ノウゼンハレンの一年 春、ノウゼンハレンのたねが、芽を出します。 夏になると、花がさき、受粉と受精がおこな われて、たねができます。秋に、みのったた ねは地面におちます。たねは、冬のあいだ、 土の上で春をまち、やがて春がくると、たね はふたたび芽を出して・・ 15
春のめざめ 花の一年がはじまりました。おもては、まだつめたい風 のはら がふいて、まるで冬のようです。でも、野原ではもう、白 やピンクのクリスマスローズ②がさきはじめました。さむ い冬のあいだも、植物はずっと生きていたのです。 雪の中から、スノードロップの花⑨が見えはじめました。 やがて、クロッカスの花④がさくと、いよいよ春です。 ときおり、黄色いクロッカスの花びらがむしられて、ち っているのをみかけます。これは、ツグミのオス③のしわ ざです。黄色いクロッカスと、ツグミのオスのくちばしは、 色がそっくりです。ですから、ツグミは、春、巣づくりを しているときに、黄色いクロッカスを見ると、ほかのオス がじゃまをしにきたとおもって、こうげきします。それで、 クロッカスの花はめちやめちゃにされてしまうのです。 春の花には、球根から芽を出すものがたくさんあります。 チューリップ①も、そのひとつです。チューリップは、秋 のうちに、球根に養分をたくわえ、小さな花と葉のもとを つくっておきます。そして、さむい冬のあいだは、土の中 の深いところでぎゅっとちぢこまって、春をまちます。 春になり、日が長くなってくると、あたたかい空気が、 土の中の深いところまで、はいってきます。そして、光の かわりに、球根に春をしらせます。土にじゅうぶんなしめ おんど りけがあり、温度が田度くらいまで上がると、チューリッ プの球根から芽が出てきます。芽は、球根から養分をたっ ぶりもらって、ぐんぐんのびていきます。 スノードロップやクロッカスの球根は、温度がすこし上 がっただけで、春がきたことに気づきます。そして、春い ちばんに芽を出して、花をさかせます。 もっとあたたかくなってくると、いろいろな花が、つぎ つぎとさきはじめます。チューリップのつばみが、葉のあ ふか
こうえん にわ いだに見えてくるころには、庭や公園は、ヒヤシンス⑦、 ラッパズイセン⑧、、クチベニズイセン⑥、サクラソウ⑤な どでいつばいです。 球根に、芽を出す時期をおしえてくれるのは、さむさと あたたかさ、雨と風です、、、けれども冬でもあたたかい日 があたり、春でもさむし当があ。たりしますね。それな のに、球根はなぜ、芽を出す時期をまちがえないのでしょ てんき うか。それは、天気のほかにもうひとつ、日の長さという、 あいず たしかな合図があるからです。冬 ? あとで、昼がだんだん 長くなり、あたたかくなっていけば、もうじき春だという 合図、夏のあっさがすぎて、日がみじ、くなり、すずしく ひる なっていけば、秋がきたという合図です。 へんか 一日一日の小さな変化を、植物はしつかり感じています。 そして、その変化から、季節をよみとています。芽を出 し、花をさかせる季節、たねをみの、せる季節、しずかに じっとしている季節、といったよ、に、それぞれの季節に あわせて、じようずに一年をすこ・します。 けんか 植物のうち、花をさかせるのを、顕花植物、または、 種子植物といいます。近くに花があったら、ちょっとなが めてみましよう。ペランタのはちうえの花でも、庭の花で も、道ばたの花でも、カまいません。どんな花でも、自然 ほうそく こはたらいています。 の法則は、おなじよ、 しゅし
花がしおれていく季節 夏がおわると、ヒマワリの花①は、たねのおもみでうつ むきます。そして、花びらは、しおれてちっていきます。 花はいま、たねをつくるやくめをおえました。じゅくし たたねが、つぎつぎと外へ出ていきます。たねは、なかま をふやすために、親や兄弟とわかれて、とおくへちってい きます。このとき、動物や虫や風が、たねをはこびます。 かるいたねは、風がはこびます。タンポポのたね③は、 小さならっかさんをひらき、風にのってとんでいきます。 ケシの実④は、風にゆすられると、中からたねがこばれて おちます。 おもいたねは、動物や虫たちにはこんでもらいます。ヒ マワリのたねをはこぶのは、シジュウカラ②などの小鳥で す。小鳥は、たねを、あとで食べるためにはこぶのですが、 はこぶとちゅうで、ときどき、たねをうつかり地面に落と ばあい してしまいます。スミレのたね⑥の場合は、たねに、アリ の好きな、あまいあじの「おまけ」がついています。そし て、アリが「おまけ」をはこぶとちゅう、たねだけがはず れて、地面に落ちます。ゴボウのたね⑦は、かぎばりのよ うな毛で、わたしたちのくっしたや、動物のからだにつか まり、とおくまで旅をします。 なかには、じぶんのカでたねをばらまく植物もあります。 たとえば、じゅくしたツリフネソウの実⑤にかるくふれる と、実がいきおいよくはじけて、たねを何メートルもむこ うにとばします。 あちこちにばらまかれたたねは、地面のわれめやくほ、み はいりこみます。けれども、秋のうちは、いくらあた たかくても、たねは芽を出しません。それは、たねが、ま きゅうみん だねむっているからです。これを、たねの休眠といいま す。さむさで芽がかれないよう、冬のあいだは、芽が出な いしくみになっているのです。
04 やせい 野生のサルビアのくふう どんなにめだたない、小さな花でも、受粉がうまくいく いろんなくふうをしています。夏休みになったら、 かんさつ 野原にいって、花を観察してみましよう。 たとえば、野生のサルビアは、どんなくふうをしている でしようか。まず、いちばん上の、さいたばかりの花①を 見てください。なんだか、くちびるのような形の花ですね。 うわ めしべが、上くちびるの花びらの先から出ています。おし べは、まだ、上くちびるの中にかくれています。 ミッパチがとんできて、下くちびるの花びらにとまりま あたま ーミッパチが、花のおくに頭をつつこむと、おしべの 根もとがおし下げられます。すると、上くちびるからおし べが出てきて、ミッパチのせなかに花粉をはたきます②。 ミッパチがいないときには、じぶんでためしてみましよう。 花のおくに、細長い葉をさしこむと、おしべが出てきます。 葉をひきぬくと、おしべは、上くちびるの中にかくれます。 ちゅうとう 花粉がなくなると、おしべはしおれ、めしべの柱頭が下 にのびてきます。そして、花にやってきたミッパチのから だから、べつの花の花粉をうけとります③。 めしべとおしべは、すぐ近くにあるのに、なぜ、こんな にめんどうなことをするのでしようか。それは、花粉が、 おなじ花のめしべにつかないようにするためです。花粉が、 どうかじゅふん おなじ花のめしべにつくことを、同花受粉といいますが、 同花受粉でできたたねは、よわくて、芽が出ないことがあ ります。そこで、花は、なるべくべつの花から花粉をもら おうと、さまざまなくふうをしているのです。 モンシロチョウが花にやってきました。でも、モンシロ チョウは、野生のサルビアの花粉をはこんではくれません。 ふんかん チョウの吻管は長くて、花にもぐりこまなくても、蜜を吸 うことができるからです。こういうとき、花は、花粉をは こんでくれるほかの虫を、じっとまっしかありません。 モンシロチョウ
この本にのっていること 花と動物たち ているか、また、ちがうところは 植物と動物は、どんなところがに 春のめざめ きゅうこん はいしゅ う / ミッパチが花からもらうもの の受粉をてつだっているのだろ じゅふん ミッパチは、どのようにして、花 花粉をはこぶもの かふん ついて り / 虫のための小さな道しるべに くみと、それぞれの部分のやくわ ぶぶん 花の色とかおりについて / 花のし 胚珠をまもり、虫をさそう して春がきたことを知るのだろう が芽を出す / 球根は、どのように 春がくると、チューリップの球根 つ のようにたすけあっているのだろ 花と虫はなかよし / 花と虫は、 たがいにたすけあう そのとくちょう 風に花粉をはこんでもらう花と、 風にのってとぶ ど みつす 花の蜜を吸う ふんかん 虫の吻管の長さと、花の形のかん けい / 蜜の場所をおしえてくれる しんせつな花 / 蜜どろばうのこと 野生のサルビアのくふう 野生のサルビアの、おしべとめし べのはたらき / じようぶなたねを つくるために つかまったり、だまされたり アラムの花は、なぜ、いやなにお いをだすのだろう / 虫をだまして、 生きのびるために つかまえる植物 間のせいで、ほろびかけている植 ら身をまもっているのだろう / 人 植物は、どのようにして、動物か 花時計 物について / 花の上で、えものをねらうクモ 花には、いろんな虫がすんでいる 花の家 は、なぜか さいている時間がきまっているの 花がさく時間、しばむ時間 / 花が 花にまつわる話 花の歴史と物語 / 花の名前がつい せかいきようつう たわけ / 世界共通の名前について 花をぶんるいする 花にもしんせきがある / 花をぶん ほうほうひょうほん るいする方法 / 標本のつくりか たについて 人形づくりと花びらの絵 つんでいい花と、とってはいけな い花 / 花びらや実で、いろんなも のをつくってみよう あたらしい花をつくる そ バンジーができるまで / 野生の祖 せん 先について 花がしおれていく季節 花がちり、虫が死んでいく秋 / じ ゆくしたたねが、風や動物にはこ ばれて、あちこちにちらばってい く やせい きせつ 冬のたのしみ ドライフラワーのつくりかた / 花 のかおりをたのしむ / あたたかい 部屋の中で、花をそだてるには
花のいとな 塚、真里 と絵ウナ・ヤーコプス 花と虫たちの 1 年
花には、どんな秘密があるのでしようか。花と虫、花と動物の友情とは、いったい、どのようなも のなのでしようか。花は、虫や動物たちとたすけあいながら、たねをつくり、子孫をのこしていき ます。そして、自然の中で、大きなやくわりをはたします。この絵本は、わたしたちに、花のふし ぎと、花にふれるよろこびをおしえてくれることでしよう。 ■既刊 地球のいとなみ 植物。動物とともに わたしたちの地球の一年 文と絵ウナ・ヤーコプス 訳塚原真里子 I S B N 4 ー 9 006 2 1 ー 0 ろー X C 8 09 7 P 1 8 0 0 E あむすく / 定価 1835 円 ( 本体 1748 円 )
花のいとなみ 花と虫たちの 1 年 文と絵ウナ・ヤーコプス 訳塚原真里子 あむすく
花と動物たち ちきゅう 地球には、かぞえきれないほどたくさん の花がさいています。みなさんのよく知っ ているタンポポも、そのひとつです。 にんげん 動物や人問とおなじように、タンポポに も、いのちがあります。このように いの せいぶつ ちあるものを、生物といいます。生物はみ な、栄養をとり、大きくなって、なかまを ふやし、いつの日か、死んでいきます。人 しよくぶつ 間も、動物も、タンポポのような植物も、 それはおなじです。 植物は、毎年花をさかせ、たねをつくる どりよく ために、さまざまな努力をしています。そ の多くは、動物たちのしている努力と、よ くにています。たとえば、チューリップは、 きゅうこんようぶん さむい冬にそなえて、土の中の球根に養分 をたくわえますが、これは、ハムスター② こくもつ が、土の中の巣に穀物をためておくのとに ています。また、バラやアザミは、ハリネ ズミ⑧とおなじように、とがったはりやと げで、身をまもっています。 植物は、モリフクロウ⑥のようにみはり をすることもなければ、ネコ③のようにい ねむりすることもありません。けれども、 たいよう かん 太陽がどこにあるかを感じることはできま きせつ すし、ちゃんと、やすむ季節もあるのです。 さて、絵の中に、ふんをしている小鳥 ( ノドジロムシクイ ) ④がいますね。動物は みな、えさを食べたあと、ふんをします。 しようか これは、消化できないものや、いらないも そと のを、からだの外に出すためです。植物は、 いらないものを、ま ふんをするかわりに はなどうぶつ えいよう