愛 - みる会図書館


検索対象: ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち
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1. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

ート あるといえましよう。織物から切り取られたり、金属にエナメル加工された赤いハ 型が、洋服の前、あるいは袖の上に縫いつけられたり、ピンで止められたりしますが、 これを身につけている人は「愛」に身も心も捧げているしるしなのです。この愛という のは、ある特定のすばらしい人に対するものであったり、理念としての愛、愛の神、あ るいは、聖ヴァレンタインのような愛の聖人への愛であったり、さまざまでした。 愛の音楽、シイヴァリー 客人たちは、気持が高まってくるような音楽に誘われて、饗宴の広間へと列をなして くりこんでいきます。 そのメロディとリズムは、気分を高め、愛のムードをかもし出すように工夫されてい ます。たとえば、ヴァレンタインのメロディには、鳥の鳴き声を真似たものもあります。 独特のヴァレンタイン音楽としては、結婚式の祝宴の音楽に似た、シイヴァリーと呼ば れるものがありました。楽人たちはクレセンドーと呼ばれるメロディーをホーンでにぎ やかに奏でます。このクレセンドーは行進曲のようなはっきりとした拍子で、しかも強 烈に音を強めて演奏します。この愛の音楽には、聴く人びとにわくわくするようなスリ ルを呼びさまそうとする意図があったのです。

2. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

月桂樹 ラヴ・スリープス ( 愛の袖 ) この他の衣裳の装飾としては、ラヴ・スリープスというものがあります。 中世の衣裳には、ふつう取りはずしのできる袖がついていました。こういう袖は、流 行であったと同時に、食べ物をこぼしたり、汗をかいたりしみになりやすい部分を洗え るという実用的なものでもありました。ヴルヴットや、縫いとりをほどこしてあっ たり、錦織や、毛皮で縁どりをした衣裳も、必要に応じて洗えることは洗えたのですが、 とりはずしのできる袖ほど頻繁には洗えなかったことでしよう。多くの騎士たちが武運 から作られる場合には、永遠なる愛を意味するものでした。時には錦の織物から切り取 られ、ヴァレンタインの衣裳に縫いつけられたりもしました。 もう一つの金色の織物でできている愛の印に、王冠を戴いたの大文字があります。 ふつうは胸にとめられたり、クローク ( 袖無しのマント ) の金属の留め具として使われ たものです。このは愛が持っカ ( の賛辞である「アモール・ウインキット・オムニア m 。「 vincit omnia) 」というラテン語を意味しています。すなわち、 " 愛。 ( アモール ) は、 " すべて。 ( オムニア ) に " 勝つ。 ( ウインキット ) という意味なのです。愛と呼ばれ る情感であろうと、盲目の愛の神キーピットであろうと、愛は、全人類の中で真の冠 を戴いた王者であるということなのです。何者も、愛の力に抗えるほど強靱ではないの です。

3. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

西洋のこぎり草第・、 のこぎり草 この他のヴァレンタインの占いに、ヤロウと呼ばれるのこぎり草を使って行なうのが あります。くじで組んだ恋人同志は、それぞれの相手に、青々としたのこぎり草の小枝 を贈ります。生き生きしているか、しおれているかによって、その愛が忠実であるか否 ). かを予言するのです。もし食事が終るまで、のこぎり草が生き生きと新鮮なままであっ たら、その草が表わす愛は真実であるでしようし、色が褪せてしおれてきたら、愛のカ が不安定で衰えてくることを示しているのです。 夜ののこぎり草、エリンゴ、ピロウ・フェイス のこぎり草の忠実度テストは、時には饗宴が終ってからも、ヴァレンタインの夜通し 行なわれることがあります。 五枚ののこぎり草の葉が床につこうとする人の枕の上にピ / で止められ、その上にロ ーズ・ウォーターがふりかけられます。その葉が翌朝まで元気が良かったら、葉が代弁 している愛が長続きすることを証明し、しおれたり、枯れたりしたら、愛の暗いさだめ を意味します。 夜の占いにはもう二つありますが、それは未来の恋人の正体を明らかにします。エリ

4. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

ばら占い 恋占い ヴァレンタインは、愛について問う時期でもあります。 確かに、愛は人間の最も力強い感情の一つであるとともに、最も不確かなものの一つ でもあります。情熱について真剣に考えている誰もが、時おり、こんな質問を投げかけ るものです。 「どのようにして、本当の愛を見きわめたら良いのかしら ? いったい誰が私に最もふ さわしい恋人なの ? 私が真に愛する人は誰なのかしら ? どこで、いつ、愛する人をデ ン 見つけられるのだろう ? そしてその愛は、果して長く続くのかしら ? そして、どの ン ようにしたら、愛を長続きさせることができるのかしら ? 」 レ このような問いかけに対する答えを見つける方法の一つに、中世では″占い〃を用いア 聖 6 らたものでした。 月 占いは、過去、現在、未来に関する大切な問いに答えを見出そうとする試みでもあり ます。″正しい方法〃が研究されれば、平凡な事柄でも、ちょっとしたヒントや手がか 3 りで答えを明らかにするでしよう。でも、それにはどのようにして読みとっていくかを サマー・イヴでは、恋人が本当に愛している乃 学ばなければなりません。たとえば、ミド しい恋人たちが選ばれます。ゲームは、誰もが。ハ とお開きになります。 ートナーとして少くとも一度選ばれる

5. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

ローズマリー ンゴはエリンギウムの草本、あるいはシー・ホリイとも呼ばれるものですが、若い人び との愛を予言するのにしばしば使われるので、 " 若者の愛。とか " 少年の愛。とも呼ば れています。枕の中に人れられた葉は、眠っている人の夢の中で最愛の人の姿を明らか にしてくれるといわれています。 眠る前に、次のような願いを三回繰り返さなければなりません。 最愛なるヴァレンタインさん 私の願いを聞いて下さい。 夢の中で、私の本当の恋人を見せて下さい。 イ もう一つの夜の占いに、こ 0 けいな形を表わす " ピロウ・フイス。というのがありデ ます。 エリンギウム一種類のものと、あるいはのこぎり草やローズマリーのような ( ープをン とりまぜたものがありますが、それらを幾つかの枕につめこんでべッドの足もとに置いア 聖 ておくと、翌朝までに二回、愛の形で姿を現わします。最初は ( ープの芳しい香りで夢 月 ( と誘われ、愛の夢を見るのです。二回目は、足元に置かれた枕自体が蹴られて折れ 章 曲ったり押されたりするので、形がくずれてしまいます。遠くから見ると、枕が顔の形 第 をしていますが、それこそが愛しい人の顔の輪郭なのです。

6. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

を / 二月の聖ヴァレンタイン・ディの宴会の客人たちは、ペイストリーに包んでレアーに 焼いたロースト・ビーフ、クリームをかけた焼き栗などに舌鼓を打ちながら、愛のムー ドにひたろうと胸躍らせたものです。 この休日のための肉料理や果物は、独特の″愛のごちそう〃ですし、広間の飾りつけ にはラヴ・ランタンというものがありました。衣裳にも、ラヴ・ロット ( 恋結び ) と呼 ばれる宝石や、ラヴ・スリープスと呼ばれるものなど、「愛」を表わす装飾がついてい ました。 音楽も、恋心をかきたてます。また、お互いにペアーを組んで、しきたりにのっとっ たやり方で求愛する遊びもありました。たとえば「レイディ・アン」や「ウィリアム 卿」などのようなゲームでは、結婚相手の役を演じてくれる。ハートナーを選びます。こ の他のラヴ・ポエム ( 恋の詩 ) 、ラヴ・レター ラヴ・プレイ ( 恋の劇 ) なども、聖 / ヴァレンタインを讃えるものでした。 驚くべきことに、聖ヴァレンタインがどういう人物であったか、彼の名前と愛がどの ようにして結びついていったのか、確かなことはわからないのです。わかっていること といえば、少なくとも一二人の聖者が″ヴァレンタイン〃と名づけられているということ です。物語には、二、三世紀の二月十四日に彼らが偉業を行なったとか、死んだとか語

7. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

られています。キーピットやヴィーナスなどの名前とともに、とにもかくにも、この 三人の人物の名前は、「愛」と何らかの形でつなが 0 ていたのでしよう。 ヴィ 1 ナスといえば、伝説上の「愛、の女神であり、翼を持 0 た盲目の少年、キー ピットの母にもあたります。このキーピットは悪戯好きで、人間たちを一目で恋に落 としてしまう弓矢を射るのです。一方、心臓をキーピットの弓矢で射抜かれた者同志 は、お互いに " ヴァレンタイン。 ( 恋人 ) となっていくのです。そしてヴァレンタインと 呼ばれる恋の手紙をとりかわしたりします。二月に行なわれる愛にまつわる儀式は、 ヴァレンタイニングス ( ヴァレンタインのパーティをすること ) として、広く世に知ら れています。 また、聖ヴァレンタインの日は、全世界の人びとが結婚式の日として好む日でもあり ます。ちょうどこの時期、自然界では鳥たちが配偶者を選ぶ頃なので、それになぞらえデ て、この愛の季節を祝ったに違いありません。 レ ヴ 聖 月 広間のラヴ・ランタンと芳しい飾りつけ 広間のヴァレンタインの飾りつけを目にする前に、もう芳しい香りがしてきます。こ 章 、ヾンル、マヨナラ、のこぎり草、そしてべイ・リーフ の豪華な芳香は、ローズマリー 第 5 などから漂 0 てくるのです。これらは砕かれ、ばらの花を蒸溜したローズ・ウォーター の小さなボウルに浮ばされます。そして、少なくとも一つのボウルが各テープルに置かい

8. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

ヘーゼル・ナツツ りんごの皮むきとアップル・ポビング もう一つの愛情占いは″りんごの皮むき〃です。りんご丸ごと一個と、ト / さなナイフ を使います。客人はそれぞれ、りんごの皮を長い渦巻き状のリポンにむき、それを左肩 るいは両方の木の実が大きな音で割れたなら、それは見込みがある愛の証なのです。も しも木の実がただ燃えてしまったら、その愛は束の間に炎と化して燃え上がり、でもす ぐに消え去ることでしよう。一組の男女が木の実を見守っている間に、一つの詩が吟唱 されます。 もしあの方が私を愛しているのなら、 はねて、とんでおくれ。 もしあの方が私をお気に召さないのなら、横になって死んでおくれ。 大きなハロウィーンの集まりでは、木の実割りはテープルのゲームです。くるみとく るみ割りを使い、男女の客人のそれぞれの組が、自分たちの未来を予一言するために、木 の実を割ります。実を取り出す間に、もし殻の半分以上がそのままの形で残れば、その 愛は完全で真実なもの。もし殻の半分以上が粉々に砕けたならば、その愛情も同じよう にもろくはかないのです。

9. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

ヴァレンタインの会話と判じ絵 「 ) ヴァレ一タイの饗宴の会話は、愛に 0 いてでなければならなか「たのです。 2 十熱烈な情愛はしばしば神秘的な強い力を持 0 ていると考えられましたので、ヴァレン タインの宴客たちは不思議なやり方でヴァレンタインの手紙を書いたのでした。判じ絵 十 は、人、考え方、事物を表わしたもので、言葉に置き代えることができるのです。どの 客人も、祝宴が終るまでに、少なくとも一度は、判じ物でメッセージを書かなければな 十 らなかったのです。 十 たとえば、上図のようなものです。 こういうすべてのヴァレンタインの行事は、愛というものが人間の表現しうる最もカ D 強い感情の一つであることを、宴客たちに思い起こさせるものなのです。 十 二月という月は、末だ冬の寒さに凍てついているものですが、それでも春が必ず訪れ 師てくるのを心待ちにする時でもあります。自然界の動物同様に、人びとも新しい愛の季 十 節を祝いあうはずなのです。ですから聖ヴァレンタインの日は、人間が本来生まれなが ら持っている偉大な情熱を、大いに喜びあう時でもあるのです。 fear will you leave heart belongs you. ) beautiful.)

10. ヨーロッパの祝祭典 中世の宴とグルメたち

愛のごちそう さまざまな肉、魚、鳥、卵、野菜、果物、ス。ハイスそしてワインが、愛情を高めると 思われていました。たとえば、孔雀は、優雅な形で食卓に供されます。ローストされ、 再び羽をつけられ、ロの中にしようのうと綿をつめこまれ、火をつけられます。まるで、 生きている孔雀が火をふいているようにみえます。丸焼きのやまうずらやうずらの煮込 みなども、ヴァレンタインの情感をかきたてるものでした。そして宴会の料理の一つは、 がちょうきし 卵料理でなければなりませんでした。鶏の卵にかぎらず鵞鳥、雉、うずら、雀などの他 の鳥の卵も、ロにすると特に官能的になると思われていました。ところが、卵はそばか すのもとになると考えられていたので、そばかすを防ぐと考えられていたアーモンドを 細かく刻んでオムレツに人れて食べました。 また、種のある果物は、「愛」のための大切なごちそうとされていました。りんごは 聖書のエデンの園以来、愛を連想させてきましたし、甘美な洋梨は女神ヴィーナスの好 物でした。ですから、どのヴァレンタインの食卓にも、いちぢくやざくろのような種の ある果物がふんだんに出されたものです。 プラム・シャトル、ハート・ケーキ、そしてクーリング・サラダ 繊細な赤と紫のケーキは、饗宴の大切なごちそうの一つです。プラム・シャトルと呼 ばれ、形は指ぐらいの長さの楕円形で、紫色のプラムや干しぶどうやキャラウェイ・シ