3.3 所有についての要点は次のようにまとめられる . ( 1 ) 収集は理性のみではない . ある . ( 2 ) 打算の外にある . ( 3 ) 「もの」への愛情である . ④所有欲に終わらない . 所有を私有にとどめない . 選び方については , ( 5 ) 私有から公有へ , 個人的意義から社会的意義への転化をはかる . 博物館の機能 心理的には興味であり , 生理的には性癖で 141 ① ( 2 ) ( 3 ) ④ ( 5 ) ( 6 ) ⑦ ⑧ ⑨ ( 10 ) 「もの」の価値は市価と比例しない . 収集は選択である . 「集」は「多」であるが , 量より質である . めずらしいものに執着しない . 自ら選ぶ . オリジナルなよい見方をもっ . 敬けんでなければならない . 不断の収集が必要である . 一期一会 ( 出会い ) を大切にする . 無心に「もの」を見る . と述べている . このような考えに基づく収集の結果として生まれた民芸館の展示品は , 無銘 で , 民衆の生活にかかわ。た , 実用的な , 質素で健康な , 伝統的 ( 国民的ー民族 的 ) で , 工芸的に美しいものであるとしている . その展示は 1 つの技であり , 創作であるとする . 自然のものを対象とし , また , その大部分が公的な機関である自然史博物館 にあてはまらない面もあるが , 収集ということを考えるうえで , 重要な論説で ある . 後で述べる ( 第 5 章 ) 私的コレクションのあり方とも深くかかわ。てくる と思われる . 民芸品を集めるには , おもに購入という形の収集が行われている . 自然史資 料の場合には , 採集がまず第 1 に考えられる . これは , 学芸員が中心になって 行うことであり , その場はフィールドに求められる . 一般の自然史研究の場合
3.2 博物館の基本 場合 , 長い箱型の建物はシンプルでよいのだが , 狭すぎること , とが欠点である . 分館が別にあるのはよいが , 少々不便である . ④面積の不足 幅の小さいこ 139 博物館ができてから時間がたってくると , 必す面積が不足する . それは展示 の内容を向上したいという要求が出てくることにもよるし , 資料が増加して 「もの」を入れるスペースが決定的に不足してくることにもよる . 後者の場合 , 最初に十分に考えないでつくられたケースもある . 収蔵庫の不足は多くの博物 館 , とくに収集活動が活発な館の泣き所である . 瑞浪市化石博 , 豊橋市自然史 博 , 長野市博茶臼山自然史館 , 栃木県博 , 半田市博など例は多い . このことは , 収蔵庫を倉庫と呼ぶようなセンスで博物館の建物をつくること から始まっている . また「展示 = 博物館」といった考えから , その他の部分 収蔵・研究などーーを軽く見る傾向があることにもよる . 新しく建設され る場合 , 増設される場合には , このあたりへの配慮が絶対に必要である . ( 5 ) 展示との整合に欠ける 博物館がっくられるとき , 建物のみが先行して設計され , 建設されることが ある . 時間的な制約があることもあろうし , 建物はお金をかければできあがる ということにもよる . 中に入る展示その他を短時間でつくりあげることはそれ ほどかんたんにはいかないのである . この場合 , 展示 , 収蔵などは建物に合わ せることになる . いかに不便なことか . それは展示をつくるうえのむすかしさ にも , そしてできあがってから後の使い勝手 ( 館のサイドでも見る側でも ) の悪 さにも出てくる . 名古屋海洋博の丸みをもった建物 , 岐阜県博の六角形の建物 はその例であろう . いつほう , 古い建物を利用して博物館にする例がある . 古い民家に民俗品 , 歴史史料などを展示する場合などはよいが , 建物と展示品とがマッチしない場 合がある . 一般に , 自然史資料は合いにくい . たとえば石川県の桑島の里には , 古民家の中に恐竜をはじめとする化石が展示してあるが合わない . ヨーロッパ などでも同様なケースがあるが , この場合はそれほどの違和感はない . 石造り と木造との違いであろうか . それとも西洋建築と日本建築の差であろうか . そ ういえば , 旧神宮農業館は古い木造の建物に , 自然史およびその周辺の資料が ごく自然な不思議な釣合いを見せていた . 「いれもの」と 展示してあったが ,
158 第 3 章博物館の基本と機能 にか行事をやればよい , そしてそれが成功すればよいといった考えがある . そ れは博物館にも , それをつくった行政サイドにも , そして一般の人たちにもあ る . いいたいことは , バランスのとれた博物館活動をしてほしいということで ある . 最近 , 情報サービスということがいわれるようになった . 博物館は本来情報 をたくさんもった機関である . 情報を集め , また , それを出すべきである . 情 報発信源としての機能はこれからさらに要求されるだろう . それに応えるだけ の実力は博物館にあるはずである . コンピュータを使っての作業が多くなるだ ろうが , 大阪自然史博や東山公園植物会館に見られるような , 学芸員や係の人 の受付カウンターでのサービスは消えることはない . むしろ「人」と「人び と」のつながりの場として , より重要なこととして評価されるだろう . 最後に , 博物館は教育・普及という与える立場でなくて , さまざまなニーズ にこたえ , 「人」と「人びと」とがつき合いをするコミュニケーションの場を 提供するものであってほしいと思われる . 博物館の運営 これまで述べたことでもわかるように , 博物館は複雑な構造をもっている . さまざまな要素のからみあった複合体といえよう . 考えてみれば , 「もの」と いう , 考えようによってはなんとも理解しにくいものをもち , 展示室 , 収蔵庫 などさまざまな要素をもった特殊な部分が「建物」の中にあり , 「人」はまた , 学芸員という他にはない職務をもった人が中心に存在している . 機能も多様である . ふつうの維持・運営は行政や企業のやり方でよいであろ うが , 教育・研究の場として異なる機能をもち , しかも大学その他とは違った 運営のしかたが要求される . 教育の面では不特定多数の人を相手に , 「展示」 という特別な施設をもち , 一方では「教育・普及」の行事がある . 研究の面で は「収集」したものを「保存」し , 「研究」するという , これもまた複雑な活 動である . このように博物館は他と違った , まったくユニークな組織体なのである . 基 本的には無料であるべきものという考えもある . 入館料をとっても採算がとれ ることは少ない . 私立の場合は別にその面での手当を考えなければなるまい .
195 5.2 ニウム 独楽博物館 ( 名古屋市 ) など , 他の分野のものも含めて個人コレクションを公開 しているミニウムに相当するものはたくさんある . この運動の原点は「わたくし美術館」運動にある . 東京在住の尾崎正教氏 ( 元小学校美術教師 ) によってすすめられている運動で , すでに「わたくし美術 館」と題する本が 4 巻まで出版されていて , その続きも計画されている . この 本の中には各地の小さい美術館 ( 市立・公立を問わず ) が紹介されていて , ガイ ドブックとして役立ち , またそれぞれの人のコレクションに対する思い入れが 現われている . 尾崎氏の運動の歴史は古い . 戦後早い時期に , 久保貞次郎氏により提案され た小コレクター運動 ( 美術品 油絵でも版画でも を 3 点もとう . もった 人はコレクターであり , 仲間を集めよう ) に発する . この考えを全国に普及し て , 「わたくし美術館」をつくろうというのである . 尾崎氏は版画をもって全 国を行脚し , 多くの人に会い , 「わたくし美術館」っくりをすすめている . そ の成果の 1 つは大分県湯布院町の空想の森美術館で , いくっかの美術館をつく り , 自然 ( 森 ) を復活させ , その中に絵を置こうというむしろ工コミュージアム に近いところまで至っている . この考えは美術品だけでなく , 他のものにも十分応用できる . 自然史の分野 でも同様である . とくに自然史資料の保存・継承の点に注目して , 運動を進め るとよいと思われる . いずれにせよ「もの」を集めることから始まる . なんでもよい , 自分の身の まわりの興味をもつものから始めればよい . 自然は多様である . 都市にさえさ まざまな自然がある . 最初はなんでも手あたりしだいであってもよいだろう . しかし , だんだん対象をしばってゆこう . 昆虫や化石 , 植物などを集めるのも けっこうだし , 鳥や花の写真を撮るのもよい . めずらしいものがあればうれし いし , 美しいものには見とれる . ただ , 気をつけなければならないことは , 自然のものはひとりのものではな くみんなのものであるということである . そして , 最近は開発や乱獲によって 絶滅の危機に瀕している動植物さえある . 化石のようにふたたびつくりだすこ とのできないものはとくに気をつけたい . また , 土地にはみな地主があるのだ から , 許可をもらうようにしたいし , 自然を荒らすようなことは慎まねばなら
第 5 章博物館の未来像 展示 教育 普及 208 究集存 研収保 図 5.17 博物館活動のバランス が参加する . [ 第 3 世代 ] 1980 年代後半から新しく生まれつつある館である . 市民の参加 を運営の軸とする将来型 . 日常的利用が可能な場所にあり , 受身の学習でな く学ぶ力を育てる . もう 1 つの切ロは目的・志向という横の座標でのもので , 表 5.2 に示される . 例として , 地域志向型では平塚市博物館 , 中央志向型では国立 , 都道府県立 , 専門博物館 , 観光志向型では私立 , 第三セクターのものなどで , いわき市石 炭・化石館や江戸深川資料館を例にあげている . 現実として , 1 つの博物館の中にこの 3 つの型が混在するとしている . 教育 事業は地域志向型 ( 学芸員の考えが反映されやすい ) , 常設展示は中央志向型 ( 設置者の考えに基づく ) , 実際の入館者の意識は観光志向型である . この 2 っ の側面から見てどの型が望ましいか , 一概には決められない . それぞれが特色 をもっているからである . 自然史博物館について一般的にいえば , 地域の博物 館は地域志向型で , 第 3 世代型であるべきである . 地域にある専門館は地域志 向型 , あるいは中央志向型でやはり第 3 世代型を目指すべきだろう . 県立 , 大 きい市立の館は中央志向型で , 第 2 世代から第 3 世代へと向かうべきであろう . こで運営などに関することにふれておこう . まず博物館法であるが , すで に述べたように多くの問題を含んでいる . 現実を見すえ , 未来を洞察したとき に , どこが問題かは自ずとわかってくる . 博物館法をよりよいものにするため には , 激しく変わる社会状勢の中で博物館の置かれている立場を正しく認識し , 現場の意見を十分にとらえての対応が必要であろう . 検討されているという改 正がどのようになるか注目したい . 学芸員養成については , 法の問題の他に大 学その他における対応にも問題がある . 力のある学芸員が多く生まれ , たんに
198 第 5 章博物館の未来像 5.3 博物館からミューズランドへ ここで述べようとしていることは 2 冊の本によっている . 上田篤著『博物館 からミューズランドへ』 ( 1989 , 学芸出版社 ) , 石田修武著『職人共和国だよ り』 ( 1986 , 晶文社 ) である . 2 人の著者はいずれも建築家であり , それぞれ瀬 戸大橋架橋記念館 , 伊豆の長八美術館の開設にかかわった人たちである . 分野 は異なるが , 博物館づくりについてのすぐれた卓説ややり方が見られ , 自然史 分野にも共通する側面があるので紹介したい . まず , 倉敷市児島にある瀬戸大橋架橋記念館 ( 通称「橋の博物館」 ) である . 倉敷市は博物館都市で , 大原美術館を筆頭に多数の美術館・博物館があり , 観 光客でいつもにぎわっている . 市の中心からはずれていて , 気がつかない場合 も多いと思うが , この博物館は大原美術館などと違った強烈な個性をもってい る . 上田は上記の本の中で , 拝観主義 ( 見せてやる ) から完全公開へと博物館の姿 勢を変えたいという . そして , 目指すところはミューズランドである . その意 味は環境言語博物館であり , わかりやすくいえば , ディズニーランドのような 観客参加型の側面をもった博物館である . 人間のコミュニケーションには 3 つ の言語がある . 記号言語 ( 文字や話し言葉など ) , 視覚言語 ( 絵 , マンガ , テレ ビ , 映画など ) , そして , 環境言語である . 環境言語は人間の五感全部に訴え るもので , 視聴覚 , 触覚 , 味覚 , さらに人間が参加するという行動も含まれる . このような考えのもとに , 橋の博物館をたんに瀬戸大橋ができた記念物とす るのではなくて , 「世界の橋の博物館」とするように提案して , 上田はこの中 に 4 つのメッセージをこめたという . すなわち , ( 1 ) テーマ ( 橋 ) 博物館である , ( 2 ) ワンルーム・ミュージアムである , ( 3 ) 環境言語博物館である , ④橋宮で あるの 4 つである . ( 2 ) は動線がなく自由に見られるということを前提として いる . 自分の見たいものを選んで自由に見る場というわけである . ④は古い ものをなんらかの形であがめ , 残してゆきたい . それがお宮 ( 神社 ) である . の考えにたって神社のようなパターンで構成する . すなわち , ゲート ( 鳥居 ) → 参道と大鼓橋→境内→博物館 ( 神社 ) と続き , 横に公園 ( 庭と森 ) がっくられる . 新しい橋が無事であれと願うならば , 消えてゆく古い生活 ( 船や島の生活 ) を鎮
5.3 博物館からミューズランドへ 図 5.11 橋の博物館 蒸。を戸 ; ヨトを電ド : 、置 ! 第い第 = ラ第い 201 イ 1 図 5.12 伊豆の長八美術館 築 ) などでもみることができる . 松崎町はまた , 町の風景のつくりかえを試み ている . 橋の欄干のつくりかえ ( 鏝絵をつける ) , 時計塔の復元 , 共通デザイン ののれんの使用などが行われ , さらに町の中心街の広告物や看板を規制し , デ ザインをコントロールすることにまで及んだ . この結果として松崎町はいきいきとしてきて , 観光客も増えてきたという . 小さな美術館が町を変えたといえるだろう . まさに 1 つの発想が次の発想を生 み , 複合して 1 つの別の世界をつくりだし , 町づくりにも成功したことになる . この 2 つの館は , それぞれはっきりした目的をもってつくられた . つくられ 方は異なるが , 独自の考えに基づいたものである . 建物はユニークで目をひく . 全体として個性的であって , しかも人を楽しませるという働きを十分果たして いる . 博物館の専門からはずれた建築家がかかわっているという点でもおもし ろい . このようなっくられ方は注目に値する . 自然史分野への応用もできるは すである . これについては 5.6 , 5.7 で取り上げてみたい .
第 5 章 5.1 工コ、 ミュージアム (ecomuseum) ーー新しい型の地域博物館 博物館の未来像 少々わかりにくい面があるが , ひとことでいえば , (a) 地域の , (b) 現状の とができる . そんな場がエコミュージアムであるとの解説もある . 地域を発見することである . 地域の活動に参加し , 風景を楽しみ , 観光するこ ある地域の博物館を訪問することは , そこの時間と空間をたどることであり , を示すという . 産 , 建物 , 産業など ) を示し , 解説する , ( e ) そのバックにある自然環境の変遷 展示する , (d) ある地域において人間がっくり上げ , 変えてきたもの ( 文化遺 であり , その鏡を呈示する , ( c ) 地域の民俗的遺産を調査・研究 , 収集・保存 , さらに細かくみると , (a) 住民と「行政」がつくる , (b) 住民自身を映す鏡 ④新しいタイプの野外博物館である . ( 3 ) その結果として地域社会の発展をはかる . ( 2 ) 自然と文化遺産を育て保護し , 展示する . を歴史的に研究する . ①地域社会の人びとの生活とその地域の自然および社会環境の発展過程 新井 ( 1989 ) によれば , 工コミュージアムは次のように定義されるという . び上にあげた文献に従って , 考え方と内容を紹介する . 里見 , 1988 ) . フランスエコミュージアム協会のパンフレット ( 図 5.1 ) , およ 日本にも導入されていて , いくつかの報告がある ( 新井 , 1987 , 1988 , 1989 ; ランスのリビエール (). H. Riviére) によって提出された考えである . すでに が , その内容を考えれば「生活と環境の博物館」といえようか . 1971 年 , フ 工コミュージアム (ecomuseum) という概念がある . 日本語には訳しにくい
2.5 郷土博物館 ④港をつくる・・ ( 3 ) 海と船・・ ・・・自然史 + 歴史 ・・・科学的側面 ア 図 2.43 名古屋海洋博物館のパレオパラドキシ 89 このうち「海と船」には海洋 , とくに海底地形 , 資源などが含まれている . 「港をつくる」は「伊勢湾の生い立ち」が大きいテーマとして選ばれ , パレオ パラドキシアの復元ジオラマがつくられた ( 図 2.43 ) . この種のジオラマは日 本ではじめてつくられたものと思われる . この他 , 地下地質 , 赤潮 , 移入動植 物 , 渡り鳥などが含まれ , とくに伊勢湾台風は , 自然と人文の両面から見て名 古屋港に欠かすことのできないテーマとして , 重点展示の 1 っとなった . この間 , 名古屋港を考える会はシンポジウム , 市民のつどいなどを開き , 般市民の考えを展示に盛り込む努力をした . そのこともあり , 委員の深い議論 の中で海洋博物館が狭い意味のそれでなく , ふくらんだ内容をもっ館となった のである . 開館して 7 年あまり , 多くの来館者があり , 館は活動的である . その裏には 館員のたえなまい努力がある . とくに PR 活動は東海地方のみならず中部・近 畿の各県に及び , その結果として西は佐賀 , 東は北海道から小・中学生が遠 足・修学旅行で訪れている . これは大切なことの 1 つである . 資料収集は地道に行われているが , これからである . いつほうでは行事が多 い . 港の PR 活動と一体の面もあり , 各種のイベント , 特別展 , ゼミナール , ポートウォッチング , 映画会 , コンサートなどが行われている . 残念なのは専門職としての学芸員が少なく , 研究面がなおざりにされている ことである . 親団体である名古屋港管理組合から移動で人が派遣され , それぞ
140 第 3 章博物館の基本と機能 「もの」のバランスがとれていたということだろうか . 豊橋市自然史博は完成して日が浅いにもかかわらず増設計画がつくられ , す でに増設が始まっている . 弱点を補うことから始められ , 最終的には倍増する 計画である . その積極さは評価されるが , 全体の調和 , 既存の展示との調和を 考えて進行する必要があろう . とくに , 収蔵 ( 標本・図書など ) , 研究 , 普及な どについての配慮が望まれる . 3.3 博物館の機能 博物館の 3 つの基本的要素を柱として , 博物館は活動する . その機能は「も の」を集め整理・保存する「収集・保存」 , その「もの」の属性を調べる「調 査・研究」 , 一般に公開して見せる「展示」 , 「もの」についての理解をさらに 深めるために , 博物館にかかわる「人びと」に参加してもらって行う「普及・ 教育」の 4 つである . どれもが博物館にとって重要な機能であり , どれかが欠 けてもいけないし , どれかが弱くてもまずい . 「人」が場としての「建物」を 中心にして行うことになるが , これら博物館の機能は内容がさまざまで , 対応 もいろいろである . 実際にどのように機能しているか , 各館の状況をはかって みることにしよう . 収集・保存の意味 博物館が「もの」を必要としている以上 , それを集めることが求められる . 博物館の活動の原点としての「収集」があることになる . 対象が違い , 個人に よる異なる時代の収集なので , 多少のずれはあるが , すぐれた収集論として柳 宗悦 ( 1889-1961 ) の考えを紹介したい . 「蒐集について」 ( 1932 ) であるが , 現在 では「蒐集物語」 ( 1989 ) として公刊されている . 柳は日常雑器の中に美を見つ け , 民芸 ( 運動 , 品 ) という言葉をつくった . その収集品は日本はもとより , 東 洋 , 世界に及び , 質・量ともすぐれ , 日本民芸館のできるきっかけとなり , さ らに波及して各地に同様な民芸館を生んでいる . 収集には 2 つの主要な問題があるとする . 1 つはもち方 ( 所有 ) の問題であり , 他の 1 つは選び方 ( 集める ) の問題である .