ミッパチは、花から 蜜と花粉をもらって、 なかまのえさにする 花は、 ミッパチに受粉 をてつだってもらい、 たねをつくって、なか まをふやす くして、カプセルのような実からこばれおちます。 たがいにたすけあう ミッパチにはこばれた花粉が、めしべの柱頭につくと、 花粉をはこんだミッパチは、おれいに、花から蜜とあま なにがおこるのでしようか。 った花粉をもらいます。そして、巣にもどると、のんだ蜜 まず、めしべの柱頭についた花粉から、細い管がのびて をはきだして、ほかのなかまに食べさせたり、冬にそなえ はいしゅ いちぶ きます。管が子房の中にある胚珠にとどくと、花粉の一部 て、巣の中にためたりします。これが、ハチミツです。 らんさいぼう じゅせい が、胚珠の中の卵細胞と、とけあいます。これを、受精と みなさんも、もう気がついたことでしよう。花とミッパ ひつよう いいます。このとき、花粉は男のやくわりを、卵細胞は女 チは、おたがいを必要とし、たすけあう、なかのいい友だ せいぶつがく ちです。このような、なかよしのかんけいを、生物学のこ のやくわりをしています。受精した卵細胞は、やがて胚に きようせい から そだちます。胚は、親から養分とかたい殻をもらって、た とばで、共生といっています。 ねになります。なかには、胚のまわりの子房がふくらんで 花とミッパチのかんけいは、自然の中でたいへん大きな はたらきをしています。毎年、花がさき、たねがみのるの いくものもあります。この部分は、たねがじゅくすころ、 くだものになります。 も、花とミッパチがなかよしだからです。そして、この友 じよう ヒナゲシの子房の中には、胚珠がたくさんありますから、 情のおかげで、わたしたちも、おいしいくだものやハチミ たねもたくさんできます。たねは、夏のおわりごろ、じゅ ツを食べることができるのです。 はい 柱頭 つばみ ヒナゲシの実 ナゲシを受粉させるミ ツノヾチ ヒナケ、、 たね
人形づくりと花びらの絵 野原で花をつむのは、たのしいものです。でも、花をつ みすぎないように気をつけましよう。小さな花びんにいけ たり、虫めがねで花のしくみをしらべるためには、ほんの 少しの花でじゅうぶんです。花をつんだら、しめった紙に そっとつつみます。家にかえったら、もういちど根もとを 切って、花びんやコップにいけましよう。 野の花のなかには、数がたいへん少なくなってしまった ものがあります。そういう花は、けっして、とってはいけ ません。これいじよう、花の数がヘると、たねがつくれな くなり、ほろんでしまうからです。数が少なくなった植物 は、だいじに保護するきまりになっています。 けれども、たくさんはえている野草なら、 2 、 3 本つん で、家にもってかえってもだいじようぶです。タンポポや キンボウゲ、野原にさくヒナギク、野生のニンジンやヒナ ゲシ。ほかに、どんな花がみつかるでしようか。 では、ヒナゲシの花と実で、人形をつくってみましよう。 ヒナゲシのつばみ①の茎をみじかく切って、がくをそっと はがすと、まっかな花びらが出てきます。この花びらが、 カプセル 花びら
タンポポのねばねばした花粉 ( かくだい図 ) 花粉をはこぶもの 春の野原や、リンゴの木①のそばで、耳をすませてみま しよう。フンフンいう音がきこえたら、 ツバチがいるし ようこです。 ノハラガラシの花②の蜜を吸う、 ミッパチを見てくださ い。からだに、黄色い花粉がたくさんついていますね。蜜 を吸いおえたミッパチが、べつのノハラガラシの花にもぐ りこむと、 ミッパチのからだについていた花粉が、めしべ じゅふん の柱頭にくつつきます。これを、受粉といいます。受粉は、 花にとって、とても大切なことです。 しゆるい ミッパチは、いろんな種類の花から花へと、気ままにと びまわっているわけではありません。しばらくのあいだは、 おなじ種類の花の蜜をあつめます。これも、とてもだいじ なことです。なぜなら、花粉が、ちがう種類の花のめしべ にくつついても、なにもおこらないからです。 ミッパチは、花から花へ、とびまわりながら、からだに ついていた花粉を、うしろ足の毛のポケットに、じようず につめこみます。そして、蜜でおなかがいつばいになると、 すばこ 花粉のおみやげをもって、巣箱にかえっていきます。 うしろ足の ポケットに 花粉をいれる
この本にのっていること 花と動物たち ているか、また、ちがうところは 植物と動物は、どんなところがに 春のめざめ きゅうこん はいしゅ う / ミッパチが花からもらうもの の受粉をてつだっているのだろ じゅふん ミッパチは、どのようにして、花 花粉をはこぶもの かふん ついて り / 虫のための小さな道しるべに くみと、それぞれの部分のやくわ ぶぶん 花の色とかおりについて / 花のし 胚珠をまもり、虫をさそう して春がきたことを知るのだろう が芽を出す / 球根は、どのように 春がくると、チューリップの球根 つ のようにたすけあっているのだろ 花と虫はなかよし / 花と虫は、 たがいにたすけあう そのとくちょう 風に花粉をはこんでもらう花と、 風にのってとぶ ど みつす 花の蜜を吸う ふんかん 虫の吻管の長さと、花の形のかん けい / 蜜の場所をおしえてくれる しんせつな花 / 蜜どろばうのこと 野生のサルビアのくふう 野生のサルビアの、おしべとめし べのはたらき / じようぶなたねを つくるために つかまったり、だまされたり アラムの花は、なぜ、いやなにお いをだすのだろう / 虫をだまして、 生きのびるために つかまえる植物 間のせいで、ほろびかけている植 ら身をまもっているのだろう / 人 植物は、どのようにして、動物か 花時計 物について / 花の上で、えものをねらうクモ 花には、いろんな虫がすんでいる 花の家 は、なぜか さいている時間がきまっているの 花がさく時間、しばむ時間 / 花が 花にまつわる話 花の歴史と物語 / 花の名前がつい せかいきようつう たわけ / 世界共通の名前について 花をぶんるいする 花にもしんせきがある / 花をぶん ほうほうひょうほん るいする方法 / 標本のつくりか たについて 人形づくりと花びらの絵 つんでいい花と、とってはいけな い花 / 花びらや実で、いろんなも のをつくってみよう あたらしい花をつくる そ バンジーができるまで / 野生の祖 せん 先について 花がしおれていく季節 花がちり、虫が死んでいく秋 / じ ゆくしたたねが、風や動物にはこ ばれて、あちこちにちらばってい く やせい きせつ 冬のたのしみ ドライフラワーのつくりかた / 花 のかおりをたのしむ / あたたかい 部屋の中で、花をそだてるには
つかまったり、だまされたり たいていは、なかよくたすけあう花と虫ですが、ときに は、あいてをだますこともあります。花が虫をわなにかけ るとしたら、もう、なかのいい友だちとはいえませんね。 サトイモのなかまのアラムは、とてもかわった植物です。 うす緑色の苞 * の中に、うすむらさきのばうのようなもの くら が立っていて、暗い森の中で、きみわるくひかります。 このばうは、動物のふんやしがいのような、ものすごく いやなにおいを出します。けれども、なかには、このにお いにさそわれて、とんでくる虫もいます。それは、ハエや シデムシなど、動物のふんやしがいにたかる虫です。ハエ やシデムシにとっては、このにおいは、ごちそうや、たま ごをうむ場所のにおいなのです。 チョウバエが、アラムのうす緑色の苞にとまろうとして、 すべって、苞の中に落ちてしまいました。落ちたチョウバ 工は、いったいどうなるのでしようか。アラムの苞のうち がわは、あぶらでつるつるしていて、よじのばることがで きません。それに、上の方にかたい毛がはえていて、出口 をふさいでいます。アラムはチョウバエをとじこめてしま ったのです ! でも、チョウバエは、ひどいめにあうわけ ではありません。中はあたたかいし、蜜もあるのですから。 とじこめられたチョウバエがはいまわっているうちに からだについていた花粉がめしべにくつついて、受粉がお やく こなわれます。そのあとで、おしべの葯がひらいて、花粉 がチョウバエのからだにかかります。やがて、夜があける ころには、かべにしわがより、出口の毛もしおれて、チョ ウバエは外に出ていきますが、またすぐに、つぎのアラム の花にだまされてしまいます。 このように、花には、虫をわなにかけるものもあります ぜんたい が、全体から見れば、わずかにすぎません。 チョウが、アラムの苞 の中から出られなくな ることは、ありません。 * 苞・・・色や形がかわったとくべつな葉。花びらのように見えることもある ほう くさいにおいをだす おしペ 柱頭
こうえん にわ いだに見えてくるころには、庭や公園は、ヒヤシンス⑦、 ラッパズイセン⑧、、クチベニズイセン⑥、サクラソウ⑤な どでいつばいです。 球根に、芽を出す時期をおしえてくれるのは、さむさと あたたかさ、雨と風です、、、けれども冬でもあたたかい日 があたり、春でもさむし当があ。たりしますね。それな のに、球根はなぜ、芽を出す時期をまちがえないのでしょ てんき うか。それは、天気のほかにもうひとつ、日の長さという、 あいず たしかな合図があるからです。冬 ? あとで、昼がだんだん 長くなり、あたたかくなっていけば、もうじき春だという 合図、夏のあっさがすぎて、日がみじ、くなり、すずしく ひる なっていけば、秋がきたという合図です。 へんか 一日一日の小さな変化を、植物はしつかり感じています。 そして、その変化から、季節をよみとています。芽を出 し、花をさかせる季節、たねをみの、せる季節、しずかに じっとしている季節、といったよ、に、それぞれの季節に あわせて、じようずに一年をすこ・します。 けんか 植物のうち、花をさかせるのを、顕花植物、または、 種子植物といいます。近くに花があったら、ちょっとなが めてみましよう。ペランタのはちうえの花でも、庭の花で も、道ばたの花でも、カまいません。どんな花でも、自然 ほうそく こはたらいています。 の法則は、おなじよ、 しゅし
oa. ~ 人形のドレスになります。つぎに、人形の頭の部分をつく ります。頭になるのは、ヒナゲシの実②です。実から茎を 切りとり、そのあとに、えんびつの先で小さなあなをあけ ます。あなに、さっきのつばみの茎をさしこめば、人形の できあがりです。うまく立たないときは、赤いスカートの 下に、ねんどを少しつけてみてください。 雨がふっていて、外であそべない日は、おし葉やおし花 で、いろんな絵をつくってみましよう。ヒナギクやシロッ メクサで、小さなかんむりをつくったり、花びらでおひめ ざいりよう さまをつくったり。ます、材料をぜんぷひろげてみて、ど んな絵にするかをきめます。おし葉やおし花には、うすく て、水分の少ないものがむいています。細長い草や、シダ、 秋のモミジやイチョウもきれいですし、もちろん、よっぱ のクローバーがあれば、さいこうです。つんできた花や葉 は、紙にはさみ、おもしをのせ、 3 週間そのままにしておき ます。花びらや葉がかわいて、たいらになったら、そっと とりだし、小さなめんばうでのりをつけましよう。友だち におくる手紙にはったり、カードにして、プレゼントとい っしょにわたすのも、いいですね。
04 やせい 野生のサルビアのくふう どんなにめだたない、小さな花でも、受粉がうまくいく いろんなくふうをしています。夏休みになったら、 かんさつ 野原にいって、花を観察してみましよう。 たとえば、野生のサルビアは、どんなくふうをしている でしようか。まず、いちばん上の、さいたばかりの花①を 見てください。なんだか、くちびるのような形の花ですね。 うわ めしべが、上くちびるの花びらの先から出ています。おし べは、まだ、上くちびるの中にかくれています。 ミッパチがとんできて、下くちびるの花びらにとまりま あたま ーミッパチが、花のおくに頭をつつこむと、おしべの 根もとがおし下げられます。すると、上くちびるからおし べが出てきて、ミッパチのせなかに花粉をはたきます②。 ミッパチがいないときには、じぶんでためしてみましよう。 花のおくに、細長い葉をさしこむと、おしべが出てきます。 葉をひきぬくと、おしべは、上くちびるの中にかくれます。 ちゅうとう 花粉がなくなると、おしべはしおれ、めしべの柱頭が下 にのびてきます。そして、花にやってきたミッパチのから だから、べつの花の花粉をうけとります③。 めしべとおしべは、すぐ近くにあるのに、なぜ、こんな にめんどうなことをするのでしようか。それは、花粉が、 おなじ花のめしべにつかないようにするためです。花粉が、 どうかじゅふん おなじ花のめしべにつくことを、同花受粉といいますが、 同花受粉でできたたねは、よわくて、芽が出ないことがあ ります。そこで、花は、なるべくべつの花から花粉をもら おうと、さまざまなくふうをしているのです。 モンシロチョウが花にやってきました。でも、モンシロ チョウは、野生のサルビアの花粉をはこんではくれません。 ふんかん チョウの吻管は長くて、花にもぐりこまなくても、蜜を吸 うことができるからです。こういうとき、花は、花粉をは こんでくれるほかの虫を、じっとまっしかありません。 モンシロチョウ
花と動物たち ちきゅう 地球には、かぞえきれないほどたくさん の花がさいています。みなさんのよく知っ ているタンポポも、そのひとつです。 にんげん 動物や人問とおなじように、タンポポに も、いのちがあります。このように いの せいぶつ ちあるものを、生物といいます。生物はみ な、栄養をとり、大きくなって、なかまを ふやし、いつの日か、死んでいきます。人 しよくぶつ 間も、動物も、タンポポのような植物も、 それはおなじです。 植物は、毎年花をさかせ、たねをつくる どりよく ために、さまざまな努力をしています。そ の多くは、動物たちのしている努力と、よ くにています。たとえば、チューリップは、 きゅうこんようぶん さむい冬にそなえて、土の中の球根に養分 をたくわえますが、これは、ハムスター② こくもつ が、土の中の巣に穀物をためておくのとに ています。また、バラやアザミは、ハリネ ズミ⑧とおなじように、とがったはりやと げで、身をまもっています。 植物は、モリフクロウ⑥のようにみはり をすることもなければ、ネコ③のようにい ねむりすることもありません。けれども、 たいよう かん 太陽がどこにあるかを感じることはできま きせつ すし、ちゃんと、やすむ季節もあるのです。 さて、絵の中に、ふんをしている小鳥 ( ノドジロムシクイ ) ④がいますね。動物は みな、えさを食べたあと、ふんをします。 しようか これは、消化できないものや、いらないも そと のを、からだの外に出すためです。植物は、 いらないものを、ま ふんをするかわりに はなどうぶつ えいよう
いを とはちがい、しずかで、めだたないものです。こうした努 ります。とがった葉や、かたい毛や、ねばねばしたしるで、 力をつづけながら、植物は、何百万年もまえから、花をさ 動物を近づけないようにしている植物もあります。 また、あじがまずければ、食べられずにすみますね。び かせ、たねをつくって、子孫をのこしてきました。ところ が、いま、花の数はだんだんすくなくなり、きえてしまっ りびりしたあじゃ、にがいあじでは、食べる気になりませ た植物や、ほろびかけている植物もでてきました。それは、 ん。まきばでは、よく、キンボウゲの花だけが、ウシに食 人問が土や水や空気をよごしたり、野原に家や道路をつく べられずに、のこっていることがあります。それは、キン ったりして、植物のすむ場所をうばっているからなのです。 ボウゲに、にがいあじの毒があるからです。ほかにも、と がって食べにくい部分や、かたいすじがあったりすると、 ⑦ウタッグミ ⑧コウラクロナメクジ 動物は食べるのをやめて、もっと食べやすいほかの植物を ⑨モリマイマイ さがしにいきます。 ⑩コフキコガネ ⑩バッタ ところで、植物は、にがいあじゃ、びりびりしたあじを、 @コロラド甲虫 ⑩アオムシ どのようにつくっているのでしようか。 7 ページで、植物 はなし は、いらなくなったものを葉にためておく、という話をし ましたね。植物は、にがいあじをつくるために、 , のいら なくなったものを、うまくつかっているのです。 植物が生きのびるための努力は、動物どうしのたたかい ノ / ヾラ