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検索対象: たねと果実のいとなみ
31件見つかりました。

1. たねと果実のいとなみ

ほんの小さなたねの中に、なんとふしぎで、すばらしい世界がかくされていることでしよう。みのったたねは、 地面にたどりつくまで、さまざまなばうけんをします。らっかさんや羽や小さな帆にぶらさがって、空をとぶた ねがあるかと思えば、自分からはじけてとんでいくたねもあります。水の流れにはこばれるたねもあれば、動物 の体にくつついて旅をするたねもあります。たねがいい場所をみつけ、芽を出すまでには、時には長い時問がか かります。けれども、いったん根をおろしたたねは、さまざまな色と形の植物へとそだっていきます。草花も小 さな木も大きな木も、みなさいしょは小さなたねでした・・ この本は、受粉からたねができるまでをときあかすとともに、たねのしくみやふしぎをおしえてくれます。タ ンポポが世界じゅうにひろがっていったわけ、スイカとカリフラワーのちがい、人間と動物の大切な食べもので ある穀物について。土の中には、わたしたちの地球をゆたかにしてくれるたねが、たくさんうまっているのです。 2 ■既刊 地球のいとなみ 花のいとなみ 植物・動物とともに わたしたちの地球の 1 年 花と虫たちの一年 文と絵ウナ・ヤーコプス 文と絵ウナ・ヤーコプス 訳塚原真里子 訳塚原真里子 I S B N 4 ー 9 0 0 6 2 1 - 0 4 - 8 C 8 0 9 7 P 1 8 0 0 E あむすく / 定価 1800 円 ( 本体 1748 円 )

2. たねと果実のいとなみ

Die Früchte-und Samen-Uhr by Una Jacobs Copyright ◎ 1992 by verlag Heinrich Ellermann München 19 This Japanese edition is published in 1996 by Amusuk Publishing, Ltd. , T0kyo by arrangement Verlag Heinrich Ellermann, München

3. たねと果実のいとなみ

タンポポはどのようにしてふえていくのだろう わたげ タンポポのわたばうしをみつけたら、ふうっとふいて、綿毛をとばしてみ ましよう。たくさんの綿毛が風にのって、銀色に光りながらとおくの方まで とんでいきます。下の綿毛を見てください①。うまくとべるように、らっか さんのような形をしています。らっかさんにはタンポポのたねがついていて、 地面におりると、このたねからタンポポ②がはえてきます。やがて、つばみ がついて、花が咲き、花は白いわたばうしにかわります。そして、風がふく いくつもの綿毛が空にとびたっていくのです。 と、また、 一本のタンポポは、いったいどれだけの数にふえていくのでしよう。ひと つのタンポポの花には、多いもので 200 ほどのたねがみのります。そのうち、 3 つのたねだけがいい場所におりて、そだっていくとしたらどうでしよう。 おやかぶ そうしたら、さいしょのタンポポ ( 親株 ) ②のほかに、子どものタンポポが 3 つあることになりますね③。つぎの年、この 3 つのタンポポから、また 3 っすっタンポポがはえて、全部で 9 つになります④。そのつぎの年は、その ばい 3 倍の 27 本のタンポポが、つぎのつぎの年には、また 3 倍の田本のタンポ ポがはえてきます。 ぎんいろ

4. たねと果実のいとなみ

べニバナインゲンマメ しよう 子葉 マメとたまごのはなし しゅひ 種皮 はい 胚 ペニバナインゲン①の実が大きくなって、長いさやからマメがこばれおち ました。マメはやがて、小さな根と芽を出し、そだちはじめます②。このマ メは、べニバナインゲンマメの子どもです。 から めんどり③があたためていたたまごから、ひょこ④が殻をわって出てきま した。マメもひょこも、いまは子どもですが、だんだんとそだってひとりだ ちしていきます。 ところで、インゲンの親子とニワトリの親子と、いったいどんなかんけい があるのでしよう。じつは、マメとたまごは、しくみがたいへんよく似てい しゅひ ます。まず、マメはかたい種皮に、たまこ。はじようぶな殻に、まもられてい ます。それから、マメをたてに 2 つにわってみると、中に小さな根とうす緑 の葉があるのがわかります。これは、胚といって、植物の赤ちゃんのような きみ はいばん ものです。たまこ、の方は、わってみると、黄身の上に白い点 ( 胚盤 ) がのっ ています。この白い点がそだっていくと、ひょこになるのです。 マメもたまごも、おかあさんから栄養をたっぷりもらっています。マメは、 さやの中で、おかあさんと細い軸でつながっていた時に、でんぶん、脂肪、 えいよう しばう 0

5. たねと果実のいとなみ

チューリップの花をのぞいてみたら チューリップの花①がひらいたら、中をのぞいてごらん なさい。花の内がわがどんなにうつくしく、きちんとした つくりになっているかがわかるでしよう。花のひとつひと つの部分には、それぞれ大切な役わりがあります。そして、 もくてき どの部分もおなじひとつの目的のためにはたらいています。 その目的とは、たねをつくることです。この目的は、種子 しよくぶつ 植物であれば、チューリップでもフウロソウでも、いっ らなければなりません。そこで、花粉は、たねをつくるた しょです。 チューリップの花のまんなかに、緑色の柱②が立ってい めに、卵細胞をめざして旅にでます。 らんさい なかには、花粉が自分の花のめしべの先 ( 柱頭 ) ④に ますね。これは、めしべです。めしべの根もとには、卵細 はいしゅ 胞をつつんだ胚珠がはいってます。この部分を、子房とい ついて、たねをつくるものもあります。けれども、たいて いの植物は、めしべに自分の花の花粉がついても、たねが います。めしべのまわりに立っているのは、黄色い花粉を つけたおしべ③です。チューリップのたねができるために つくれません。そこで、花粉は虫や風のたすけをかりて、 別の花のめしべのところまで旅をします。 は、花粉のなかみが、めしべの中の卵細胞といっしょにな しゅし たび しばう かふん 柱こ のと ュ粉 チ花 000000d00d 。 、冫一 000 に ( 00u0 を島 0 0 0 0 望 : フウロソウの花粉をはこぶミッパチ ⑤と、花にたまこを産みつけるシジ ミチョウ⑦。たまごからかえったシ ジミチョウの幼虫は、せつかく受粉 したフウロソウの花を食べてしまい ます。このようなことがあるので、 植物は花を多めに咲かせるのでしょ おしべ 黄色いのは花粉 子房の中 卵細胞が胚珠に つつまれている 10

6. たねと果実のいとなみ

ています。 花粉の旅は、受粉がすんだあともつづきます。その先ど だんめんす うなるか、下の断面図を見てみましよう。花粉がめしべの 先につくと、花粉から細い管が子房の中へのびていきます。 そして、花粉のなかみが管をとおって、おくの卵細胞のと しゅせい ころへゆき、卵細胞ととけあいます。これが、受精です。 いよいよチューリップの赤ぢゃん、胚がそだちはじめます。 胚がそだっていくあいだ、胚のまわりには栄養がたくわ チューリップの花粉をはこぶミッパチ⑤とマルハナバチ えられます。また、胚珠のかべはじようぶな種皮になって、 ⑥を見てみましよう。ハチが花の中にもぐりこむと、から 胚をまもります。これで、たねのできあがりです。たいて だの毛に花粉がくつつきます。ハチは、その花粉を、つぎ いのたねは、そのあとしばらく、かわいたままでいなけれ ばなりません。そうすれば、たねのいのちはめざめずに にもぐりこんだ花のめしべの先にこすりつけます。このよ しゅふん うに、花粉がめしべの先につくことを、受粉といいます。 そのままねむりつづけるからです。そして、かびたり、 受粉がうまくいくようにめしべの先は、ねばねばしていた さったりしないで、長い年月を生きのびることができるの り、ざらざらしていたりして、花粉がくつつきやすくなっ です。 しゅひ 植物には、たねをつくるほかに の方法をつかってふえていくものも あります。たとえば、チューリップ は、たねのほかに球根⑧でふえてい きます。球根を秋のうちに植えてお チューリップの花びらがちると、あ くと、春には芽が出て、花が咲きま す。また、ヘビイチゴ⑨のように とに子房がのこります。その子房を、 左の図のようにたてに切ってみまし 地面の上に茎をのばして、ふえてい よう。中に、白い小さなっぷがたく くものもあります。のびた茎から根 が出て、そこから新しいへビイチゴ さん入っています。このっぷが、チ ューリップのたねになる胚珠です。 がそだちます。

7. たねと果実のいとなみ

かわいたマメ マメのなかまは、水を吸うと、かわいている時のほほ、 2 倍の大 きさになります。ふくらむまでに時間はかかりますが、そのカ はしんじられないほどの強さです。まだ火薬がなかったころは、 この力をつかって岩をわったこともありました。岩のわれめに 工ンドウマメをつめて、上から水をそそぎます。そうすると、 マメがふくらんで、岩が 2 つにわれるのです。 水を吸ったマメ 植物のいのちがめざめる 春がきて、日ざしが強くなり、あたたかい雨がふるよう かつどう になると、植物の活動がはじまります。木々の芽やつばみ がふくらみ、土の中のたねも目をさまして、つぎつぎとそ だちはじめます。そのようすは、まるで庭や野原の地面が、 そっともちあがっていくようなかんじです。 冬のあいだ、たねはかわいて、かたくちぢこまり、死ん だようになっていました。 いま、たねは、水分をどんどん 吸いこんでふくれあがり、はじけそうになっています。あ たたかさとしめり気で、発芽がはじまったのです。たねの 呼吸もだんだんはげしくなってきました。発芽するために さんそ 空気中の酸素がたくさんいるからです。 しゅひ たねの種皮がはじけてわれると、子どもの根が下の方へ のびていきます。つぎに、子どもの茎が光の方へすすんで いきます。この時、ヒマワリやカエデなどは、子葉が地面 の外に出てきます。反対に、ペニバナインゲンのように 土の中の種皮の中に子葉がのこるものもあります。 やがて、子葉にたくわえられていた栄養が全部つかわれ ると、子葉はちぢんで、地面におちます。そのころにはも すいぶん はつが こきゅう 土がなくても、水が十分にあれば、たねは芽を出します。おさ らか何かに、コムギやダイズやダイコンのたねを入れて、水を やってごらんなさい。 2 、 3 日で、小さな芽が出てくるでしよ う。コショウソウ③は、葉が出たら、はさみで切りとって食べ てみましよう。わかい葉はおいしいし、体にもいいのです。 12

8. たねと果実のいとなみ

ケシのたね たねには、本当にいろいろなものがあります。大きさもちがえ ば、形もちがいます。まんまるいもの、だえん形のもの、種皮 にすじがあるものや、でこばこしているもの。大きめの虫めが ねを持っていたら、ジャムの中のっぷや、バンの上にのってい るっぷをしらべてみましよう。っぷの大きさや形やもようから、 何のたねかがわかります。ジャムの中のっぷはキイチゴのたね、 バンの上のっぷはケシのたねだったのですね。 キイチゴのたね さいしょ う、最初の新しい葉ができていて、それからあとは、新し い葉と根が栄養をとりこみます。 かんさつ ほんの小さなたねから植物がそだっていくようすを観察 していると、おどろくことがたくさんあります。たとえば、 花だんにたねをまく時期は、花屋さんにきけば、おしえて くれますね。でも、野原や道ばたでは、たねは、前の年の 夏に土の上にこばれています。それなのに、なぜ、秋や冬 のあたたかい日に芽を出したりしないのでしようか。 きゅうみん それは、たねが休眠しているからです。たねはふつう、 親の植物からはなれたあと、ぐっすりとねむります。そし て、あたたかくて、しめり気があるだけでは、目をさまし あいす ません。目をさますには、もうひとつほかに合図がいるの です。 たねのなかには、土にうまらないと芽が出ないものがあ ります。発芽するために、くらがりが必要なのです。反対 に、レタスのように、明るくならないと目をさまさないた リンゴのように ねもあります。また、 いったん氷や雪に うもれてからでないと、発芽しないものもあります。きび しいさむさのあとであたたかくなってはじめて、春が来て、 きせつ そだつのにいい季節になったことがわかるからです。 芽を出したたねの拡大図 ①カエデ ⑤カボチャ ⑨タンポポ ②ヒマワリ ⑥ノウゼンハレン ⑩コムギ ③コショウソウ ⑦ソラマメ ⑩トウモロコシ ④レタス ⑧ペニバナインゲン @ リンゴ 13

9. たねと果実のいとなみ

花から実へ わせて、果実といったり、実といったりします。なかには、 をまもる入れ物になります。この入れ物と、中のたねをあ ねをつつんだ子房です。子房はどんどんふくらんで、たね しばう 花がちったあと、植物にとっていちばん大切なのは、た いきます。 おおいますし、うつくしい野の花も、だんだんと色あせて はすぐにちって、花びらが白いじゅうたんのように地面を けれども、花のいのちはあまり長くはありません。サクラ ョウがいそがしくとびまわって、受粉のてつだいをします。 しゅふん ミッパチやチ さまざまな色と形の花が、つぎつぎに咲き、 野原はいま、花のまっさかりです。春から夏にかけて、 ①セイヨウサクラソウ②ヒナゲシ③ムギセンノウ④ナズ ナ⑤セイヨウアプラナ⑥タンポポ⑦シャク⑧シプリペ ジウム⑨オルキス⑩オフリス⑩キンボウゲ @クサフジ ⑩コロニラ⑩セイヨウォダマキ⑩イヌサフラン⑩セイ ョウミザクラ⑩野バラ

10. たねと果実のいとなみ

ラン⑧⑨⑩のたねは、ちょっとかわっています。たねがとても 小さくて、胚がそだっていくための栄養がはいっていません。 そのため、たねは親からはなれたら、すぐにだれかにたすけて もらわなければなりません。ランのたねに栄養をあたえて、そ だててくれるのは、菌類です。でも、ランのたねが、うまく菌 類のところにとんでいくとはかぎりませんね。そこで、ランの なかまはたねをたくさんつくります。たとえば、オルキス⑨は ーっの花に田万個のたねがみのります。これなら、少なくと もいくつかのたねは、うまく菌類のところにたどりつけること でしよう。 野バラのように、花床 * と子房がいっしょになって、果実 になるものもあります。 花とおなじように、果実も、本当にいろいろな形をして います。野の花には、みごとなカプセルやさやをつくるも のがたくさんあります。風がカプセルやさやをゆすると、 中でみのったたねがさらさらと音をたてたり、からからと なったりします。そして、カプセルのふたやさやのつぎめ がひらいて、たねが外にこほ、れ出ていきます。 また、サクランボのように、たねが、しるのあるあまい 入れ物につつまれている実もあります。このような実は、 じゅくすと入れ物にはいったまま地面におちます。 * 花床・・・花びらやおしべやめしべをのせている台の部分