 湊 花岡 古 砥 横 小坂 大沢川 七ツ釜 大和 三ッ釜 500 1 00 師 半木川 0 「 ~ 介島崎川 市 ()A 中門川 乙衣ノ渡川諏 ぐ古川 柳並川 初島。 田池ー 図 5 ー 4 新川川 諏訪湖及び流入・流出河川 第 5 章湖沼の汚染ー諏訪湖を例として 277

3. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

月 承知 14. 34 砥 0.61 17. 04 35. 02 1 . 41 河 名 川 川 年 武井田川 高田川 大堀川 五味沢川 ' 60 4 ① 〇 〇 ◎ ◎ 〇 ① ① ' 63 8 ① 〇 ① 〇 ④ 〇 ◎ ◎ ① 〇 O 6 ' 66 10 ◎ O ◎ ① ◎ 〇 ◎ ◎ ◎ ① ◎ ◎ ' 67 7 ⑨ O ④ ① ① ◎ ◎ ◎ ◎ ' 67 10 ④ ① ◎ ① ◎ ◎ ◎ ④ ◎ ◎ ④ ◎ ' 68 4 ◎ 〇 ◎ ◎ ④ ◎ ◎ ◎ ' 68 ◎ ① ◎ ④ ◎ ◎ ① ④ ⑨ ④ ◎ ' 72 ④ ◎ ⑨ ◎ ' 72 ◎ ◎ ④ ◎ ⑨ ' 72 流量 全流入量 鴨池 宮 斗 島崎 川 川 川 川 衣ノ渡川 柳並川 千本木川 天竜川 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ④ 〇・・・ s ~ s ◎・・・ ams ( ・・・・ ams ps 1 . 07 2.49 3.57 3.64 3.84 0.07 0.10 0.09 0.69 9.63 0.47 2.49 0.20 0.47 ・・ PS 図 5 ー 5 278 各生物群集別水質判定の総合結果による諏訪湖流入河 川汚濁の経年変化 4 流入河川の汚濁の生物学的水質判定

4. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

3 水質の変遷 湖は貧栄養湖から富栄養湖へと遷移するが , 両者は水中の無 機窒素が 0. 4ppm 以下の場合は貧栄養湖 , それ以上を富栄養 湖とする。また , 無機リンは 0. 02ppm を両者の境界とし , 測 定時期は春に湖水が垂直的に循環する初期に定めて比較すべき ことが提唱されている。 表 5 ー 1 にみる 70 年前の結果は夏のものであるので , そのま ま他と比較できないが , 窒素 , リンともに 30 年前や近年に比較 して著しく徴量である。その後のものはいずれも富栄養的な高 い値であるが , これは水田地帯からの肥料の流入 , 増加する下 水 , し尿処理水 , 工場の有機排水の分解によって生じたもので ある。ことにリンの場合は中性洗剤のビルダーとして使われる リン酸塩とも関係があろう。塩素イオン濃度も年とともに増大 しているが にも人口増による排泄物量の増大との密接な 関係がみられる。 表 5 ー 2 は最近 30 年間の代表的な流入河川の , 無機窒素と無 機リンの含量の変化である。上川 ( 六斗川 ) のような最大流量 をもっ河川も , 上流の茅野市の発展により水質が急速に変わっ たことがわかる。 水の有機汚濁の指標として BOD ( 生物化学的酸素要求量 ) が用いられる。諏訪湖汚染のヒ。ークとみなされる 1960 年代半ば では , 表 5 ー 3 にみるように , し尿処理水を含めた家庭下水と 工場排水その他の BOD 負荷量の比は 3 : 7 であり , この数字 は諏訪湖汚染の主役が工場群だけとはいい切れないことを示し ている。 第 5 章湖沼の汚染ー諏訪湖を例として 2 ア )

5. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

いので , 細部の順位は不明であるが , シジミが全量の 40 % を占 め , ェビ , ウグイ , コイとつづぎ , アマゴのようないわゆる清 冽水に棲む冷水魚も相当量捕獲されている。その後大正年代初 期にはワカサギ , フナなどが移殖放流されると , これら両種が 急速に増えはじめ , アマゴ , ウグイは減る。 30 年前にはワカサ ギが全量の 35 % , フナが 22 % を占めてそれぞれ第 1 位 , 第 2 位 となり , シジミは 3 位 ( 11 % ) に , ェビは 9 位 ( 2 % ) に転落 する。 10 余年以前から今日に至るまでは , ワカサギが全漁獲量 の 60 % 以上を占める年が多くなり , 暖水性のフナ , コイがこれ につづき , シジミやェビは激減した。漁獲全量では , 戦前の平 均約 700 t 。 n / 年に対し戦後は最高でも 500 ton/ 年を超える年は 稀であり , 最近 10 年間は 300 ~ 400 t 。 n / 年である。 ワカサギは上川と砥川の 2 か所にある採卵場が , 冬 ~ 早春期 に溯上する親魚を捕らえて採卵 , 人工受精し , 毎年 10 億粒以上 に及ぶ卵を湖に放流しているので , 産卵場となる流入河川の大 半が汚染されても , 資源補充の点で今のところ問題は起きてい ない。しかし , ナマズ , オイカワ , ハゼ類などのような移殖放 流の行われない魚種は , 比較的汚れの少ない流入河川の河口部 などに , 15 年ほど前から産卵造成地を人工的に設け , 資源確保 をする必要に迫られるほどになってきた。 図 5 ー 1 1 オオクチバス 第 5 章湖沼の汚染ー諏訪湖を例として 2 更

6. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

てー中腐水性よりー中腐水性の範囲に入る汚濁河川になっ た。そして 1972 年には大部分の河川がー中腐水性から強腐水 性の高い汚濁水質を示すに至り , わずか 10 年間に , いかに流入 河川が汚されてきたかが分かる。 いま , 水質階級別に各河川の流入量を合計して , その経年変 化をみると表 5 ー 4 のごとくである。 1960 年代の初期には , 貧 腐水性の水量は全河川流入量の約 40 % を占め , 中腐水性は 51 % , 強腐水性は 8 % であったものが , 1966 年には貧腐水性は約 8 % に減り , 中腐水性は急増して 84 % にもなる。 1970 年代初期 には貧腐水性は 0 % , 中腐水性は 60 ~ 70 % , 強腐水性は 20 ~ 30 % に達し , 異常な水質の汚濁化の促進ぶりがうかがわれる。 うした流入河川全水量の約 50 % がß-ms で占められる間は , 湖 の水質は同様なß-ms を示したが , a-ms の流入量が約 60 % を 占めるようになると湖の水質も← ms を示すまでに至た 、一つ 0 表 5 ー 4 諏訪湖流入河川の汚濁化に伴う汚濁水流入量 ( % ) の 経年変化 生物学的水質階級 ß-ms a—ms 45.3 8.9 53.8 29.3 54.4 61.9 21.8 63.6 25.2 42.5 36.2 70.8 15.6 68.9 69.7 60.8 16.0 第 5 章 湖沼の汚染ー諏訪湖を例として 279 月年 PS 10.9 14. 1 14. 1 30.8 22.8 23.2 イ 4- 戸 0 / 《 0 ワ 0 -8 ー 0 ・ / 0- 0- 0- 0- っ 0 つ」 0 ) 00 ^. 0 【・ー 8 -8 ワ 1 ワ】ワ】 -4 ・ 8 0 0- - ュ・ 8 0- 11 11 、 1

7. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

ヒガイ ( コイ科 ) 自然分布では西日本の湖沼や河川にみられるが , その他の地 方でみられるのは琵琶湖からの移殖によるものらしい。きれい な水域を好み , 流れのゆるやかな河川や , 湖沼の浅い砂礫のあ るところに集まる。食性は動物プランクトン , 水生昆虫 , 有機 質のものなどである。温水性であるため冬は深いところで休眠 をする。 2 ~ 3 年で成熟し , 4 ~ 6 月頃にカラスガイなど二枚 貝に産卵をする。体長は約 10cm またはそれ以上になる。ロひ げは短い 1 対があり , ロは小さく下向きである。体色はうす黄 色か枯葉色であるが , 6 は生殖期になると顔面がうす紅色にな る。食用にも利用される。 アプラハヤ ( コイ科 ) 河川や湖沼などに広く分布するが , きれいでやや冷水域に生 育し , 産卵期は 6 ~ 7 月頃である。食性は水生昆虫 , 付着藻 類 , 有機質のものなどである。体長は 9 ~ 14cm であり , 体色 はうすい黄褐色をし , 体側の中央に縦走する褐色帯がある。ア フ・ラハヤ属にはその他 , 北方に分布するダルマハヤがある。 ウグイ ( コイ科 ) 陸封型と降海型があり , 陸封型は湖沼や河川のきれいな水域 を好むが , 耐強酸性の魚として知られ , 例えば青森県恐山湖の pH 3 ~ 3.6 にも生育している。雑食性であり , 水生昆虫や水面 に落ちてきた小動物 , 植物の葉や根の破片などを食べる。生後 2 ~ 3 年で成熟し , 水温が 13 ~ 15 。 C の時期に産卵をする。産 卵のため河川に生息するものは上流域に移動し , 湖沼に生息す るものはこれに流入する河川に溯上をする。産卵期には 6 9 と もに体側に赤色の縦帯の婚姻色が現れる。地方によってはハ ヤ , イダ , マルタ , アイソ , アカウオなどの呼び名である。食 用としても利用される。 第 3 章生物の観察とその調べ方 ー 37

8. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

2 諏訪湖の湖沼学的特徴 諏訪湖の成因は , 地穀の変動・断層などによりできた諏訪盆 地の低部に湛水したものである。流出河川の天竜川の河床のは げしい浸蝕 , 徳川時代の洪水防止のための天竜川出水河口附近 の掘下げ , 湖中への山崩れや河川による土砂の搬入に伴う堆積 物の増加により , 湖の深さは著しく減少し , 面積もまた縮小し た。そして , 19 世紀末には中栄養的な要素を多少持ちながら , 全体としては富栄養湖としての性格を示しており , 湖の遷移系 列からすれば老年期に達している。 標高 759m の高地にあり , 13. 3km2 ( 1911 年 14. 5km2) の面 積に対して最大深度 6. 5m ( 1904 年には 7. (m), 平均深度 4. 5m という浅い湖である。大小 26 本の河川が流入し , その流域は 512km2 と広大なものであるが , 流出河川は天竜川ただ 1 本で ある。そのため , 湖内に生息する生物群集が生産する有機物の 増加・蓄積と , それの分解による栄養塩類への回帰速度が大き く , しかも流入河川による栄養塩の搬入が大量であるので , 湖 の生物生産はますます増大し , この湖は元来が富栄養化が急速 に進行する宿命をおびていた。 図 5 ー 3 諏訪湖 27 ィ 2 諏訪湖の湖沼学的特徴

9. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

第 5 章湖沼の汚染ー諏訪湖を例として 諏訪湖の表層水の溶存栄養塩濃度および塩素イオン濃度の変遷・・ ・ 276 諏訪湖の代表的流入河川の夏季の溶存栄養塩濃度の変遷・・・ ・ 276 全流入河川から諏訪湖へ入る 1 日の BOD 負荷量・・・ ・ 276 諏訪湖及び流入・流出河川・・・ ・ 277 諏訪湖流入河川汚濁の終年変化・・・ ・ 278 諏訪湖流入河川の汚濁化に伴う汚濁水流入量の経年変化・・・ ・ 279 諏訪湖の夏季表層水の植物フ。ランクトンの優占順位と現存量 の変遷・・・ 諏訪湖の透明度の変遷・・・ 諏訪湖の夏季成層期における溶存酸素量の鉛直分布の終年変化・・・・・ 283 諏訪湖の夏季の大型水草の優占順位と現存量の変遷・・・ 諏訪湖の夏季の動物フ。ランクトンの変遷・・・ 諏訪湖の夏季の底生動物の優占種と個体数の変遷・・・ 諏訪湖の主要漁獲種と量の変遷・・・ 第 6 章湖沼生物の保護 諏訪湖の栄養度による分類・・・ 湖を富栄養化させないための許容負荷量と危険負荷量・・・ 諏訪湖の形態の現状と埋立年度・・・ 昭和 44 年以後の諏訪湖のしゅんせつ土砂量・・・ 諏訪湖における水生植物の分布域の変遷と主要種の分布・・・ 諏訪湖魚類目録の経年変化・・・ 諏訪湖の移殖種の放流年次経過・・・ 諏訪湖における移殖放流魚貝種と最初の移入年・・・ 諏訪湖貝類目録の経年変化・・・ 投網法による魚類の現存量 ( 生重量 ) ・ △ 蔵王御釜 ・ 281 ・ 282 ・ 284 ・ 286 ・ 288 ・ 290 ・ 295 ・ 295 ・ 298 ・ 299 ・ 300 ・ 304 306 ・ 308 ・・ 309 ・ 310 主な図表・写真さくいん

10. 自然科学への招待6 湖沼の生物観察ハンドブック 湖沼の生態学入門

タモロコ ( コイ科 ) 池沼やきれいな河川に生育する。水生昆虫や動物プランクト ンなどを主に食べるが , 水草なども食べる。 4 ~ 7 月頃 , 河川 の小石や木片 , 水草などに産卵をする。体長は 10cm になり , ロひげが 1 対あり , 体は灰色であるが腹側は白色である。体側 の中央に青色の縦走帯がある。モロコ属にはこのほかに , 自然 分布で西日本にホンモロコ , イトモロコ , テメモロコがいる。 ハス ( コイ科 ) この種の魚の自然分布は中部地方に限られるようである。琵 琶湖や淀川水系 , 三方湖とその水系などに生育する。満 2 年で 成熟し , 5 ~ 6 月に産卵期をむかえる。湖沼では , 水温の低い 時期は沖合の底に潜んでいるが , 水温が高くなる時期には湖岸 寄りにみられ , 産卵期にはその流入河川に溯上する。動物質を 好み , 小魚や水生昆虫を捕食する。体長は 30cm に達し , 6 は 生殖期になると , 背側は紫青色を , 体側は全体がオレンジ色を 帯びる。 ワタカ ( コイ科 ) 琵琶湖と淀川水系の魚である。冬期は深い水底にいるが , 4 月頃から岸よりで群泳をする。 5 ~ 6 月の降雨の増水時に湖の 入江や水田に入り , 産卵をする。雑食性で , 水草や冠水した陸 生植物なども食べる。体長は 20cm を超え , 体は灰色で腹側は 銀白色に輝き , 体側のうろこのふちには小さい黒色斑点がある。 ソウギョ ( コイ科 ) 中国原産で河川や河川につづく湖沼に棲み , コイに似ている がロひげはなく , 背びれの基底が短いので区別しやすい。日本 では利根川で繁殖が認められているにすぎず , 各地で見られる のは稚魚を放流したものである。成長がいたって早く , 5 年で 80cm 以上に達し成熟する。藻類や水草をよく好んで食べると ころから名づけられたが , 雑食性の魚である。水草の除去に利 用されている。 第 3 章生物の観察とその調べ方 9