第 3 章お花見といっしょに自然観察 から引き返せるようにはなっているが リーダーが道を教えてくれるわけではない。あくまで自分たちのカで進むべき道を選ぶのだし、ど んな所に着くのかもわからない。スリルあふれる活動である。 ぼくらは、春の観察会に、この自然観察オリエンテーリングの手法を持ち込んでみた。 まず、参加者にいくつかの班に分かれてもらった。あまり多人数だとおもしろくないので、ひと班 の人数は五—六人が限界だと思う。そして、班ご とに時間差をつけて、出発してもらった。 ン 参加者には解答用紙をあらかじめ渡しておき、 「問題カードが出てきたら、その問題を解いて、 答えをこの紙に書いておいてください」 自 叔けと説明しておいた。 ぼくらの観察会では、次のようなカードを作っ 一て、道に置いたり、木からぶらさげたりした。 カ カードを読んで、実際に観察会に参加して、 で ま 客イキングしている気分を味わっていただきたい。 のグ観察会をやっている人、これから観察会をやろう 一リと思っている人には少しだけど参考になると思う。
「これ、何 ? ・」と聞かれたら 参加者の「これはなんですか ? 」の類の質問というのが、おそらく自然観察会リーダーの一番の悩 みのたねだろう。 その悩みには二つの違った内容がある。一つは、自分も知らないものを示された時の悩みで、もう 「それは知っているんだけど、それを簡単に教えていいものだろうか ? 」 という悩みである。 ちろん、参加者の多い少ないによって、二メートルのところを一メートルにしたり三メートルにした制 りと加減すればいいのである。 まとめよう。 ■参加者全員から見えるように、一段高い所に立って説明しよう。 ・参加者がまぶしくないように、太陽を見ながら説明しよう。 ・観察するものが小さい時には、参加者を離してから説明しよう。
方が魅力がなかったのだろうか ? それとも、君の方が後で説明したので、参加者の緊張もほぐれ、気楽にものを一一一一〕う雰囲気だった のだろうか ? いろいろ原因は考えられるだろうが、ぼくは二人の、 いくっ『 ? 』があるか 話 ( 説明 ) の中に、 に注目してみたい。 < 君の話の中には、ほとんど『 ? 』が出てこない。ずっとリーダーのペースで観察 ( 説明 ) が行わ れている。 一方、君は、話をすべて『疑問形』で進めている。だから、参加者は考えざるをえない。参加者 自身の疑問になっているから、「反則をしてまでさわってみたい」という気にもなる。 君は観察をする前に質問をしている。観察の後ではない。これも大切なことだ。観察の前に質問 することによって、観察するものへの興味がわく。また、参加者に『観察の視点』を与えることもで きる。君はいろいろ質問することによって、「観察するのは卵の固さや軽さですよ」と『観察の視点』 をも与えてもいるわけだ。 ただ「しつかり観察しましよう」ではだめなのだ。どこをどう観察すればいいのか ( Ⅱ観察の視点 ) も、話を疑問形で進めることによって、参加者に伝えることができる。 、思い出していただきたい。あなたが参加者に何か話をし さて、ある観察会のある短い場面でいい 176
なんて煙たがられたり、一つの話題での話が終わったら、リストの他の言葉を発すればいレ ぼくは、参加してくれた人みんながリラックスして観察会に参加してもらいたいと考えている。そ のためにこんな工夫をしているわけだ。 「観察会が成功したかどうか」を測るものさしはいろいろあるだろうが、やつばり一番大きいものさ しは、参加してくれた人が「また参加したいなあ」と思ってくれるかどうかだと思う。 そして、それは中身がおもしろいかどうかにも、もちろんよるのだが、それ以上に観察会の雰囲気 がものをいうのだと思う。 その雰囲気というのは、自然に作られていくものなのかというと、そうでもない。今まで述べてき たようなリーダーのちょっとした心づかい・気づかいで作られていくことが多い。 観察会のリーダーよ。なにも緊張しているのはキミたちだけではない。参加者はキミたち以上に緊 張しているかもしれないことをお忘れなく。 自戒をこめて、こうまとめておこう。 196
なにせ、ぼくらは観察会を企画した人間だし、仲間のリーダーも回りにはいつばいいる。決して知 らない人たちの中に、ほっぽり出されたわけではない。 でも、参加者はそうではない。二人連れで来ている場合なんかは、そんなに心配ないと思うが、一 人で観察会に参加していて、しかも初めてだったりしたら、少しの期待と多くの不安で、すごく緊張 しているのではないかと思う。しかも、その不安な気持ちを誰にも話せないのだから、なおさらだ。 だから、ぼくは向こうから観察会の参加者と思われる人が歩いてきたら、 「おはようございます。観察会に参加なさるのなら、こちらですよ」 っとめて元気に声をかけるようにしている。 以前はここで、 「いい天気ですねえ」 「まったくそうですねえ」 と、時候のあいさつまではできたのだが、ここで会話が途切れてしまい、しらけた雰囲気にしてしまっ たことが何回もある。 これではかえって「これから一日、大丈夫なのだろうか ? 」と参加者に不安がられてしまう。かと いって、ぼくはその人の顔色を見て、すぐにその人の興味のありそうな話題を提供できるほど、話が うまくない ( 車のセールスマンなんかは、そういう訓練を受けるそうだ ) そこで、ぼくは考えた。 194
少し長く説明をしたい時には、参加者に座ってもらう といい。当たり前のことだが、座って聞く方が、立って 聞くより楽だからだ。座ってもらえば、リーダーの顔の 位置が相対的に高くなり、全員を見ながら ( つまり、全 ら員に見られながら ) 説明ができる。 その場所が傾斜していたら、しめたものである。リー 。レい。ちょうど映画館の 、朝 - ご腰ダーは坂の下側で説明をすれま、 段野客席に座っているように、無理に上を向かないでも、自 石は , 分然と参加者の視線がリーダーの方に向く。 ら気 もっと映画館の客席に似ているのは、石段である。こ がれ 者すれに座ってもらい、下で紙芝居や説明をすれば、少々長 加明 ー参説い時間でも、無理なく参加者に話を聞いてもらえる。 ん下 0 ・ 0 、 1 ので ところで、晴れた日、太陽の位置を計算しながら説明 さの く段 た石をしているだろうか ? 太陽を背にして話をすると、参加者の顔が非常に見やすい。だからだろう。そのまま説明を続けて しまうリーダーが少なくない。 ところが、参加者から見ると、ちょうどリーダーと太陽が同じ方向にあるのだから、まぶしくてしょ
そのくらいのことなら、日本の歌手でもやっている。別に驚きはしない。では、どこがすごいかと いうと、何万人もの観客の誰もが「マイケルは、私に歌ってくれている」と思えるように演出してい る点だ。ステージの上での派手な飛び回り方にしても、客席に降りる場面にしてもクレーンにしても、 十分演出効果が計算されていた。 ふりかえって、ぼくらの観察会はどうだろうか。たとえばリーダーが説明する時に、参加者の全員 「あっ、リーダーは今、私のために説明してくれている」 と思っているだろうか ? ・ 別に問題はない。たいへんなのは、参加者が多い時だ。前の方の人はよ 参加者が三—四人の時は、 すかったが、後ろの人には全然聞こえなかったなんて経験はないだろうか ? ま え ほんのちょっとしたことだが、説明する時に、立っ位置に気を配ると、この問題のほとんどが解消 教 してしまう。「そんな簡単にいくはずがない」と思われるかもしれないが、本当だ。試してみてほしい。 ッ の要するに、参加者全員からリーダーが見えればいいのである。裏返して言うと、自分から全員が見 ダえる位置で説明をすればいいのだ。 その一番簡単な方法は、石の上に立って説明をすることである。石がなかったら、とにかく参加者 章 より一段高い所を見つけて、そこに立てばいいのである。こんな簡単なことだが、やるのとやらない 第 のとではてんで違ってくる。 181
2 自然観察オリエンテーリング 普通、自然観察会というと、指導者のあとから金魚のふんよろしく参加者がぞろぞろついて行くと いうやり方だ。 「これだと参加者が受け身になってしまい、イマイチ面白くないなあ」 前々から思っていた。 そこで、観察会にオリエンテーリングの発想を持ち込み、参加者が主体的に活動せざるをえない状 況を作ってしまった。これが『自然観察オリエンテーリング』である。画用紙の半分ほどのカードを 観察会のルートに置いておく。参加者はそれを見つけて、指示を読んだり、問題を解いたりしながら 進んでいく。 問題カードには答えの選択肢があって、たとえば「もしを選んだら右の道を、旧を選んだら左の 道を進んでください」なんて書いてあることもある。間違った答えを選んだら、間違った道を進んで しまうので、たいへんだ。もっとも、途中に『この道はまちがいです』というカードがあって、そこ 「じゃあ、野草を食べよう会をしましようよ」 と、学校の先生たちと一緒に野草摘みの観察会をやってしまったことがある。
うがない。そこで紙芝居でも始めようものなら、悲劇的でさえある。経験した方がいるかもしれない が、まぶしくて図を直視できず、無理して見てもまっ黒く見えてしまう。 だから、晴れた日には、いつも太陽を見ながら説明するように心掛けた方がいい。そうすれば、リー ダー自身はまぶしいが、参加者がまぶしがることはない。 さて、説明の時にリーダーの立っ位置に気を配るのと同じような意味あいだが、説明の時に参加者 の立っ位置も考えておくとよい たとえば、地面にある小さなものを説明しようと はい、これを見てください」 と言ったら、 す「どれどれ」 ま えとみんなが前に出てきてそれを囲んでしまい、後ろの人には全然見えなかった : ないだろうか。 ッ コ の こんな時には、参加者に観察するものの二メートルくらい前で止まってもらい ダ「まず、ここから見てください」 リと言って説明を始めれま、 クしい。そうすれば、参加者の全員が 「今度はあそこにある、あれを観察するんだな」 第 ということがわかる。一通り説明が終わったところで、前に出てきて、間近で見てもらえばいレ : なんていう経験は も 183
第 8 章ぼくらの自然観察会 ■参加者と観察会を開く側の意識 参加者は何を求めて観察会に来るのかな ? 0 参加者は家族連れと、家庭が一段落終わった人がほとんどだったね。若いその中間の年齢層が来な 。家族連れは子どものため、というんで来る。理科の勉強に役立っとか、情操教育とか、まだ見た ことがないんで、ぜひ見せてあげたいとかね。一段落終わった人は、前はあちこち見歩いたけど、今 すよね。 0 若い中間層は、見る人は一人でどんどん出かけ るし、関心のない人は、他にやりたいことがある。 自然の楽しみ方を知らない なを 0 おしゃれじゃないしね。 観 0 全国的にそういう傾向だしね。 でも、そういう若い人に来てリーダーになって もらいたい " 第。崟ご、 0 参加者が「名前を知りたい」、「それを見たい」 れ というきっかけで来ても、その奥の世界、生きざ ー家まや他とのつながりを知ってほしいし、自然との 3 201