279 Ⅶ民俗調査参考資料 1970 年世界農林業センサス資料一覧 1 農家調査票 資 料 名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 〔注〕 農家以外の農業事業体調査票 農業集落調査票 林家調査票 林家以外の林業事業体調査票 林業地域調査票 農家名簿 , 林家名簿 照査表 同上を収録した磁気テープ の主要項目を記入したカード ) にしうるよう農業集落調査 , 農家調査および国勢調査 農業集落カード ( 個別の集落ごとにその性格を明らか 林業地域調査新旧市区町村別一覧表 林家以外の林業事業体調査新旧市区町村別結果表 同上を収録した磁気テープ の分類集計結果でなく合計値のみ ) 林家調査新旧市区町村別一覧表 ( 保有山林規模別など の集計結果 ) 林家調査新旧市区町村別結果表 ( 保有山林規模別など 農業集落調査新旧市区町村別結果表 農業集落調査集落別結果一覧表 同上を収録した磁気テープ 農家調査新旧市区町村別一覧表 ( 集落別一覧表と同様 ) 計結果 ) 農家調査新旧市区町村別結果表 ( 耕地規模別などの集 同上を収録した磁気テープ 計結果でなく合計値のみのもの ) 農家調査農業集落別一覧表 ( 耕地規模別などの分類集 農家調査票および林家調査票を収録した磁気テープ ( * 印は保存責任機関 ) 保存場所 農林省 * 農林省 * 事務所 * 市町村 * 市町村 * 事務所 * 市町村 * 市町村 * 市町村 * , 県 * , 事務所 市町村 * , 県 , 事務所 県 , 事務所 * 市町村 * 農林省 * 農政局 , 農林省 出張所 , 事務所 * , 地方 県 , 事務所 * , 農林省 市町村 * , 県 * , 事務所 農林省 * 県 * , 事務所 , 農林省 市町村 * , 県 * , 事務所 県 , 事務所 * , 農林省 農林省 市町村 , 事務所 , 出張所 * 農林省 * 県 * , 事務所 , 農林省 ( 1 ) 保存場所略号事務所 : 地方農政局統計調査部または地方農政局統計情報事務所および北 海道統計調査事務所。 農林省 : 農林省統計調査部農林統計課。 ②調査票とその磁気テープ , 照査表 , 農家名簿・林家名簿の利用には許可が必要なので , 農 林省統計調査部農林統計課農業センサス農村調査班 ( 03 ー 502 ー 8111 , 内線 2515 ) に連絡のこと。 ( 3 ) 出典 : 農林省統計調査部編「 1970 年世界農林業センサス農業集落調査報告書」 21 ~ べ ージ . 197 %
1 村落組織 其代理者ハ名誉職トス」と規定した。この結果 , 各市町村では区長条例を制定 して , 区を設定し , 区長・区長代理をおいた。法にはどの範囲を区とするか規 定していないが , 多くの市町村では大字単位 , すなわち近世の村単位に設置し た。ところによっては機械的に一定戸数で地区割りしたり , あるいは大字内の ムラを単位にしたので , 区と大字 , ムラとの関係は注意する必要がある。なお 戦後の昭和 22 年 ( 1947 ) の地方自治法では , 共有財産 ( 多くは山林 ) をもっ ている地区を財産区として設定した。 なぬししようやきもいり くみがしら 名主・庄屋・肝煎江戸時代の村の長の名称。その下に組頭 ( 年寄・長百 むらかた 姓 ) , 百姓代がいてそれらを合わせて地方三役 , あるいは村方三役という。名主・ 庄屋・肝煎はほば同し地位であり , 使用される地方・藩が異なった。名主は主 として中部・関東 , 庄屋は西日本 , 肝煎は北陸や東北地方で使用された。いず れも領主によって任命され , 領主の支配機構の末端部に位置づけられていたが , 身分や扱いはあくまでも百姓であった。 大区・小区明治 5 年 ( 1872 ) に大区・小区制は設定され , 府県内を数大 区 , その大区の中を数十小区に分けた。従来の町村は小区の中に含まれ , 公的 には行政単位から姿を消した。この大区・小区制は明治 11 年の三新法の一つで ある郡区町村編制法によって廃止され , また郡町村が復活した。これが明治 22 年の町村制まで続く。 戸長戸長は明治 4 年の戸籍法で , 数町村を合わせた区の戸籍事務を担 当する者として設定されたのに始まる。翌年の大区・小区制で大区に区長 , 小区 に戸長が任命され , 行政事務全般の担当者となった。区長は任命派遣されたの 0 = 対し , 戸長は旧村役人力 : ら選任された。小区 0 中 0 = 含まれてしま。た町村 0 = は副戸長 , あるいは用掛カおかれた。明治 11 年の三新法では , 町村が復活し , その各町村に戸長が設置された。はしめ戸長は公選であったが , 明治 17 年以 降は官選となった。明治 22 年の市制・町村制の施行で廃止され , 市町村長に なった。戸長を戸主と混同しないこと。 部落部落は明治初年には単なる集落の同義語として法令上に出てくる が , 明治 20 年にドイツ語のゲマインデの訳語として部落が採用され , 「自治部 落制草案」と表現されたことにより , 行政的意味が付加された。しかし , 一般 化したのは , 明治 30 年代以降で , 特に明治末の地方改良運動の中で , 村落あ るいは区の意味として使用されるようになり , それ以後各種の法令が部落を単 位として組織を設定することを規定したが , そのもっとも明確なものは昭和 15 年 ( 1940 ) の内務大臣訓令「部落会・町内会・隣保班等整備要領」である。 れは「市町村の区域を分け村落には部落会 , 市街地には町内会を組織するこ じかた
3 予備調査と文献資料の収集 その市町村の行政制度の歴史的変遷について資料を集め , その市町村の概要を 把握することである。明治以後何回か市町村の合併が行なわれているので , の際にその合併史を理解しておく必要がある。また市町村の統計類は合併後も 旧町村ごとに集計されている場合が多いから , 民俗調査に役立つ。またこれと 合わせて , 役場の産業課などで各ムラの話をきくのもよい。 このようにして予備調査が終ったら , 各ムラで得ら 予備調査結果の整理 れた資料を整理して最終的に調査地を決定する。また共同調査の場合には予備 調査の結果をプリントして共通の知識としておくことが望ましい。 文献資料の収集このようにして調査地が決定されれば , その調査地を中 心とした , いっそう具体的な資料の収集が可能となる。 ( 1 ) そこで調査地選定の 段階で集めたさまざまな資料のなかから調査地に関連する部分を取り出す作業 が必要になる。その時にできれば郡誌・県史・市町村史・調査報告を含めた参 考文献目録を作っておきたい。 ( 2 ) 次に主要な調査報告にあたって , 必要な事項 はカードにとる作業が必要である。民俗誌的集中調査では一つのムラを集中的 に調査するので , 隣接もしくは周辺のムラについては , なかなか比較しうる資 料を直接集めることができない場合が多い。それを補充するために , この作業 が必要とされるわけである。こうすれば調査するムラを周辺の地域と比較して 位置づけることもある程度可能となる。 ( 3 ) さらにこの段階で参照したい文献資料として官庁の統計資料がある。民俗 調査に利用できる官庁資料の主要なものとして国勢調査・農林業センサス・漁 業センサスがある。国勢調査は大正 9 年 ( 1911 ) から通常は 5 年ごとに実施さ れる大規模な調査であって , 各調査ごとに詳細な報告書が県別 ( 市町村別 ) ・ 分野別に刊行されている。最も新しい調査は昭和 45 年 ( 1970 ) に実施された 第 11 回国勢調査で , その報告書のほとんどはすでに刊行されているので利用 できる。ただ国勢調査の集計単位の最小は市町村であるので , 民俗調査が対象 とする個々のムラの統計を知ることのできない難点がある ( この点はⅡー 6 〔 20 ページ〕で述べるように許可を得て個票を閲覧することによって補うことも可 能である ) 。しかしながら , 国勢調査は男女別 , 年齢別人口 , 産業別就業人口 , 世帯数 , 農業就業人口などについて , 調査地を含む市町村の概要を他の市町村 と同一の基準で比較しうる便利さがある。また世界農林業センサスは最も新し い調査が昭和 45 年に実施され , その報告書もすでに刊行されている。この調 査は「農業集落」を単位として実施され , 「農業集落カード」の形で各農業集 落ごとに集計されたカードが作成されているので , 国勢調査よりも民俗調査に とっては利用価値が大きい。この調査で用いられている「農業集落」の概念は
5 調査地における基礎作業 2 表役場資料一覧 資料名 内容主要 項目 保管場所 備考 1 2 4 5 6 8 8 9 3 市町村勢要覧 壬申戸籍 戸 籍 除籍簿・改製 原戸籍 住民票 役職員名簿 土地台帳 農地買収売渡 台帳 ( 農地改 革 ) 課税台帳・市 町村県民税申 告書 市町村の位置・地理・自然的条件・ 固定資産税額。 与・営業など ) ・村民税・県民税・ 所得額の内訳 ( 田・畑・漁業・給 住所。 者名とその住所・新所有者とその 農地の番地・地目・面積・旧所有 者。 移動の事由・移動年月日・新所有 地目・面積・地価 , および所有権 一筆ごとの字名・番地・所有者・ 長・副議長などの姓名・出身地。 市町村長・助役・収入役・議会議 年齡および番地。 別・生年月日・住民となった日・ 世帯主・世帯員の氏名・続柄・性 項目は現行戸籍にほば同し。 移動。 組・養子離縁・死亡などの身分的 出生地および婚姻・離婚・養子縁 本籍地・氏名・続柄・生年月日・ 出身地・婚入年月日。 檀那寺 , ものによっては婚入者の 年齢・性別・続柄・職業・氏神・ 家主・家族員の氏名・生年月日・ 社寺・観光・行政・地図。 歴史・人口・産業・教育・文化・ 市町村役場 市町村役場 または法務 局。 役場戸籍係 役場戸籍係 役場戸籍係 市町村役場 役場税務課 など。 役場農業委 員会 役場税務課 行政村の統計が 豊富に盛られて 明治 5 年編製。 閲覧には法務局 の許可が必要。 世帯単位に編製。 旧民法下の戸籍 は家単位に編製。 昭和 27 年に編製 ほとんど現在は カード形式。 明治 22 年編製。 共有地もわかる 名寄帳形式のも のもある場合が ある。 農地改革による 土地の移動がわ かる。 毎年つくられる。 〔注〕この他 , 現在の農地移動を知るためためには , 農地委員会への申請書類 , 墓地については墓地台 帳がある。また世界農林業センサスの資料については 9 頁に示した。 歩いて , はしめから作成すると多大な労力と困難を伴うので , 市販の住宅明細 図とか有線電話帳の付図を参照できるところではそれを利用し , そうでない場 合には役場の総務課などに相談してみるのがよい。そこに適当な地図があれば
297 1894 1895 1896 1897 1898 1899 1912 1913 1914 1900 1901 1902 1903 1904 1905 1906 1907 1908 1909 1910 1911 1915 1916 1917 1918 1919 1920 1921 1922 明治 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 大正 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 甲午 乙未 丙申 丁酉 戊戌 己亥 庚子 辛丑 壬寅 癸卯 甲辰 乙巳 丙午 丁未 戊申 己酉 庚戌 辛亥 壬子 癸丑 甲寅 乙卯 丙辰 丁巳 戊午 己未 庚申 辛酉 壬戌 7 民俗調査参考年表 ⑦コレラ流行。⑧日清戦争。 ③狩猟法。 ④河川法。⑥三陸海岸に大津波。 ③砂防法。④森林法。⑩赤刑大流行。 ⑥戸籍法 , ( ⑦施行→ 1915 ) 。⑦民法全面施行。 ③新府県・郡制 ( 府県郡を「法人」と規定 , 府県会および郡会 議員選挙の複選制廃止 , 直接選挙へ ) 。国有林野法。耕地整理 法 ( 旧法 ) 。⑥農会法。 ③治安警察法。産業組合法。 ④漁業法 ( 漁業組合と水産組合の規定 ) 。⑨全国農事会「町村 是調査標準」出す ( これ以後 , 大正初年まで全国各地で村是調 査 ) 。 〇東北地方冷害凶作。 ②日露戦争。④国定教科書実施 ( 第 1 期 , イエ・スシ ) 。 ⑨日比谷焼打事件。〇東北地方冷害凶作。 ⑧勅令「神社寺院仏堂合併跡地ノ譲与ニ関スル件」出る ( 以後 , 神社整理政策が推進される ) 。 ③沖繩県および島嶼町村制 ( 翌年④施行 ) 。 ④水利組合法 ( 普通水利組合と水害予防組合の 2 種設定 ) 。⑩ 戊申詔書発布。 ④沖繩県に府県制施行。耕地整理法 ( 新法 ) 。 ③農会法改正。⑩内務・農商務両次官の通達「公有林野整理開 発ニ関スル件」出る ( 部落有林野の市町村への統一促進 ) 。⑩帝 国農会設立さる。 ④新市制・町村制 ( 市町村長の権限強化 , 市町村組合の設置規 定新設 ) 。 ⑦改元。⑨乃木希典の殉死。 ②大正政変。〇東北地方冷害凶作。 ①桜島大爆発。③戸籍法 ( 翌年①施行 , → 1947 ) 。⑧第一次世 界大戦に参戦。 ⑨内務・文部両省の訓令「青年団体ノ指導発達ニ関スル件」出 る ( 青年団を青年修養の機関とする ) 。 ⑧米騒動。シベリア出兵 ( → 1922 ) 。⑩スペインかぜ大流行。 ④道路法 , 史跡名勝天然記念物保存法 ( → 1950 ) 。 ⑩第 1 回 , 国勢調査実施 ( 以後 5 年ごと実施 , 除 1945 ) 。 ④郡制廃止法 ( 1923 年④施行 ) 。⑤沖繩県にも一般の町村制施 何。
2 調査地の選定 ( 4 ) 「日本民族学会会員による実態調査《地域別》一覧 ( 1964 ~ 69 ) 」『民族学 研究』第 34 巻第 3 号 , 1969 。 ( 5 ) 文化庁編『日本民俗地図・解説書』 ( I ~ Ⅳ ) 国土地理協会 , ( 6 ) 人文地理学会編『地理学文献目録』第 1 ~ 4 集 , 柳原書店 , ( 7 ) 日本歴史学会編『地方史研究の現状』全 3 巻 , 吉川弘文館 , またできれば日本民俗学関係の雑誌 ( 『民間伝承』『旅と伝説』『日本民俗学』 『日本民俗学〔会報〕』『社会と伝承』『民俗芸能』『民俗学評論』 ) や隣接科学の る必要がある。 具体的な特定のムラを調査地として決定するためには一度その地域を訪ねてみ 地選定についての予備的段階における情報はほば集められたことになるので , の候補地を市町村の段階まで絞ることである。こまでの作業をおえれば調査 報が得られたら , 大雑把にきめた地域の中から調査に適当と思われるいくつか 調査地選定の第三の作業は , 上記の作業によって地域についての基礎的な情 など ) があればこの段階で利用しておきたい。 る ) および近世の地誌 ( たとえば『新編武蔵風土記稿』『甲斐国誌』『芸藩通志』 またこのほか各県の市町村合併誌や総合郷土研究 ( 秋田県・山梨県などにあ ( 2 ) 稲垣久恵編『東京大学経済学部所蔵地方史目録』東京大学経済学部 , 1969 。 ( 1 ) 横浜市立大学編『戦後市町村史総合目録』 1967 。 い。郡誌・県史・市町村史については下記の文献目録が便利である。 俗・産物・神社・寺院などが記載されているので民俗調査にも利用価値が大き るようになった。とくに郡誌には地勢・気候・災害・歴史・各町村の戸口・風 た郡誌は , 最近数多く復刻されているので図書館などで容易に閲覧利用でき るし , 明治末期から昭和初期にかけて各地の教育会などの手によって出版され の概況について知識を得ておきたい。県史・府史は多くの府県で刊行されてい も有効な方法の一つである。またこの段階で県史・郡誌にあたって , その地域 に話を聞いたり , 身近にその地方の出身者がいれば , その人から話を聞くこと 探索のほかに , 今までその地方を調査したことのある研究者がいれば , その人 査地 , 調査年などをカードにとっておくことが望ましい。またこのような文献 たってはあらかしめカードを用意して , のちの作業に備えて主要な論文名 , 調 『地方史研究』 ) の目次にも一応目を通しておきたい。このような文献探索にあ 雑誌 ( 主なものとしては『社会学評論』『民族学研究』『人類科学』『法社会学』 1969 ~ 74 。 1945 ~ 68 。 1969 。 0
797 Ⅳ民俗調査の補助技術 1 村方文書の扱い方 ( イ ) 村方文書の所在と利用 村方文書の所在 こでは農村の文献史料として , 江戸時代と明治初年の 村方 ( 名主・庄屋 ) 文書と私文書を対象に考える。前者は地方文書ともよばれ , 村役人が職務上作成したり , 保管したりした公的文書である。後者は農民が生 産活動や経済活動 , 社会生活の必要に応して書き記し , 取り交わした文書であ る。村方文書は , 明治初年の大区・小区制の施行や戸長役場の成立 , 地租改正 などによって , 性格や形態が変わり , 近代の地方行政文書に接続する。 最近は農村史料の調査も行き届いてきて , その所在が明らかなものも多い。 農村史料の所蔵者をつきとめるには , 市役所・町村役場や市町村の教育委員会 に問合せてみるとよい。とくに市町村史編纂機関が成立している場合には , そ こで地域内の史料の所在や内容を掌握している場合が多い。もとより , 調査地 に通している郷土史研究者の紹介をうけたり , 既刊の市町村史・研究論文・報 告書・史料目録があれば , 検討しておく必要がある。 村方文書は概して , 庄屋・名主を勤めた旧家に伝来するものなので , そうい う家を聞取りなどでつきとめる必要がある。こういう家は , 江戸時代にかなり の規模の農業を営んだり , 商業・金融活動を行なったりしているので , 経営帳 簿などのまとまった私文書を合わせて所蔵している場合がある。ムラ所有の , いわゆる区有文書の場合には , ムラの役員の了解や立会いが必要になる。その 他私文書は , 江戸時代より続いている家ならば , 多少とも伝来している可能性 があるので注意したい。 整理と目録の作成かなりの量の村方文書・私文書が出てきた場合 , われ われの調査では文書の全体を整理し , 検討する余裕はない場合が多いが , しか し , 当面必要と思われるものだけを安易に抜き出すことは好ましくない。すで に他の研究者によって , 所蔵文書目録が作成されていたり , 文書が整理されて いる場合には , それを参考にしながら , 必要度の高い部分から検討していく。 ことに過去に当主か研究者によって整理されているものは , 整理された形を尊 重すべきである。部分的な再整理は , 文書全体に混乱をもたらすおそれがある からである。特に役用だんすなどに , 江戸時代の保存状態のまま収められてい る場合は , その保存の仕方自体にも文書伝来の歴史的意義があるので , むやみ
7 民俗調査参考年表 安保条約調印。 ⑦農地法。 200 1952 1953 1954 1955 1956 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1 囲 5 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 昭和 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 壬辰 癸巳 甲午 乙未 丙申 丁酉 戊戌 己亥 庚子 辛丑 壬寅 癸卯 甲辰 乙巳 丙午 丁未 戊申 己酉 庚戌 辛亥 壬子 癸丑 甲寅 乙卯 丙辰 丁巳 戊午 己未 庚申 ⑦離島振興法。⑨町村合併促進法 ( → 1956 ) 。⑩奄美群島復帰。 ① 50 銭以下の小銭廃止。 ④新農山漁村建設総合対策要綱決定。⑥新市町村建設促進法。 ④旧法戸籍を新戸籍に改製。 ⑨伊勢湾台風。 ⑤安保反対運動。チリ地震で陸前海岸に津波。 ⑥農業基本法。 ⑤住居表示法 ( これにより全国的に町名変更進む ) 。 ⑥新潟大地震。⑩東京オリンビック。 ⑦住民基本台帳法。 ⑤沖繩県復帰。
III 民俗調査の方法と基礎知識 こういう法令の規定によって , このムラではこういう組織が作られたというの では民俗調査ではない。そのような制度的な規定をうけつつも , ムラの伝統的 な生活組織としての内容と機能をもっていること , あるいはそのような法制度 によってそれまでの生活秩序が規制され改変されたことを調査せねばならない。 法令や政策の影響を大きく受けているものとしては , ( 1 ) ムラの役職 ( 町村制 の区長・区長代理 , 戦時体制下の部落会長・町内会長 ) , ( 2 ) ムラの内部区分の うち近隣組 ( 近世の五人組 , 明治初年の伍長組 , 戦時体制下の隣保班 ) , ( 3 ) 共 有林 ( 地租改正の官民有区分 , 町村制の規定 , 大正初年の部落有林野の市町村 への統合政策 ) , ( 4 ) 若者組・青年団 ( 明治中期の青年会 , 明治末・大正初年の 青年団の保護育成と若者組の解体 ) 等々がある。 ( ハ ) 基礎知識 あざ 大字・字歴史的には字は古い。近世にすでに田畑の一まとまりを示す地 名を字といっており , それが明治に継承された。明治 9 年 ( 1876 ) の内務省議 定「地所名称区別細目」によれば「字ト称スルモノハ村町中ノ区分ニシテ数十 百筆ノ地ヲ轄スル者ナリ」と規定されている。実際の字は , 近世には大変こま かく分けられていたが , 地租改正に際して再編整理されてずっと数が少なくな おおあざ った。現在の土地台帳記載のものはそれである。字に対して , 大字は明治 21 年 ( 1888 ) にはしめて登場したもので , 同年の内務大臣訓令「町村合併標準」 は町村制施行に先立ち大幅な町村合併をさせたが , その規定の中で合併前の 「旧町村ノ名称ハ大字トシテ之ヲ存スルコトヲ得」として大字が出現した。し たがって大字は多くの場合 , 近世の村であることが多い ( もっとも地方によっ ては明治初年以来何回か合併や分離が行なわれているので注意を要する ) 。大 こあざ 字に対して小字という表現が使用されることが多いが , これは大変あいまいで , 場合によって意味が異なる。 ( 1 ) 大字に対して字を小字という。 ( 2 ) 字の中をさら に細分している名称をいう。 ( 3 ) 大字の中にいくつかのムラあるいは集落が含ま れているときに , そのムラないし集落をいう。 ( 3 ) のムラないし集落を小字とい うのは調査者・研究者が勝手にそう呼んでいることが多い。小字はあまり使用 しない方がよい言葉の一つである。 区・区長を区長代理いずれも現在使用している地方が多い。現在のはた てまえ上は私称であるが , 昭和 22 年 ( 1947 ) までは法制度の規定をうけた公 的なものであった。明治初年以来何回か区は行政単位として使用されたが , 現 在の区へつながるのは , 明治 21 年の市制・町村制の区である。市制・町村制 には「町村区域広潤ナルトキ又ハ人口稠密ナルトキハ処務便宜ノ為メ町村会ノ 議決ニ依リ之ヲ数区ニ分チ毎区区長及共代理者各一名ヲ置クコトヲ得。区長及
Ⅲ 民俗調査の方法と基礎知識 56 を有していたわけであるが , 調 民 明治 5 年 査においても , 調査地における 地租改正地券 共有地の所在の有無 , 所有形態 , 発行 有 ー - 十 利用形態 , 権利受益範囲 , 義務な 官 民 どを調べる必要がある。ムラ人 民 明治 9 年 公有地の官民 にとっても共有地の権利は関心 有当 有当 有区分 有 事であり , ムラの区有文書の中 にはたいていこの権利所有者名 市 部私 明治 21 , 22 年 町 簿が含まれている。それゆえ共 村 市町村制施行 有有 有地の内容を知るには , この区 有文書に目を通すことが必要で 明治 43 年 ~ 部 私 昭和 14 年 あると同時に , 土地台帳によっ 町 村 部落有林野統 ても , これに当ってみる。土地 有 有 有 台帳は , 役場に置いてある。 昭和 22 年 市 財 部 私 の中の「〇〇以下〇〇名共有」 町 産 地方自治法お 落 よび政令第 15 と記載のあるものをひろってい 有 有 有 有 号施行 く。この資料をもとにしてムラ の伝承者から , 共有地の歴史的 市 財 部 私 昭和 28 年 町 産 町村合併促進 推移 , その所有者の変遷・売買 村 法施行 有 有 有 有 などを聞いていくとよい。 次に水利について述べる。わ 市 財 部 昭和 30 年 12 月 町 産 が国の農村における灌漑水利の 1 日現在 村 区 有 有 有 形態としては , 河川引水のもの と溜池が古くよりあった。最近 10 図公有林の変遷 は深井戸によるものもでてきて 〔注〕 ( 1 ) 図に示した行政措置以外に , 一般の売買譲渡処 いるが多くのムラでは , 前二者 分による所有権の移転も行なわれている。 ②部落有の登記簿名義は , 区有・法人有・組合 による灌漑方法をとっている。 有・記名共有・個人有その他がある。 特に河川引水による灌漑を行 ③市町村有および財産区有のうちには , 慣行によ る部落住民の使用収益権のあるものがある。 なう所では , その水系により , ( 4 ) 出典 : 公有林野調査会編『公有林野の実体とそ の問題点』 ( 1959 ) より作成。 水掛りになる田がきわめて広範 囲にわたるものが多い。また溜 池灌漑は主として西日本に広く みられるが , これを行なうとこ ろは一般に水利の便の悪い所で , 官有 ~