お祭り - みる会図書館


検索対象: ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち
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1. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

のいまわしい首筋に唇をおしあて、口ずけをしてあげたのです。 と不意に、荒々しくてきたならしい、獰な怪物の代りに、若く美しい婦人が立って いるではありませんか。そして、こう言うのです。 「ありがとうございます。わたくしが大切にしているものを破壊させる魔法から、あな た様はわたくしを自由にして下さいました。わたくしの名前は、フェスティヴィティ お祭りです。わたくしはクイーン・セレプレーション ( 祝典 ) の娘なのです。すべ ての休日を守るのが、私どものっとめです。生活にあくせくしているひとたちに、気晴 しゃ娯楽を差し上げるのです。古い昔の物事をおろそかにしないようにしながら、時の 流れに道標をしるしていくのです。過ぎゅく時に目盛をつけて、今に楽しいことがある と期待させてあげましよう。人それぞれにかけがえのない誕生日とか記念日とか祝日と かを、私どもが守って差し上げます。調和のとれた、生き生きした生活をさせてあげる のです。客人として、わたくしをもう一度、あなたやあなたの兄上の王国に暮させて下 典 祝 さい。」 の デレクタの若い王は彼女をよろこんで迎え、それから後、皆で末長く楽しく暮したと世 な いうことです。 や 華 このように、お祭りや祝典は、人の心や体のためになるものなのです。休養、褒美、嶂 第 希望、秩序などを与えてくれるものなのです。お祭りがないと、生活が退屈で単調、つ まらなくなってしまいます。でも、どんなに楽しいおもてなしでも、四六時中ではうん

2. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

なぜ人びとは祝典を行なったのでしよう ? なぜお祝いをしたのでしようか。饗宴や断食、そして祝日など、なぜそういうものが なくてはならなかったのでしよう。この問いかけに紋切型で答えるよりも、中世の人た ちにとっては、こんなたとえ話しをしてあげた方がわかりやすかったのです。 昔々のこと、ひとりの年老いた王様が、死に際に、自分の王国をきっちりと半分にし て、二人の息子に分け与えました。新たな若い王たちは、それぞれに同じ大きさの領土 と同じ数の領民、同じだけの家屋や農地を手に人れました。でも、この二人の王国は、 夜と昼ほどに違っておりました。なぜなら、この若い王たちは、どこからみても正反対 だったからです。ひとりは嫉妬深く、よくばりで残酷でした。もうひとりは寛大で、慈 悲深く、心もやさしいのでした。意地悪な王は、″ラボラ〃 ( 労働 ) という国を支配しま した。心やさしい君主の方は、″デレクタ〃 ( 快楽 ) という王国を治めました。 ある年のこと、ラボラ国の意地の悪い王は家来たちをじろりと見わたして、こう言い ました。 「我が民どもは、お祭りや祝典にうつつをぬかしておる。休日にかまけて、予の為に十 分に働いていないではないか。我が王国からすべてのお祭りを無くしてしまおう。これ からは、誕生日も、音楽も、クリスマスも無しだ。」 隣りの王国デレクタでは、寛大な王が領民たちをたのしませることにたいそう熱心で

3. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

聖ジョン (Hans MemIinc の絵から ) トサマーの祭典は、五月祭のお祭りのように、冬の眠りから大地が目覚めたことを ことほぐものです。これらの春と夏の祝日は、大地が青々とした新しい木の葉や草を生 み出したことを祝うものです。早春に萠え出た緑色は、金色に輝いて見えます。ですか ら自然界での最初の緑色は、金色なのです。 トサマーの謎に隠された二番目の疑問に答えるのは、もっと難かしいでしよう。水 は燃えることはできませんし、火は水の中では燃えません。しかしながら、ミドサマ の火が濡れているというのは、火をともしたろうそくやたいまつを水の上に浮かべるの が習慣だからなのです。これらの灯には、未来への願いごとが託されています。もし、 ろうそくをのせた小舟が、池の向こう岸へうまく渡れたら、それに託されていた願いご ともかなえられるでしよう。水に浮かべられたお祭りの灯は、望みを告げ、未来を予言 すると考えられています。 その他のミドサマーの習慣もまた、運命を占うものなのです。その一つは、″聖ジョイ ンの。ハン〃ですが、それは。ハンなどではなく、おいしくて甘い、干した果物です。 マ 未来を予告するものには、他にも、 " 聖ジョンのおとぎり草〃と呼ばれている植物がド 朝ありますが、これはキリスト教の聖徒、洗礼者ヨハネの名をとって名づけられています。 月 ( ヨハネの英語名はジョン ) 彼の誕生日がミドサマ トサマー・イヴ ー・ディなので 章 は、 " 聖ジョンのイヴ〃とも呼ばれています。 第 ところが、この祝日の面白い習慣は、聖ジ「ンとはほとんど関係のない一匹の劇的な一 獣によってよりすばらしいものとなっています。 ドサマーの客の一人が聖ジョージの

4. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

. ィ . ん 聖ジョンのハムニイ 儀典官は、しかるべき中世のすばらしい饗宴のしきたりにのっとって、歓迎の乾杯や その他の宴会を手順通りに行ないます。 最後の料理が出される前に、ファンファーレが″聖ジョンのハムニイ〃を告げます。 客人たちが数えゲームをするのですが、それは " 幾つ ? 〃で始まる質問に対する答えを マーの謎歌を七回歌いながら、ゆっくりとリズミカルに時計廻りに動きます。 緑色は金色だ。 火は濡れている。 末来は告げられ、 ド一フゴンに出会う。 このように、お祭りを始めたり終わらせたりする時には、円くなって行進をしますが、 これがきまりなのです。 七回目を廻り終えると″先頭〃に選ばれた人は″列の最後の人〃の手をはなして、曲 がりくねった行列を導いて火から遠ざかります。それから、客たちは皆、腰をおろしま す。 126

5. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

してみました。そしてフルーツ・フびら、黄色や金色にはサフランとか 中世の休日や祭りに出てくる多く たんばよ、緑色にははつかハセリ リッターのようなごく簡単なお科理 の科理は、テキストの記述通りに作 ほうれん草、はしばみの葉、青色に から、〃ばらの花びらパンなのような るこし」、が、′し、さ 4 ま亠 9 。 たとえば中世の本に出てくる五月複雑なパンの焼き方に至るまての広はヘリオトロープ、タンソール、 紫色にはすみれといった具合てす。 い範囲を取り上げてみました。 祭のジャック・イン・サ・グリーン のいろいろな作り方は、現代の〃ジ 大に現代の科理にも参考になるよ 芸術的なコントラストを生み出 すための気配り ンジャープレッド・マン〃の作り方 うに、中世の台所からのヒントをい くつかあげておきましょ - フ。 あなたのメニューが簡素てあれ豪 に驚くほど似ています。この中世の 華てあれ、甘い物のあとにはびりつと ごちそ - フを再現するには、単にジン ごちそうを美しく色づける楽し さについて スハイスのきいた物を、ポリュームの ジャープレッド・マン・クッキー さ チーフ・コックが科理の芸術家だある肉のあとには軽い新鮮な野菜を、 あざやかな緑のアイシングか、小 ったことを思い出して下さい。果物、色あざやかな食べ物のあとには淡、 な粒をちらした輪飾りをあしらえば よいのてす。 野菜、クリーム、肉などの自然な色色の物をというように、取り合せの よいお献立になるよう心がけて下さ また、そのほかの中世のごちそうの上に、コックは天然の着色料を加 中世のごちそうは、本当にドラ を作ることて冒険する機会を皆さんえて、色あせて生気のない色を生き は持たれることてしよう。というの生きとさせたり、あるいは奇想天外マティックて見て楽しいものてすか ら、見るからに立派なものを一品は なイメージを作り出したりしました。 は、材科を揃えるのはそれほど困難 用音 5 亠 9 るレよ - フ、いがけ 4 まー ) よ - フ。わに てはありませんし、味とスハイスの今日の野菜からとる自然な色素は、 えば一度むしった羽根て再びおおい 変化に富んだ使い方の妙には目をみ中世の食物に用いた着色科を生かし が↓りよ - っ るまの・カ ~ の・り・↓ 6 亠 9 。一 ) こに ~ の、け・る たものといえます。中世の着色科は直した鵞鳥のロースト ( または孔雀 お科理ては、すばらしく多様な舌ざお湯か白ワインぞ花や葉をゆてて作や維 ) などは、饗宴のハイライトと わり、香り、味わいのお科理を用意 りました。赤の着色科にはばらの花して儀式的に供されました。 246

6. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

ジャック・オ・ランタンと広間の大かがり火 / クリスピン王と 、丿ッヾーし 酒盛りをする人たちのプーツの肩帯 / 十二月のスー 一月の聖ジョージ劇 / ソウリングとソウル・ケーキ / 二月のヴ アレンタインと六月のミドサマーの占い / 木の実割りの夜 / り んごの皮むきとアップル・ポビング / クラウディ / アップルろ うそくの行列 第十一一章十一月ー聖キャサリンの日 ラムズ・ウールとキャサリンの杯 / キャサリン・ケーキとウィ ッグス / 円、キャンドル・ジャンプと花火 第十三章十二月ークリスマス 広間のときわ木 / やどり木と″キッシング・ブッシュ″ / ファ スト・フット、ラッキー ードとクリスマスを招き入れる こと / クリスマスのろうそく / ュール・ロッグ / フルメンティ とミルク酒、ユール・ドールズと梨酒 / いのししの頭の行列 / ーへの乾杯〃 / クリスマスの習慣と冬の世界 / クリスマ スのゲーム 〃中央の蜜蜂〃 / クリスマスのゲームの意味と 目隠し遊び / ス丿 ーッパ捜し / 平等な習慣 / ハンプル・。ハ 人の羊飼いの劇 第十四章中世の祭りの再現 ローテーション / 旗のばりと壁掛けによる広間の飾りつけ / 広

7. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

と考える人もいます。あるいは、純粋にキリスト教的な起源を十二の火に見出す人もい るのです。つまり、一つ一つの火がクリスマスの十二日のためのものであり、一番大き い最後の火は、キリスト自身に捧げられるものという意見なのです。また、ある人びと は、十二使徒にキリストを加えたもの、あるいは十二使徒が聖母マリアを囲んでいると ころだと考えてもいます。 おそらくは、これらの説明のすべてが正しいといえるのではないでしようか。異教徒 の神話や豊作祈願の儀式は、しばしばキリスト教徒たちによってとり人れられ、新しい 目的に使われたのでした。ミドサマー・イヴのような春・や夏の祝日などには、ポン・ ファイヤーと呼ばれる祭り火がたかれます。もともとは異教徒の太陽神を崇めるための ものでしたが、このかがり火は、後に、洗礼者ヨハネ ( 以下、聖ジョン ) を讃えるため に使われるようになりました。 中世の人びとにとっては、過去の異教徒的遺産は大切なものだったのです。作物、樹 木、そして動物などの繁殖を祈願する儀式などは、必ずしも迷信や呪いに根づいたもの ではなく、末だ完成されていなかっただけの話なのです。中世の宗教が、このような古 い考え方に真の意義と目的を与え、完成させたといえるのでしよう。このように古くか らの異教の宗教的慣習は、大切にされ、人びとは親しみを感じ、楽しんでもいたのです。 でもこれらにキリスト教的意味が与えられますと、キリスト教の聖者は異教の神に とってかわりました。異教徒にとって人気のあった動物儀式の一つは、雄牛の角の踊り ーオクスホーン・ダンスと呼ばれる、キリスト教のトウエルフス・ナイトの楽しみの一

8. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

モリス・ダンス ロースト・ラム、揚げりんご、かぐわしいハープをびりつときかせたタンズイ・ケー キなど、イースターのごちそうやりんご酒が出されます。 ファンファーレが、広間の人びとに静かにするようにと響きわたります。そして突然、 ステップを踏みならす音と鈴の響きがモリス・ダンサーたちの人場を告げます。黒っぽ いタイツとチュニックを身につけた十二人のダンサーたちが、木靴か木製のタップのつ いた靴 ( 今日のタップダンス用の靴には金属製のものがついていますが、当時のは木製。 リズムを取るダンスにこれをはいたものですーー訳者 ) をはいて、鈴のたくさんついた ベルトをくるぶしにつけ、ひいらぎの輪飾りをかぶり、流れるようなスカーフをつけた 長いまっすぐな棒をたずさえて登場します。 最初に彼らは、優雅な物腰ではあるものの、にぎやかにスカーフをたなびかせながら、 広間をぐるっと歩き廻ります。それから輪をつくり、凝ったふりつけのステップでゆっ一 くりと調子をとりながら、太陽の動きに似たアーチを描き、時計まわりでまわっていきス イ・ ます。楽人たちがシン・ハルや笛、ティ・ハ ー・ドラムで激しい音楽を奏でると、今度はモ 月 リス・ダンサーたちは足を踏みならし、空中に高くジャンプして踊るのです。 章 " モリス〃という名前は、スペインのムーア人のダンサーに源を発しています。でも 第 ダンスの方は、大地の豊饒を祝う伝統的な春の祝典なのです。強烈に踏みならすステッ プと鳴り響く鈴の音は、まどろむ野原の精霊たちを目覚めさせると考えられていたので

9. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

第 14 章 中世の祭りの再現 6

10. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

( あ ざりです。仕事と遊びはみごとに調和がとれていなくてはなりません。ある国民を知り 食て んたいと思ったら、その人たちの祝典を研究するのが一番の早道です。古い昔の文化をほ まを っしんの少し学ぶだけで、かなりのことを知ることができるのですから。偉い指導者の冒険 で施の 指は談や戦争談よりも、祝典や祭りの方が、よほどたくさんの重要な問いに答えてくれます。 に一 9 人びとは、何を美しいと思 0 たのでしようか ? 何がしてはいけないことだ 0 たので . しようか ? ふだんの生活はどんなだ 0 たのでしよう。音色は ? 味覚は ? どんな肌 れざわり、どんな香りを好んだのでしようか ? 年寄りは、若い者と何を分ちあっていた 石らんわ け飲のでしよう ? 高貴な生れの人といやしい生れの人は、どんな接触を保っていたので 分を り物鉱しようか。古い時代の遺産とは、なんだったのでしよう。彼らの文化は過去を大切に、 切み で飲 フらそれともないがしろにしたのでしようか。当時の人たちにとっての尊ぶべき思想とは ? 冖励 8 何が神聖だったのでしよう。気晴しには、何をしていたのでしようか ? のな物 状き貶 過去を再現し、そのよさをわかるようになるためにも、祝典は大切です。中世のお祭 歯大 るりを再現することによって、今日の私たちは、少なくとも四つのことを同時に行なうこ れ。 ぎば とができるのです。 こ呼 のと 茅まず、現代の思想とか習慣、たとえばティーカップの持ち方とか、どんなふうに優雅 引一にひなぎくの花に手を触れるかとか、、高価な宝石の計り方のような簡単なことでさえ、 人その起源に気づかされるのです。それから、祝典についての多くの疑問に答えてくれる 宴、、本をただ読んでいるよりも、それを実生活で再現してしまった方が、はるかに生き生き 祝し足 と学ぶことができます。こうして、失われてしまうかもしれない美しい儀式とか立居振