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検索対象: 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集
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1. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

モーヴ言ったがどうしたんだ ? よ。この調子でグイグイ、ゴッゴッと描きたまい。ほかの繪かき 4 1 ワイセだから、この繪をよく見たまい。なんなら、もう一度シャ が美しいなどと言うものを信用するな。自分がホントに美しいと ッポを脱ごうか ? 思うものだけを、それだけを、描くんだ。 モーヴ ( それまでニャニヤしていたのが、素描を見るや、スッと笑顏を引ヴィン ( しかし彼はそれまでの話を聞いていなかったのと、父と弟の手紙 ・ ( ジッと見ている ) っこめる ) ・・ : : ふん。 を讀んで非常にガッカリしているために、ワイセンプルーフの言葉の意味 がわからない。苦しそうな、ションポリした聲で ) ありがとうワイセン ワイセ ( これもを見ながら ) 手ひどい繪だ。なんともかんとも、ひ ど過ジ v る 0 プルーフさん。しかしまだ僕にはデッサンがチャンとやれないん モーヴうむ。 ( ほとんど嫌悪の表情で繪を見守っている ) ワイセ美しくもなんともない。むしろ醜悪だ。繪ではない。 ワイセこれでいいんだよ。自分の眼を信用したまい。 ヴィン モーヴ繪ではないな。 ・ ( モーヴに ) アントン、それで、僕はどうすればいい ワイセそれでいて、この中には、何かが在る。どんなものが來て んです ? こんなにまで父に心配をかけーーー母も僕の事をあんま もビクともしない、恐ろしいような、何かがある。泥だらけの り考えていたんで病氣になったそうだし、それにテオはこうして ジャガイモか : : : ふん : : : だから、これで、繪なんだ。 「兄さんの事は、私の力に及ばないような氣がします」と書いて モーヴふん。 來ているし : : : まったく、僕はロクでなしの、みんなの重荷だ。 ワイセゴッホ君が君の言う事を聞けば、又繪の指導をしてやると どうすればいいか、僕は、それを思うと苦しくって モーヴだから、私の言う通りだな 言ったが、どっちにしろ、指導などするのはやめたまい。指導し てはいかん。又、指導はできないよ君には。 ワイセゴッホ君、聞くな ! 君は繪かきだ。繪かきは繪さえ描い モーヴどう言う意味だね、それは ? ていればいいのだ。その他の事は、どうでも良い ! ハタが困ろ ワイセ君は良い繪かきだ。わしは好きだ。しかし、こんな繪を描 うと、親兄弟が泣こうと、うっちゃって置け。誰と寢ようと、梅 く奴にはーー・・そいつの將來に就てはーー ( と、先程からの二人の會 毒になろうと、餓え死にしようと、そんな事はどうでもいい。繪 話を全く耳に入れないでテープルの所で手紙を讀みふけっているヴィンセ さえ描いて行けばいいんだぞ ! ントに目をやり、一歩そちらへ進んで、再び山高裄をぬいで ) 脱佰 ! ヴィンいいえ、僕は、とてもそんな事は出來ません。僕はこんな ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ ! ( ていねいに敬禮する ) に弱蟲で、みんなに迷惑ばかりかけているのが、とてもたまらな ヴィン ( 氣づいて、びつくりして ) え ? なんです ? いんです。早く、僕の繪が賣れるようになれば、少しは モーヴからかうのも、良いかげんにしたまい。 モーヴだからさ、そんなふうに思っているのが嘘でなかったら話 ワイセからかっているのか、わしが ? ハ ? モーヴ、君は は簡單じゃないかね。おやじさんもテオ君も、君が繪を描いて行 今までの繪の傅統にとりつかれているために、今の所、わからな くことそのものに反對はしていない。むしろ援助しようとしてい いような氣がしているだけだよ。傳統の久しきにわたれば、すべ る。わしも同じだ。だから てそれだ、君の罪ではない。ヴィンセント、君はこれでいいんだヴィンしかし僕はシイヌと別れるわけには行きません。あれは僕

2. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

プ 75 炎の人 タン坐るんですか ? 今日は、よしにしといたら、どうですか タンテオさんて方は、まったく良い弟さんだ。兄さんのことをあ んだけ氣にかけている弟と言うのは見たことがありませんね。 ヴィン ・ ( そう言っているタンギイを、既に書家の眼でみつめ、筆が ヴィン僕にはもったいない弟だ。だのに、僕は一生あれの厄介に 知らず知らず。 ( レットに行っている。タンギイは、それから縛られたよう なり、あれを苦しめなけりゃならない。だって、僕の繪はまだ一 になって、ひとりでに、いつもモデルとして掛けることになっている壁の 枚も賣れない。 前の椅子に行って掛けている ) タンなに、その内に賣れますよ。これだけ立派な繪を描いていら ヴィンシャッポは ? っしやるんだ。そりや、みんな、すぐれた繪かきさんは、なかな タンああ、そうそう。 ( と、壁の下方にかけてある麥わら帽子をかぶ か認められません。現にピッサロさんやマネ工さんなどもう五十 る。「タンギイ像」のタンギイになる ) 過ぎです。それが、やっと賣れはじめたのは此の二、三年のこっ ヴィン ・ ( それを見、次ぎに。ハレットの上で繪具をつけた筆をカン・ハ てす。世間と言うものはそんなもんでさ。目の前で天才が飢えて スに持って行き、塗りかけるが、塗らないで、筆を持った手で、自分の額 死んでも知らん顔をしているくせに、ズーツと後になるとヤイヤ をつかむ ) イもてはやす。世間と言うものは、そういう馬鹿でさ、私なん : どうしました ? ぞ、なんにも深い事はわかりやしませんけど、繪が好きですから ヴィン : 頭が痛い。 ね、とにかく良い繪と惡い繪ぐらいはわかりますからね、まあと タンあんまり、この、昻奮なさるから。 : いっとき休んでいた にかく、すぐれた繪かきさんで、世間の馬鹿が認めないために貧 らどうですかな。 乏している皆さんのために、ホンの少しでも役に立てばと思っ ヴィンいや、大した事はない。近頃ちょいちょい、こんな事があ て、こうやって繪具屋をやっていますが るんだ。・ : ・ : 痛むと言うよりも、何か鳴るんだ。キ = ーンと鳴っヴィン 小父さんには、いつも、ありがたいと思ってる。 : でも て、そこら中がキラキラと白く見える。 僕は時々、自分が繪かきになったのは間違っていたんじゃないか タンあんまり根をつめて描き過ぎるんじゃありませんかねえ。 と思うことがある。もう、よしちまおうかと思うことがあるん : すこし旅行でもなすったら ? : : アルルかニースあたりに だ。實際、人に厄介をかけるだけだ。こうしていると。 : しか 行ったらって、ロートレックさんも、こないだ言ってらしたじゃ し、よせない。繪を描かないではいられない。人から誰一人、認 ありませんか ? められなくても ヴィン 01 トレ ' ク = = , あれは良い男だ。アルル = = = でも、そんタン認められないなんて、そんな事はありませんよ。現に 0 ート な事をすると、又金がかかる。テオドールに苦勞をかけることに レックさんもベルナールさんもモリソウさんも、あなたの繪を認 なる。 : そうでなくても、テオは樂ではない。そりや、僕の描 めています。たった今さっきも、この繪を、モリソウの奧さんな いた繪はみんなテオの物になると言う約束で金を出してくれてい ど、綺麗だって、そりゃあなた て、嫌な顔などテオはしない。しないけど時々僕は、すまなくな ヴィンモリソウさんは、ありや君、繪は描くが、結局は金持の奧 る事がある。 さんで、僕らの行き方とは違う。それから、ロートレックやベル

3. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

197 炎の人 苦しみの中からあなたは生れ 苦しみと共にあなたは生き 苦しみの果てにあなたは死んだ。 三十七年の生涯をかけて 人々を強く強く愛したが やさしい心の弟のテオをのぞいては 誰一人あなたを理解せず、愛さなかった あなたはただ數百枚の光り輝くあなたの繪を 世界の人々にえがき贈るだけのために 大急ぎに急いで仕事をして 生涯を使い果した。 繪を描く時の歡喜だけがあなたの生甲斐で あとは餓えと孤獨と苦痛ばかりであった。 そして、あなたの繪は 今われわれの前にある。 これらはわれわれに、いつも新らしい美と 新らしい命への目を開いてくれ、 貧しく素朴なる人々に けなげに生きる勇氣を與える。 このような繪を あなたが生きている間に 一枚も買おうとしなかった フフンス人やオフンダ人やベルギイ人を 私はほとんど憎む。 ことには又、こんなに弱い、やさしい心と こんなに可哀そうに傷きやすい魂を あなたが生きている間に 愛そうとしなかったフフンスの女とオ一フンダの女とベルギイの女 とを 私はほとんど信む。 ほとんど憎む ! 日本にもあなたに似た繪かきが居た 長谷川利行や佐伯祐三や村山槐多や さかのぼれば靑木繁に至るまでの たくさんの天才たちが居た 今でも居る。 そういう繪かきたちを、 ひどい目にあわせたり 、一それらの人々にふさわしいように遇さなかった 日本の男や女を私は憎む。 ヴィンセントよ ! あなたを通して私は憎む。 さもあらばあれ、ヴィンセントよ ! あなたの繪は今われわれの中にある。 貧乏と病氣と、世の冷遇と孤獨とから あなたが命をかけて、もぎとって われわれの所に持って來てくれた あなたの繪は、われわれの中にある。 それならば、われわれも、もう不平は言うまい。 それならば、あなたも、笑って眠れ。 あなたは英雄ではなかった。 あなたは、ただの人間であった 人間の中でも一番人間くさい弱さと缺點を持ち

4. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

307 善光の一生 て、だアれも知らない : だから、世俗的には、おれは、こんなに落ちぶれて見えてもな : このおれの魂は、な、傲然として、世界の王者の如く、充ち足り こうして、ここに、こいつは、このおれの手許に安泰だ ! た ているんだよ。分るかい ? 分るまいな ? いや、女房だ。分っ しかに安泰だ : ・ あれから、おれの身には、いろんなことがあったつけ : ・ てくれ。それは、みんな、この「やまいの草紙」のおかげだよ ! が、こいつは、おれの懷中から、決して放れない。 : ・ありがたお兼なるほど : : : 人のロは、いつも正しい。あんたは狂人だと近 や、ありがたや : 所から言われています : : : 。まさかと、私は、今が今まで、そん ・ ( キッと、善光を睨んでいる ) なこと信じるどころか、笑っていました。今、心の底から : : : 骨 お兼 もし : ようく分りました。 身にしみて : : : あんた様という御人が、 善光 ( 急に氣弱になり ) ・ : ・ : ね工、お兼 : ・・ : 。もしもよ : あんたは、落伍者です。狂人です・ : も、この繪卷物が、世に出たら、大變なことになるんだよ : : : 古 ・ : 鬼や惡魘が この繪卷ものの中の、あの氣違いの集りの人間 ・ハクダン 美術界が、でんぐりかえって、戦爭騷ぎになるんだ : 騒ぎになるんだ : 人間の體にむらがり集って、狂聲をあげながら、人の背中に、無 : と言っても、お前には、ちんぶんかんぶんか 數に、針棒を突刺して、打喜び、目をくりぬいて血を吸ったりし 。しかし、お前も、殿村善光の最愛の妻だ : ・ 。聞いてくれ 。分ってくれ。信じてくれ : 。おれはな : : : この繪卷物を て手を叩き、のぞいたり、とんだり、はねたりして、ゲ一フゲフ打 祕密に、己が手に持っているからこそ : : : ビクともしないで、 笑ったりしている繪が、どうして美の禪様ですか ? ( 泣 こうして生きて來られたんだよ : とうとう、あんた様は、地獄の餓鬼になり下りました : 。名聲も、野心も、賣名も、 おんりよう たた く ) あの繪の怨靈が、私の可愛い子に祟りました。玉太郞は死に くそくらえと思って通して來られたのも、この卷物のためだよ。 ます。はい、そしたら、私も、直ぐ、あとを追って自殺しましょ 裸かになっても、このおれに、こんなに自信を持たせるのも、こ : ・はい。 いつだ。何故だ : 。それはね、こいつは、美の様だからだよ : ・繪の魂の奥の院の御本奪なんだよ : : ・。分るかい ? この繪善光 ( 慄然として、何か急に襲われたように ) 待ってくれ ! 待って : こりやア : : : おかしいぞ くれ ! お兼 : : : 玉太郎が、今、 の中に、この繪卷物が生き永らえて來た : : : 實に六百年 : : : 。そ おや ? 王太郞が : ・ : このおれの懷中に手を突込んだん の長い長い年月の間、ありとあらゆる繪の名人の魂が、この中に だ : : : おかしいぞ : この繪卷物を、おれから奪いとろうと 。人間の血と魂が、渦をなしてこの中 吹き込まれているんだ : ・ : ・あの子が : : : あの悴が : ・ にしみ染っているんだ : : : 人間の恨みも、惱みも、悲しみも、怒 よし、お兼 : : : おれは、今直ぐ、日本橋へ行く。骨董屋に渡して りも : : : はては、目出度さも、幸輻も、信仰も、讃歌も、佛の感 來る。 : : : 家から手離す : : : うちから手離す : : : 待ってくれ : 謝も、地獄の恐怖も : : : 人生とは、空しいものだという敎えも : とうとう いいね ? おい、玉太郞 : : : 直ぐ、行って來るから、待っていなさ すべて、一切、人間そのものの正體が、この繪卷の中に、滔々と流 いよ : ね ? 待つんだよ : : : 安心してな、安心してな : ・ ・こんこんと、泉がほとばしっているのだ : れているのだ。 これは、私の感動だよ。美の生命の感動だよ : : : 全く、このお 善光、卷物を包み、帽子をとり、玄關を出て行く。 れが、繪を描く源泉のいのちなんだよ。おれは、繪描きだ。そうさ。 お兼、感激して泣く。 亡がれ

5. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

っすかもわからないぜ ? 酒を呑んで醉つばらって、君の繪をや そのものの、どまん中に嘘もかくしも無く生きているものが、美 ぶくかもわからないぜ ? ハハ、君はミレエの繪の感傷的な説敎 しく見えるんだ。そのままで美しく見える。だから、そいつを描 主義にかぶれ過ぎたんだ。ディッケンズやミシ = レのお涙ちょう いてるまでなんだ。理窟だとか文學だとか、そんな だい小説を讀みすぎたんだよ。 モーヴ見たまい、ワイセンプルーフが君の繪に脱帽した。飮んだ ワイセ ( 先程から二人の議論をよそに、身動きもしないで、全紙の素描に くれの、しようの無い男だが、繪の良し悪しだけはわかる男だ 見入っていたのが、やっといくらか一フクな態度になり、モーヴの言葉を よ。それがシャッポを脱いでる、 : ま、とにかく議論 ヒ , イと耳に入れて ) うん、ミシ = レか。ここにも書いてある。え は、もうたくさんだ。するだけり忠告はこの半年間、私はしつく えと、「悲しみ。世の中に弱い女が唯一人、打ち捨てられていて、 ( と。ホケッ した。もう私も飽きた。今日來たのは、こうして よいのか ? ミシュレ」 トから二通の手紙を出して、卓上にポイと投げ出して ) 君のおやじさん モーヴそれ見たまい。君はそんなふうな感傷的な文學を繪の中に と、テオから手紙が來た。テオのは、二、三日前に來ていたんだ まで持ちこんでいるんだ。私が心配するのは、それさ。繪は文學 がね。讀んで見たまい。氣の毒に、おやじさんもテオも君のこと をそいだけ心配している。 とは違う。文學などから切り離して獨立させなければ繪は良くな ( ヴィンセント、手紙を開いて、讀み らない。人生の意義だとか、人生にわたると言うか、そう言った はしめる ) 私は、自分の責任として、この事を君に傅えてだな、 ふうの物語を持ちこんじゃならない。繪は専ら美を、美しいもの 最後の忠告をしたいと思って來たのさ。忠告を聞き人れてあんな を描くべきだ。 女と別れて、氣を入れかえて勉強しはじめてくれさえすれば、私 ワイセうむ、たしかに、そういう所があるね、これにも。文學が の方は、君の從兄だ、家のアリエットも君に對しては好意を持っ 持ちこんである。 ( 言いながら、眼を素描から引き離そうとしても離せ ている、喜んで今後もめんどうを見てあげる。聞いてくれなけれ ない ) ・ : ・ : しかしだな、この繪には、だな、そう言う所もあるし、 ば、一切これつきりだ。繪の指導はもちろん、お目にかかるの なんと言うか : : : 荒つぼすぎる。だけど、 も、ごめんこうむる。いいかね ? ・ ( ブップッ言った末 に、不意に嚴肅な顔になったかと思うと、それまでかぶったままでいた山ワイセへへへ、フフ ! 高帽子をぬいで、心臟のところに當て、片足を後ろに引いて、素描に向っ モーヴ一どちらが君自身のためになるか、よく考えて決めるがよ てうやうやしく敬禮をする ) い。私の言う事は、それだけだ。いずれとも君の好きなように。 ヴィン ( それをチラリと見るが、氣が立っているので、その意味がわから ワイセ 人 ない ) そ、そりや、しかしアントン、あなたの言う通りかもわか モーヴなにかね、ワイセンプルーフ ? 何を笑っている ? の らないけど、僕は何も人生の意義だとか、文學なんかを持ち込も ワイセなにね、いや、説敎はそれ位にして、ここに來て此の繪を 炎 うとしているんじゃないんです。美しいと思うからーーー・美しいと 見たまい。 思えるものを描いているだけです。ただ僕には、ホントに人生に モーヴうん ? 得意のミシュレかね ? ( 立って素描の所へ來る ) 生きている人の姿 , ーーなんの飾りも無く、しんから生きている ワイセ飮んだくれだけはよけいだが、君は今、繪の良し惡しだけ 泥だらけのジャガイモが地面にころがっているように、人生 はわかる男だとわしの事を言った。

6. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

262 おかみでも、飲んでいる所へ繪かきさんでも來ると、そちらへも な。 ( ニャニヤ笑いながら ) 恐いもの知らずと言う奴だね。ふん。 出さなきゃならないんだからーーホントに、いくらあんた金が有 タンわしは、それが、氣に人っているんですがね。 ったって、こんな調子だと、たまったもんじゃありませんよ。ま 學生しかしね、繪を本氣でやって行くつもりなら、もう少し繪具 た、繪かきなんて言う人たちは、皆が皆どうしてこう、揃いも揃 を殺して描かないといかんな。これじゃ、みんな生だよ。それ って、いけずうずうしいと言うか自分勝手と言うか、氣ちがいじ に、いくら商賣物で繪具はいくらでもあると言ったって、いきな みて、グウタ一フなんたろう。因果な事にその繪かきさんが、家の りこんなにどっさり塗っちゃ駄目だよ。まるで、ダブダ・フに盛り お客なんだからねえ。 上っているじゃないか。 タンじゃ奧へ行って飮むか。 タンなるほど、そんなもんですかねえ。 ール・ベルナ ( 言っている所へ、三人の人が通りの方から來る。工、、 學生まあ、しつかりやりたまい。じゃ、さいなら。 1 ルとロートレックとベルト・モリソウ。ベルナールは、温和な美貌 ( 手のチープを振りまわしながら出て行く ) の靑年で繪具箱を肩にさげている。ロートレックは貴族的な黒の禮服 タンへい、ありがとうござ , ーー ( 途中で言葉を切って、ゴマ鹽ひげの を着た小男で、それほどの年でもないのに、一見五十過ぎに見える。 その學生は、通りすが 頬をガシガシ掻きながら學生を見送っている。 ベルト・モリソウは富裕な夫を持った四十四、五歳の女畫家で、ハデ りに、先程から飾窓を覗いている若い娘をからかう。娘がモジモジした末 で上品な身なりと美しい顔のために、三十歳ぐらいにしか見えない。 に、コケットに笑いながら通りを小走りに向うへ逃げて行く。それを追っ 三人はこの店に入って來かけて、飾窓の前でチョット立ち止る 。ハリの裏町の秋の午後のち て晝學生も驅け出す。それらが全部見える ロートレックが、ステッキで、中の繪の一つを指している ) よっとした。ハントマイム ) おかみそら、おいでだ。ロートレックさんと、ベルナールさん ( どこかの敎會の鐘が、鳴っている ) と、あの奥さんは、何とか言ったつけ ( 言いながら、上手の通路からコトコト出て來る。小 タンモリソウの奧さんだよ、ベルト・モリソウ。綺麗な繪を描く おかみあなた ・ ( 言っている内に三人が店に入って來る。タンギイその方へ 柄な五十ぐらいの女 ) お客さんでしたか ? 人だ。・ 寄って行き ) これは、いらっしゃいまし、モリソウの奥さん、良 タンうむ、いや、コルモンさんのアトリエに居る、若い繪かきさ いお天氣でございますな。 んで、たしかマルタン ベルト ( やわらかな會釋をして ) モンマルトルの丘の上から見ると、 おかみ又繪具を貸したりはなさらないでしようね ? 空がルリを溶かしたように見えてよ小父さん。。ハリは今頃が一番 タンいや、そりやお前、そんな ですわね。 おかみあんたはチョットおだてられると、良い氣になっちまっ て、ポイボイと貸しちゃ、それなりけりで、代金は拂っちゃくれロート ( 醉っている。タンギイに ) ゃい、詐欺師 ! 又、うまくやり ない、そのカタにわけのわからない繪など掴まされてばっかり居 やがったな。どうして卷きあげた、あれは ? タン ( 相手のロの惡いのには馴れている。微笑しつつ ) なんですかな、 : コーヒーは此處であがるんですか、奧に なさるんだからね。 ロートレックさん ? しますか ? ロートあのマルチニックさ、ゴーガンの。あれは小さいけど。ホー タンそうさな、此處でもらうかな。

7. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

196 四人の人は、ヴィンセントとテオとルーフンと若い看護婦。ヴィンセ ントは、一八八九年冬作の、毛帽をかぶり耳にホウタイをして・ハイプ をくわえた「自書像」の身なりをして、鐵のべッドに腰かけ、前にす えられたイーゼルのカン・ハスと、竝べてすえられた大鏡とを等分に見 くらべながら、。ハレットにチ ' ープから繪具を竝べている。痩せて くなった顔だが、機嫌が良い。テオはホッと安心して疲れが一度に出 て來た様子でグッタリと、しかしまだ心配そうな眼つきで兄を見守り ながら、片隅の椅子にかけている。ルーランはカ・ハンこそさげていな いが、これから仕事に出かける途中に寄ったと言った制服姿で入口近 くに立ってニコニコして眺めている。看護婦は、白衣の少女で、べッ ドのわきに身を曲げて、べッドの上の繪具箱から繪具を出してヴィン セントに渡している。ハミングは、續いている。 ヴィンセントは。ハレットに繪具を竝べ繆り、。ハレットと持ち添えた筆 の中から一本を右手で扱きとり、鏡とカン・ハスを見くらべてから、眼 をテオに移す。テオがうなずいて見せる。次ぎにヴィンセントの眼が ルーランへ行く、ルーランうれしそうにニッコリして、制陌のひさし に右手をチョットあげる。次ぎに、繪具を渡しおえてキチンと直立し て、びつくりしたようなきまじめな顔をしてヴィンセントを見ている 看護婦に眼をやると、その少女がヴィンセントの眼の中を覗くように 見ていた末に、思いがけなくニコッと笑う。 ヴィンセント、筆で。ハレットの繪具をスッとさらって、鏡を見、描き はじめる。 以下、朗讀の間、ヴィンセントの右手がユックリ動き、眼が動く だけで、四人とも、ほとんど動かぬ。 深く沈んで績 ′、ノミング そのハミングのバックの前で男島ンロの朗讀 ( 薄暗い袖に朗讀者を出 し、マイクロフォン使用 ) 男 ( ポキポキした調子で、早く ) それから四日たって精神从態が完全に元にもどった。 ゴーガンは去り、テオが驅けつけて來、ルー一フンは毎日花を持っ て見舞いに來る。二週間たっと、醫者は繪を描くことを許した。 そして又描き出した。 それから一一年 又病氣が出て 二度三度と入院し、 少し良くなっては退院するが、 又自ら望んでサン・レミイの腦病院の三等に人院し、 やがてオーヴェルの醫師ガッシェのもとに移り、 一八五〇年、明治二十三年七月、 オーヴェルの丘で自ら自分の腹に ピストルの彈をうちこむまで あなたは描きつづける。 あなたの頭は時々狂ったが あなたの繪は最後まで狂わない。 腦病院の庭で、發作の翌日描いた繪でも線と色はたしかだ。 繪はあなたの理性であり、 繪はあなたの運命であった。 運命のまにまに、あなたは燃えて白熱し、飛び散り、完全に燃え つきた。 最後の時にあなたはテオの手をんで もう俺は死にたいと言った。 もう俺は死にたいと : ヴィンセントよ、 貧しい貧しい心のヴィンセントよ、 今ここに、あなたが來たい來たいと言っていた日本で 同じように貧しい心を持った日本人が あなたに、ささやかな花束をささげる。 飛んで來て、取れ。

8. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

夫いや、その、なにしろ、あっしの所では今度、スッカリ店の手タンですけどね、この、切って賣ったとなりますと、セザンヌさ んがガッカリなさるだろうと思いましてな、この 入れをしましてね、その方に金をつぎ込んでしまって、この あっしは一フ。ヒック通りで八百屋をやっていまして、今度、まあ果夫わたしんちなざあ、どんな果物でも一個賣りをことわった事あ ねえんですけどねえ。お客有っての商賣だからね。 物も置くようにしまして、このーーーいえ、今日は、家内の妹の誕 生祝いによばれましてね、その歸りでさあ、そこの窓でチョットおかみいいじゃないかねお前さん、この繪は繪具代のカタにセザ ンヌから受取ったもんなんだから、家のものだろ ? なら賣ろう この、繪を見かけたもんで、家内とも相談しましてね と、どうしようと、こっちの勝手じゃないか。 婦 ( まだ二十位の、・ハリの下町の、あまり敎育の無い、しかし可愛い嫁。 タンそりやそうだが、これ、切ってしまうとなると、いかになん ういういしくはにかんで ) とても、あの、良い繪だもんですから、 でも、この ( 客に ) 決して賣りおしみの何のと言うわけじゃ ロべールに私が言ったんですの。果物の店は、あの、綺麗にし ございませんが、どうも都合がございまして、今日の所はまこと て、なんですわ、美術的にして置かないとお客さんが寄り附いて にすみませんが、どうかまあ、ごかんべん下さいまして 下さらないから 夫そいでまあ、このりんごの繪なら飾っとくのに打って附けだと夫そうかねえ。 ( しぶしぶと ) 無理に買おうと言うんじゃねえ。 ( 妻の腕を自分のわきに取りながら ) なんだな、賣られないものは店 思いやしてね。そんで、こんなに繪具がたんと塗ってあるんでや から引っこめとくんだなあ。シュゾン、行こう。 すから、二十フランは別に高いとは言うんじゃねえんですけど ね、この、店の手入れに、えらい金がかかったんでね、まあ、一婦あの、おじゃまさま。 ( 二人、腕を組んで出て行く ) ( その後姿が見えなくなるまで、見送っていてから、こちらの三人が 個だけ賣ってもらえるとありがたいってわけで、なんでさ、四つ 同時に笑い出している ) で二十フランだから一個なら五フラン ヒヒ、ヒヒ ロ 1 ーヒッ ・ ( さっきから、たまげ切ってロだけ・ハク。ハ、クさせていたが ) だ が、一個だけ、この、賣ると言ってもーー・そりや、せつかくの何ベルトホ、ホ ! だから、なんですけど、とにかく、四つ、こうして描いてあるん ロート今のを、ヒヒ、今のを、セザンスに、ヒヒ、聞かせたかっ だから、それをあんた、どうして おかみじゃ、これ、ハサミで切り取って差しあげたらどうだろ タン ( これもニャニヤしながら ) どうも、この う、一個だけ。ね、そうすりや、又殘りも賣れるんだから。 ( 棚か おかみ ( 笑っている人々をジロリと尻眼にかけた末にタンギ一イに ) なに ら大鋏を取り出す ) こんな が、おかしいんです、又商いをしそこなったんですよ ! タンま、ま。待ってくれー困ったなあ。いえね、これはあな の 繪、切って賣って、どこが惡いんです ? た、セザンヌと言う、この、まあ天才の繪かきさんの描いた繪で ロート ( テープルを叩いて喜こんで ) まったくだあ、切って賣ってど ございましてな。 みんな氣ちがいだろう ? ハッハ こが惡い ! ねえベルト ! 婦はあ、ホントに立派な繪ですわ。うちのロべールは美術品に 。 ( 他の三人笑う ) は、それはもう眼が無いんですの。

9. 日本現代文學全集・講談社版 79 村山知義 三好十郎 眞船豊 久保榮集

ね、こんなにカケを溜められたんじや立ち行かないんですから はいっ描くんです ? 6 1 ね。こちらのクリスチィネが賴むからまあーーークリスチィネとは ルノウいっ描くんだって、そりゃあんた、仕事をおえて、歸って ズット以前からナジミですからね、食べるものが無いと言って泣 から夜でも描きゃいいでしよう。 き附かれりや、うっちゃっても置けないしね、それに、近頃じヴィン駄目だ。夜じや色が見えない。色が見えなきや、ホントは や、あの子のおふくろまで時々やって來ちゃ、・ハタなんぞ持って デッサンも出來ないんだ。色彩とデッサンとは別々のものじゃな 行って、あんたんとこの帳面につけといてくれと言うんですよ。 い。僕は早く色を掴まなきゃならない。 しかしそれも無理も無いさ、クリスチィネの子供を四人もおつつ ルノウへえ、色をね ? ( 眼をむいている ) けられて養ってやってんだからね。とにかく、そんなこんな全ヴィンそれに時間が足りない。そうでなくても、僕はもう三十 部、ゴッホさん、あんたの責任なんだから、ただそうやって、す だ。始めたのが、ほかの繪かきよりもズッとおそかった。レンプ まないすまないで、三文にもならない繪ばかり描いていちゃ駄目 ラントもミレエも三十の時には、とうに立派な仕事を仕上げてい じゃありませんかね ? こんなサマだと、又、クリスチィネは、 る。僕は急がなきゃならないんだ。人が五年かかってやる事を三 あたしん所へ金を借りに來ますよ ? 月でやらなきや。急がなきゃならない。 ヴィンルノウのおかみさん、どうか頼むから、その、あれを引っ ルノウだってあんた、どうせ繪なんて、まあ道樂に描くんだか ばり出すのは、よしてくれ。 ら、急ぐったって、なにもそんなに血まなこにならなくたって ルノウ引っぱり出す ? あたしが ? 冗談言ってくれちゃ困るよ う ! なあによ これまでだって、いつでもあんた、あの子の ヴィンそうじゃないんですよ。そうじゃない。僕は、じゃ、どう 方から是非にと言って賴まれてあたしや、めんどう見て來たんだ してやって行けばいいんです ? よ。こいでもあたしや、女郞屋のやり手婆あじゃないんだから。 ルノウどうしてって、あんたーーーそんじゃ、なんじゃないの、ま シイヌの身になって氣の毒と思ゃあこそーーーだって、おふくろや あ、やって行けるようになるまで當分繪を描くのは、よしとくん だね。 子供たちにも、仕送りはしなきゃならない、自分は年中醫者にか ヴィンよす - ? : : かっている、で、あんたはその調子、すると女の身で金え稼がな : すると、僕は、どうして生きて行けばいいん きゃならないとなると、こいで、元手はウスが身體たけだあね。 ひひ。そうじゃありませんかね ? そうさせたくなかったら、あルノウえ ? ・ ( 頭がもつれて ) ですからさ、生きて、この、暮 んたが奮發して、何か仕事を見つけて稼ぐんだね。 して行くためには、繪を描くのをやめなきゃならないなら、まあ ヴィン僕にやれるような仕事があるだろうか ? 當分がまんしてですよ ルノウそりやね、今こんな不景氣だから、割の良い仕事はなかなヴィン繪を描かないで、どうして僕は生きて行けるんです ? か無いけど、やる氣になりさえすりや、 ハト・ハの仲仕だとか道路ルノウだからさあ、いつまでも繪ばかり描いていると、あんたも 掃除の人夫など、無いことは無いねえ。 シイヌも死んじまうことになるから ヴィンよし、じゃ、それをやって見よう。 ・ : だが、すると、繪ヴィ / そうです、繪を描かないと、僕は死ぬ。そうなんだ。

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163 炎の人 ルが手離したがらないでいた奴だ。 びつこを引いて繪の方へ行く ) ・ : ・ : なんだ、もう出來あがってる。 タン良いもんでしようかね ? 一撃で描く。そう言うんですよ、いつも。實際、一昨日は半 ロート へつへへ、しらつばくれていやあがる。そうだとも、あん 日かからないで、これだけ描いてしまったんです。筆がまるで刃 な繪は馬鹿か氣ちがいでなきや描かないんだぞ。ねえベルト。 物みたいだ。見ていて、僕は怖くなる。 ( モリソウは笑っている ) ただで貰っても迷惑と言うしろものさ。 タンいかがなもんでしようかな、繪の出來ばえは ? 家内は、あ タンそうですかな ? いや、ゴーガンさんの繪具代が二十五フ一フ んまり私に似ていないと言いますがな : ・ : ・ ( 三人の畫家は繪ばかり ンも溜っていましてね、どうしても拂って下さらないもんですか 見て、相手にしない。しかたなしにおかみに ) ええと、お前、お客さ ら、しかたなしにあの繪を、ああしてお預かりして置いてあるん ま方にコーヒーさしあげてくれ。 ですが、なかなか賣れないんで弱っていますよ。 おかみえ ? ・ ( ムッと怒ってタンギイを睨みつける ) ロートどうせ、そんな事たろうと思った。賣れるもんかあんな繪ロートコーヒーなんて、墮落した飮み物を、わしが飮むと思うの が、今どきの。ハリで。 か。わしはーーー ( とポケットからプ一フンディの瓶を出して一フツ・ハ飲み。 二十五フランか。僕なら二百五十イフン出しますよ。ただ しかし目は「タンギイ像」から離さない ) し、目下一フ一フンも無いけど。 タン ( 客の手前、虚勢を張って ) では奧さんとベルナールさんにコ タン ( ロートレックの言葉も、ベルナールの言葉も深くは理解できないで ) ヒーを持って來なさい。 え ? いえね、とにかく 、一ド日などあなた、立派な紳士が飛びこ おかみ ・ ( プリッとして、何も言わず上手の通路から奧へ去る ) んで來て、あの繪は逆さまに置いてあると注意してくれました ベルトきれいだ ! ホントにきれいな色 ! ですけど、どうして よ。上の靑い所は、あれは空ですからと言いますとな、あんな空 この方は、こんな人の眞似をなさるんだろう ? 構圖はゴーガン が此の世に在る道理が無い、あれは海だ。そう言うんですよ、 さんだし、日本の浮世繪なんぞグルッと描きこんだりしたのは、 ノ 言わば、まあ、アンリ・ルッソウじゃなくって ? タッチにはス ベルトホホ、まあねえ ! ( 他の二人も笑う ) ーラさんも取り人れてある。 ロート ハ ! そう言う豚どもだ ! エミ僕はそうは思わないですね。なるほど、影響は受けていま おかみ ( ベルトに ) いらっしゃいまし、奧さん。どうぞこちらにお す。非常に素直たから。素直すぎるんです。なにしろ、去年、ア 掛けんなって。 ( 椅子をすすめる ) ントワープから。ハリに出て來て、出しぬけにマネ工やピッサロや ベルトありがとう。どうぞお構いにならないでーーーいえね、これ ゴーガンを見さされて、たまげてしまって、自分も明るい色を手 から御一緒にタンポ一フンの展覧會に行くんですの。工 に入れなきゃならないと言うんで、一週間ぐらいの内に。ハレット が、御主人の肯像をゴッホさんが描いているから、寄って見て行 の繪具をすっかり取り變えてしまった位ですからね。そう言う男 こうとおっしやってねーーーこれですわね。 ( 「タンギイ像」に目をや ですよ。情ない位に謙遜な、特にゴーガンの前ではまるで卑屈な る ) んです。見ていて泣きたくなる位に氣が弱い。 ロートいよう、やっちよる。 ( 言いながら、ステッキを突きョロヨロと ロート弱いかねえ ? わしには猛烈すぎるように見えるがねえ。