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検索対象: 学校はめざめよ 教育のブラックホール
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1. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

が、型から型までの幅のある生徒を抱えた学校もある、ということだ。 いま仮に < 型の生徒と型の生徒の人数をそろえて一つのクラスを構成し、そのクラスの学力分布 を図形にすれば、理論上は、両端に頂上を持つ、ちょうど噴火山を縦に切った断面のような形になる はすである。 しかし現実は、そのようなクラスで均一の指導を、長期間、続けることは不可能である。仮に続け たとしたら、結果として三つのケースが考えられる。一つは型の項上が崩れて、その一部が型、 ( 図 4 ) 。二つめは、型の項上が崩れて、その一部が型、 0 型に近づいていく 0 型に近づいていく ( 図 5 ) 。三つめはその両方が同時に起こる ( 図 6 ) かである。 人間の本性を考えれば、誰しもが易き につくと見るのが常識である。 型と型を混成して一つのクラスに する例は極端であるが、そこまでではな いにしても、類似の現象は日常化して存 、図在しており、それが教育上、問題を生し るのである。 問題は、類型化した集団の構成員の中 で「混じる」とか「少々」で示されてい る型に属する生徒の指導である。 A 型 E 型 . ( 図 4 ) A 型 . E 型 ( 図 5 ) A 型 E 型 .

2. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

④リーダーシップを発揮できない日本の校長 日本では、校長が学校をより良くするために行動を起こせは、たちまち教師や生徒の反感を買う。こ れでは、校長がリーダーシップを発揮するのは困難である。結局、校長自らが独走することをあきら めるか、あるいは周囲の圧力によってそれを断念するかである。校長を含めた職員全体が平等主義の もとに仲間になってしまうわけだ。この仲間意識が、学校からなくならない限り、校長が独走する日 ーダーシップを発揮できる日が早く来てほしいものだ は来ない。私は本来的意味で校長が独走し、 と思っている℃これが、先の投書のテーマ「独走する校長」に対する私の回答である。 校長訓話は絶好の材料 い授業のスパイス 五十分の授業の間、生徒の興味を持続させることはむすかしいものである。教科書や練習問題の解 説ばかりでは息が詰まる。時には、授業とまったく関係のない話題を提供して緊張感をほぐし、息抜 きをさせる必要がある。その際、雑誌・新聞などから拾ってきたニュースを一種のスパイスにして、 授業に加えてやるのである。このスパイスの中で、生徒がたいへん興味を持つものの一つは、学校内 で起きたさまざまな事件である。その絶好の材料になるのが、全校朝礼、職員朝礼や職員会議などで 244

3. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

好みに合わせて、面白おかしくするはうがいい。教師や生徒に、話の内容が間違って伝わると思うと、 校長は、つつかりものも言えない。 したが「て、校長はいつも温顔を保ち、草とりなどに精出すようになる。つまり、教師にも生徒に もリーダーシップを発揮できす、権力をけっして使わない校長になってしまうのである。 3 校長派の〇〇先生 先にも述べたように、アメリカでも校長と一般教師の間で意見がぶつかることがよくある。しかし、 一般教師は意見が違っていても、最終的には校長の考えに全面的に従い、協力する。ところが日本で は、アメリカのよ、つにはならない。 校長訓話の内容をそのまま生徒に紹介したり、校長の意見に同調することをくり返したりすると、 ついには、その教師には「校長派の〇〇先生」というあだ名がつけられる。学校は、数十名の教職員 で構成される小さな職場である。校長派・ x x 派・△△派などが存在すれば、人間関係がぎくしやく してくるのは当然だ。生徒は、こういうことには敏感で、どこからともなく臭いをかぎつける。そし 8 て、「校長派の〇〇の言うことは信用できない」などと言い出すのだ。生徒と教師の間の信頼関係が崩 れれば、教育効果を上げることはたいへん困難になるのである。 ④常識派の〇〇先生 「校長派の〇〇先生 . というレッテルは、一般の教師には、耐えがたいもののようである。校長の言っ 247

4. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

ーアメリカでは生徒を叱らない 今まで述べてきたように、日本とアメリカの生徒指導には、考え方や方法にかなりの隔たりがある。 クドクド文旬を言っている場面に出くわすことはない。い ますアメリカでは大声で生徒を叱ったり、 わゆる〃叱らないみ教育を実践しているかに見える。アメリカの教師が最大の努力をはらうのは、生 徒の起こした事件について的確に状況を把握することである。生徒を叱ったり諭したりするのではな く、事件の状況をますたすねるのだ。アメリカの中学、高校では、入学時にスチューデントハンドブッ ク ( 生徒便覧 ) が配付される。その中には規律や罰則が明記されている。教師は生徒が規律に違反し たかどうかの確認をする。それがアメリカの指導法なのである。 たとえは、生徒が遅刻した場合を例にとってみよう。遅刻した生徒は許可なく教室へ入ることはで きない。そこで教頭に願い出て、遅刻届のカードをもらう。それを教科担当教師に渡す。そこで初め て授業に出席することができるのだ。これらはすべて生徒個票に記録される。無届け欠席などをすれ ば、歴然と記録に残るのだ。これらの記録は、すべて卒業認定の資料となる。もちろん大学へ推薦入 学するための重要な資科でもある。 アメリカでは、大学入学はすべて推薦制で行なわれている。次の三つの事項が推薦のための資料と 生徒指導におけるカルチャーショック 5 4

5. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

P A R T ー 1 叱るとはど、つい、つことカ われわれ日本の教師が潜在的に持っている " 生徒を叱って直す。という教育論 どういうものであろうか ①日本人の教育観 われわれ日本人は、同族一体的な感覚をたぶんに有している。これは日本文化の一側面であるムラ 意識、つまり " みんな仲良く一緒にやっていこう。といった一体感によるものであろう。 この意識は学校社会にも強く働いている。同し学校へ入学すれば、その学校ムラで同族的な一体感 を持つのだ。成績優秀者もそうでないものも、部活動の選手もそうでないものも、すべて同等な同級 生になる。教師もまた生徒と同じような一体感を有する。担任、教科担任、校長と立場は違っても、 同じ考え方を持つ。特別に意識しなくてもそうなってしまうのだ。 しったん入学させた生徒が全員卒業することを願う。そのためには懸命な努力 日本の教師たちは、、 を階しまない。たた 教師たちにと「て学校ムラに入学する前の生徒はただの他人にすぎない。だか ら、成績が悪いとか、人格形成ができていないとかの理由で、比較的安易にふり落としてしまうこと ができる。しかも、その選考に当たっては世間から疑惑を持たれないよう細心の注意をはらう。入学 こまことのほか厳しいチェックをし、公平さを天下に示した上で、合格者を選抜し 試験の採点、集計 ( ( これはいった、 5 2

6. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

者は原級留置か退学、反抗者や規律違反者などには適当な注意と処罰を与えるというように、それぞ れに応した方法を採用すればよいのだ。 しかし、日本の教育現場にはこういう雰囲気はまったくない。日本では、はみ出しゃ落ちこばれは 本人の責任ではなく、社会や教師がもたらしたものと理解されている。元来、生徒は一視同仁的な良 きムラビトであったにもかかわらず、社会や学校の古いしきたりの犠牲になって、はみ出したり落ち こばれたりするというのである。そこで、教師はそうした生徒を何とかして仲間のムラピトとして呼 び戻そうと、懸命の努力をするのである。 元の学校ム ( フへ呼び戻す際、「指導する」「諭す」「カウンセリングする」といった多様な方法が展開 されて、 しく。もし、このような多様性を認めないとすれば、現実的に生徒指導を行なえなくなり、 ろいろとトラブルが起こることになる。 なぜ、公の教育論と教育現場での直接の指導との間にギャップが生しるのか。それは、叱ることは とい、つ いけない、生徒理解が足りない、カウンセリング的に悩みを解決してやらなければならない、 ふうに指導法が規定されてしまうからだ。個々の生徒に対し、個々の教師が、時と場合に応した適切 な指導をするべきである。したがって、いろいろなケースに対応するためには、当然、叱るという指 導法も認知されなくてはならない。 3 叱りの指導観 叱るという行為は、本来、仲間うちでなされるものである。教師が生徒を叱る時の心境を分析して 4 3

7. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

〔日本〕他人と比較し、みんなと同しようであるべきだと思っている。考え方が集団的であり、目 立っことはよくないと見なす傾向がある。 ⑤はめる・叱る 〔外国〕子供の生活態度を見て、善行をすれは大変よくほめる。愛情深い言葉と誠実な規範が、子 供に大きな影響を及ばすと信している。「さすが : : : である , という表現で子供を励ますことは人間を 成長させると考える。 〔日本〕否定用語、禁止用語が多い。よく叱る。 ⑥家庭団らん 〔外国〕家庭団らんを大切にする。土、日を子供と一緒に過ごすのを義務と考えている国もある。 夏休みには一家そろって大自然の中にひたるなど、とにかく子供とともに過ごせる時間作りに励む。 〔日本〕ときおり、高額な金を払って、ホテルなどで豪華な料理を母親と食べさせる。その間、父 親はゴルフに行ったり、家でテレビなどを見て寝ころんでいる場合も多い。父親が子供に接触する機 会が少ないのは社会組織、勤務疲労の結果でもあろう。 ⑦子供の仕事 〔外国〕子供に家庭での仕事を分担させる。両親の手伝いをすることによって、責任感と親から信 頼されているという自覚を子供に持たせる。協力精神、自己節制を学ばせる。 〔日本〕勉強がすべてに優先し、家庭での仕事は免除される傾向がある。 ⑧子供の審美観 0 5

8. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

「日本の教育を一言でいえば、ヨーロ ッパ的厳しさと、アメリカ的規模と、日本的熱意を併せ持った ものである。日本は世界でも最も進歩し、成功した教育制度の一つを持っている。学問にこれほどの 信念を持つ国はほかにない。自分の幸せが学歴から生まれる、とこれはど深く信している国民ははか また一九八四年一一月、レーガン大統領は、彼の生まれ故郷ィリノイ州タンピコで演説した。その中 で「 : : : 日本の高校の高い学力水準に学び : : : 教室に規律と祈りを復活させなければならない : と、アメリカの優秀性を教育によって立て直すべきであることを強調している。 ②教育こそ成功の鍵 さらに『タイム』誌は、一九八三年八月の「日本特集号」の中で、日本の教育についてこんな書き 出しで紹介している。 「アメリカ人は最初、日本製カメラの品質に感銘を受け、続いてテレビ、さらに自動車やステレオ装 置と続いたが、今度はまた別の最優秀製品のことを耳にし始めている。それはあの大成功を収めてい る教育制度のことだ」 『エジュケーション・ウィーク』は、一九八五年二月から三月にかけて、日本の教育について五十ペー ジ余りを費して特集した。まず日本が太平洋戦争に負け、その廃墟からどのようなめざましい発展を 遂げたかを数字を挙げて説明している。 ①第一一次大戦終了後、五年を経た頃 ( 一九五〇年頃 ) 、日本はにおいてアメリカの六 % に過ぎ 108

9. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

P A R T ー 3 序を保つのに費やす時間と労力が三分の一少なくてすむとされる。一説では、米国の教師に比べ、一 〇 % 程度に過ぎないとも言われている。 日本では、体育の時間でも教員は真剣に授業を行ない、手抜きをするようなことはけっしてない。 アメリカでは、体育の時間をレクリエーションと見なしている。体育の時間は俗に (Children RunningA 「 ound) と呼ばれ、教師は子供をただ走り回らせておけはよいのだ。 工、教育ママ , ーー・優れた教育者 日本では子供の学業成績の良否は、家族全員の協同作業の結果であると考えられている。特に母親 は「教育ママ、と呼はれるほど、日本の優れた教育の重要な担い手である。母親は子供の教育のため ならどんな犠牲も苦にしない。日本の子供は皆、勉強机を持っている。その机にはボタンがついてい たとえ真夜中でも母親が温かい夜食を子供のところへ運んで る。それを押すと台所のプサーが鳴り、 きて、勉強の進み具合を点検し、子供を督励する。 ニューヨークのリ ーディルの小学校でこんなことがあった。日本人の子供を入学させたところ、 母親たちが同し教科書を二セットずつ買うのである。先生が、その理由をたすねたところ母親は、子 供の進度に合わせて勉強し、子供の学習を助けるためと答えた。そして英語を少しも知らすに入学し た子が、一年後にはクラスのトップになっていた。 ⑦日本からの教訓 『ニューヨーク・タイムズ』誌も一九八三年、四回にわたり「日本の教育ーーアメリカへの教訓、と

10. 学校はめざめよ 教育のブラックホール

ら、かなりの幅を持っている。さらに学年が進行する につれて標準年齢の生徒が減り、その前後の比率が増 8 えていることが読み取れる。これは進級・進学に関す る二つの個別化の措置がからんで生した結果なのだ。 第一は、小学校の入学が年齢によって決定されるの ではないということ。つまり、小学校教育に堪え得る 成 発達水準に達しているかどうかが、親の希望と専門家 構 齢 の診断によって決定されるのである。 年 第二の個別化の措置は、落第と飛び級の制度である。 の 徒 知育主義を重んじるフランスの学校教育では、落第や 生 飛び級も伝統的な制度なのだ。落第制度によって、学 男年齢 年が進むにつれて、標準年齢の生徒の比率が減少する。 学 学年 また、飛び級制度によって標準年齢以下の生徒の割合 も増えるというわけだ。 近年の教育改革で、フランスの学校は知育中心主義から全人教育主義へと機能を変えた。けれど、 しつかりとした基礎学力の習得も、全人教育の不可欠の要素と考えられているのには変わりはない。 だから依然として、落第・飛び級制度が存続することになる。これらの制度に対して、わが国のよう な差別や選別という非難はあまり聞かれない。 = % = ( 公立、 1980 ー 81 ) 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 ( 歳 ) 2 ① 14 2 ( % ) 2 ⑩ 18 4 2 2 ⑩ 20 6 1 3 3 ⑩ 22 8 2 4 3 ① 25 10 3 5 3 ⑩ 30 13 2 中 1 4 ① 35 12 1 2 5 ① 32 7 3 4 Nfinistere de l'Ed,Nat, : TabIeawx'82 から作成 〇印は標準年齢 ( 「日本教育新聞』昭和 60 年 4 月 8 日号より ) 5 37 6