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54 第 2 章自然史系博物館のすがた 色 , ビデオなど現在の多様な手法を使えば無理ではないと思われる . よりくわ しく調査・研究しようとする人には資料室を公開する , 学芸員が相手をするな ど別な対応をしたほうがよい . 開館以来 30 年近く , さすがに古びて傷みも目につく . 近い将来に新しい展 示に替えられることを望みたい . 公立にしてはめずらしく独立採算とのことで , なかなかむずかしいかもしれないが , ぜひ実行してほしい . この館のさまざま な活動は学術委員の方々の協力のもとに行われている . 大学 , 高校 , 中学の先 生方を含め , 多数の方々がそれぞれの分野で協力されている . これは研究・普 及活動に大きな力といえよう . 研究報告などの刊行物があり , 特別展は地域の テーマで年 2 回 , 学習会は 5 月から 2 月の間に 8 ー 9 回 , その他 , 友の会活動も あり , 活動は盛んである . 田口線が廃止になり , 鳳来寺山パークウェーができて , 参道を利用する人が 減り , その影響が博物館に現われている . また , 過疎の波がここ鳳来町にも押 し寄せている . しかし , 館の方々の努力はこの館の存在を強く印象づける働き をしている . 訪ねてみればなにがしかの感興を覚えることができるのである . 東海自然歩道が近くを通っていることもあり , 自然愛好家が途中ぜひ立ち寄 る場所となるよう , さらに充実してほしい館である . 蛭川村長島鉱物陳列館 ( 長島コレクション陳列所 ) 岐阜県恵那郡蛭川村奥渡 蛭川村は花崗岩を石材として採掘していて , その花崗岩中のペクマタイト ( 巨晶岩脈 ) から多くの鉱物を産する . 1965 年 ( 昭和 40 年 ) 9 月 , 隣接する中津 川市出身の鉱物学者 , 故長島乙吉氏より鉱物標本約 1000 点が寄贈され , これ を展示するために開館した ( 図 2.25 ) . 120m2 の展示室である . 現在は郷土資 料館と一体で運営されている . 岐阜県東部の有名な観光地恵那峡の対岸にあり , 村立の休養施設である紅岩 山荘に隣接して位置し , 山荘の管理下にある . 岩石と鉱石 , 鉱物を分類展示している陳列ケースに並べられた標本はそれ自 体貴重なものであるが , たんに並べられているだけで説明もなくわかりにくい . 最初に展示されて以来 , 時間がたっているせいか , 整理は悪く管理は十分でな
2.5 郷土博物館 ④港をつくる・・ ( 3 ) 海と船・・ ・・・自然史 + 歴史 ・・・科学的側面 ア 図 2.43 名古屋海洋博物館のパレオパラドキシ 89 このうち「海と船」には海洋 , とくに海底地形 , 資源などが含まれている . 「港をつくる」は「伊勢湾の生い立ち」が大きいテーマとして選ばれ , パレオ パラドキシアの復元ジオラマがつくられた ( 図 2.43 ) . この種のジオラマは日 本ではじめてつくられたものと思われる . この他 , 地下地質 , 赤潮 , 移入動植 物 , 渡り鳥などが含まれ , とくに伊勢湾台風は , 自然と人文の両面から見て名 古屋港に欠かすことのできないテーマとして , 重点展示の 1 っとなった . この間 , 名古屋港を考える会はシンポジウム , 市民のつどいなどを開き , 般市民の考えを展示に盛り込む努力をした . そのこともあり , 委員の深い議論 の中で海洋博物館が狭い意味のそれでなく , ふくらんだ内容をもっ館となった のである . 開館して 7 年あまり , 多くの来館者があり , 館は活動的である . その裏には 館員のたえなまい努力がある . とくに PR 活動は東海地方のみならず中部・近 畿の各県に及び , その結果として西は佐賀 , 東は北海道から小・中学生が遠 足・修学旅行で訪れている . これは大切なことの 1 つである . 資料収集は地道に行われているが , これからである . いつほうでは行事が多 い . 港の PR 活動と一体の面もあり , 各種のイベント , 特別展 , ゼミナール , ポートウォッチング , 映画会 , コンサートなどが行われている . 残念なのは専門職としての学芸員が少なく , 研究面がなおざりにされている ことである . 親団体である名古屋港管理組合から移動で人が派遣され , それぞ
102 第 2 章自然史系博物館のすがた 図 2.51 秋田大学鉱業博物館展示 展示は 3 階にわたっている . 1 階は地質・岩石・鉱物・化石がテーマで , 多 岐にわたっている . 2 階は鉱物の分類 ( 成因・化学型・結品構造などによる ) が 中心で , 宝石・貴石と鉱石がある . 3 階には石炭・石油 , 採鉱・ポーリング関 係などの資料が並べられている . 全体としてやや統制がとれておらす , また静 的である . 材料が材料であり , 展示の仕方もクラシックであるため , 落ち着い てはいるが強く訴えるものがない ( 図 2.51 ) . 展示室は円筒形でらせん階段で上がってゆく . モザイクの床は美しく , どこ かヨーロッパの美術館へでも行ったような気がする . 研究館には工作室 , 資料整理室 , 薄片製作室 , 標本収納室 , 研究室があり , 本館 3 階の一部は講堂になっていて研究・教育施設としての博物館の必要なも のを全部そなえている . この館の特徴の 1 つはそのコレクションであろう . 鉱物・鉱石関係の資料の 中には現在手に入らないものも多いと考えられる . それは 1 つには , 日本の多 くの鉱山が廃山に追い込まれてしまったからである . この大学の出身者の多く は , かって日本の鉱山をリードした人たちである . 寄贈されたものを含め , の博物館の収蔵品は貴重なものである . 問題は , 施設と「もの」が十分に活かされていない点ではないだろうか . 予 算上の裏づけがされていないこと , 専任の研究職員がいないこと , 人員の少な いことなどによって十分な活動ができないように見うけられる . 日本ではめす らしい設備・資料の整った大学博物館であるから , 教育だけでなく , 研究の面 でも利用されたら , 成果が上がるであろう . 「活性化」が今後の課題であろう .
112 第 2 章自然史系博物館のすがた 8 つの機能をもつ 科学技術の進歩によリ自然環境が急速かっ著しく変化し ていく現代社会にあって、自然の本買や生命のさを学び、 自然と人間生活とのかかわりについて理解を深める必要性 は日増しに高まっています . 身のまわリの自然に関して豊 かな感性を育てながら . 間近に迫った幻世紀に向けて、自 然と人間が共生する社会を例造していくために、新しい博 物館は、開かれた情報発信基地をめざしています . 解史など、飛新の 生物の世界 . 地球の 展自然 . 環境とくらしい - 庫の自然 . 人と 解説します . 研究夜果をしとに 新しい博物館 この博物館は新しい生涯学習の場として . 徒米の 4 つの 機能 ( プルー ) に加え、 4 つの新しい機能 ( ビンク ) を特 色としています。魅力ある展示や県民の立場に立った評及 教育活動を行いながら、自然環境や都市環境についての研 究を進め、幅広い分野にさまざまな提言を行っていきます。 囃 普 及 . 教 講演会やセミナー を催しふ広報誌・ 研究紀要など発行す るはか、博物館の 新しい活法を ジ ン′ ン 学間上責重な 資を収集し、 だれにでも 使えらように 整備・保管します . 貴重な野生生物や 絶減寸前の生物種の 保護・増をはかリ、 環境保全・創造に とりくみます . 究 ク タ : ク 地球上の日然物や 2 案・提をしますを 利用などに関して . 自然や自資源の保全、 住まいと自然との関連 活動する研究者集団」は . 「頭脳を資本として ンング ? ンク 基本機能です . 機能にかかわる 博物館のすべての 関する研究など、 田劇都市・公園市構思に 生態系に関する調・研究、 交 フー ノ、 ・ク 学会活動・研究会・ 同研究などを 積極的に行い、 他の博物館・研究所・ 大学などと交を 深めていきます。 県内の動物 . 地質 . 化石、自然景製 などや収蔵品などの 情報が蓄積・整理され、 たれもが自山に 利明できます一 図 2.57 兵庫県立人と自然の博物館リーフレット この博物館で気になることは次の点である . を行い , データバンクとしての役目を果たそうとしている . 然保護・系統保全 , 環境問題 , 住まいと自然を活動の中に取り入れ , 研究活動 トの面では , 「人と自然ーーグローバルの立場で」をモットーに , 生物ーーー自 別棟に収蔵庫 , 研究・育成温室 , 昆虫網室 , 実験圃場をもっことである . ソフ この博物館の特徴を見てみよう . ハードの面では情報センターをもっこと , し・進化 , 最後が地球規模でとらえた自然の発達史である . 人と自然のかかわり , 人の立場からの自然 , それとのかかわり , 生物のくら ④生物の世界 , ( 5 ) 地球 , 生命と大地からなる . 兵庫県の自然から始まって , ( 1 ) [ アプローチ ] 神戸から電車で 1 時間弱かかる . 不便ではないか . ( 2 ) [ 建 よいか . ( 3 ) [ 動 物」 線 ] 博覧会跡利用の使い勝手はどうか , 3 階から 1 階へのコースはよいか . 建物ー展示のバランスは 管理室などが 4 階にある
第 2 章自然史系博物館のすがた 図 2. 国立科学博物館の前庭 この他 , 筑波実験植物園と付属自然教育園 ( 東京都港区 [ 職員 ] 管理職 : 35 , 研究職 : 51 , その他 : 63 , 合計 : 149 名 . 白金台 ) がある . の建物 : 10583 m2, 46 学芸員講習などはその方向に沿った企画として歓迎できる . ードし , 全体のレベルアップをはかるという視点に立ってほしい . 最近の をもってほしい . ただ国立であるから , 大きいからという意識ではなく , 他館 日本を代表する自然史の博物館であるから , いろいろな面でリーダーシップ リーダーシップ る . いくつかの点についてコメントしておく . 館の性格 , 規模 , 運営など , 他の自然史の館と直接比較できない博物館であ [ 入館者 ] 約 70 万人 , 個人と団体の比率はほば 2 対 1. [ 予算 ] 約 21 億 1000 万円 , 歳入 ( 入館料ほか ) は約 1 億 2600 万円 . [ 普及・教育 ] 特別展 , 移動展 , 講座 , 講習会など多数 . 示 ( 日本人の生い立ち ) がある . テーマ展示と分類展示の 2 本立である . あり , 自然史館 ( 4 号館 ) に動物分類展示 , 植物分類展示 , 地学展示 , 人類展 ー 1 , 2 ( 地史・古生物 ) 」 , 「適応と進化 -1 , 2 ( 動植物 ) 」 , 「日本の動植物」が [ 展示 ] 1 ー 5 号館に分かれる . 自然史部門は本館 ( 1 号館 ) に「生物の進化 [ 出版物 ] 研究報告 , 専報の研究関係の他 , ガイドブック , 普及書など多数 . [ 資料 ] 標本 : 1391680 点 , 図書 : 66897 点 , 雑誌 : 7376 種 ( 1986 年度 ) . 他に教育普及部がある . [ 組織 ] 研究部は動物 , 植物 , 地学 , 人類 , 理化学 , 工学に分かれ , その
5.5 博物館はどこへ行く 表 5.1 新設博物館のデータ 207 面積 全体 自然史 総工費 全体 自然史 単価 ()2 当り ) 全体 自然史 最大 35000 2903 最高 2700 万 160 万 最高 1304 869 最小 最低 300 300 最低 30 90 38 197 平均 (m2) 1935 870 平均 ( 千円 ) 1771024 526676 平均 ( 千円 / m2 ) 543 424 ると 2 : 8 , 極端にいえば 0 : 10 も出てくるかもしれない . 物館活動をする . 一過性の見学施設で , 特別展 , なにかの行事のときに住民 る . 1960 年代以降 , 多くっくられた . 学芸スタッフがいて , いろいろな博 [ 第 2 世代 ] 希少資料だけではなく , その他も含めて資料を積極的に公開す くは観光地にあり , 展示以外の活動はしない . 宝物館・記念館などで , 希少価値のある資料 ( 宝物 ) を保存し , 展示する . 多 [ 第 1 世代 ] 保存中心で , 1960 年代末までの博物館の大部分がこれに属する . に変化してきているとする . 介しよう . 1 つは時系列でとらえたもので , 博物館の活動の内容は時代ととも 伊藤 ( 1991 ) はすぐれた視点で博物館をとらえ , 解説している . その概要を紹 未来がかかっている . ことが大切である . 博物館は蓄積であり , それをいかに活かすかということに とであろう . 硬直した姿勢では問題は解決されないだろう . 最後に積み重ねる 動を展開することである . 次に時代の変化や社会の要求にソフトに対応するこ である . 各館が個性をもっことである . 他と違った特色を出し , ユニークな活 おきたい . 3 つの基本要素と 4 つの機能について変わることはない . 後は応用 それではこれからどうしたらよいか . 第 1 に基本と原則はしつかりおさえて と「動」 , 「自然」と「ハイテク」 , 「伝統的」と「改革的」などになるだろう . 可能である . 一般化し対置してみれば , 「古いもの」と「新しいもの」 , 「静」 といった両極化が生まれてくるだろう . 自然のものと人工のものという対比も 展示について見れば , 「もの」と「レプリカ」 , あるいは「もの」と「映像」
50 第 2 章自然史系博物館のすがた 2 階の学習室では化石のクリーニング ( 整形 ) などの実習も行われているとの こと , このような活動を続けてほしいものである . 規模の小さい行政体のつくる小さい博物館では , 時間が経過するとしばしば 活動が停滞し , 来館者が減ってくる場合がある . こうなると悪循環が始まって どうにもならなくなる . この館は化石および博物館の専門の方が関係されてい るようなのでそんなことはないと思うが , 2 階展示室の問題の解決とともに これからの課題としてそうならないよう取り組んでほしい . 長野市立博物館茶臼山自然史館 長野市茶臼山 長野市には 1981 年 9 月に完成した市立博物館があり , 自然・歴史・民俗か らなっている . これとは別に動物園 , 植物園 , 恐竜公園が市内の茶臼山地域に あり , 1985 年にこの近くに自然史館が誕生した . 面積 650m2 で , 地球の歴史 をテーマにしている . コンパクトな展示スペース ( 242 (2) をもち , 入館者年間 7000 人 ( 1988 年 ) ほどの小さい館である . 職員は 4 名である . 本館での自然の展示は , 全体の導入部にある「自然」と , 最後の「自然とと もに」の両方にある . 前者では自然の生い立ちと地震・火山・災害 ( 洪水や地 すべり ) がテーマになっており , 「自然とともに」の部分とともに自然と人間の かかわりを強く打ち出している . この本館にも自然担当の学芸員が 1 名いる . 茶臼山自然史館は地球の歴史をテーマとしているので , 本館と直接関係がな いといえばそれまでだが , やはり共通することはあるようである . 本館と自然 史館がそれぞれ別であると考えないで , 連携しての活動があったほうがよいと 思われる . 両方を担当される専門主事がおられるので杞憂にすぎないかもしれ ないが , 両館を見たかぎりでは , 雰囲気は少々違うように感じられた . この館の近くにある恐竜公園は , この種の野外恐竜模型 ( 強化プラスチック 製 ) のはしりで , 数も多い ( 図 2.22 ) . 早い時期につくられたせいか造形はベス トとはいかないが , 数も多くバラエティに富み , おもしろい . 地すべり地茶臼 山は土地の利用がしにくいため思いっくことができたとのことであるが , 現在 の恐竜プームをはからずも先取りしたことになる . 篠ノ井駅前には恐竜の模型があり , 「恐竜公園へおいで」と案内している .
51 2.3 自然史系博物館 図 2.23 野尻湖博物館 図 2.22 恐竜公園 ( 長野市 ) これが自然史館と結びつけば , 博物館への入館者も増え , 活動も盛んになるだ ろう . クビナガリュウ , オオッノジカ , ナウマンゾウなどのレプリカをそなえ , 郷土産の多くの化石の展示があるのだから , 人をひきつける要素は十分にある . 恐竜公園と自然史館 , さらに動物園・植物園と一体化して活動すれば , 全体の レベルも上がるだろう . 長野市を中心とした地域は自然の豊かなところである . 自然史館は , さらに 現在の動物・植物をも含めた自然史の館であってほしい . 化石の多い長野県に は化石の館がいくつかある ( 30 , 49 ページ参照 ). しかし , 動物・植物につい てはむしろ少ない . もう 1 つ意識を高め , テーマを拡げた館は期待できないも のだろうか . 自然保護の問題にまで手がのばせたら , さらにすばらしい . 野尻湖博物館 長野県上水内郡信濃町 1962 年に始まり , これまで 11 次にわたって行われた野尻湖の発掘資料を材 料とする博物館である ( 図 2.23 ). 町立で 1982 年に開館した . 総面積 1236m2 , 展示面積 320m2 で , 資料 45000 点をもち , 学芸員 2 名 , 年間入館者数約 7 万 人という博物館である . 考古部門を含み , 厳密には自然史館ではない . 野尻湖の発掘は 1 つの科学運動である . しかも , 専門家から一般市民まで ,
58 第 2 章自然史系博物館のすがた 図 2.27 「信濃川の自然と生活」展示 ( 長岡市立 科学博物館 ) 同会は博物館を計画・提唱し , 他の団体・市民の協力を得て市立の博物館とし て発足した . 建設費用として地域の企業北越製紙から寄付があった . 市民のっ くった博物館といえるわけだが , 当初は地学・歴史民俗部門はなかった . 自然 史中心の館になぜ考古部門が加えられたかというと , 市内の考古学者のコレク ションが寄贈されたからである . 現在の展示は各部門の展示と , それとは別に「信濃川の自然と生活」がある ( 図 2.27 ). 後者は部門を総合した地域主題のもので , 自然と人とのかかわり を中心テーマとしている . 各部門の展示は地域の資料を中心にそれぞれ特徴を 出すよう努力している . 収蔵資料は約 20 万点 , 昆虫 , 植物が中心である . 各研究室ごとに各種の調 査を行っており , 収集も同時に行われている . 寄贈資料も増えつつある . その他の館の活動として各種の行事がある . 調べる会 , 観察会 , 探鳥会 , 名 前を調べる会 , つくる会 , 講演会など年間 23 回 ( 1988 年 ) にも及ぶ . 出版物に は歴史があり , 館報が 54 号 , 研究報告が 24 号 ( 1988 年 ) となる . 地域に密着して地道な活動が続いている . 展示もむしろ地味で , 特別魅力的 というわけでもないが , 地域についての情報源 , そして情報開示の場として大 きい意味をもっている . 総合博物館として発展させる計画があり , 調査事業が行われている . 近い将 来に , さらに発展した新しい館を見たいものである .