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検索対象: 学歴主義の発展構造
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1. 学歴主義の発展構造

第 4 章日本型学歴主義の特徴 第 4 ー 2 図 偏差値能力アイデンティティ 向確立の重要性 社会的上昇 のノヾターン 教育への期待 ・求める人物 能力観 人間評価の仕組 ↓ 競争の性格 地位感覚 平等感覚 特徴的な学歴観 大学観の形成 受験戦争 日本的地位 の構造 日本型経営 組織の構造 教育の荒廃問題←ーー・一一一 - ・ さて、この特徴的な能力観の結果、日本の若者たちにとって、 り基さきにのべた「能力アイデンティティーの確立をきわめて重要な 会 社理ものとする。日本の社会にみられる極端な偏差値志向は、日本人 の能力襯とこの「能力アイデンティティーの確立が重要なかかわ りをもっていると考えることができる。しかも、これらの傾向は、 さきに検討した日本人に特徴的な大学襯・学歴観の形成を媒介と して、日本の社会における受験戦争のあり方に大きな特徴をもた らしているものと考えることができる。 他方、日本型経営組織の構造は、一方で日本的地位の構造を決 定づけることによって、日本の社会における社会的上昇のパター ンを大きく規定している。この社会的上昇のパターンは、さきに 示のべた偏差値志向とともに、日本的学歴観の形成に関与し、受験 戦争の性格を規定している。 関 定 規 日本型経営組織の構造はまた、教育にたいする期待やそのもと はめる人物像のいかんをつうじて、こんにち、教育の荒廃といわれ る現象と密接に関連してくる。これら諸要因の相互関連は、第 4 ー 2 図のようにあらわすことができよう。この図で、「教育の荒

2. 学歴主義の発展構造

についてあきらかにする必要がある。以下、第五章においてこれらの問題を検討するが、そのまえに、 これらの要因をふくめて、日本型学歴主義をささえる諸要因の関連について検討しておく。 六日本型学歴主義の成立基盤 すでに指摘したように、人がよりよい大学にはいろうとするのは、よい就職をしたいからであると いう見解は、多くの論者によって表明されている。著者自身は、これが決定的な規定要因であるとい う見解はとらないが、 個人差はあるものの、それがもっとも重要な要因のひとつであるとみることに 異論はない。そしてもし、このような見解が支持されるならば、日本の企業が教育機関にたいしてな にを期待しているか、どのような人物をもとめているか、どのような人物を重用し昇進させているか といった諸要因は、当然、日本の教育のあり方に無視できない作用をおよばしてくるものと考えるこ のとができる。 主ところが、企業の側のこのような期待のあり方は、第七章において詳しく分析するように、日本型 哮経営組織の構造と密接にかかわ 0 ている。それは、あきらかに組織構造の異なる欧米型の企業がもっ 日期待とは、さまざまの点で異なったものとならざるをえない。 ここに、日本型の学歴主義が形成され 章るいまひとつの基盤が存在する。 ここで重要なことは、日本型の経営組織は、変化する環境諸条件のなかで経営目標をできるだけ有

3. 学歴主義の発展構造

第 4 ー 1 図 日本型経営組織の構造 ( 採用・昇進 ) 効に達成しようとする経営者たちの努力によって、 歴史的変化の過程をへて徐々に形成されたものであ こみ、り るが、それは同時に、日本人のあいだに顕著ー 物 示れる志向性、その社会関係にみられる特徴的。ハター 人 ンや心理性向に適合するように、あるいはこれらを 状 め 関 求 現 活用しようとして形成されたものであるという事実 籘である。 の 育 へ このように日本型経営組織の根底にあって、その 育 教 成立基盤をなしているこれらの社会的・心理的パタ ーンは、教育をめぐる人びとの思考・行動のあり方をつうじて、直接あるいは間接に、日本の教育の あり方、さらには学歴主義のあり方に、不断のインパクトをあたえているものと考えることができる。 この関係を簡潔に図示すると、第 4 ー 1 図のようになろう。 つぎに、この関連をふまえながら日本型の学歴主義をうみだしている諸要因について検討しておこ う。著者のみるところでは、日本型の学歴主義と密接にかかわっていると考えられる日本人の社会 的・心理的傾向の主なものとしては、①日本人の能力観、それがうみだす特徴的な人間評価のあり方、 日本的競争の性格、②日本人の地位感覚、⑨日本人の平等感覚などをあげることができる。これらの 諸要因については、つぎの第五章においてとりあげる。 社会的・文化的・、い理的基盤 教育における歴史的伝承

4. 学歴主義の発展構造

しかし、このような型の組織が円滑に機能するためには、調和的な人間関係と組織構成員の側にお ける″責任の非限定性〃の受容が必須とされる。つまり、この型の組織にあっては、特定の職務をこ なす職務知識を保有するだけでは不十分であり、集団の目標達成のために、状況に応じて協力する態 度や、円滑に機能する人間関係を形成しうる能力・人柄が要求される。日本型の組織構造のもとでは、 このような能力こそが、逆にあたえられた職務を十分にこなしてゆくための必要条件なのである。こ のような組織の要求が、教育のあり方に重要なインバクトをあたえていることは事実であり、このこ とは見方によっては、尾形憲氏がいうように、経済にたいする教育の従属といえないこともない ( 尾 形〔 2 〕一七八頁 ) 。 しかし、日本的経営の構造が日本の教育のあり方に重要なインバクトをあたえているからといって、 義学歴主義を日本資本主義の帰結と考えるのは賛同しがたい。このような考え方は、小池和男氏らが痛 学烈に批判した「日本だけ論」への傾斜をはらむものであり、世界史的な視野を欠いていること、また 造日本資本主義を止揚しなければ教育問題はどうにもならないという見解に陥ってしまう危険を多分に 構 のはらんでいるからである。尾形氏は現に、つぎのように指摘している。 的〈また教育内容や制度、とくに高校以前の教育をゆがめている「元凶」の入試の改善についても、さ 日まざまの報告や意見が出された。しかし現在の一発勝負をどう模様替えしても、今の卒業制度があ 章 り、それと結びついた教育の経済への特殊日本的な従属があるかぎり、事態は根本的には変らないだ 第 ろう〉 ( 尾形〔 2 〕一三頁 ) 18 ー

5. 学歴主義の発展構造

選書 日評選書 日評選書 学 学歴主義の発展構造 主 岩田龍子 の 近代社会にみられる学歴主義の 発展モデルをタテ軸とし それぞれの社会に特徴的な類型を ョコ軸とする座標のなかに 日本型学歴主義を 位置づけることによって はじめて その構造が明らかとなる 岩田龍子 日本評論社 定価 1400 円 日本評論社

6. 学歴主義の発展構造

第 5 章日木的能力主の構査 という傾向が、こんにち教育の荒廃といわれる現象とふかくかかわっていると考えられるのである。 このように、日本型の学歴社会についてみる場合、以上のような心理的基盤のあり方が、もっとも 基底的な意味をもっと考えられる。たしかに、つぎに分析する日本的な地位の構造や社会的上昇のパ ターンは無視しえない重要性をもっているが、これらを規定する日本的経営の構造自体、このような 心理的基盤のうえにたって、これをいかすかたちで構成されているからである。 日本の教育改革は、まずこういった日本人の価値襯、人間評価の仕組みにメスをいれること、教育 上の制度改革もこうした日本人の傾向をふまえたうえで、そのプラス面を助長し、マイナス面を最小 限におさえるような工夫がなされなければならないであろう。 つぎに、日本的な地位の構造、さらに社会的上昇のパターンについて検討する。

7. 学歴主義の発展構造

一文化と経済のあいだ 第二章および第三章においては、それぞれの社会のおかれた歴史的条件の相違から、学歴主義のあ り方も、それぞれ特徴的な発展をとげつつあること、にもかかわらず、これらの発展のあいだには、 いくつかの仮説によってしめしたような、ある発展のパターンがみられることをあきらかにした。こ れによって学歴社会といわれるものの発展傾向を、いちおう把握することができたものと思われる。 さらに、このような発展モデルを枠組みとして、われわれは学歴決定論モデルが、日本の社会にお ける学歴主義の初期の状況を近似的にとらえてはいるものの、その後の発展を正確に把握するもので はないこと、学歴主義が日本資本主義によってうみだされたとする「日本だけ論」が正しくないこと、 あるいは学歴主義の発展過程にあっては、社会の側の学歴重視が弱まるなかで、逆に学歴をもとめて 第四章日本型学歴主義の特徴

8. 学歴主義の発展構造

五教育エリートからエリート候補へ 六学歴の機能低下と進学率の向上 第四章日本型学歴主義の特徴 一文化と経済のあいだ 一一日本人の大学観とその特徴 三大学の格付けにみる日米大学観の差 四日本人の学歴意識とその特徴 五能力アイデンティティの確立 六日本型学歴主義の成立基盤 第五章日本的能力主義の構造 一能力についての三つの概念 一一日本人の能力観 三能力の評価と人間の評価 88 82 ーー 3 ー 1 ー 108 99 9 ア 9 丿 93 ー 2 エ 20 ーエク VII

9. 学歴主義の発展構造

廃 , ではなく「教育の荒廃問題」としたのは、著者が世上教育の荒廃とされている諸現象を、単純に 「学歴主義のうみだす教育の荒廃ーとは考えて、よ、ゝ しオしカらである。この点について、ここで読者の注 意を喚起しておく。 本書においては、以下、第五章において日本型能力主義の構造について、第六章では現代日本にお ける地位の構造について、第七章では日本的経営の構造と学歴主義とのかかわりについて、第八章で は教育荒廃問題とその対応についての著者の見解をとりあっかうこととする。

10. 学歴主義の発展構造

しかし、大学組織の場合には、その日本的経営のあり方は従来とも、企業組織の場合のようにうま く機能せず、さまざまの問題を露呈してきた。これにくわえて最近ではまた、企業組織の場合と同様 ' の深刻な問題に直面しつつある。しかも、これにたいしては、かならずしも有効な対応策がとられて いないところに、大学組織のかかえる問題がある。ここでは、こうした視点から類似の日本的経営方 式を採用していながら、大学においてはそれがかならすしも有効に機能してこなか 0 た理由について 検討し、そのうえにた 0 て、大学組織の将来の方向っいてさぐ 0 てみたいと思う。 さて、企業の場合には、日本的経営といわれる経営方式が、長年のあいだにしだいに練りあげられ、 磨きあげられてい 0 たのにたいして、大学組織の場合には、類似の経営方式を採用していながら、こ れがかならずしもうまく機能してこなか「た理由をあきらかにするためには、①企業の直面する競争 と大学組織の直面する競争との性格の差、②日本的経営の制度的枠組みを形成してきた長期安定雇用 制 ( いわゆる終身雇用制 ) と年功制とが、大学においてはどのように機能してきたかという問題、およ び③欧米型の経営組織にたいして、日本型経営組織のいちじるしい特徴のひとつをなす組織の集団的 編成が、大学組織にもたらした問題などについて、検討しなければならない。 図企業間の競争と大学間の競争 さて、企業の場合と同様、大学の場合にも、相互にある種の競争関係が支配していることはいうま しかし、その競争の性格は、企業のそれとはかなり異なっている。企業の場合には、周知 で , もよい。 のとおり市場の = ーズをとらえ、品質のよい品 ( あるいはサーヴィス ) を低いコストでつくりだすこと