民俗調査の方法と基礎知識 具 , 作業場など。 ( 3 ) 交通・運輸・通信に用いられるもの。たとえば運搬具 , 舟車 , 飛脚用具 , 関所など。 ( 4 ) 交易に用いられるもの。たとえば計算具 , 計量具 , 看板・鑑札 , 店舗など。 ( 5 ) 社会生活に用いられるもの。たとえば贈答用具 , 警防・刑罰用具 , 若者宿 など。 ( 6 ) 信仰に用いられるもの。たとえば祭祀具 , 法会具 , 奉納物 , 偶像類 , 呪術 用具 , 社祠など。 ⑩年中行事に用いられるもの。たとえば正月用具・節句用具・盆用具など。 ⑨人の一生に関して用いられるもの。たとえば産育用具 , 冠婚葬祭用具 , 産 面・人形 , 玩具 , 舞台など。 ( 8 ) 民俗芸能・娯楽・遊戯・嗜好に用いられるもの。たとえば衣装道具 , 楽器 , ( 7 ) 民俗知識に用いられるもの。たとえば暦類 , ト占用具 , 医療具 , 教育施設 屋など。 など。 を行なう場合には , 事情によっては調査家の日常生活に悪影響をおよばす危険 と生活暦との対照調査を行なう必要がある。しかし , これに関連して悉皆調査 で , 単位農家あたりの生活用具の調査には , 一括調査による民具リストの作成 との対照を行ない , 生業別・作物別の基本民具体系を明らかにする調査が必要 れる。生業については各職業別・作物別に生産暦・生業暦を作成して使用民具 らの調査と , 単位農家における基本的な生活用具の観点からの調査法が考えら しようとするものなどがある。前者の方法としては , 生業など地域的な見地か た地域文化の解明をはかるものと , 特定の民具の伝播を通して文化移動を解明 まっている。具体的には地域における使用民具を体系的に調査し , 民具を通し も形態的研究が主流であったが , 現在は民具の社会的機能を重視する傾向が強 中で民具を体系的にとらえようとする調査が少なかった。このため , 民具研究 従来の調査においては個々の民具の調査に力点がおかれ , 地域全体の生活の ( ロ ) 調査上の留意点 を用いた整理法が必要である。 後は複数の分類を併用し , 多方面からの検索ができるようなパンチカードなど られるのはまれであるため , 単一の分類では不可避的に生しる問題である。今 分類される場合が多い。これは , 民具本来の性格として単一の目的のみに用い づいて分類するもので , この分類法だけでは同一民具が複数の項目にわたって と分類している。この分類は調査時点におけるその民具の一般的な使用法に基
厚 6 Ⅲ民俗調査の方法と基礎知識 する段階で , まごっくことにもなりかねない。 民謡は時代とともに流動しながら発展してきた。人の交流と同時に歌も伝播 したのである。この媒体となった歌は「流行歌謡」がその働きをしている場合 が一番多く , この「流行歌謡」が「民俗歌謡」へと姿を変えて各地に労作歌と して定着しているものが数多く認められるのである。このような現象を考慮す るならば , 採集された民謡についてもその地に生まれ育ったものと端的には考 えずに , 他の地から伝播定着したものか , あるいはその地方独自の民謡である ーに調査者の側にもある程度の世を風靡 かを見きわめる必要が生してくる した流行歌謡に対する知識をも要求せられるであろう。少なくとも伝承者の出 生地ならびに誰からいつごろ教えられたものかということを明らかにしておく こと , さらには家系の問題にも発展させて考え合わせる必要も出てくるのであ る。このような作業を進めることによって , 民謡の伝播経路の一脈を知ること も可能となっていくのである。 調査結果の整理楽譜入り民謡集がはしめて現われたのは昭和 5 年 ( 1930 ) のことであるが , 戦前までの民謡集のほとんどは詞章をただ羅列していく形式 のものが多かった。ところが歌謡は詞章と曲節の二面を合わせ持っている文芸 形態であるために , この整理の方法については詞章とともに曲節をも五線譜に 載せて掲げることが理想的である。しかしながら採譜という作業は誰にでも簡 単に成し得ることではないために , ここが最大の難点である。けれども資料と して保存するためには採譜の仕事を怠っておいたのではその価値も半減してし まうことは否めない事実である。まして , この資料が印刷・出版されることに なるならば , この傾向はますます強いものとなってしまうであろう。資料集の なかで民謡の分野が補助的な , あるいは副産物の一つとして紹介する程度の軽 い意味のものであるならば致し方のないことではあるが , 一地域の民謡集とし て銘打つものであるならば , その採録されている中から代表的なものにはやは り楽譜をも載せるべきであろう。これは保存資料という面からきわめて大切で ある。さらに加えて曲節の面に比重を掛ける調査であるならば , 労作歌を採集 する場合には仕事を行なう実際の場に臨むことが望ましい。これが不可能な場 合には伝承者に実際と同し姿態を示しながら歌ってもらうことが必要である。 なぜならば音の高低と同時にテンボの遅速を正確に把握するためなのである。 一例を田植歌にとるならば , 山間部と平野部とを比較したとき , 耕作面積の関 係から当然ここに歌全体のテンボの差が生してくるはずだからである。同し詞 章が歌われていても仕事の内容やリズムによって拍子は変化する。このような 生活環境の差異によっても民謡の持ち味は変わるのである。
4 衣食住 よって家族のめいめいがこの空間の中でどのように生活してきたかを再現して いく。なお , 間取りは , 台所を中心に改築などにより変化していることが多く , 観察だけでは明らかにできないので , 聞書きや構造面の調査からの資料で , そ の変化をつかんでおく必要がある。この変化が , 生活の仕方にどのような影響 を与えたかにも注意しておきたい。 ( 6 ) の聞書き調査については別項で述べる。 ( 7 ) の民具調査では , ⑤の観察調査や , ( 6 ) の聞書きによってリストアップされた 民具の一つ一つを実測・スケッチ・写真撮影などの方法で記録してゆく。その 方法については民具の項 ( 「Ⅲー 5 民具」 89 ページ参照 ) に詳しいので重複 をさけるが , 使用法 , 製作方法 , 入手経路に特に注意すること , 専用のカード を用意する方が整理が容易であること , 聞書き調査との関連に注意することを あげておく。また , この民具調査を衣食住の全般について行なおうとすると , かなりの日数 , 人手を必要とする。したがってあらかしめ調査日数から , どの 程度の時間をあてることができるか計画しておくことが必要である。時間的に 余裕がない場合でも , 民具の場合 , 同し呼称・用途のものでも地域により形が 異なることが多いので , できるだけ目で確かめ , 特徴あるものはスケッチだけ でもしておくとよい。 調査項目の作成調査項目は従来さまざまのものが出されているので , そ れらを土台として調査日数・調査地・調査の目的などにより整理しておく。ま た , 衣食住の場合には , しばしば , 調査もれが生しやすいので , それを防ぐ意 味で調査項目のほかに , 調査結果を整理しながら記入できるカード型式のもの を用意しておくとよい。例示したのは , 調査地で食されている穀物の種類とそ の調理法 , その組合せから食品の種類をとらえようとした調査票 ( 16 表 ) であ る。他の項目についても各自工夫して用意しておくとよい。 伝承者の選択観察調査の対象とする民家・民具と , 聞書き調査の対象と する伝承者の両者の選択が必要である。選択にあたっては一つには , 民家・民 具・伝承者をできれば 1 軒の家で満たしたいこと , もうーっは , 衣食住という 日常生活は , その家の経済的条件によってかなり左右されるので , 条件の異な る対象をいくつかえる必要のあることの 2 点を考慮する。民家・民具・伝承者 とそれぞれ選択の基準が異なるので , 1 軒の家で全部を満たすことはむずかし いが , 少なくとも一例はこの形で調査を行ない , 他の伝承者からの資料や他家 で所有する民具の資料で補っていく方法をとりたい。これにさらに後者の条件 を満たすことは現実には困難であるため , 文献調査などからえた資料により調 査対象とした家が , 調査地のなかでどのような位置を占めるかの検討を厳密に
ア 70 Ⅲ民俗調査の方法と基礎知識 体的な理由の一つとして , そしてこれは今後の調査時 , 調査項目のなかにおい て充分考慮されなければならぬ要件であるが , なぞ・ことわざはともに直接こ れを管理する " 年齢階梯 ' ' にあって , それを管理・所有する内容にかなりの相 違があった。また地域・環境・生活用具など , 属目の事象・事物によっても必 然的に大きな違いといったものが生しるものであった。たとえば , 大人の間に 通用するなぞは , 知識の浅い子供に無関心の場合が多かったし , 生活手段や習 俗の異なる土地には , まったく通し難いことわざも存する。したがって , な ぞ・ことわざの調査には余程土地の実情にそくした調査項目と , 加えて , 対象 階梯を限定した手段とを選ばなければならないはずである。 さて " なぞの呼称 " は大別するに , なず・なし・なんず・なんぞ・なんしよ の系列のものと , 一方 , " あかしもん " とか , あてもん・かんがえもの , とい ったものとがある。なぞは古くこれも“物語”の一種と遇せられていたとみえ て , 「なぞ物語」と呼ばれたらしい。後にはこれを“なぞ立て”と称したが , これは今日「なぞ , 立てろ」「おっと」といった応待の問答によってはしめら れる土地のあることからも , 充分に裏書きされよう。いったいに , なぞは , 昔 話と同様 , ムラ内にあっては冬の炉辺や炬燵での屋内における“言語遊戯”と して伝えられてきた。そのためにこれには多く , 子供たちが関与している。し たがって , いま , 調査時に聞き得るなぞの大勢はしばしば , ごく簡単な“二段な ぞ”と呼ばれる形式に占められている。「兄弟三人首かしげー→ごとく」「白馬 の骨無しなーに一→豆腐」「小盲千人糸を引く一→納豆」と , いった類のもの がこれである。しかし , 一方大人の世界ではこれとは別に「鵯とかけて , 何と とんきん 解く , 二月堂と解く , 心は水鳥 ( 水取り ) 」といった " 三段なぞ”や , 「頭巾掛 けて , 袈裟掛けて , 播磨 ( 梁間 ) の国に宿取るなんずー→鶏」「天から落ちて , くるみ ひころんで , おおさの衣 , ひこ脱いで , 火に向かいて腹切るなんずー→胡桃」 というような知的好奇心を充分に満足させると同時に , 相応の知識の要求され るものもあったのである。それにつけても , なぞには快い " 韻律 " が伴い , 短 かいながらも完結した文芸様式を備えていたことに注意しなければならない。 一般に“なぞ " の管理・伝承が幼い者の世界にゆだねられてきたのに対し , ことわざ " は , 成人社会にあってその効用を果たしてきたものだといえる。 こと ことわざ " は , おそらく“言の技 ' ' が原義なのであろうが , これによって相 手の行為を規制したり , 戒めたり , 反省を求めたりする。さらには , 一段と攻 撃的になりそれを抑制する効果をも期待した。つまりは , 元来が古老や指導的 な立場にある人が , 伝承的な " 生活の知恵 " として与えた性格のものである。 たとえば「善は急げ」「盗人の昼寝」「泣き面に蜂」といったように , 警句のご
706 Ⅲ民俗調査の方法と基礎知識 宮本常一氏による機能分類 ( 1 ) 農耕具 ( 2 ) 漁猟用具 ( 3 ) 畜産用具 ( 4 ) 養蚕用具 ( 5 ) 脱穀・調製用具 ( 6 ) 食料加工用具 ( 7 ) 食用具・調理用具 ( 8 ) 煮焼用具 ( 9 ) 容器 ⑩住用具 ( 11 ) 燈火用具 ( 12 ) 着用具 ( 13 ) 容姿用具 ( 14 ) 紡織用具 切截用具 ( 16 ) 加工用具 ( 17 ) 運搬用具 ( 18 ) 計測用具 ( 19 ) 意志伝達用具 20 ) 遊戯・娯楽用具 割玩具 信仰・呪術用具 研究のためには , ほかに採集地別・製作年代別・材料別など , いろいろな分 類ごとにカードが整理され , どのカードからでもすぐ資料が検索できれば便利 である。そのために目録カードを作製する。目録カードは , 基本カードに基づい て必要事項を書き出した小カードで , 分類して , カードボックスに入れておく。 ( ト ) 展示 分類にいくつもの方法があるように , 展示もその目的によっていろいろなテ ーマで行なうことができる。 地方博物館では , まず生産生業から衣食住までを含めて , その地域の過去の生 活を明らかにする民俗資料のセット展示の方法がある。これは児童生徒を対象 とする場合 , 最も効果的な展示といえよう。そして展示資料をめぐる生活をい きいきと伝え , 地域の生活の特徴を浮彫りにするためには , 資料の用法・用途は もちろんのこと , 民具を生んだ自然や風土 , 地理的・経済的環境を , 写真・スラ イド・図表などで明示し , その民具の用いられた理由を理解させる必要がある。 つぎに , 資料は比較することによって差異や関連を一層明確にすることがで きる。たとえば資料に応して種目別に歴史的な移り変わり ( たとえば燈火用具 など ) , 地域的分布と特徴 ( 背負い梯子・もんべなど ) を示す展示もできよう。 そのためには , 資料や情報の交換など , 他館との交流が必要である。さらに機 能と形態の相関を示す展示 ( 鎌・鍬など ) , さらに民衆の生活の知恵・工夫を 示す展示なども考えることができる。いずれにしても , 展示は展示意図の明確 な系統的展示でなければならない。 民俗芸能は , 衣装や用具を保管展示するだけでは , 芸能の本質を伝えること にはならない。積極的に上演の手段を講ずべきであろう。そのためには講堂・ 屋外ステージなど上演できる設備を設ける必要がある。また各種道具や製品の 製作使用といった技術伝承の実演も積極的にとり入れてよいのではないだろう ( 内田賢作 )
Ⅵ民俗調査文献目録・解題 2 316 山口貞夫衣服 ( 柳田国男編『山村生活の研究』民間伝承の会 ) 1938 317 倉田一郎服装に関する資料 ( 柳田国男編『海村生活の研究』日本民俗学会 ) 1949 全般的な知識をえるには 313 , 315 がよい。また 303 には服飾と民俗学 ( 大間知篤三 ) , 衣料 ( 江馬三枝子 ) , 日常生活の衣類 ( 江馬 ) , 晴着とかぶりもの ( 瀬川清子 ) , 雨着と履物 ( 磯貝勇 ) の諸論文が収録されており , 便利である。各地の大学の家政学部 , 教育学部の被 服関係の研究者による調査研究については各大学の紀要を見ること。 履物については , 318 潮田鉄雄『はきもの』法政大学出版局 1973 319 武藤鉄城雪上履物の研究 ( 日本常民文化研究所編『民具論集』 2 慶友社 ) 1970 食生活 食生活については , 柳田国男 食物と心臟 ( 『定本柳田国男集』 14 筑摩書房 ) 320 1962 瀬川清子 『食生活の歴史』講談社 1956 321 宮本馨太郎 『めし・みそ・はし・わん』岩崎美術社 1973 322 『食物の歴史』河出書房 1955 後藤守一 323 瀬川清子 食 ( 『郷土研究講座』 4 角川書店 ) 1958 324 食物 ( 柳田国男編『山村生活の研究』民間伝承の会 ) 1938 山口貞夫 325 食物に関する資料 ( 柳田国男編『海村生活の研究』日本民俗学会 ) 倉田一郎 326 1949 中央食糧協力会『本邦郷土食の研究』東洋書館 1944 327 渋沢敬三塩 ( 『日本民俗学のために』 1 ) 1947 328 アチック・ミューゼアム編塩俗問答集 ( 『日本常民生活資料叢書』 4 3 四 1973 千葉徳爾茶の民俗 ( 『植物と文化』 9 ) 1973 330 拵嘉一郎喜界島農家食事日誌 ( 『日本常民生活資料叢書』 24 一書房 ) 1973 331 山口弥一郎『東北の食習』河北新報社 1947 332 333 渡辺実『日本食生活史』吉川弘文館 1964 食事に関する民俗の研究は民俗学の中心的な分野の一つであるが , 最近はあまり調査研 究がおこなわれていない。この分野の概観をえるには 321 , 322 がよい。また文献史料に よって食生活の歴史を概説したものに 333 がある。なお , 303 には , 食料の調整と貯蔵 ( 橋 浦泰雄 ) , 食料の種類 ( 井之ロ章次 ) , 食品 ( 井之ロ ) , 食事・食器 ( 川端豊彦 ) の諸論文が 収録されており , 便利である。 民家と住生活 民家もしくは住生活についての文献としては , 334 文化庁監修『民家のみかた調べかた』第一法規 1967 335 柳田国男・山口貞夫『居住習俗語彙』民間伝承の会 1939 6 伊藤鄭爾・稲垣栄三・大河直躬・田中稔民家研究の成果と課題 ( 『建築史研究』 21 ・ 22 ) 1955 一書房 )
6 消費生活と民具 265 俊夫 『日本海上交通史の研究』鳴鳳社 1973 北見 294 俊夫 社会経済史学と民俗学一とくに交通・交易史との関係ー ( 『日本民俗学 北見 295 会報』 35 ) 1964 清子 『販女』未来社 1971 瀬川 296 一書房 ) 土佐四万十川の漁業と川舟 ( 『日本常民生活資料叢書』 23 桜田 勝徳 297 1973 照広 川船のツナヒキ船頭について一岡山県河川水運の場合ー ( 『日本民俗 湯浅 298 学』 80 ) 1972 啓爾 『塩および魚の移入路ー鉄道開通前の内陸交通ー』古今書院 1957 田中 299 交通・交易は従来あまり調査研究が進んでいない分野である。概観をえるには 291 がよ いが , 直接調査には役立たない。この分野の具体的調査内容とその問題点を知るには 292 , 293 がよいであろう。陸上交通の研究は少ない。 299 は地理学の研究であるが , 聞書き資 料を重視しており , 参考になろう。 運搬方法については , 300 宮本馨太郎わが国在来の背負運搬法 ( 『人類科学』 5 ) 1953 301 磯貝勇背負梯子について ( 『民族学年報』 1 ) 1938 302 山口賢俊新潟県の背負い運搬具について ( 『日本民俗学』 87 ) 1973 6 消費生活と民具 (d) 総論 衣食住全体を概観したものとしては , 303 『日本民俗学大系』 6 ( 生活と民俗 1 ) 平凡社 1958 304 瀬川清子『日本人の衣食住』河出書房 1964 民具全般について概説したり , その調査法を述べたものとしては , 宮本馨太郎『民具入門』慶友社 1969 305 宮本馨太郎民具研究の回顧と展望 ( 『物質文化』 2 ) 1963 306 磯貝勇『日本の民具』岩崎美術社 1971 307 磯貝勇『続・日本の民具』岩崎美術社 1973 308 ーゼアム編民具蒐集調査要目 ( 『日本常民生活資料叢書』 1 アチック・ 309 書房 ) 1972 常民文化研究所編『日本の民具』角川書店 195S 310 渋沢敬三先生追悼記念出版『日本の民具』 1 ~ 4 慶友社 1964 ~ 67 311 民具全体の基礎的知識は 305 によってえられる。調査項目は 309 が現在唯一まとまった ものといえる。 ( ロ ) 衣生活と道具 衣生活に関するものとしては , 『服装習俗語彙』民間伝承の会 1938 柳田国男編 312 『かぶりもの・きもの・はきもの』岩崎美術社 1963 宮本馨太郎 313 瀬川清子 服飾の研究について ( 『民間伝承』 16 ー 2 ) 1952 314 『きもの』未来社 1972 瀬川清子 315
268 Ⅵ民俗調査文献自録・解題 住生活の中心的な問題である火については , 303 にはいろりと火 ( 坪井洋文 ) があるが , さらには , 38 柳田国男火の昔 ( 『定本柳田国男集』 21 筑摩書房 ) 1962 361 宮本馨太郎『燈火ーその種類と変遷ー』六人社 1964 362 有賀喜左衛門村の生活組織 ( 『有賀喜左衛門著作集』 5 未来社 ) 1968 燈火の概観は 361 でえる。 362 はイロリについて興味深い分析をしており , 調査のヒン トを多く与えてくれるであろう。 363 364 3 366 367 7 人生儀礼 総論・概説書 『日本民俗学大系』 4 ( 社会と民俗 2 ) 平凡社 1959 柳田国男編『産育習俗語彙』恩賜財団愛育会 1935 柳田国男編『分類児童語彙 ( 上 ) 』東京堂 1949 柳田国男・大間知篤三『婚姻習俗語彙』民間伝承の会 1937 柳田国男編『葬送習俗語彙』民間伝承の会 1927 363 は民俗学における人生儀礼研究の視角・解釈を示めす入門書として便利であり , 364 ~ 367 は全国にわたる産育・児童・婚姻・葬送の諸儀礼および関連事項を民俗語彙によっ て集めたものであり基本的な研究資料集となっている。しかしいずれも現在では非常に入 手が困難である。 ( ロ ) 3 369 370 371 372 373 374 375 376 産育・成人 大藤ゆき 瀬川清子 柳田国男 井之ロ章次 瀬川清子 宮本常一 平山敏治郎 大間知篤三 瀬川清子 『児やらい』岩崎美術社 1968 産育 ( 『郷土研究講座』 5 角川書店 ) 1958 小児生存権の歴史 ( 『定本柳田国男集』 15 筑摩書房 ) 1963 誕生 ( 『国学院雑誌』 58-1 ) 1957 産屋について ( 『日本民俗学のために』 9 ) 1951 『家郷の訓・愛情は子供と共に』 ( 宮本常一著作集 6 ) 未来社 1967 一人前の規準について ( 『人類科学』 5 ) 1953 成年式 ( 柳田国男編『海村生活の研究』日本民俗学会 ) 1949 『若者と娘をめぐる民俗』未来社 1973 368 ~ 373 は産育習俗に関する論著であるが , 368 はその全般にわたって興味深く記述さ 所にみられ , また巻末には若者に関する全国的資料が網羅されていて便利である。 論著である。なかでも 376 は著者のライフワークともいうべきもので , 示唆多い見解が随 いる。また 374 ~ 376 は成人について族制的というよりも , 儀礼的側面に焦点をあてた好 心者には効用がある。 370 ~ 372 は産育習俗における中心的テーマについてそれぞれ触れて れており , 入門書として便利である。また , 369 はその調査の方法について触れており初 内 377 378 379 380 婚礼 柳田国男婚姻の話 ( 『定本柳田国男集』 15 筑摩書房 ) 1963 有賀喜左衛門日本婚咽史論 ( 『有賀喜左衛門著作集』 6 未来社 ) 瀬川清子『婚烟覚書』講談社 1957 蒲生正男日本の婚烟儀礼 ( 『明治大学社会科学研究所紀要』 5 ) 1968 1967
Ⅱ 7 民俗調査の基礎作業 1 民俗調査の種類 日本民俗学はその研究資料を主として聞書きを中心とする民俗調査 ( 採集 ) によって収集してきた。民俗調査にはさまざまな形態があり , 単独調査と共同 調査 , 民俗誌的総合調査と特定間題に関する調査 , ーっのムラを対象とする調 査と広い範囲のいくつものムラを対象にする調査 , および聞書き調査と調査票 調査などの別を一応考えることができる。従来の民俗調査では , 山村生活調 査・海村生活調査・離島生活調査を別とすれば , 単独の聞書きを中心とする調 査が多かったが , 最近では共同調査や聞書きのみならず調査票などを併用した 民俗調査もさかんに実施されるようになってきた。また , 一概に特定の問題に 関する調査といっても本書で取り上げる日本民俗学のさまざまな分野によって , その方法は一様ではない。たとえば村制・族制の調査では特定のムラを集中的 に調査する例が多いのに対して , 信仰・人生儀礼・衣食住などの調査ではむし ろ , 広い地域のいくつもムラを対象とする場合が多い。しかしながら日本民俗 学がこれまで一貫して採用してきた民俗調査方法の基本的な性格は , 日本各地 のムラに研究者がしかに赴いて , 伝承者に面接して直接 , 伝承を採集する現地 調査に集約されている。 したがって , 本書においても現地調査を中心におきながら民俗調査の基礎作 業について述べる。その際に調査方法の異なるさまざまな分野の基礎作業のす べてを述べることはできないので , こではひとまず特定のムラにおける集中 的な民俗誌的調査であって , 聞書きのみならず調査票による調査や , 記録資料 の援用も並行して実施する調査を念頭におきながら記述を進めていきたい。し たがって分野によっては以下に述べる基礎作業のうちから目的や各分野の特殊 性を考慮して , いくつかを選択することが望ましい。またーーに述べる基礎作 業は一つの例にすぎないので , 現地の事情や研究目的など調査の諸条件によっ て補充修正をたくましくしていただきたいと思う。 2 調査地の選定 日本民俗学が調査単位とするのは , 生活の種々の場面において共同しあい , また人々が基礎的な生活単位と考えているムラである。その範囲は具体的には ムラ仕事 , 氏神祭祀 , 共有林の範囲などを手がかりとして画定する。このムラ
I 総論 2 民俗調査の歴史 現段階においても民俗調査のあり方について , さまざまな批判と反省がなさ れているが , われわれはまず民俗学の学史的展開における民俗調査のあり方を 吟味する必要がある。民俗学最初の体系だった調査は , 昭和 9 年 ( 1934 ) に実 施された山村生活調査であった。柳田国男を中心とする民俗学者による組織的 な調査である。これは各県から 1 村を単位にし , 一地域に最低 20 日間の滞在 , 調査員が共通基準のもとに作られた 100 項にわたる調査項目を持って , 聞取り 調査を実施する方式であった。この調査には , 調査単位となった村について の基礎的な材料に欠けている点が目立っている。つまり村の面積・人口・戸 じかたもんじよ 数・ムラ数などの数字的把握がまったくない。さらに古文献・地方文書を配慮 する観点も不足しており , これらの点は実際調査に加わったメンバーの中から も批判の対象となった。この調査で重視されたのは民俗語彙であって , その限 りにおいてかなりの程度成功している。民俗語彙の地域的差異が , 時間的関係 を明らかにされ得るという前提が , この調査だけでなく当時の学界の大勢を占 めていたのである。その結果民俗事実をとらえることより , まず語彙で押さえ るやり方が先行し , 資料整理の段階で も , もつばら民俗語彙による分類が優 先する傾向が強くなった。昭和 12 年 ( 1937 ) から行なわれた海村生活調査 も同様であり , ともにその成果は『山 村生活の研究』 ( 1936 ) , 『海村生活の 研究』 ( 1949 ) として刊行されている。 2 【まま簽第ま、第をを第「第を第 2 災 ( い第第を第 1 図採集手帖