フランス - みる会図書館


検索対象: ゴルフ奇譚集
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1. ゴルフ奇譚集

わが国で初めて編集された十八世紀 編半ばから二十世紀初めにかけての系 統的・本格的なフランス幻想文学選 フランス 集全三巻。第 1 巻非合理世界への出 発一三〇〇円 / 第 2 巻ロマン派の 狂熱と幻影二二〇〇円 / 第 3 巻世 幻想文学傑作選 紀末の夢と綺想二三〇〇円 高度の発達を遂げた超技術文明を背 ベルナール・プラン編 一六〇〇円景に、〈もののけ〉に憑かれた現代 榊原晃三訳 現代 人に焦点をあてた、今日のフランス を代表する幻想・小説のアンソ 。『高速道路の怪』『霊媒綺 フランス幽霊譚 譚』など十二篇を収録。 プルトン / ポーウエル編著有田忠郎訳 ドレミュー編窪田般彌・小林茂・秋山和夫訳 一六〇〇円 西洋歴史奇譚一九 8 円 青い鳥の虐殺 古今の文書を漁り幻想怪異な話を豊富に蒐集 《フランス rn 選》粋な co 小説のアンソロジー プルトン / ポーウエル編著有田忠郎訳 ド・ラ・クロワ著竹内迪也訳 一六〇〇円 続西洋歴史奇譚一七 8 円海洋奇譚集 科学的知見でも解明できぬ不思議ふしぎ物語 異常で怖ろしく、神秘的な海の物語のかずかず。 ◆重版にあたって、定価が変更になることがありますので、御了承ください。 全三巻 窪田般彌 滝田文彦

2. ゴルフ奇譚集

ミス・アンドレット・フロジェ : すでに知られている通り、ウエストロック卿は先頃離婚したばかりであった。前ウエストロ ソク夫人、旧姓名アンドレット・フロジェ嬢はフランスの著名な女流ゴルファーで、五年前にデポ ン・レディース・チャンピオンシップに優勝した経験を持っている。離婚後ゴルフ・リンクスから 遠ざかっていた彼女は、消息筋によれば間もなくゴルフ界にカムバックするもようである。目下の ところ彼女はヨーロッパのサーカス団において虎の曲芸の演目に出演中であると伝えられている。

3. ゴルフ奇譚集

世界の背後につねに出現の機会をうかがって存在しているという考えを明らかにしている点などで、以後のジャ 幻ン・レイ文学の方向を示していると言えるだろう。 作家となるまでの様々の特異な体験は彼の作品の随所に生かされ、ジョン・フランダースのペン・ネーム ( ジ ョンはジャンに、フランダースはフランドルⅡベルギー人に通しる ) で発表された動物奇談物や、キャプテン・ ビル ( ビル船長 ) の名で発表された海洋冒険物などもあるが、やはりジャン・レイの本領は気質にも適った幻想 文学である。カバラ、降霊術、鬼神学、薔薇十字の秘法といった隠秘学 ( オカルト ) 。失われた文明、忘れ去ら れた古代世界、異教神話。異常心理、狂気、悪夢、妄想。 (-or-æ的要素 ( 異次元テーマ、マッド・サイエンティス ミステリーの要素 ( 謎の異常さ、事件の残醋さ、グロテスクさにフランドル ト・テーマ、侵略テーマが多い ) 。 風のユーモアが交錯する ) 。こうした様々のテーマを駆使して作品を発表しつづけたジャン・レイは、ベルギー 幻想文学の最高峰として高い評価を得るに至った。彼の死後、年間の幻想文学のすぐれた作品に贈られる賞とし て、彼の名を冠したジャン・レイ賞が創設されたことも、彼への評価の高さを示す一例と言えるだろう。 中篇に、古代ギリシアの神々が呪法のカで蘇生してくる話を扱った『マルベルテュイ』 ( 邦訳あり ) や、隠秘 学で重要な書物とされる「シュタインの呪文ーを扱った『夜の聖ユダ』などがあるものの、ジャン・レイは本質 的に短篇小説家であった。 ハリー・ディクソン物と言うべきおよそ百篇以上の短篇小説群 ( 「アメリカのシャーロック・ホームズ」の副 題が示すように一種の探偵物だが、ここでも謎ときや犯人探し以上に事件の奇怪さや異常さに重点が置かれてい る。オカルトやの色彩が濃厚でフランスの批評家サドウールは『の歴史フランス篇』でこれらの作品 に言及している ) を別格とすれば、ジャン・レイの短篇はそれぞれが孤立した作品といえる。ところが短篇集に は別の考え方を持っていた。つまり、収められた短篇が個々に独自のトーンを発揮しつつも全体として相互に連 関しあう統一的な書物となることを狙ったのである。

4. ゴルフ奇譚集

訳者略歴 一九四七年生 一九七一年東大大学院修士課程修了 比較文学専攻 千葉大助教授 主要訳者 ドレミュー編「青い鳥の虐殺」 ( 共訳 ) 窪田般彌・滝田文彦編「フランス幻想文 学傑作選」 ( 共訳 ) ・ハルべー・ドールヴィイ「魔性の女たち」 ドフォントネー「カシオ。ヘアの」他 ゴルフ奇譚集 一九八五年八月一〇日印刷 一九八五年八月二一一日発行 お あき やま かず 訳者◎秋山和 発行者高橋 孝加 印刷者田中昭三巧 発行所株式会社白水社 ; 東京都千代田区神田小川町三の二四 営業部〇三三九一 ) 七八一一 電話 編集部〇三三九一 ) 七八二一 振替東京九ー三三一三八 郵便番号一〇一

5. ゴルフ奇譚集

依然として姿の見えないアンドレット嬢の声だけが、雷鳴のようにぐるぐると響きながら移動して 「存していますわ : : : よろこんでお受けします、アンディ うめ : 呻き声をあげながら、ばくは目を覚ました。 終夜灯のかすかな明かり。えたいの知れない怪物が、ばくの顔のすぐ近くに顔を寄せている。ばく は大きな悲鳴をあげた。 それはガラスの眼玉を嵌めた剥製の虎の大きな頭だった。 : ばくは虎の大きな毛皮のべッド ・マットの上にすべり落ちていたのだった。 ☆ その年、ばくは休暇をフランスで過ごしていた。 ランプイ = のレイ ) を車で発 0 て、ゆ 0 くりとドウールダン街道を進み、オルヌ河 ( 第物県」発し 3 に沿ってゆくと、ゴルフ・ ) ンクスが見えた。ゴルファーたちがコースをまわっていた。一見して、 ふつうのアマチュアたちのプレーだということがわかった。 突然、胸が異様にしめつけられる感しに襲われた。パゴダの形をした奇妙な建物が、少し離れて、 道路から引っ込んだ場所に建っているのが見えた。 車を停め、ばくはその建物に入っていった。酒倉係用のグリーンの前かけをしたおやしが無愛想に ばくを迎えた。

6. ゴルフ奇譚集

あらゆる歓楽に身をゆだねることのできた幸福の時期を思い出していた。 ーディングはそうですというようにうなずいてみせた。 「それならきみはこの本のことはよく知っているだろうね」と、グロープ卿はその小型の豪華本を 見せながら言った。 ーディングは微笑んだ。 「フランス人にナポレオンの名を知らないことが許されないのと同様に、ゴルファーにとっては、 キーンゲイズの名を知らないことはまず許されません。しかし氏のその『教程』は : : : 」 ーディングは次第に興奮していった。 話し続けるうちにハ 「 : : : その『教程』は恐るべき厳格なものです。キーンゲイズはいかなる弁解も認めません。ポー ルを見失ったゴルファーは、ほとんどっねにその試合では敗者となります。あまりに容易なハザート に彼は反対を唱えていますし、ポールをドロップするなど、ミュージック・ホールの安芸人の芸ごと 秘のようだと言っています。とにかくべナルティを与える点では、カーニバルのとき道化に投げつけら プれる紙つぶて以上の大盤振舞いなのですからー ーディングに、一 八六三年ものの ク「結構、結構」と、サイラス・グロープ卿はうなずきながら、 ハント・ポートを注いだ。「ゴルフについてはそうだろうが、この素晴らしい書物の著者本人につい ては、何か知ってはいないだろうか ? 」 クロープ卿。ゴルファーというものはゴルフ史上の偉大な名に対しては一 「これは失礼しました、・ : ゴルフ以外のことでその偉大な名にかげりのあ 種の信仰に近い気持ちを抱いております。かりに :

7. ゴルフ奇譚集

ーター勲章を授与させるとかいった話が飛び交うのだった。 しかしそのことはミジェット大佐の心をいたく苦しめていた。というのは、そうした時、同席の酔 漢たちはゴルフ ・リンクスにも、ホールにも、クラブにも、ハザードにも、まるで火星の二つの月の 話でもしているかのように一向に興味を示そうとしなかったからだった。一方で、彼にとってゴルフ という高貴なスポーツは、まさにその瞬間から天上の星のような神々しい輝きを帯びはしめるのだっ 悲しみに打ち沈んだ彼はバーマンに合図を送る。そうして彼のグラスは十杯まで重ねられていくの だった。そんな時、彼の前には、いわば未知の世界への扉が開かれていたのではあるまいか : ☆ アルコール ザ強烈な酒精のおかげですっかり正気を失ってしまっている《タビッシュ》ゴルフ・クラブのメン ーを前にして、ミジェット大佐は眼をらんらんと輝かせ、勝ち誇った手振りさえましえながらとう 大とうと弁じたてるのだった。 「もし諸君に、抽象とか象徴とか人格化といった概念が少しでも理解できるなら、ゴルフはミジェ エンプレム = ットであり、ミジェットこそゴルフそのものであることを認めねばならん。イギリス人は標象として 一角獣と獅子を選び、フランス人は雄鶏を選択したが、もしゴルファーたちが、ことゴルフに関しこ のミジェットを同様に扱わないとしたら、それは不当以外の何物でもない。 。わしはゴルファーとしての自分をわきまえてい 「慢心 ? それとも虚栄心 ? とんでもない :

8. ゴルフ奇譚集

その先に暗く波立っ海原があり、夜が翼を広げて迫ってくるのが感しとれた。 コースに人影はなかった。動くものは何一つ無かった。すべてが凝固してしまったようで、奥行き のあるいわゆる三次元的立体感がなかったなら巨大な版画を見ているとしか思えなかったに違いない。 しかし間もなく誰かがやって来ること、それがフランスのすぐれた女性ゴルファー デポン ( イ . ングラ 脚の ) . レディース・チャンビオンシップで並いるイギリスの女性ゴルファーたちに苦杯をなめさせた アンドレット・フロジェ嬢であることは、わかっていた。 このときこの夢で初めて耳で聞こえる現象に気づいた。何かが吼えているような、はっきりとした、 だが反響のともなわない不思議な : それが何であるか間もなく思いあたった。リン ールの森で何度も聞いたことがあった。あそこの コンスウンド ひるね 《白人屋敷》の近くでは、夕方になると午睡からさめた虎が狩りに出かける前に、よくあんなふうに 吼えていたものだった。 吼え声は少しも気にならなかった。ばくの関心は、やがて現われるはずのアンドレット・フロジェ 嬢に集中していた。 まだ実際に会ったことはなかったが、・ とのスポーツ誌を開いても、ほど良い背たけの、ほっそりと してしなやかそうな体つきの優雅な彼女の写真が載っていたのだ。 ばくはパジャマ姿だったが、これはそう気にならなかった。銀と真珠のラメ入りの黒い絹の。ハジャ マは少しもおかしい所がないし、場違いとも思えなかったからだ。昔、ある有名な中国人から同しょ うな衣服をプレゼントされたことがあったが、召使いだった安南人の少年にくすねられてしまった。

9. ゴルフ奇譚集

ーたちにとっては少なからぬ不快の種となった。 ある朝、いかにも人を馬鹿にしたような滑稽な人形が例の記念標の上に馬乗りにくくりつけられて ーよろしくティー ・スプーンを振りかざした猿の人形で、「七番ホー いるのが発見された。ドライバ ルへの告別と悔恨を記念して、高名なるカーターモール氏に捧ぐ」と書かれた札を下げていた。 発見したキャディーはつまらぬ考えを起こして、それをクラブ・ハウスに持ち帰り、本人に届けた のである。 しばらく前から自分のゴルフが三ホールどまりになっていたのを痛感していたカーターモールは激 しい侮辱を感し、顔を蒼白にさせた。 一方、スヌークスはそれだけでは満足せず、さらに悪質な方法を考えついていた。 こうしてクラブの支配人は、名誉ある紳士アーチボルド・スヌークス氏から、クラブの所有地の一 角、もちろんあの七番ホールを含む一角の権利の主張を通告する一通の書状を受けとることになった のである。 フランスにおいてノートレ・ ノ・ターム大聖堂の塔を盗んだと告発された場合、黙殺するのが至当だろ 一う。しかしイギリスにおいて、法律家から他人と同しように二本の脚を持っていると告発されたなら、 番賢明な人々から、すぐに外科医の門を叩いて片方を切断しておいた方がいいと忠告をされることにな るだろう。 カーターモールは自分の誇りである第七ホールの存在がおびやかされていることを知った。 たしかに十五ャードほど丘寄りに移動させることは可能だったが、そうなればそのホールはもはや

10. ゴルフ奇譚集

ンがゴルフ・ 丿ンクスから、そしてこの世から姿を消したのは、まさしくその年齢だったのだから。 さらに補足的な、しかし一層忌まわしい偶然の一致だが、彼の皮膚は軽い淡黄色を帯びはしめてお り、眼の結膜も黄色が目立つようになっていた。黄疸の症候的診断を下すのは容易だが、その原因と なると解明はかなり難しい。医者は、ウイスキーの飲みすぎと、短期間だが熱帯地方に滞在した経験 と、並外れた美食趣味にその原因を求めていた。 メイヤー自身はよく知っていた。ゴルフが自分の命とりになるのだ。 なんというたわ言だろう ! 今まさに彼の命をむしばみつつあるのは、ゴルフにほかならないのだった。 クラブ・ハウスでいっか誰かがロに出し、すぐに皆から一笑にふされてしまったある言葉を彼は思 い出していた。・「ゴルファーの大部分は、結局は呪いにとり憑かれてしまうのだ」という言葉を : 、こりつかれ メイヤーよ兄しー冫 . = それは正しかった。恐ろしいまでに真実の言葉だった。彼、 ていた。ゴルフの悪霊の呪いに。よく人々は蟻塚や蜂の巣などに悪霊が宿っているなどと言うが、ゴ ルフの悪霊というのも確かに存在し、しかも、それがはっきりと彼に敵意を抱いているのだった。 てきがいしん ある不屈の意志、敵愾心にも似た闘争心、そしてゴルフという高貴なスポーツに対するほとんど動 ン け物的な深い愛情のおかげで、この数年来、彼はその敵意に打ちかってこられたのだった。 トランス 期しかし今、敵の悪霊はまき返しをはかりつつあった。もしその悪霊が、憑依状態にある霊媒者の体 最 から抜け出してくるエクトプラズム ( 霊体 ) のような姿を現わしたとしても、彼は一向に驚きはしな 四いだろう。それに敵の悪霊の作戦は、メイヤーには何もかも明らかだった。 追従者から大仰にも《メイヤー・スウイング》という称号をたてまつられた彼のスウイングは、誰