春に - みる会図書館


検索対象: たねと果実のいとなみ
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1. たねと果実のいとなみ

土の中のたからもの 一年がおわりました。つぎの年がはじ まり、その年もまた、おわりに近づいて いきます。春から夏へ、秋から冬へと、 えいえん 季節は永遠にめぐります。 ヒマワリも、季節のうつりかわりとと もに生きています。秋にみのったたねは、 冬のあいだ、土の中でねむり、春に芽を 出し、そだっていきます。夏には花が咲 き、たねがつくられ、秋にはまた、何百 ものたねがばらまかれます。 いったいどれだけの草や木のたねが、 地面にばらまかれることでしよう。もし、 わたしたちの耳がもっとよくきこえたら、 たねのこばれる音が、雨の音のようにき こえるかもしれません。地面におちたた ねは、土のすきまにはいりこみます。そ して、落ち葉におおわれたり、畑の土と いっしょにたがやされたりします。動物 が土の中にうめることもあります。 しゆるい たねのじゅみようは、たねの種類によ ってさまざまです。田 0 年も生きるたね もあれば、田年くらいのたねもありま す。長生きで知られるたねは、北カナダ

2. たねと果実のいとなみ

コメガヤ クサノオウ スミレ まかい針がたくさんついていますね。針の先は、あみもの 皮がかたくて、アリにはかじることができません。そこで、 しばうぶん のかぎ針のようにまがっていて、ひっかかりやすくなって アリは、たねについている脂肪分の多いおまけの部分を食 います。このほかに、オオバコのように、ねばねばしたし べて、かたいたねはどこかにほおっておきます。すると、 るでくつつく実もあります。 そのたねからやがて芽が出てくるのです。 ぞうきばやし 春や夏の雑木林では、えさを巣にはこぶアカヤマアリ③ 動物と植物のたすけあいの、なんとすばらしいことでし をみかけます。アカヤマアリのえさは、小さな虫の死がい よう。植物は、動物にたねをはこんでもらい、動物はその や草の実です。いちばん手前のアリがはこんでいるのは、 おれいに、たねのおまけをもらいます。動物も、植物も、 ムラサキケマンのたねです。ムラサキケマンのたねは、種 たすけあいながら、生きていくくふうをしているのです。 27

3. たねと果実のいとなみ

花から実へ わせて、果実といったり、実といったりします。なかには、 をまもる入れ物になります。この入れ物と、中のたねをあ ねをつつんだ子房です。子房はどんどんふくらんで、たね しばう 花がちったあと、植物にとっていちばん大切なのは、た いきます。 おおいますし、うつくしい野の花も、だんだんと色あせて はすぐにちって、花びらが白いじゅうたんのように地面を けれども、花のいのちはあまり長くはありません。サクラ ョウがいそがしくとびまわって、受粉のてつだいをします。 しゅふん ミッパチやチ さまざまな色と形の花が、つぎつぎに咲き、 野原はいま、花のまっさかりです。春から夏にかけて、 ①セイヨウサクラソウ②ヒナゲシ③ムギセンノウ④ナズ ナ⑤セイヨウアプラナ⑥タンポポ⑦シャク⑧シプリペ ジウム⑨オルキス⑩オフリス⑩キンボウゲ @クサフジ ⑩コロニラ⑩セイヨウォダマキ⑩イヌサフラン⑩セイ ョウミザクラ⑩野バラ

4. たねと果実のいとなみ

①リンゴ ②ラズベリー ③ヒマワリ ④ハンノキの球果 ⑤ブナの実 ⑥野バラの実 ⑦シジュウカラ 28 たねと実を食べる鳥 夏もおわりに近づきました。春に白い花を咲かせた リンゴの木には、じゅくした実がなり、シジュウカラ のひなも、すっかりおとなにそだちました。 いも虫や蚊をさがして、 秋のあいだ、鳥たちはまだ、 とびまわっています。けれども、夜にしもがおりるよ うになると、虫は死んだり、冬ごもりのためにどこか にかくれたりします。そこで、やわらかいえさしか食 べられない鳥は、あたたかい国へわたっていきます。 いつほう、冬のあいだもおなじところにいる鳥は、く ちばしが強く、胃がじようぶです。それは、たねや木 の実など、かたいえさを食べるためです。 こくもつ シジュウカラのように、穀物を食べる鳥は、ヒマワ リのたねでも、三角のかたいブナの実でも、うまくつ つき出して食べてしまいます。もし、植物がこんなに たくさんたねをつくるのでなかったら、全部食べられ てしまったかもしれませんね。鳥たちは、たねをくわ えて、いそがしくとびまわっているうちに、たねをい くつかおとしてしまいます。こうして、たねはまた新 しい場所へばらまかれていくのです。 ヒマワリのたねは脂肪分が多いので、 サラダ油やマーガリンをつくったり します。栄養がたっぷりありますか ら、冬のあいだはとくに、鳥たちの 大切な食べものです。

5. たねと果実のいとなみ

ています。 花粉の旅は、受粉がすんだあともつづきます。その先ど だんめんす うなるか、下の断面図を見てみましよう。花粉がめしべの 先につくと、花粉から細い管が子房の中へのびていきます。 そして、花粉のなかみが管をとおって、おくの卵細胞のと しゅせい ころへゆき、卵細胞ととけあいます。これが、受精です。 いよいよチューリップの赤ぢゃん、胚がそだちはじめます。 胚がそだっていくあいだ、胚のまわりには栄養がたくわ チューリップの花粉をはこぶミッパチ⑤とマルハナバチ えられます。また、胚珠のかべはじようぶな種皮になって、 ⑥を見てみましよう。ハチが花の中にもぐりこむと、から 胚をまもります。これで、たねのできあがりです。たいて だの毛に花粉がくつつきます。ハチは、その花粉を、つぎ いのたねは、そのあとしばらく、かわいたままでいなけれ ばなりません。そうすれば、たねのいのちはめざめずに にもぐりこんだ花のめしべの先にこすりつけます。このよ しゅふん うに、花粉がめしべの先につくことを、受粉といいます。 そのままねむりつづけるからです。そして、かびたり、 受粉がうまくいくようにめしべの先は、ねばねばしていた さったりしないで、長い年月を生きのびることができるの り、ざらざらしていたりして、花粉がくつつきやすくなっ です。 しゅひ 植物には、たねをつくるほかに の方法をつかってふえていくものも あります。たとえば、チューリップ は、たねのほかに球根⑧でふえてい きます。球根を秋のうちに植えてお チューリップの花びらがちると、あ くと、春には芽が出て、花が咲きま す。また、ヘビイチゴ⑨のように とに子房がのこります。その子房を、 左の図のようにたてに切ってみまし 地面の上に茎をのばして、ふえてい よう。中に、白い小さなっぷがたく くものもあります。のびた茎から根 が出て、そこから新しいへビイチゴ さん入っています。このっぷが、チ ューリップのたねになる胚珠です。 がそだちます。

6. たねと果実のいとなみ

ケシのたね たねには、本当にいろいろなものがあります。大きさもちがえ ば、形もちがいます。まんまるいもの、だえん形のもの、種皮 にすじがあるものや、でこばこしているもの。大きめの虫めが ねを持っていたら、ジャムの中のっぷや、バンの上にのってい るっぷをしらべてみましよう。っぷの大きさや形やもようから、 何のたねかがわかります。ジャムの中のっぷはキイチゴのたね、 バンの上のっぷはケシのたねだったのですね。 キイチゴのたね さいしょ う、最初の新しい葉ができていて、それからあとは、新し い葉と根が栄養をとりこみます。 かんさつ ほんの小さなたねから植物がそだっていくようすを観察 していると、おどろくことがたくさんあります。たとえば、 花だんにたねをまく時期は、花屋さんにきけば、おしえて くれますね。でも、野原や道ばたでは、たねは、前の年の 夏に土の上にこばれています。それなのに、なぜ、秋や冬 のあたたかい日に芽を出したりしないのでしようか。 きゅうみん それは、たねが休眠しているからです。たねはふつう、 親の植物からはなれたあと、ぐっすりとねむります。そし て、あたたかくて、しめり気があるだけでは、目をさまし あいす ません。目をさますには、もうひとつほかに合図がいるの です。 たねのなかには、土にうまらないと芽が出ないものがあ ります。発芽するために、くらがりが必要なのです。反対 に、レタスのように、明るくならないと目をさまさないた リンゴのように ねもあります。また、 いったん氷や雪に うもれてからでないと、発芽しないものもあります。きび しいさむさのあとであたたかくなってはじめて、春が来て、 きせつ そだつのにいい季節になったことがわかるからです。 芽を出したたねの拡大図 ①カエデ ⑤カボチャ ⑨タンポポ ②ヒマワリ ⑥ノウゼンハレン ⑩コムギ ③コショウソウ ⑦ソラマメ ⑩トウモロコシ ④レタス ⑧ペニバナインゲン @ リンゴ 13

7. たねと果実のいとなみ

かわいたマメ マメのなかまは、水を吸うと、かわいている時のほほ、 2 倍の大 きさになります。ふくらむまでに時間はかかりますが、そのカ はしんじられないほどの強さです。まだ火薬がなかったころは、 この力をつかって岩をわったこともありました。岩のわれめに 工ンドウマメをつめて、上から水をそそぎます。そうすると、 マメがふくらんで、岩が 2 つにわれるのです。 水を吸ったマメ 植物のいのちがめざめる 春がきて、日ざしが強くなり、あたたかい雨がふるよう かつどう になると、植物の活動がはじまります。木々の芽やつばみ がふくらみ、土の中のたねも目をさまして、つぎつぎとそ だちはじめます。そのようすは、まるで庭や野原の地面が、 そっともちあがっていくようなかんじです。 冬のあいだ、たねはかわいて、かたくちぢこまり、死ん だようになっていました。 いま、たねは、水分をどんどん 吸いこんでふくれあがり、はじけそうになっています。あ たたかさとしめり気で、発芽がはじまったのです。たねの 呼吸もだんだんはげしくなってきました。発芽するために さんそ 空気中の酸素がたくさんいるからです。 しゅひ たねの種皮がはじけてわれると、子どもの根が下の方へ のびていきます。つぎに、子どもの茎が光の方へすすんで いきます。この時、ヒマワリやカエデなどは、子葉が地面 の外に出てきます。反対に、ペニバナインゲンのように 土の中の種皮の中に子葉がのこるものもあります。 やがて、子葉にたくわえられていた栄養が全部つかわれ ると、子葉はちぢんで、地面におちます。そのころにはも すいぶん はつが こきゅう 土がなくても、水が十分にあれば、たねは芽を出します。おさ らか何かに、コムギやダイズやダイコンのたねを入れて、水を やってごらんなさい。 2 、 3 日で、小さな芽が出てくるでしよ う。コショウソウ③は、葉が出たら、はさみで切りとって食べ てみましよう。わかい葉はおいしいし、体にもいいのです。 12

8. たねと果実のいとなみ

ゲラ③は、球果の根もとをつついて、枝からはずします。そして、前もっ みき てつくっておいた木の幹の穴に、球果をおしこんで、たねをとり出します。 このように、たねを食べる方法は、鳥や動物によってさまざまです。ですか ら、食べあとをしらべれば、だれが木の実を食べたかがわかります。 動物たちは、たねを食べるいつほうで、たねをばらまく役わりもしていま す。たとえば、リスやカケスは、落葉やコケの下に、冬に食べるドングリを 何百個もかくしておきます。けれども、そのうちいくつかはかくし場所をわ すれてしまいます。そのドングリが、春になると芽を出すのです。 ホシガラス⑧も、カケスとおなじよ 一年のあいだに、 たくさんのたねと果実がそだち、みのりました。一年の うに、冬にそなえて、木の実をかく さいごにみのるのは、クリスマスのかざりにつかう、ヤドリギの実⑦です。 します。時には、もとの木から、何 キロメートルもはなれたところに 食べものの少ない時期にみのるヤドリギの実は、ヤドリギッグミ⑥などの鳥 木の実をかくすこともあります。ホ シガラスののどは、大きく広がるの たちへの自然のおくりものなのかもしれません。 で、ドングリがいっぺんに田個も はいります。木の実をはこぶのにべ んりですね。 暑い国にはえているマツには、かわ ったものがあります。マッカサが、 25 年以上もおちないで、枝につい ているのです。ある日、山火事がお きて、火が木の上をとおりすぎると、 熱でようやくマッカサがひらき、た ねが外に出ていきます⑨。 きゅうか きゅうか 鳥たちはヤドリギの実⑦が大好きです。でも、 ヤドリギの実を食べると、ねばねばしたたねが くちばしについてしまいます。そこで、鳥は、 木の枝にくちばしをこすりつけて、ねばねばを 取ります。ヤドリギのたねは、 こうして、新し い場所にちらばっていきます⑩。 カケス④が食べわすれたナラの実⑩から、芽が 出てきました。この芽は、カケスのひなのごち そうです。カケスの親は、ナラのわかい茎をき ずつけないように、子葉のところだけそっとつ みとって、ひなに食べさせます。 ⑨ 33

9. たねと果実のいとなみ

ほんの小さなたねの中に、なんとふしぎで、すばらしい世界がかくされていることでしよう。みのったたねは、 地面にたどりつくまで、さまざまなばうけんをします。らっかさんや羽や小さな帆にぶらさがって、空をとぶた ねがあるかと思えば、自分からはじけてとんでいくたねもあります。水の流れにはこばれるたねもあれば、動物 の体にくつついて旅をするたねもあります。たねがいい場所をみつけ、芽を出すまでには、時には長い時問がか かります。けれども、いったん根をおろしたたねは、さまざまな色と形の植物へとそだっていきます。草花も小 さな木も大きな木も、みなさいしょは小さなたねでした・・ この本は、受粉からたねができるまでをときあかすとともに、たねのしくみやふしぎをおしえてくれます。タ ンポポが世界じゅうにひろがっていったわけ、スイカとカリフラワーのちがい、人間と動物の大切な食べもので ある穀物について。土の中には、わたしたちの地球をゆたかにしてくれるたねが、たくさんうまっているのです。 2 ■既刊 地球のいとなみ 花のいとなみ 植物・動物とともに わたしたちの地球の 1 年 花と虫たちの一年 文と絵ウナ・ヤーコプス 文と絵ウナ・ヤーコプス 訳塚原真里子 訳塚原真里子 I S B N 4 ー 9 0 0 6 2 1 - 0 4 - 8 C 8 0 9 7 P 1 8 0 0 E あむすく / 定価 1800 円 ( 本体 1748 円 )

10. たねと果実のいとなみ

Die Früchte-und Samen-Uhr by Una Jacobs Copyright ◎ 1992 by verlag Heinrich Ellermann München 19 This Japanese edition is published in 1996 by Amusuk Publishing, Ltd. , T0kyo by arrangement Verlag Heinrich Ellermann, München