業界を越えたら、当然ながら業界順位と合否状況は複雑に入り乱れている。 「業界上位に入った人が、 ( 上位に落ちて ) 下位に通った人より有能だ」という錯覚に陥りやすいが、一概に そうとは言い切れないのだ。 会社ごとに学生を見る方法も、重点的に見るポイント ( 求める人材像 ) も若干違うのだ。 とはいえ、どうあがいても別人になり切ることなど、不可能だ。一方で、型にはまった人間は企業には必要 とされない。型にまったくはまらない人間も、企業には必要ない。 ということは、きみにできることは可能な範囲で自分を磨き、自分の持っている資質、能力を引き上げるこ とだ。そして相手とコミュニケーションすることで、「自分を相手に伝える」ことだ。 いいモノを伸ばし、足りない部分を認識し、行動 ( アクション ) を通じて補う。まったく別の何かを身につ けるのではなく、自分をそのままのカタチで磨き、価値を高めよう。そして可能ならば、自分に足りないもの を認識し、 1 つでも 2 つでも身につけていこう。 会社のための自分ではなく、自分のための会社であり就職なのだ。自分に合った会社で、将来大活躍できる 人材になればいいのだ。 忘れてほしくないからもう一度言っておくが、活躍するのに必要なものは能力だけではない。能力以上に人 間性、人格が求められる。多くの学生が、テンパッてくるとそのことをないがしろにするが、人間を磨くこと を絶対におろそかにすべきではない。特に、徹底して物事に取り組める自分に対する厳しさと、他人に対する 誠実さこれが一番大切なことだ。自分自身を大人にしていくことだ。 175 第 5 章就職活動て勝っためにすべき、たった 4 つのこと
「頭が良くて、人間性が素晴らしくて、体力があれば絶対内定するのか」 というと、そうではない。その業界、業種、職種ごとに特有の必要とされる頭 ( 能力 ) があるし、人間性 だって、業種、職種ごとに求められるものが違うのだ。また、同じ業種、職種でも、各会社によっても求めら れるもの ( 特に性格・キャラクタ 1 ・志 ) が少しずつ違うのが現実である。 ・面接官は、素材としての人材を見ている 僕のように、毎年大勢の学生の就職活動に接していると、 「この学生は三井物産向きだ」「電通向きだ」とか、 「こいつは伊藤忠向きだ。「博報堂向きだ , 「ゴールドマン向きだ」 といったことが分かる。実際、三井物産向きのヤツは業界順位がずっと下の会社に落ちても、三井物産には 受かるものだ。 さらに面接官は、頭にしろハートにしろ、その学生の現在のレベルを見ているのではない。その学生の「将 来性ーまでも見ている。 頭やハートを総合的に数値化することは困難 ( などでそれを試みてはいるが ) だが、もし仮にできた として、 2 人の学生が同じレベルにあるとしたら、より実績があり成熟度の高い学生を選ぶものだ。面接官は 素材としての人材を見る。同時に、必ず結論を出してくれる学生を選ぶのだ。 面接官は、少なくともそのうちの何人かは、学生を何百人と見てきた面接のプロだ。人を見抜くプロなの だ。必ずどの会社にもそういう人がいる。その面接官が本気で、気合を入れて面接するのだから、間に合わせ 215 第 6 章採用・内定に必要な「デキル人」になる方法
NO 2-21 苦しかった経験について 広告代理店志望・ J 君 ( 青学大・経済・ 一浪・就職留年 ) 苦しかった経験 について 経験 就職活動の第一本命 & 業界に落ちたこと。 過去を振り返る どのように楽しかったのですかどのように頑張ったのですか どのように苦しかった / つらかったのですか ある企業の最終面接後、携帯は鳴らなかった。その後、自分の部屋で、一人 寂しく壁に向かって体育座りで 1 週間を過ごした。そして考え続けた。 なぜそうしたのですか / そう感じたのですか 業界内の会社のみ、最終選考まで残ることができた。短い間だったが、数社 の選考を経験し、ステップアップし、いよいよ最終というところで絶対内定でき ると思っていた。就職活動自体、俺が落ちるわけがない、ほかのヤツに負け るわけがないと自信満々にやっていた。ゆえにショックだった。そして夢をあき らめるわけにはいかないと考え、留年を決意することになる。 今になって感じていること ( 〇〇が得られた、〇〇を学んだ等、前向きに考える ) 2 年就職活動をやることになり、冷静に自分を見つめ直すことができたし、結 局、妥協することなく、夢に向かって頑張ることの、努力の価値を改めて知っ 0 また留年したこと、我究館に来たことにより、友人の数も倍以上になったし、 1 年という長い間に様々なことにチャレンジする時間の余裕ができ、経験の幅 が広がった。そして何よりも楽しかった。 1 年くらいの回り道、何てことはない。 このくらい悔しい思いをしてこそ、本気で自分を見つめ直すことがてき、小さなプライ ドを吹っ切って、欲い、ものに向かって打ち込むことがてきるのだ。 367
だ。やる気と能力はあるけど何をやりたいのか分からないまま、勢いで面接を受け、ラッキー ( ? ) にも内定 し、入社してから、理想と現実のギャップにもがき苦しんでいたり、数年たってから、 「やつばり俺がやりたかったのは、このシゴトではない と気がっき、悩む。心機一転、転職できるほどのパワーがあればいいのだが、その頃にはそれもなくな 0 て いる。結局、入社当時のやる気はどこ〈やら。惰性でシゴトをし、何かあると会社のせいにして、毎日悶々と 酒を飲んで愚痴をこばしながら過ごすことになる。 「俺は天職を得たよ」と、生き生きとシゴトをしている人がいる一方で、精神的に失業している哀れな社員が どこの会社にもいくらでもいるのだ。 「そういう人たちは弱いャッらだ , と、片づけてしまうのは簡単だ。しかし、毎日、朝から晩までいる会社・ シゴトが合わないことほど不幸なことはない。嫌いな相手と結婚するようなものである。 よく就職講演会などで、「どんなシゴトも本気でやれば面白くなる」という意見の人もいる。これはきれい マンの実情を知らない人のセリフだ ごとだと僕は言いたい。本当のシゴトの面白さを知らない人か、サラリー とさ、ん思ってしま、つ。 また、就職においては、本命を受ける前に多くの企業を研究し、また実際に受けて場数を踏んでいくことは 大切なことである。自分の実力を見極めずに、こだわりだけが強いのも通用しない ( 詳細は彳 しかし、最初からではないにせよ、少なくともある時点で、「これだ ! 」と、思えるシゴトでなければ、た とえ情熱を持 0 て一生懸命やれたとしても、のめり込めたとしても、そこそこの達成感とそこそこの喜びしか 味わえないと経験的に僕は思う。ましてや、会社のシゴトによ 0 て関わ 0 ていく人間たちも、その考え方も違 うのだからなおさらだ。 115 第 5 章どうすれば「絶対内定」てきるのか
しかし、どんなに思いを強く持っても、クールさを失ってはいけない。クールな視点を持ちつつ、情熱を燃 やし続けていく必要がある。 就職活動、いや実はほとんどのシゴトは、自己満足だけで突っ走れるものではない。他人の評価か得られて 初めて価値が生まれ、活躍することかできるのである。 誰にも譲れない夢を持ちつつ、要所要所でしつかりと他人のジャッジを受け、評価されていかなければ、し つまでもマスターベーションで終わってしまうものであることを、クールに認識しておこう。 もちろん、だからといって他人の評価を気にしすぎるようでは「媚びることになってしまう。常に相手に 合わせる弱いャツに成り下がることになる。 媚びる人材を良しとする人はまずいない。せいぜい自分も本当に弱い人ぐらいしか、媚びる人間を評価しょ うとは思わないだろうし、一緒に働きたいとも思わないだろう。 また、「どう見られるか」ばかり気にしていては本質を見失う。「俺はこうありたいのだ」「俺らしいことは こういうことなのだ」といった自分らしさを失っては元も子もない 「選ばせる」 そ、つい、つ気持ちでいくことだ。 「当然選ばせる実力を持つ」。誰が何と言おうと選ばせる「実力」を持った人材に、きみがなってしまうのだ。 もっと言えば、学生からも、大人からも、面接官からも、「一目置かれる存在」になることだ。 実際、我究館の学生を見ても、最初に会った時はごく普通のヤツでも、我究を重ね、力をつけ、 3 月頃には 「学生から一目置かれる存在ー「尊敬される存在」すなわち「大人の部分を持った存在」になっていく学生、僕 たちスタッフや我究館などの大人からも「彼はいい」と思われる存在になった者は、必ず超難関であ ろうと第 1 志望をゲットしていく。 119 第 5 章どうすれば「絶対内定」てきるのか
て、僕の予想どおりの結果だった。彼は人間としては、どこに行っても活躍できる人間であったが、テレビ局 で番組をつくる人に求められる能力のうちのいくつかが、もう一歩のレベルだったのだ。 我究館では、テレビ局で番組をつくりたいという学生には、当然、番組の企画を提出させる。 1 週間に目標 唯こヒントをもらってもいい。 川本、次から次へと考えさせる。もちろん誰に聞いても、 : すべてがクオリ ティの高いものである必要もない。何十という企画の中で、面白いものが 2 っ 3 つあればいいのだ。 デキルャツが 1 週間に数十本も書いてくる ( そういう学生は本命のテレビ局に内定する ) のに対し、君か らはなかなか企画が出てこなかった。出すことができなかった。一生懸命考え、人に会ってはいたけれど、頭 がキレすぎるほどキレる君から時折出てきた企画は、ほとんどが飛びすぎていた。良く一言えば、時代の半歩 先でいいところが、 1 歩も 2 歩も先を行っていた。 本当に厳しいことを一言うけれど、彼に限らす、誰にでも落ちるからには理由がある。 「その会社で将来活躍するために必要な人間性や能力やそのほか ( 雰囲気など ) のうち、何かが足りなかっ あるいは、それらが十分あったとしても、 「もっと活躍できるだろう学生に負けた」 これが落ちた理由の 9 ヾ 9 ノーセント、ほとんどのケースだ。君の場合もこのケース。 ちなみに彼は、その後最難関の広告会社に内定し、ヒーローになった。現在、彼は自分に合ったフィールド で彼の能力を遺憾なく発揮し、大活躍している。 「たまたま面接官と合わなかった」 「面接や試験の時、体調が悪かった」 151 第 5 章どうすれば「絶対内定」てさるのか
しかし、人生にも就職にも「正解」はない。就職というカべを突破するには、「本当の自分探し、が必要不 可欠なのだ。「自分のものさし、を持っための、自己分析、自己研究なしでは、やりたいシゴトもへったくれ もない。本当の自分が分からなくて、自分に合う会社など分かりようがない。ましてや「自己」や「志望 動機」などあり得ない。また、単に就職活動のみならす、社会に出てからは「自分のものさし、を持たすし て、自分の本当の幸せをつかむことなどできるはすがない 「自分探し、という自分研究、「自分のものさしーづくり、さらに「自分だけの自己・志望動機」づくり など、就職のカべを突破するのに必要なもののほとんどは、 8 章の我究ワークシートを進めながら行動してい くことで、効率的に出来上がるようになっている。 誰のためでもなく「自分の夢」のために価値を高めよう 「会社がぜひとも欲しい人材」になることができれば、よほど見る目がない面接官に当たらない限り、絶対に 内定できる。まさに、これが考え方の原点であり、当然のことである。 「会社がぜひとも欲しい人材、とは、「将来、その会社で大活躍してくれる人間。であり、すなわち「将来、 その会社でシゴトが抜群にデキル人間Ⅱ結果を出し、実績をあげる人間」である。 業界、会社ごとにカルチャーがあるのだから、業界、会社、職種ごとに活躍できる人材像には、傾向やタイ プ、求められる能力に明確な違いがある。 実際、同じ業界内で、丸紅には落ちたが三井物産には内定した人や、博報堂に落ちて電通に通った人、地方 の新聞社に落ちて日経新聞に通った人など、業界下位に落ちて上位に通ることはまれではない。 172
いてみることだ。 やってみることで気づくこともたくさんあると思う。もっと自分が身につけるべきこと、日々の行動の中に 落とし込んでいくべきことも見えてくるだろう。それらの「行動 , を通して、自分のものにしながら、すなわ ち自価を高めながらワークシートを繰り返していくのだ。 我究ワ 1 クシートの具体的な進め方や、その他の活動の具体的な進め方は、第 7 章、第 9 章に詳しく載せて ある。 就職活動には、急な呼び出しゃ面接などの予期せぬ出来事もある。しかし、それらに振り回されることな きちんと目標を設定し、スケジュール く、効率的な的を射た努力を自分から主体的にやらなければいけない。 法 化して進めていこう。それにより強い心を持ち続けることができるし、また、そのことがまさに「強い心を持る っ , ことにほかならないのだ。 就職活動は本当にシゴトによく似ている。強い心を持ち続け、就職に勝てる人はシゴトもデキル人なのだ。 キ ・タフなハートを持っための方法 内 用 タフなハ ートを持っための具体的な方法の一つが、「最後まで絶対にあきらめないこと」だ。 〕休 あきらめた瞬間、何もかもが終わる。面接の途中でも、筆記試験の途中でもそうだ。特に面接などいじわる 章 じわるな質問も、いじわるな態 な質問にうまく答えられす、その場であきらめてしまう学生が本当に多い。い 度も、すべてきみの心の強さを見るためにあるのだ。 ある外資系投資銀行では、面接官が学生に「僕はきみみたいな考え方が一番嫌いだ」とまで言うことがあ
そんなお調子者で勘違い野郎の僕が、生まれて初めて思いっきりフラれた。ショックだった。 フラれたこともショックだったが、愛している人の心をひどく傷つけたことはもっとショックだった。それ までにも恋愛に限らす、人を傷つけたことは数知れすあったけれど、この時ばかりは本当につらかった。 ショックというよりも、じわじわ心を締めつけられるつらい日々が続いていた。 フラれた理由、彼女が傷ついた理由は差し控えるが、その後かなり長い間、 「よりは戻らなくてもいいから、彼女には元気になってほしい、ハッピーになってほしい」 と心の底から思っていた。 彼女は会ってくれるはすもなく、当時の僕は彼女に対し、なす術は見つからなかったが、ただ一つ、 「相手が誰であれ、人の信頼を裏切り、心を傷つけることだけは、もう絶対にするまい。フラれた理由、傷つ けてしまった理由である自分の短所を何としてでも直してやる」と心に刻み込んだ。 今思えば、その気持ちさえ驕りだったのかもしれない。単に、人との信頼、信用が断ち切られることで、人 の信頼を裏切ることで、自分がつらい思いをすることが怖かったのかもしれない その後スタッフの退社 : ともかく、この 2 つの事件以来、僕は、 また、時として嫌われてもいい 「自分の損得はどうでもいい のできることは自分の可能性を信じて全力で突き進むたけだ」 と、少しは思えるようになった ( と思っている ) 。 つい長々と、お恥すかしいことを書いてしまったが、その後の人間関係を見るに、このことが結果として、 「人との絆」を築く有効な方法の一つであるばかりか、自分にとっても得られるものが大きいことだと、僕は 思っている。参考にしてほしい。 みんながプラスになってくれればいい。 自分 279 第 6 章採用・内定に必要な「デキル人」になる方法
6 夢を実現するために働く それが一般職というのは無理がないか 組織でシゴトをしていく以上、シゴトには必ず役割分担が必要になる。 どの業界、会社にも共通して言えるが、シゴトには、「前に出るシゴトと「裏方」 ( 人のサポートと組織の サポート ) のシゴトがある。会社のパンフに並んでいるきれいごとはさておき、現実としてほとんどの会社に おいて一般職 ( 事務職 ) のシゴトのメインは、机に座っての事務作業や総合職のサポートである。自分の色 ( 能力 ) を 10 0 パーセント出さなくてもやっていけてしまう ( 逆に言えば、カのある人にとっては 10 0 ーセントの実力を発揮しにくいストレスの溜まる ) シゴトだ。最近は、そのような業務は派遣会社の社員に 任せる傾向にもあるが、いすれにしても絶対に欠かせないシゴトであることは間違いない サポートすることで担当者 ( サポートする相手 ) や組織が業績をあげていくことに喜びを感じられる人には 天職と言えるが、自分が前に出たい人、あらゆる能力をフルに使って交渉をしたり、多くの人間を仕切った り、より大きな責任を持って取り組みたいという人には、はっきり言って苦痛なシゴトである。 何年か実績を積み、力をつけることで活躍の場が広がっていくというビジョンが持てるのならいいが、多く の大企業ではそれを期待していないケースが実態としてほとんどだ。 ただし、同じ一般職でも採用・新人研修の段階で適性を見るため、「この人は総合職的なシゴトもデキル と判断された場合は、総合職に近い業務に就くことになる。 もちろん、「ザ・一般職。の部署に配属されても、自分のカで少しずつシゴトの幅を広げていくことは可能 0 515 第 9 章ワークシートをよリ効果的に進める方法