を考え実行もした。 1 年目の冬になって、最終的に思いついたのが「全裸作戦」だった。 「俺はできるはすだ」と思い上がっていた自分を捨て、自分は何も分かっていない「全裸の状態」であると位 置づけ、「よっしや、俺はすべてを捨て、一から学んでやろう」という、自分をゼロにする半分破れかぶれの 作戦だ。 自分は「全裸」なのだから、恥すかしいものは何もない。何でも話せた。何でも聞くことができた。そし て、上司の話や考え方、新しく知ったこと、気がついたこと、思いついたことなどを、すべて大学ノ 1 トにメ モしていった。 2 週間で 1 冊ぐらいのペースでどんどん書いていった。 件 の 家に帰って、それを何度も見直し、「なるほど、これは覚えておいて損はない」ということは蛍光ペンで め マークして覚えた。納得できない上司の考え方の横には、自分の思いや考えも書き込んでいき、翌日上司にぶ す つけた。失敗やミスをした時は、なぜ失敗したのか、その時、自分はどう考えてそうしたのか、足りなかった のは何なのか、知識なのか、考えの深さなのか、執着心なのか、伝え方なのか、人間性なのか、考えた末に書黠 め いた。調べた。うまくいった時 ( そんなことはほとんどなかったけれど ) は、なぜうまくいったのか、その時 る 自分はどう感じたか、さらにうまく生かすにはどうすればいいのか、書いて書いて書きまくった。 今思えば、この、自分の経験や考えを何でも書き込んでいったことが、あとで出てくる「我究ワークシー ト」の原点であった。 章 「全裸作戦。を実行してから数カ月後、自分の考えが学生時代と比べて数段深く、そして多角的で、的を射る ( 本質をとらえる ) ことができているのに自分でも気づいた。すると、それまでろくに話も聞いてくれなかっ た上司を説得できたり、決して通らなかった企画がすんなり通ったり、会議を自分の考えている方向に導けた
このようにして、自分の思いを壊し、自分でつくったオリを打ち破っていくことを体で覚えてほしい。 ・事実と自分の本音を記入しよう ワークシートは面接官に見せるために書くものではない。自分を見つめ、我究し、人格と自価を高めるため のものだ。面接官はきみの「しゃべったこと」ではなく「本質」を見るのだから、本当のことを書き込もう。 自分の過去について振り返る際、きれいごとを並べていても自価を高めることはできない。面接官に見透かさ れるのがオチだ。 ちなみに各ワークシ 1 トごとに載せている先輩の例は、あくまでもその人だけのもの。先輩と同じ考え方を しようという意味ではまったくない。また、あえて素晴らしい例ばかりを載せてはいない。僕からの一口コメ ントとともに、きみはどの程度の深さまで考えるべきなのか参考にしよう。何度か自分で繰り返した上で、先 輩例を見て、じっくり比較してみてほしい。 特に 1 回目。赤裸々に自分の考えの実態を書くこと。 1 回目を考えながら書いていくうちに、「理想の自分の考え方」が見えてくるだろう。 また、先に述べたように、自分の本音を書きながら繰り返しているうちに、人格と自価が高まっていくうち ふ力い に、過去の自分や現在の自分に不甲斐なさを感じざるを得なくなることもあるだろう。乱暴に言ってしまえ ば、それでいいのだ。 「もっとこうしておけば良かった。今までの俺はこう考えたけど、本当はこういうふうに考えるべきだったな」 「俺は思っていたほど大したヤッじゃない。まだまだないじゃないか」 4
・第 4 条人と違う考え方や行動をとることを恐れない なら いつも右へ倣えのステレオタイプでは、自分の頭で考えることを鈍らせる。 人と違う考え方をしたり、さらにそれを行動に移すのには、孤独に耐え得る自信が必要である。そういうあ る種の緊張感を与えられる状況に身を置く経験が、さらなる「深い考え」「行動」をもたらし、結果、さらな る自信を与えてくれるのだろう。 スポーツが練習だけでなく、試合という本番を経験しないと上達しないように、頭も心も、緊張感のある本 気を強いられる状況を経験していかないと鍛えられないものなのだ。 人と違う考え方、人と違う行動をとれる自信、あるいは勇気と言ったほうが的を射ているかもしれないが、 そもそもそれがないと、シゴトにおいても、提案をしていくことはできないのだ。誰かの言ったとおり、ある いはみんなと同じようにしか考えられず行動できないのでよ、、 ( しつまでたっても埋もれた存在から脱すること はできない ・第 5 条人や環境のせいにしない うまくいかない時、それを人や環境のせいにしていたのでは、向上していかないばかりか、自分がどんどん 嫌なャツになり、自己嫌悪に陥るだけだ。さらに、人の悪口を言うのも言語道断。そういう人は何をやっても 、つ ( ノい、刀はい 面接でうまくいかない時、それは面接官が悪いのではなく、その学生自身に力がなかったのだ。飲み屋で愚 痴をこばしているサラリー マンにデキルャツがいないのと同じだ。 257 第 6 章採用・内定に必要な「デキル人」になる方法
2 ・自分と向き合った上での本音を把握することができる 受ける会社に合わせるのではなく、あくまでも「自分がどうしたいのか」を中心に据えて就職活動をしてい くことができる コア ( 大切にしたい価値観 ) もビジョンも、就職云々関係なく自分のウソ偽りのない本音を把握していくこ とで、相手に合わせたような薄っぺらい面接をすることは一切なくなる。志望動機も自分の本音を中心に据え て述べることができるようになる。何度も考え、書き直すことで、揺るぎなき本音が出てくるのだ。 3 ・本気になれる 自信を持った状態で、心から望むビジョンがあれば、誰でも本気モードになれる。就職活動をするのではな く、心から望む未来への活動をすることが可能になる。 4 ・本質をとらえる力を養 - っことができる 紙に書き、また、他人と意見交換をしながら何度も書き直すことで、深く、多面的に見つめる力を、効率的 に養、つことかできる。 そ、つい、つ工夫がワークシートにされている 6 ・面接で尋ねられることに対し、すべて「事前」に考えられるようになっている 質問に対するきみの考え方のエッセンスだけでなく、具体的な質問に対する考えも、事前に深く多面的に 5 ・「デキルャツの本質カ条」のうち、納得できるものについて、考え方や意識がいつの間にか身につく 295 第 7 章ワークシートてキャリアデサイン、自己分析をする
そもそも就職活動とは、きみにとって何なのか。 何度も繰り返してきたことだが、だからこそきみにもう一度考えてほしくて、この章を書こうと思う。 就職を考える時、自分の人生について考えることが不可避であるという僕の考え方を、ここまで読み進めて きみは、分かってくれたはずである。 「どう生きたいのか。どうなりたいのか。何をやりたいのか きみがワークシ 1 トを使って一生懸命見つけようとしてきた「我究のコア ( Ⅱ自分の願望 ) を実現していく こと」日「人生を大いに楽しむこと。幸せを体験していくこと」Ⅱ「豊かな人生を送ること」こそが、生きる ことの目的であり、その自分の生きたい生き方の過程として、 「今、ある企業に入ることがベストチョイスである」 と思われた場合のみ、就職すればいいのだと思っている。 したがって、よく世間で言われているような、 「まず就職しよう。それから先は、その時に考えよう」 という考え方が、最終的にその結論に達した場合は別として、たとえ、きみがどんなに未熟であったとして も、また、そんないい加減な考え方で仮に就職できたとしても、今がきみにとって絶好のチャンスの一つであ る以上、それが妥当だとは僕には到底思えないのである。 就職も内定もただの通過点にすぎない 528
1 ・どういう話 ( その背景にある価値観や考え方 ) 、どういう話し方、どういう態度なら面接官か「なるほど」 「やるな ! と思うのか 2 ・ほかの学生か、と - つい - っことを言うのか を、ある程度把握しておかないと、面接で有効なコミュニケーションはできない これはまさに、きみが受けようとしている会社が常日頃から考えていることと同じである。すなわち、 1 ・とういう商品やサービスをお客様は喜んでくれるのか 2 ・他社はとういう商品やサービスを提供しようとしているのか とい、つことだ。 さらに面接では、その場その場で面接官か自分に感じていること、考えていることを見抜き、そして、それ に基づいて面接官の目からウロコを落とすことを、言葉や態度で伝えていくことか必要なのた。 ・面接官は、きみの「素の部分」を見ている 面接で求められるレベルは、難関企業になればなるほど「なるほどね、素晴らしいね、レベルを通り越して、 「ほおーっ、やるなあ」「確かにそうだな。一つ勉強になったな」「こういう若者を娘 ( 息子 ) の婿 ( 嫁 ) にし たいものだ」と、言わしめるレベルであるのだ。 自分の価値観、学生で通用してきた価値観だけでなく、大人の価値観、その会社で活躍している人の価値 観、面接官の価値観で自分の考えを吟味していく必要があるのだ。 しいとい、つことではない。 話の内容だけをチェックすれば、 180
目上の人の意見がすべて正しいわけではもちろんない。しかし、どんな他人であっても、自分より優れた部 分は必す持っているはずだ。友達や親、先輩や恋人の助言やアドバイスを素直に聞ける力がなくては、きみが どんなに優れたモノを持っていても大きくはなれないのだ。 「他人の言うことをすべてうのみにしよう」と言っているのではない。 「そうかなあ、そういう考え方もあるのかな」と、聞く耳を持っことが大切なのだ。 この本に書いてあることもそうであるが、人から言われたことのうち、自分でよく考え、また調べた上で、 いくつかを取捨選択し、なるほどと思ったことを自分のものにしていけばいい。 人からのアドバイスは貴重だ 就職活動も同じ。同じを訪問しても、「素直さ」を持っている本気の学生にはも懇切丁寧にアドバ イスしてくれるものだ。逆に「素直さ、がないばっかりに、同じ先輩に冷たくあしらわれる学生もいる。 「あいつばっかりするい。平等じゃない」と文句を言ったところで始まらない。世の中すべてそういうものな のだ。そんなところで損をするのは、あまりにもったいない 就職活動においても、社会に出てからも、先輩に限らず人のアドバイスは本当に貴重である。言われた時は ムッとしたとしても、落ち着いて考え、それらを素直に謙虚に聞ける力をぜひとも身につけよう。もっといい アドバイスをもらえるはずだ。その上で取捨選択、決断すればいいのだ。 自分が完璧なはすはないのだから、他人の一言うことは、ありがたいと思って謙虚に聞くに限る。 よく中学、高校、大学と成績優秀で、一流大学に通う優等生的な学生に多いのだが、自分の考え方に妙に頑 固で、人のアドバイスを聞けない人がいる。自分の考え方と違う場合に、ムッとするだけでなく相手を否定し 254
我究によリ経験は何倍にも深められる 就職活動を通じて、これからのわすか数カ月間の間に、きみは様々な経験をしていく。などの新しく出 会う社会人や、ともに戦っていく友人たち。彼らと語り合い、褒められたり、時にはけなされたり、説教され 。まさに人間にもまれながら、きみは考え、喜怒哀楽、そして感動、す たり、あるいはぶつかり合ったり : べてを体験していくのだ。 その過程で、我究するチャンスは自分次第で無限に広がっていくことが可能なのである。逆に、どれだけ自 分の目指す大人になれるかが勝負の分かれ目なのである。 きみにその意志があれば、 1 日 1 日、大人になっていけるのである。だからこそ、最終面接の直前まで、 や内定後も我究を続けるべきなのだ。 、。売み返し、考え方が変わっていないのなら、アン すべてのワークシ 1 トについて何回も書く必要はなし言 ダーラインを引いたり、〇で囲ったりして確認していけばよい。新しい考え方を持ったものについては書き直 また、自分で我究ノート す必要がある。既存のものを線で消して、空いたところに書き込んでいってもいい。 などをつくり、新しく書いていってもいい ( 君をはじめ、我究館の学生のほとんど全員がこの方法である ) 。 ただ、注意してほしいのは、あとにも述べるが、机の前にへばりついて、勉強ばっかりしている青びようた んの浪人生のようにならないことだ。考えることばかりしていると、感じることなどの感動を忘れてしまう。 考えすぎて、「遊び心」を失ってしまっては元も子もない。 504
と、別の切り口を見つけ出すこと、考え出すこと、発想の転換を自分でしてみること。 それができれば、ほとんどの問題は自分で解決できる。悩みを解決する糸口を自分で発見できる。 このステップを踏むことが、事実をとらえ、本質をキャッチし、ベストの解決策を見つけ出すために必要な のだ。デキルャツは、それを面倒くさがったりサポったりしない。そこに執着心を発揮する安直な薄っぺら い意見ですまさない。 忙しすぎて心が疲れすぎてしまっていなければ、それでほとんどの問題が突破できるはすである。簡単なこ とではないが、マスコミや難関企業を狙う人は、このことを必ず、しかもハイレベルで身につけてほしい。 ・第条考え方や物事を構造的にとらえることができる 自分の考えや物事を構造でとらえられないと、なかなか問題は明確にならす、その結果、解決の糸口がっか しつまでももやもやした雲でしかなし 、。いったいなぜそうなっ めないものだ。目の前のもやもやとした雲は、、 ているのか、そもそもどういうことなのかを把握するために、構造的な理解力が求められるのだ。 構造的な理解をするためには、レベルの違いを判断できること、レベルを合わせること、論理的に考えるこ とが必要である。そのあたりはでも問われることだが、現実はより難しいことが多い。数学の幾 何で鍛えられる分野である。 ・第条アイデアを出すことに自信を持っ 「アイデアを出すことに自信がありません」 272
と本質は見えてこない」。だからワークシートのように、とらえるべき対象が自分の時も同じことなのだ。 自分の未来についても同様であることは先に述べたとおりである。安直に決めた理想に縛られることなく、 自分の描く本音の理想像を見つけ出してほしい。 いったん、自分が書いたワ 1 クシートを読んでみてほしい。そして 2 、 3 日してから、もう一度冷静になっ もっと深く、あるいは別の考え方が湧き出てくるはすである。 て客観的に見つめ直してみるといい。 毎年、多くの学生のワークシートを 1 回目のものから数十回目のもの ( 学生によって繰り返す回数には差が あるが ) までをいくつか見せてもらい、卩日 題や意見を突っ込ませてもらっているが、繰り返せば繰り返すほ ど、同じ人物の書いたものとは思えないほど、書き手の考え方や考えるポイントそのものが成長していく 深くなっていたり、幅広くなっていたり、前向きになっていたり、思いやりが深くなっていたり、自分しか 見えていなかったのが周りが見えるようになる ( 周りの人の気持ちがわかるようになる。独り善がりではなく なる ) など余裕を感じさせるようになっていたり、粘り強さ、落ち着きを感じさせるようになっていたり、熱 くて勢いはいいが冷めやすいだろうな、すぐに気が変わっちゃうんだろうなという薄っぺらな思いから、じっ くりと腰の据わった太くどっしりとした思いになったりして、書いている人物そのものが、いい意味での大人 になっていっているのが、手に取るように伝わるほど変化していくものであることをいつも感じている。 そういう過程を経た上での自己は、最初に書いたものとは雲泥の差があるほど、デキル大人の考え方 一緒にシゴトしたい人間の考え方に、変化していっている 文章とは、書き手の人物像、考え方、行動の仕方など、その人そのものが如実に表れるものなのだ。 509 第 7 章ワークシートてキャリアデザイン、自己分析をする