望遠鏡 - みる会図書館


検索対象: ぼくらの自然観察会
14件見つかりました。

1. ぼくらの自然観察会

第 2 章観察会ってこんなもの ので、収拾がっかない。 それもそのはず。『いくつかあるうちから、正しいものを選ぶ』というのは、結構むずかしいものだ。 全部の条件が合っていなければ『正しい』とは言えない。だから、たくさんの条件を一度に見なけれ ばならないからだ。 それより、「これは絶対に違う」というのを一つずつ確認して消去していくほうがいい。なぜなら、 一カ所だけでも違いが発見できれば、それは『正しい』とは言えないからだ。一カ所の違いだけを発 見できればいいので、この方が断然わかりやすいというわけだ。 「ねえ、みんな。この中で『これは絶対に違う』とい よ う絵は、どれ ? 」 め 「これー・」 見伏「望遠鏡で見ているのとどこが違うの ? 」 っこ「あのね、くちばしの形がね、こんなにひらべったく 、う見ないの」 違 っ と 「ホント ? 他の人はどう思う ? もう一度、望遠鏡 持 , 一が的をのぞいてみて ! くちばしの形がこの絵と違うかど 目 うかを確認して " 】」 ち みんなが望遠鏡をのぞいて「違う」と納得したら、

2. ぼくらの自然観察会

にせものは、どれだ ? 子ども班では片田浩子さんが説明をしている。 「今から私たちリーダーが望遠鏡でカモが見られるようにしますから、そのカモがこの絵の中のどれ かを当ててください」 話しながら、画用紙に書かれた何枚かのカモの絵を見せた。これは、昨日、片田さんが徹夜してク レバスで書いたもので、くちばしの形や目の色などが一つ一つ微妙に違っている。 子どもたちはリーダーが用意した望遠鏡をのぞいては 「この絵じゃよ、 「違うよ、あれだよ」 と話し合っている。不思議なもので、今日初めて見た顔ばかりなはずなのに、もう自然に話をしてい る。 「リーダー、①の絵が正解だよ」 「え 5 、⑤がそうだよ。絶対そうだよ」 「ぼくは⑥だと思一つな」 「リーダー、⑤は違うんじゃない ? 」 子どもたちがいろんなことを言い始めた。こうなるともうみんな好き勝手なことばかり言っている

3. ぼくらの自然観察会

となるはずなのに。どうも子どもたちは福笑いの切り口に注目していて、切り口が合うかどうかで探 しているようだ。 あわてて、くちばしならくちばしだけでまとめておいて、 「さあ、望遠鏡を見てください。今、見ているカモのくちばしはどれでしよう ? 」 いくつかあるくちばしの中から一つ、頭・胸の中から一つ、腹から一つ、尾から一つ取ってもらっ 「では、みんなに選んでもらづたのを組み合わせてみるよ。ちゃんとカモの体になるかな ? 」 リーダーものって なんていいながら、福笑いを完成させる。、ちゃんとマガモになった。 子ども班の中に四才の女の子がいた。この子も望遠鏡や双眼鏡をのぞいてはいたが、しつかり見え ているのかどうか、ぼくらには疑問だった。そして、すごく興味があった。 小学生たちがぼくらのマネをして、その女の子に、 「さあ、今見たカモのくちばしはどれ ? 」 と聞いた。その子はしばらく考えた後、正しいくちばしを選ぶではないか。リーダーたちから と歓声があがる。続いて

4. ぼくらの自然観察会

どこでどんなプログラムを行うか、説明や指導を誰がするのかは、下見の時にすでに決めてある。 たとえば、第一のプログラムは、キンクロハジロというカモがよく見えて、始めの会の場所からほ ど近い所で、担当は片田さん。二番目のプログラムは、マガモがよく見え、しかも広い場所が確保で きる地点で、担当はぼくといった具合だ。 ぼくは、わきにかかえたダンポール紙を開いた。ここまで、子どもたちに 「リーダー、これ、なーに ? 」 としつこく聞かれたのだが、そのたびに と答えてきた。それが、今、べールを脱ぐ。 開いたダンボールの内側には、模造紙がはってある。そして、模造紙には大きくカモの絵が書いて ある。書いてあるといっても、りんかくだけである。 これから、りんかくだけのこの絵に色や模様を書き込んで、カモらしく仕上げようというのだ。カ モの絵とクレバスを二セットずつ用意してきたので、女子チームと男子チームに分かれて、最後には それぞれのできばえを見せ合うことにした。 「これから、あるカモを望遠鏡で見て、ぬり絵をします。男子チームと女子チームに分かれてやりま す。どっちの方が本物らしくなるか競争だよ。どっちもがんばってください。ひとりが望遠鏡を見て いい時間は三十秒。三十秒たったら、紙の所 ( 行って、色をぬってください。三十秒しか見れないか

5. ぼくらの自然観察会

第 2 章観察会ってこんなもの ら、今のうちに、誰がどこを見るのか相談して決めておいた方がいいと思うよ」 ぼくの説明が終わるやいなや、蜂の巣をつついたようなさわぎになった。 「おれが頭、見るね」 「じゃあ、おれ、胸」 「あっ、おれも胸、見たいのにな」 1 そして、いよいよゲーム開始。一人一人の役割を決 めたにもかかわらず、 「ねえ、そこん所、もっと濃い色じゃなかった ? 」 「そんなことないよ」 と、すごいおしゃべりが始まった。しまいには、 「ねえ、リーダー。もう一回見せてよ」 とせがまれ、もう一度ずつ望遠鏡を見せるはめになっ る をてしまった。 絵 ただ見るのと、『書くために見る』のとは雲泥の差が てある。書くとなると、ぼんやり見るわすこは、 もし、しつかり見られなかったら、書きながら カ 「あーあ、カモのここをしつかり見てなかったなあ」

6. ぼくらの自然観察会

「正解は、飯野さんでした。今日見た美しいカモたちは、 みんなオスだったんですよ」 続いて第二問も同じように展開させた。 第二問は、『それではいったいメスはどこにいるのか』 えという問題で、 ①どこかにかくれている。 ②オスにびったり寄り添っている。 の③里に帰っている ( ちょうど、女房が子どもを連れて : という感じのイラストを添えておいた ) 。 ④メスはメスばかりの群れを作っている。 っという四つの選択肢を作っておいた。 「正解は、『オスにびったり寄り添っている』です。え ? あやしい ? うそじゃないかって ? それじゃあ、み 一んなで実際に確かめてみましよう。きれいなオスの近く に、本当にメスがいるでしようか。メスはオスと違って、 地味な格好をしています。見つけてみてください」 と、望遠鏡で一人一人に見てもらった。メスの紹介は、 カモのメズは メは区は : が :

7. ぼくらの自然観察会

その絵を裏返す。つまり、消去するわけだ。 そして、次にまた『絶対に違う』候補の絵をみんなで検討していく。最後に残 0 たのが正解なはず 。よかった、正解がちゃんと残った。 すかさず、 「みんなの観察力はすごい もうこれでカモの観察については一流だね」 とほめて ( おだてて ) おいた。 このプログラムは、子どもたちが望遠鏡や双眼鏡をのぞくのに慣れるために準備したものであるが、 目的はそれだけではない カモ・ウォッチングして種類を見分ける時にどこを見ればいいのか、その視点も与えているのだ。 わざと本物とは変えて書いたところは、くちばしの形や冠羽の有無、お尻が水面から上に出ているか どうかなどだが、 これらはカモを見分ける時の大切な視点である。 子どもたちは最後に残った絵を検討する時、ただ漠然と 「これでいいんじゃない」 というのでなしに、 「くちばしも ! 頭の毛も ! お尻も ! 」 と一つ一つ確認していた。 これは余談になるが、「少しずつ違う絵」というのはあまり多くないほうがいい。あまり多くなると

8. ぼくらの自然観察会

とい一つことがわかるので、 「今度はここをしつかり見よう」 と、目的を持って望遠鏡をのぞくことができるのだ。 終わったところで、お互いに見せあった。 「おまえらの頭の色、薄すぎるじゃんか」 「そんなこと、ないわよ ! 男子の方こそ、お尻の色がおかしいんじゃない ? 」 と、やつばり自分のチームの絵はひいき目で見て、相手チームの絵をこきおろしている。 でも、よく聞いていると、「確かにそうだな」と思うことがいくつかあった。男子チームの一一一一口うよう に、確かに女子チームの作品は全体的に色が薄い。 子どもたちは、ただ単に言い合いをしていたわけではなく、自然観察の結果を踏まえた上で、論争 していたのだった。 子どもって、結構すごい。 カモ福笑い ことわるまでもないが、自然観察会を企画・運営しているサークルは、やまなしナチュラリストの 会だけではない。ぼくらと同じように「楽しい自然観察会をやろう」とがんばっているサークルの一 つに自然観察指導員東京連絡会があり、ぼくらとはお隣の都県ということもあって、いろいろな交流

9. ぼくらの自然観察会

がある。お互いの観察会に参加してみたり、合同で登山したり、ダイビングしたりしている。 『カモ福笑い』は、東京連絡会の人たちが作った自然観察指導の道具だ。厚紙に四種類ほどのカモの 絵を書いて色をぬる。くちばし・頭と胸・腹・尾と四つの部分に切り分けてしまう。そして、防水と 補強のためにニスをぬる。こんな方法で作られている。 今日はこれを借りてきている。 ちょっとした広場でこれを広げた。とたんに子どもたちがのそき込んだ。 「これから何が始まるんだろう ? 」 興味津々という顔をしている。 「これからカモの福笑いをします。この中からさっき 見たカモの体を探し出してください」 の 担当の石田恵利子さんが説明をし終えると、さっそ 、も ルく探し始めた。 ん フ ところが、カモの本物を見ているわけではないのに、 て っ こどんどん組み合わせてしまう。これは予定外の行動だ。 観 いここで 章 福「あれ ? どうだったつけ ? リーダー、望遠鏡もう カ 第 一度見せてよ」

10. ぼくらの自然観察会

「では、今言ったようなことを確かめながら、この森の下を歩いてみましよう」 歩道をゆっくり歩いてがけの上をめざした。 「この木にいそうですねえ」 と一人の参加者に話しかけられたので 「では、これでのぞいてみましよう」 と、野鳥観察用の望遠鏡で、木の幹を下から上へながめてみた。途中にうろがあり、ムササビが住ん でいる可能性がありそうだ。 この森はごく普通の雑木林。すぐ上にはバス通りが通っているし、ぼくらが今、歩いている歩道を、 サラリーマンや学生が足早に歩いている。きっと会社や学校からの帰りなのだろう。 さすがにふんは見つからなかったが、「この森にムササビがいる」と思うと、なんだかこの雑木林が 神秘的に見えてくるから不思議だ。 ムササビを見た さて、ムササビはがけの上から見る予定になっている。そこに、おあつらえむきの歩道がある。が けの上からの観察なので、空を滑空するムササビを、上から見ることができる。普通、ムササビの観 察というと、下から上を見上げなくてはならないので、首筋が痛くなるのが相場だが、上野原のムサ 164