416 第六期分、七十萬俵も屆いてるんでねいかい。年度變りなら、十喜代治 ( まっえを探して ) あまっ子ーーおめい、きっと、證人だな 一月だっちふのに、貸さねいやつあっか、今から・ : んだら、おめいも來いや。 ( 手首を捕へる。 ) 秀松まへの拂ってから、そったらロあ利くもんだ。さ、來ねいか まっえ ( 手をひつばられながら ) やだよ、わし : : : 知らねいよ、何ん い。 ( 捫みかかる。 ) 來いちうたら : も・ーーやだちふに : 八十八 ( 立ち木にしがみついて ) 誰が糞ーー・えくもんけい。 いし ( おろおろして ) よしなせい、よしなせい : 散りかけた群衆、また立ちどまって、ざわめきながらこの爭ひを見て 喜代治さ、來ねいかい : ゐる。 秀松と八十八、喜代治とまっえ、爭ひながら去る。 秀松來ねい氣だか、どうしても ? ようし、したら言ふこといし ( あとを追って ) 待ちなせいーーー待ってけれなせい、あんたら ・ ( 去る。 ) あるどもな、おらはうでなら、おめい、煙草の火、粗末にするこ と、えく知ってるど。おめいはうだら、おらとこのまっえと、あ 群衆ーーーざわめきながら跟いてゆくもの、見おくるものーーーやがて、 んとき、製線所で何話したか、覺えあるべ。 散りぢりに姿を消す。ーーあとは、靑年團 1 ・ 2 そのほか二三人のお なじ服裝の若者ばかり。 八十八 ( さすがに、ぎよっとする。 ) いしあんた。 ( 眼がほで留める。 ) 靑年團 2 あきれたよ、おら。 えれい祭りだな。 まっえ ( 人垣のなかから ) 知らねいよ、わし、何んも : : : ( 隱れよう靑年團 1 さ、片づけるべ。 とする。 ) 靑年團 3 、闇のなかから駈けて來る。 群集のざわめき、高まる : ・ 靑年團 3 ( みて ) あれ、もう、は、やめたのかい、踊り : 秀松ようしーーーしたら、輻田醫院やめて、分署さ來い。 靑年團 1 時間勵行だど。 ( たじろぐ。 ) 八十八何い : 靑年團 3 しまったな、關のおやぢ、よけいな騷ぎ始めやがる さしづ 秀松ほうれ、見ろーーー・おらの指圖きかねいば、損こくど。 もんだでな : ・ やぐら 八十八つくそう。 えいとも、連れてきていだら、連れてえ 若者たち、櫓のまはりに散らばった蓆、床儿、茶碗、酒壜、屑新聞な 4 ど け。そったら脅しに乘るけい、莫迦やろ ! どを、とり片づける。 邇く、鐵橋をわたって走りすぎる汽車の音。 喜代治んだ、んだ、えれいど、おめい。 こったらひょうろく 玉に突き出されることねいってーー・自分で行けやーーんだら、も靑年團 3 ーー・十一時の直通だな、あれ。 う、は、びくびくすることいらねい ったもんだな、また。 八十八人のことだと思やがって、野郎、あっさり言ふねい。 靑年團 1 、櫓にのぼって紅白の幕をはづす。 おらなーー・おらあ : ・ : ・ ( だんだん泣きごゑになって ) おら、なんに靑年團 3 ( 2 に何か訊かれて ) : : : なあに、終着の・ ( スでこっそり市 しても、駒井さは謝まんねいど。謝まるわけなんどねい。ほかだ から歸えって來たとこ、とつつかまったのよ。金なんどねいちう みけん ら、どこさでも連れてえけ : たかと思ったつけ、いきなり眉間さ入れやがったもんな : ・ 秀松言ったな。さ、來い、野郎 : : : ( 首筋を捌んで、ひきする。 ) 靑年團 1 ( 櫓のう〈から、綱のさきに太鼓をぶらさげて ) : : : うけとれ むしろしゃうぎ きちきちにやめやが まら
2 2 イ : け 奴らは、どんどん靑んちよびれていきやがるしーー・百姓ちふもん やりていな。あっちゃあ、土地のせゐか、熊笹なんど苔みていに かりわけ は、獨りぼっちでなら、こったら情けねいもんかちふことーーーた ちびつこいけんどなーー萩ばかりや違ふど。ーーー苅分道路のごろ た石道、馬さ乘ってすっ飛ばしてえくとな、枝のさきつぼ、眼さ だ、おら、覺えただけだもんな。 たけ それが一番つよいんぢゃないの。 突っ刺さりさうになるくれゐ、丈あるもんな・ : : ・ ( 別れ道へ來て ) したら、別れるべ。 市橋まだ言ってるな、は、は、は : ・ のど ( だが、立ちどまってゐる。 ) キミえ乂。 あんた、喉かわかない ? 市橋ーー近いんでねいかい。 おめい、家さはひるまで、ここ市橋別にな。 で見ててやっからな : ・ キミうちの前まで來ない ? 井戸に眞桑瓜つけてあったと思 さよなら 0 ・ ( 行きかける。すぐ歩みを返して ) あのね ふけど : 今の話だけどーー・・わたしが、あのーー・・トフクタア農場にゐた市橋えいよ、まあーーー・・靑木さんちうたかな、その人そったらに言 ときのことが、あんた : : : まさか、さうぢゃないわね、ごめんな ってけるもんだらーーーあんた、實驗場さ戻ったらえいべ : さい。 キミさうーーーねえ。 にようばうこ 市橋ん。そったらこと言やあーーーおらだって女房子あったんだも市橋そらあ、中途半端さなりたくねいちうてな、腰据ゑて畠仕事 おぼはさりていちふのーーーそらあ惡くはーーいや、惡いどころで んな : : : あのな、氣いわりくすっか知らねいどもーーあんた、ま だ、男といっしょんなること、氣輕るに考げいてるところねいか ねいべさ。けんどーーーさっき、何んとか言ったな、うめいこと いーーー何ちふのかなーーー方便ーー・・ちふのかな。 キミさうかしら。 キミなあに ? 眞空管 ? けんど、おらに言はせりゃなーーー憤るんでねいよ、 市橋おめい、ここ離れずにーー・・・獨りでゐるの、苦しくなって來た市橋ん。 なーーやつばりーーすること抱へて、働き場所のえり食ひしてる んでねいべかーー・・・おらの勝手な想像だどもなーー・家から責められ るし、仕事めつからねいしな : のなーー・やつばり、精米所のお嬢さんちふとこーー・なくもねいな キミそれはーーーそれはないつもりよーー・さう見えて ? あ。ーー分るべか ? キミ ( 無言。 ぢゃあ : ・ : ・ ( 行きかける。 ) ・ ) 考へて見るわ。 市橋んだら、えい。 ていさい キ、、、あのねーー・・・正直いふとーーわたし、せんにはーーー毎日まっ黑市橋あのな 間違げいねいでけれな、おらーー體裁わりい かま な、頭禿げらかして、こったらこと言ふの、は、は、は : : : おら けになって、窯もやして暮すことがーー・ー自分にできるかしらって ね : : : でも、今は違ふわーーーほんとよ。 あんた、嫌ひではねいんだってーー・ま、えいべ、その話、今 夜でねくても : 市橋んだら、おらも正直にいふけんどなーーーおら、何んか、おめ さよなら。 ( 去る。 ) キミえ乂 お いが寄っかかって來る氣してなーー・だら、あて違ふど。 ら、ただ、ー、、・根室さ入地したときなーーさっきも言ったけんど市橋 ( 舞臺の蔭へ ) おういーーうしろ向きに歩かねいで、前向いて ろくに肥料もけれられねい開墾地の畑みながらなーー・・・・うちの 行けや : はんば まくはうり
含めてやったども、うまく示談ついたかね。 とくへい、どうも : 龜太郎それがなあ、あんた : ・ 治郎 ( たまりかねて ) 歸ってけれ。おら、炭渡さねい。 治郞默ってれ。ーーー子之さんから聞いてねいば、改めて言ふけん ッタ何んだべ、藪から棒に : どな : 治郎歸ってけれ。 汚一 ~ 、ムロ 7 卩 : ッタ待ちなせい、炭みてからにしてけれや、世間話は・ : 市橋治郞。 ( 眼で合圖する。 ) ッタ白痴いふんでねいよう。おらが持ち山の切り木おろして、お ッタ何んだ、市橋もここさゐたのかい。おめいとこ、いっとう後 らが燒かせた炭でねいかい。おらが持ってくに、不思議ねいペ さなって、迷惑だな。ーーーすぐ、ここ終へるからな。 さ。 ( 手代木に ) 一々秤ることねいってーー泉だら信用あっから。 數、しらべてけれ。 市橋あ乂、待ってるど。 じゃ ふだ 男たち、檢査濟の札を、俵につける。 ッタさあて、そこでーー・蛇が出るか蛇が出るか。あ、は、は : ちう、ちう、たこ、かい、な : ・・ : えゝと、四十 手代木へい。 市橋は、は、は : ・ : ・ ( 笑ひながら、去る。 ) たはら ッタ ( 手代木に ) 俵おろせや。 男たち、納屋に積んだ炭俵をおろす。 ッタ働きもんだねえ、治郞だら。暮れから、もう、は、二タ窯も ッタ ( 炭をのぞきながら ) 何んぽか、えい腕だねえ。火加減えくっ やしたべか。 : : : 父つあん、涌帳、貸しなせい。 ( 手を出す。 ) ひび て、罅はひってねいし、色はえいし : ・ 龜太郎へい、わし、ついうつかり : ・ かんめ 手代木 ( 俵を持ってみて ) はてなーー貫目足りねいことねいかな。 ッタ檢査のときだら、涌帳、持って來て置くもんだよう。 かっ 男のひとりに、丸太の尖きを擔がせて、棒秤に俵をかけ、丸太の後ろ龜太郞したら、今すぐ : : : ( 急いで、とりに行きかける。 ) を自分が擔いで分鋼を動かす。 治郞 ( とめて ) 待て、お父うーー持って來ることいらねい。 ・ ( 急に ッタは、は、は : : : 製炭單價、上げねいうちはかい。 ッタ治郞が、そったらけちくせい眞似するわけねいべさーーな 甲だかい聲で ) じれっていな、どうするたーおめいとこ、渡すの あ、をばさん。 か、渡さねいのか ? とくへい。 治郎歸えれー ッタ ( 見ながら ) あ、は、は : : : どうだべ、その屁っぴり腰。 とく治郞ちふに。 手代木 ( 秤りながら ) へへんーー軍事敎練とは譯ちがふって : ・ ( 分銅をみて ) ふうん、ある、あるーーーちょっきり : ・ : ・ ( 俵をおろ手代木野郎、何んだ、さっきにから默ってりや、えい氣になりや がって。誰さ向って、そったら口利きやがるだ。 灰す。 ) まさか霧ふいて、貫目ふやしちゃねいべな。 治郞何い。 火ッタ仕方ねいな、新米は。各、霧ふいたら、凍って罅はひるべさ。 とくどうもすんませんですーーお父う、おめい、早く通帳とって 手代木こらあ、いけねい。 來てけれや。 ッタなあ、をばさん、あんた自慢するにいいよ、治郎だら澤いち 3 龜太郞うむ。 ( 行きかける。 ) ばんの炭燒でねいかい。 はか じだん かん
な、年に二度、印でついたみていに岐阜の女郞屋から來やがって れ、檀那さんから貰ってよーー・詫びすんで、えい機嫌で歸えると そろげん ようーーーそれこそ、祭りに酒何升寄附したまで、算盤はじきやが こーー汽車さ、粗相で卷き込まれたんだって : : : な、忘れつまへ るんでねいかい。 おらも、凝っとして年くってゐられるかっ てえ : なんも分かん ッタ ( だんだんに醉って來る。 ) 忘れられつか ! ねいお父うみていなもん、仲間さひき込んどきやがって、地主さ子之吉 ( 無言。 ) 屈服ちうたべかーー・・負けたやつの葬式だちうて、誰ひとり寄ッタ ( 靑白い顔に、醉眼を見据ゑながら ) ま、見てれやーー今に、お らーーー - 身い立つほど、隱し金たまったらな・ - 、・・ーうちの禿げ爺っこ りつかなかったんでねいかい : 舞臺の蔭で、自動車のとまったけはひ : : : 相良友吉が出て來る。 いっとう嫌がる相手そ乂のかして のーーー・誰だっても構はねい な、村から追ん出てってやっぺからな : ・ 相良あゝ、ここにおいででしたかいーーー・實は、いま、お宅のはう へ、とりあへずお詫びに伺ったんでしたがねーー何んでも農場の子之吉したら、おら、どうなるんだ、ツタ。 ッタは、は、は : : : 本氣にするから、えいんでねいか、こいつ、 關のやつがーーあゝ、子之吉さん、どうもとんだ御災難で : は、は、は : ・ ・ ( 手紙をわたす。 ) ・ : ・ : 當 ( ッタに ) えゝと、これ、若けい檀那が : 車夫 ( 駈けもどって來る。 ) すんません、遲くなってーーー戸をしめつ 然、ご挨拶に上がるべき筈ですけんどーー・ちょっと今夜は・ : あか まって、なんぼ叩いても : ッタは、こらあ御丁寧に : ・ ( ひらいて、リャカアの燈りで讀む。 ) たしかに拜見しましたちうて、お傳へなして下さへ。 ・ : 大つき子之吉どら。 ( 紙入れをうけとって ) ある、あるーーーえかった。 ッタご苦勞さんーーさあて、行くべか。 ( 壜に殘った酒を口に含ん い檀那もねえーーまさか、あんた、うちの小作相手なら訴へるち で、手代木の顔にふきかける。 ) は、は、は : ・ ふこともありますけんどな、は、は、は : : : なほ、そちらさんの へへん、お天氣おこし 農場の衆の舊債のことはなーーー畜産のはうで、まっと金お引き上手代木 ( 跳ね起きて ) ぶう、つくそう。 てるな、奧さんーー・檀那さんが、白粉つくせい句會さ行ったちふ げになるやうだら、歩引きの額は、いづれ御相談の上でちうて、 とこで : くれぐれも、よろしくどうぞ : ばか 相良はあ : : : どうぞ、一つ : : : 御承知でせうけんど、木工場のはツタ莫迦いへってえ : リャカアのうへの子之吉をかこんで、人びと去る。 うも、そいつで揉めてる最中でしてね、けふなんぞも、瓧務所で 泉の親子の姿が、參道の闇から浮かび出る。 のんきに酒を頂戴しとったら、工場のもんが迎ひに來るっちふ始 ・ ( 去る。 ) 英馬睡むていなあ、おらーーー阜く行くべよう。 末で、どうも : : : では、御免ください : 地 にう 自動車、裏道を通ってゆくけはひ : ・ 龜太郎莫迦やろーーなんぼ言っても遊び呆けてけつかったんでね 山 いか、こいっ : ッタ、お 子之吉ーー遲いなあーーなくなったんでねいべか。 火 とくよしなせい、英に八つ當りして、何んになるだねーーもう、 めい、何、頭さげることあんだべーー五十嵐の貸し金ひきついで ・ ( 櫓の下の蓆のうへに腰をおろす。 ) 英、 は、意地にも歩かれねい : 四ゃんのにな・ : 4 ここさ來い。 ( 疲れた膝のうへに、抱きとる。 ) な、いまお父うと相 ッタ何わかるって、おめいなんどにーーーうちの禿げ爺っこだら はん おしろれ いや
イ 18 はかまいし ッタ ( 鳥居の袴石に、ハンケチを敷いて腰かける。煙草を吸ひつけながら ) あ、さうそー明日、おめい、窯前檢査さ行かルねいな、そのざ たかいびき 呆れたもんだねいか、村ぢゅうで、タクシイ二臺ほかねいな まだら・ー・・手代木、手代木ちふにーもう、は、高鼾だーした んてなあ。 ら、とり上げてやるべか。 ( 酒の壜をとりにゆく。 ) 寢顔のはう、ま まち 手代木文句も言はれねいべさ、一臺は檀那さん市さ乘ってきなし だえいな、こいっーーー死顏が、いっとうえい・ヘか、は、は、は : ・ いま頃でなかったべか、お父う死んだの。 た切りだっちふもん。 ( 今は、ぼつんと立ってゐる櫓のあたりから、蓆子之吉 あふ ッタ ( じろりと見る。默って酒を呷るじ を一枚もって來て ) 奧さん、ここさ : ッタえいよーしけってるべさ。 子之吉 ッターーお願げえだからな : ・ ッタまた始めやがったーーおめいの、檀那さんと別れてけれも、 手代木 ( 蓆に觸ってみて ) あ、こらあいけねい。 ( だが自分は、そこへ たこ 臥ころんで ) やたら、へたばったなあー・ー朝が天狗で、晩が救護班 耳さ胝できたって 、 0 もう、は、勤まらねい、おらにやーーーおめい、さうし 子之吉 ッタ何んの加減か、ことしゃ夜露多いなあーーみんな油斷してえ てえればーーおら、まるっていくち無しの見本みていに言はれて て、亞麻の色づき悪かったもんねえ。 ( そこにも繃帶を卷いた額に觸 なーーーどこさ出ても、肩身せまくって・ : ・ : おら、五町歩でえい ってみてゐる子之吉に ) 熱、出たべか。 よ、ほんたうに 子之吉さうでもねいーまた自然モラの何んのちふ騷ぎだべな、 ッタは、は、は : : : また五町歩かい。 につく ことしの暮れなら : 子之吉發句の會なんどでねいよ、今夜なら : : : おめいにも當りつ 手代木 ( 臥たまゝ、空を眺めて ) 十一州の星月夜かーー・奧さん、おら いてるべけんど : にえい嫁さん世話して下さへよ。 ッタうるっせいーーそったら世話やくひまあったら、自分ののろ こんじゃう ッタだめだ、おめいはーーーま、もうちっと根性みねいばな , ーーい まの始末でもしれ。ーーー手代木、起きれや。 ( だが、高鼾。 ) つ、また、支部の靑年部のちうて騷がねいもんでもねいし : ・ けんど、事務所のな、あったらでつけい地面の名義 子之吉 ( 舞臺の蔭をすかして見て ) 誰だ。 慾ばり過ぎて損こくど、おめいはーーー五町歩もけれられねい 泉の親子三人が、おづおづと出て來る。 んだらーーーおら、小作でも構はねいーー・土のえいとこーーーー死ぬま 龜太郞へいーーちょっくらーーーお別れに、お宮さお詣りしまし で借りるにえいんだらな : て、それから : ・ ッタ莫迦やろーーーそれつぼっちの地面でなーー・。・男のおめいにや分 ッタあ、泉の人らかいーーーなるたけ早く行きなせいよ。 かんねいーーーけふまでのこと水さ流されるもんでねいって : ・ とくへい。 子之吉お父うはなーーー・お父うは : : : おめい、間違げいてるど はさ 三人、くらい參道へ折れ曲ってゆく・ 早川さんと小作の間さ挿まって、自分で死んだりなんどしたんで 英馬 ( とくに手をひかれながら ) やだなあーーーおら、かったるくって ねいちふに : ・ ( 去る。 ) ッタは、は、は : : : お父うの屍骸が、さう言ったべか。 ・も。 2 ひを、 ( 子之吉に ) ッタ ( 見送って ) 何、うろついてけつかるんだべ 子之吉ほれ、あのコール天の股引から出て來た五圓札なーー・あ さは
893 火山灰地 : いや、さういふお話だったら伺ふに及びませんよ。わた 田所 人の立ち話。 しらと會瓧とちゃ、立場が違ふんだから : ・ ( しのに ) そりやーーきっと知ってるわよ、もうーー・あ んだけ新聞でも騷がれたんだし : : : 片つぼの人も、あれで謹愼に唐澤そりや誤解だぜ、君ーーただ、話のついでに、ちょっと・ まあ、もう一度、事務所へ來て下さらんかね : なったっていふんぢゃないの、大學 : しの ( 遠くを見るやうにして ) ーーーんだべなあ。 田所 ( 檢査場の椅子にかけて ) いいです、もう : 音造 ( 職工ふたりに ) : : : 前期の決算でな、友衆のえくねいとこ曝れ職工 1 ( 別れ去る音造にーー笑ひながら ) 氣の毒だども、おらはうの ちゅうまる ほれ、おめいはうのショートのやつな、中丸押しだ 勝だど。 たんだってえ : : : いっしょだかも知んねいな、若けい檀那も : ・ まるのこ べ、あいっーーー丸鋸で腰ふる癖ついてやがってな、 ( 眞似して ) か 職工 1 ふうん。 うでねいかい、は、は、は : キミ ( しのに ) だけどーーーなぜ、あの時ーーーわたし、うち明けたん 音造何こきやがる。 ( 唐澤に挨拶して ) こらあ、どうも、は、は、 だとばっかり思ってたのよ、窯のまへで : は : ・ : ・ ( 笑ひながら、正門へ去る。 ) しのしたってえ : : : ( 涙ぐむ。 ) をんたう 音造 ( 職工ふたりに ) んだで、ひょっとしたらな、おらはうの連中、唐澤 ( 職工 1 に ) 阿久津ーーータンクの温湯、いいんだらうな。 職工 1 はあ。 ( 2 とともに、機械場へ。 ) 試合さ出らんねいか知らねいども : 職工 2 惜しいな、そらあ。ーーー・菊丸デ。ハートさ、スコンクくはせ てな、こっちや意氣込んでるとこでねいかい。 機械場の汽笛、ふたたび白い湯氣を吐く。初秋のそらへ澄みわたる音 いろ。 音造だども、キャプテンのな、ほれ、橋本木工場のやっ、どうし てもおらはうに出れちふんだ。 女デメンの群、ぞろぞろと結束場へ出て來る。やゝ遲れて、逸見し 職工 1 ふうん。 音造試合で勝ったら、どっかすっ飛んづまふちうてな、そったら 波多野 ( 事務所のはうから歩いて來て、唐澤に ) 實驗場の雨宮さん見え ごたごた : て、待っとられますがね : 職工 1 ふうんーーえいよ、あんたら、無理して來ねいでも : 唐澤ふうむ。何んで ? 音造さうかね。 波多野亞廱の試驗資料、持って來られたんでないんでせうか 職工 1 そのかはり、キャプテン、挨拶によこせや : ついでに、今年の搬人の様子知りたいとかちうて : ぢや、わたし : ・ キミ ( 事務所のはうをみて ) あら、誰か來た。 唐澤ふうむ、珍らしいなーーーだいぶ、あいっーー待たせとけばい ( 立ちあがる。 ) ちや市橋さんに相談してみるわ・ーーお金とること。 い。 ( 機械場のはうへ行きながら ) おい、阿久津 : : : ( 去る。 ) しのすんません。 え乂と、 波多野 ( テープルについて、帳簿や傳票をひろげながら ) キミいいわ、もう。 さうか。 ( 舞臺のかげへ ) おい、ろ號線の殘り。 入れちがひに、 しの、とめるキミを送って、正門のはうへ行く 秀松の聲 ( 舞臺のかげで ) はあてなーー・どこさ行きやがったべ、あ 田所が、不機嫌さうな顔をして出て來る。つづいて、唐澤。
はこそり まっえ意地汚なしするんでないよう、天狗さん。 いし一一三年まへだら、箱橇までとまったけんどなあ。 まっえ ( 三宅に ) さう言〈ばな、わし、せん、製糖會瓧のト一フクタ八十八鱈の三瓶汁か。 ( 軍手をぬがうとして ) ひつばってけれ。 ( まっえ、脱がせる。 ) おっとと、裂けるんでねいか、いたましい。 ア農場さ居たったことあんだよ。あんた、新聞の人だら知ってる はんば いしぼろぼろの軍手だねえ。飯場から下げて貰へばえいに。 ペーーー・ほれ、足立キ、、、ちゃんの事件あったの。 まっえどうだべ、さる蟹燒いたみていな、まっ赤な手えして 三宅ふうむーーーぢや、農場を小作地に分けた時分だね。 しゃ ( 觸ってみる。 ) おう、冷っこい。 まっえさう。あん時、わしにもの訊いた人に、あんた、とっても 八十八えいか、雪掘るべ。けふだら、下あ、かんかんに凍ってる 似てゐるよ。 んでねいか。やっさもっさツルハシで割ってくとな、やっとで砂 三宅常談いふなよ。 しり 利、面出すべ。スコップで砂利さ穴掘って、こんだ、穴さ下り 秀松 ( 働きながら ) そいつぐれゐ、臀おちつかねいやっ、あるもん まめえ て、まはり掘るべ。しめいに腰の骨こはくなって、上がらうとせ でねいださ。市場さ、輸出向きの荳の選り分けに出てみたり、ビ ば、どうだべ。臀のまはりさ、知らねい間に、氷はりついてな、 ート農場さ行ってみたり、今度なんど、また : なんも體うごかねいんでねいか。んで、かう調子つけてな、 ( 身ぶ まっえよしなさい、新聞さ書かれるんでないの。 りをして ) 一つぶり臀ば振ると、ピチッと氷割れるた。 いしそのはう、えいってーーーここさ來たっても、何ひとっするで いしまさかねえ。 ねいし : ・ 八十八せがれ風邪ひいたつけ、暖めねいば死んでしまふべ。 ( まっ まっえどうしたべ、あん時のトラクタア。 あね えに ) 姐っこ、おめい、こいつの介抱してけるか。 三宅何んでもね、市と農林學校へ賣りつけたとさ。志村って、會 瓧のやり手がね。學校のはうは、試驗畠で使ふんだらうが、何んまっえ足りねいんでねんだべか、この人だば、ふ、ふ、ふ。 0 = 宅 に ) あんた、これ、新聞さ書かねばだめだよ。 にするのかねえ、いったい、市ちゃあ : ャそはら 船津つあん、すまねいども、 八十八あ、こらあ、いけねい。 堤防を越えてーー河原で砂利を掘ってゐた村の貧農・保八十八が、 煙草一本ーー・・ねいかい ? スコップを片手にやって來る。腿まであるデンプン長靴を穿いた輕 裝。 秀松ねいなーーーあいにく。 ヾットなら、ありますよ。 三宅 ( 出して ) 八十八どっつらもうに、雪、降りやがったもんだな。 ( 堤防をとび ( 吸ひつけて ) あゝ、うめい。貰 下りて、店さきへ來る。 ) ー、ーすまねいども、また、當らしてけれな。 八十八こらあ、すんません。 ひ煙草と他人の何んとかほど、味のえいもんねいち】ふからな。 秀松 ( 苦がい顏 ) またかい。しめいに、見つかるど。 地 ( 落っことす。 ) 灰八十八ふう、寒い。 ( ストーヴに寄る。 ) 山 まっえほれえ、手えかじかんで、持たさらねんでねいのーーロば まっえどうだね、景氣は。 火 つか逹者でも。 八十八けふだら、見れ、この足支度。飴ゴムの下さ、こったらに あかげつと 八十八 ( 拾ひながら ) おら、こいつのお蔭でな、何んでも人より一 幻赤毛布まきつけたもんだ。こんでも、水さ浸ればーー・・・何んた、こ 3 日遲れるんだって。救農工事でもな、六日出りや、米一俵下げて りや。 ( スト 1 ヴの上の鍋の蓋をとって見る。 ) きた たらさんべいじる
まっえ ( ・ハンを頬ばりながら ) どこに、あんた : : : あゝ、腹へった。 0 すゑほれ、デメンのをばさんが見て來いちうたやうなんだべ、 ゆたまご 和わし、まだ朝飯も食ってねいんだよ。市の公園で、茹で玉子たペ は、は、は : : : え長とーーーベろんべろんでなし : た切りでね : ・ まっえまた忘れたのかい ベルシュロンでねいの、は、は、は すゑあゝ、野球みに行ったんだね、あんた、製線所と木工場の かねよやだねい、わし歸るよ。 ( 行きかける。 ) まっえは、は、は : : : 自分で言っちまったねーーーたべないかい、 すゑ憤るんでないよう、かねよさん。 ( とめる。 ) これ : : : ( ・ハンの袋をさし出す。 ) 五十嵐農場の小作、高司と三五が、往來の一方から歩いて來る。 左市 ( 歩きながら、眞次に ) : : : おら、暇あるとな、どったらもん高司ほれ、ことしゃ亞廠の檢査、悪りかったべ、みんなーーんだ か、あんつくそうの水田さ、そうっと見に行っつまふんだって で、檢査刎ねられた農家のもんの恨みでねいかちうてな、眼えっ けてるさうだど、新聞でなら : 眞次は、は、は : : : 御苦勞だな、人のこと。 三五さう書えてあったかい、やつばり : ・ : ふふん、こいつ、さも 左市んでもよ、八月のすゑに、やっと出穗そろったくれゐだもん さも見當ついてるみていな面こきやがって : なーーーさきや見えてるべさ、は、は、は : 高司 あのな、 ( 低く ) おら、關でねいべかとな : 眞したら、けふは酒うめいな、は、は、は : 三五そったらことねいべ、關のおやぢだら、主任さんさとっても 左市こんで恨みつこねいちふもんだな : : : ( 參道の人波にかくれる。 ) 氣に入られてたちふんでねいかい。 まっえ ( すゑに ) 野球でねいんだよ、喧嘩だよ、あんた , ーー・製線所高司ところがよ、三年も獎勵金とった奴が、ことしゃ等外出しゃ のはうだら、あの火事のあとだっても、人揃って來たべーーなん がってな、主任さんと大喧嘩やったっちふもんな、寅さ訊いたら ぼ待ったっても木工場の人ら來ねいでな、しまひに一人ことわり な、ちょっくら臭えペ : に來たつけ、袋だたきにされたんだよ、は、は、は : : : ( かねよ 三五おら、見當ちがふなーー・だども、取りそこなふことねい・ヘ に ) あんた、えく出られたね、けふ。 な、火事のせゐで : すゑ違ふんだよう、とび出して來たんだよ、この人 : ・ 船津いしが、まっえを見つけて、人波をかき分けて來る。 まっえなあしてえ ? いしなんぽか探したんでねいかい、おめいーーーさ、行く・ヘ。 ( 手を かねよ ( 何か言はうとするすゑを追ひまはして ) だめだよ、あんた、よ とる。 ) しなさへ : まっえやだようーーーやだちふに : すゑ ( 逃げまはりながら ) あのなーーー・あのな・ーーこの人、構はれて いし毎年のことでねいかいーーーさ、世話やかせるもんでねいって。 な、憤って耳つねったんだってようーーー ( 口をふさがうとする手を まっえおっ母ひとりでえけばえいべさーーー死んでも、やだよう。 拂ひのけて ) したらな、西洋でなら、耳ひつばるの、色えい返事いし ( 手を離して ) ちいっとをかしいんでねいべかねえ、この子は ちふことだってな、は、は、は : ・ 實驗場やめてから : : : ( ほかの娘たちに ) 莫迦つくせい話でねいす まっえは、は、は : かねえ、キミちゃんと實驗場の若けい人とうめいことあったって まち くせ
いてて、五十嵐さ : ・ 龜太郎へい。 2 芻由三郞 ( まごっいてゐたが、矢庭に逃げ去らうとする。 ) ッタ子之ーーそいつ、放すんでねいど。 ッタ ( 見て ) 誰だ、ありやーー ( 認めて ) 由でねいか、待てえ、由 えったんだね、おめい ? ( ふり向いて ) 子之、つかめいてけれ、そいっ : 龜太郎へい。 のろまな子之吉を追ひぬいて、秀松が由三郞をとり押へる。 いし今のさっき、こ又さ、ひょっくら見えまして : 秀松待て、野郎・ : ッタふうん、さうかいーーおめい居ねい間になーーおめいとこの 由三郎 ( 秀松と子之吉に兩腕をとられて ) 亂暴すんでねいーー・放せ 治郎のやつだら、しゃうねい暴れ者さなってな : ・ ーーー放せちふに : ・ 龜太郎へい。 ッタ何言ひに來たんだべ、こいつ。 ッタ手えつけらんねいから、わし、訴訟ば起してやったんだって 秀松さっきにも一人來たすけんどな・ーー澤の炭を、現金で買へち うて : 龜太郎 ( 驚いて ) ほんとでごぜいますべか : ッタ ( 驚いて ) 何い。 ( 由三郞をこづき廻して ) ' 野郎、誰さ斷わッタだいたい、おめいとこの地面はな、正式の契約へえってゐな かったべ。そのうち、戸主のおめいはーーーあれ、どこさ落っこと って、木炭部の炭、賣りにあるくだ。 おらーーーおらあーーー何んにも知らねいすてーーー治郎さ 由三郞 して來たね、あまっ子 ? 聞いたら , ーー駒井さんとは、話ついてるとかちうて : 龜太郎 ( 無言。 ) つくそう、わしのこと女だと思やがって ッタ治郎がか ? ッタふん、いづれ玉ぬきにでも遭ったんだべ。 いってい、檀那さん、お國さ歸ったの、何時のことだ。檀那龜太郎 ( 無言。 ) さん歸ったかと思ゃあ、すぐもう、がっさもっさ始めやがってえ ッタは、は、は : : : 香具師のついてるあまっ子でも抱かされて、 しぼ さんざ搾られたんだべちふんだよ。えい齡こいて、見つたくねい かんべんして下さヘーーーおらあーーー何んにも : ・ は、は、は : : : ま、そったら詮議、どうでもえいけんどな 由三郎 治郞のやつだら借金ばっか殖やしやがって、何かっちふと、 ッタ子之 ! ぽかんと見てるんでねいってーー大體、おめいが甘 自動 ごろっきやがるんでねいかい、いっそ面倒ねいやうにな、立ち退 く見られてつから、こったら足掻きされるんでねいか。 いて貰ふべと思ってよーーっいこの間、明け渡しの催促、内容證 車、よんで來い、自動車あ : ・ 明で送りつけてやったんだって : : : したら、見れ、大の糞の仕返 子之吉船津つあんーーーどこさ、あるべ ? えしに、こったら騒ぎ起しやがってえ・ : 秀松まっえーーおめい、よんで來い。 まっえん。 まっえ ( 駈けもどって來る。 ) お父う、一臺もねいってよ : いし早くしねいかい。 秀松仕方ねいなあ。 まっえ、駈け去る。ちらほらと、雪、降りはじめる。 雪、降りつづける。 遠くから聞えて來る鈴の音ーー・それにかぶせて、音樂の件奏。 ッタ ( 龜太郞を認めて ) あれ、おめい、泉とこの龜太郎でねいかい。 ふ ( 龜太郎に ) いっ歸
ろね 談きめてな、えいとこさ連れてって、寢かしてやっからな。 たらーーあったら圖々しい姐っ子あるもんでねいよーーー何んだ 0 英馬したって、汽車さ乘るんだべ、今夜 ? べ、茶の間のでつけい圍爐裡のまへさ、實驗場の息子さんと並ん とくもう、は、間に合はねいーー歩るっていってはな : で坐ってーー嫁さなる氣だったんでねいかいーーーおらが治郞のこ 英馬したら、自動車で行くべよーーー十時のとき、みんなさう言っ と言ひ出したら、泣いて駈け出して行きやがってよ : よ、つ 0 て、とめたんでねいか。 とくさあ、治郎が何んちうてーーーあんたは、そったらに言ふども 龜太郞金なんどねい。 何んちうてよこす・ヘか : 英馬け。嘘こけえ。 行くべよろ。・ー何、泣いてんだ、おっ 母あ。 龜太郎 おめい、まさか、小樽さ行くの あんたはー・くやしいちふことーー知らねんだべかなあとくまさかーーーそれは、もうねいけんどなーーー突っ歸されはすめ 駒井の娘が、あったら陽氣に踊りをどってるもんをーーー見な いかと思ってねえ、佐竹さんとか訪ねても : せい、英馬だら、なんぽか嬉しがって、綱牽いてえ : ・ 龜太郞そらあ、大丈夫だっちふに。ーー・手紙もこのまへ出してあ 龜太郎みったくねえーーよさねいかい るしな、おめいは憤ったども、は、は、は : ・ とくどっち見つたくねいべ くだんねい見榮はって、吉滿なんとく ( 無言。 ーー・膝の上の英馬に ) これ、寢たらいけねいよーーーおっ ちふおっちょこちょいが、金ねいかと思って、からかひに來いば ぼってっちまふどーー・おめいみていな重いもん。 血い出るやうななか、五十錢、一圓とけれてやってえ : : : 手龜太郎奧さんちふ方が、えく出來た方でな , ーーほれ、いっかも言 どり五百圓もねいもんだ : ったペ 一フッコの外套、まへさ置いてなーー・自分らも子がある 龜太郞何度こきやがるーーおんなじこと。 ども、悪りいはうさかぶれたもんだで、こやって商工會議所ひい とく小樽さ行くのが、やっとでねいかい て、歸るの待ち暮らしてるってな。あんたも子供あるだら、早く し、辨當もくはれねい : 歸って面倒みれ、また相談にも乘るべちうてなーー大丈夫た 英馬の、小さな欠伸。 汽車賃まで、けれたんでねいかい。 また憤られつか知らねいどもーーーあんた、孫の顔みたく とくそったらに言はれて來たもんをねえーーー治郎がロも利かねい みたくねい根性ねいべさーーーえい加減によしなさへ、強情はるの で出て行くやうな眼さ遭はせてえ : : : あ、治郎の返事來たって も、もう、は、釘づけだもんねえ、うちだらーーーああれ、ねえ、 龜太郞 ( 無言。 ) 市橋さんさ賴むの、忘れて來つまったようー 1 ーあんた、急くもん わし、なんも知らなかったども , ーー・治郎としのちゃがそ ったらに好き合ってたもんだらーーどう考げいても、しのちゃの 子之吉を送り屆けた車夫が、空らのリャカアを走らせて來る。 腹さ・ : 車夫あれ、まだゐたったのかい、あんたら : いま、お宮さ : 龜太郞阿呆こけえーーー誰れの子だか知れたもんでねいーーおら龜太郞あ、 が、訴訟ば取り下げる相談にな、あんとき駒井さんさ伺はなかっ車夫直通だら、もう、は、とっくに通ったしなーーうつかりせ ハスにも乘れねい がうじゃう