界 - みる会図書館


検索対象: ダンテ神曲物語
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1. ダンテ神曲物語

のを見て驚いた。それを見て、ヴィルジリオは浄罪界の天文学について次のように説明し始めた。 「もし季節が夏至で、太陽が双子宮にあれば、われわれは太陽をも 0 と北のほうに見るだろう。 そしてエルサレムは浄罪界の裏蹠点にあるから、両者は地平線を共有していることを考えてみた まえ。だからフ = トンテが父親の忠告を忘れて馬車をあまり早く駆けさせて軌道をはすしたとい う道は、シオン山のあちら側を走「ているのに、 = ルサレムに行くにはなぜそのこちら側を進ま ねばならないかを考えてみたまえ」 そこでダンテが答えた。 篇「だんだんわか 0 てきました、あの至高天を運行する中央の圏は赤道と呼ばれてますが、冬期北 半球では太陽は冬至線またはその付近にあるので、赤道は冬の世界と太陽の間にあり、冬期南半 罪 球では太陽は夏至線またはその付近にあるから、赤道は冬の浄罪界と太陽の間にあるのですね、 浄だができることなら、頂上につくまでどのくらい歩かなくてはならないか知りたいものですね」 ヴィルジリオはいった。 「この山は裾野の登り出しは苦しいが、登るにしたが 0 てだんだん楽になるから、上のほう〈い ったら疲れをやすめることもできるだろう」 このヴィルジリオの言葉が終わるか終わらないうちに、すぐ間近で一つの声がひびいて「たぶ んその前に君は腰をおろしてやすまねばならないだろう」とい 0 た。 一一人がその声のはうをふり向くと、そこに一つの大きな岩があり、数名のものが岩かげに腰を おろしてやすんでいるのが見えた。 171

2. ダンテ神曲物語

界をめぐ 0 ているのだ。君たちがその大きな望みをはやく満足させ、また天堂界にはやく住める ようになるのを望む。私が紙に記すことができるように教えてくれたまえ、君たちはどういう者 なのか、また君たちの背後のほうへ進む一団はどういう者なのかを」 田舎者が都市へ出ると、驚いて心が乱れて、だまりこんであたりをきよろきよろ見回すものだ が、そこにいた魂たちも同じようにしこ。 すると、さっきダンテに質問した者がいった。 「生活を良くし、よい死に方をするために、この浄罪界で経験をつむことのできるあなたは幸福 だと思います。私たちの一団と反対方向を歩いている者は男色者たちです。それゆえ、みずから 貴めて「ソドマ」と叫んで歩き、その恥をも 0 て炎をたすけています。しかし、私たちの犯した 肉欲の罪は男女間で犯された罪であり、人の律法をまもらず、野獣のように本能的な欲望にした が 0 て犯したものです。それゆえ私たちが彼らと会 0 て別れるとき、木製の獣の中にはい 0 て獣 行をおこな 0 た女の名前を叫んで、自分たちを辱しめているのです。あなたはすでに私たちの行 為と犯した罪をご承知ですが、私たちの名前をいちいち告げる時間もなく、また私はそれを知り ません。ただ、私についてのあなたの希望はかなえてあげましよう。私はグイド・グイニッ = ル リですが、最後の時がくる前に痛悔して、すでに浄められています」 ダンテは、父ともいうべく、またダンテよりもすぐれた詩をつく 0 た人たちの父ともいわれる 者が、自分で名前を告げるのをきいたとき、まるでリグルゴの悲嘆のあいだに母に会いに行 0 た 一一児のようにふるま 0 たが、ダンテはその二児ほど熱狂はしなか 0 た。そしてじ 0 と彼をみつめ

3. ダンテ神曲物語

う。また生まれた時に、いとも強い火星の力を受け、その勲功は注目に値する者が、彼とともに いるのをお前は見るであろう。その者は年齢が若く、諸天が彼を回ったのは九年にすぎないので、 世間の人はまだ彼を知らないのだ。しかし法王グレメンテ五世が、まだハインリッヒ七世を欺か ない以前に、彼の徳の光は、富も求めず、戦いの疲れも知らないことに現われるであろう。彼の わざ もろもろの寛大な業は、それ以後あまねく世間に知られ、彼の敵でさえそれについて沈黙してい られなくなるだろう。お前は彼と彼の恩恵を期待するがよい、彼のために多くの人は変動を受け、 貧富の境遇は逆転するであろう。彼にたいする私の予言を胸にたたみこんで行くがよい、しかし 篇それを他人に洩らしてはならない、わが子よ、お前が地獄界や浄罪界できいたことの解説がこれ ねた であり、これは数年後にひそかにめぐらされる陰謀なのである。しかし、お前は同郷人を妬んで はならない、汝の美名は彼らの邪悪の罰よりははるかに遠くさきの未来にまでのびるはずなのだ 天から」 その聖なる魂は黙りこみ、ダンテのなした質問に返答しおわったとき、あたかも疑惑を抱く者 が、明哲で正しい道を望み、愛情深い者に教えをこうような態度で、ダンテは話しだした。 「愛する先祖よ、ときに私に打撃を与えんとして、拍車をいれて驀進してくるものがあります が、それを見て勇気沮喪する者にたいしては、そのものは急に強力になります。それゆえ私は先 見で身を堅めることにしています。それゆえ最愛の地フィレンツェが奪われたとて、流寓の各地ま で私の歌のために失ってはならないのです。終りない苦しみの地獄界へ下り、次にペア 工の目にすすめられたあの美しい山頂をもっ浄罪山にのばり、そのあとで天体から天体へ移りな 3

4. ダンテ神曲物語

罪 篇 浄 浄罪界の入口 ( フレ , ツ、のミ = アチ、一ル )

5. ダンテ神曲物語

第七歌 浄罪界前域 ( つづき ) 第二の高台ここには痛悔を怠った諸侯の魂たちが住んでいる。皇帝 ロドルフォ、ポヘミア王オットカーロ二世、フランス王フィリッポ三世、ナヴァールラのアリ ーゴ一世、アラゴーナのピエトロ三世とアルフォンゾ三世、アンジョ家のカルロ一世、英国王 アリーゴ三世、モンフェラートのグリエルモ七世。 ヴィルジリオと堅い抱擁をしたソルデルロは、さらに三度ばかり会釈を繰り返し、あとしざり してからヴィルジリオに向かっていった。 「あなたがマントヴァの人であることはわかりましたが、お名前を明かしてください」 そこでヴィルジリオがいった。 「私はアウグストウス皇帝の時代に死んだヴィルジリオです。私が天堂界にはいれなかったのは、 単に私がグリスト教の信仰をもっていなかったという理由からです」 ソルデルロはそこで、うやうやしくヴィルジリオに近づき、ひざまずいてヴィルジリオの両脚 を抱いた。 そして彼はいった。 「おお、故国の永遠の誉れよ、私があなたに会うことができたのは、私のいかなる功績のため、

6. ダンテ神曲物語

「死が肉体から解放してくれる前に、私たちの山を駆け回って、自由自在に目を開けたり閉じた りしているあの男はいったい誰だい」 「誰かは知らないが連れがあるようだ、君のほうが近いのだから、君がたずねたまえ。話をして くれるように、優しく頼むんだよ」 ダンテの右側でたがいにもたれ合って立っている二人の魂たちがひそひそとこんなことをいっ ていたが、そのうちの一人がダンテのほうに顔をあげていった。 「肉体に包まれたままで天堂界へ行こうとしている魂よ、お願いだから私たちを慰めるために私 たちと話してください。あなたはどこから来たのですか。また誰ですか。あなたは前例のない大 きな恩寵をこうむっているので、私たちは驚いています」 そこで、ダンテはいっこ。 浄罪界の第二円 ( つづき ) グイド・デル・ドウーカとリニエリ・ダ・カルポリ、一三〇〇年 代のトスカナ地方とロマーニヤ地方、羨望の罪の贖いをしている実例。カイノとアグラウロ。 第十四歌 212

7. ダンテ神曲物語

がら、そこで私が知ったことをここでふたたび語れば、多くの人に苦さを感じさせるでしよう。 しかし、もし私が真理にたいして卑怯の友になるならば、現在を昔と呼ぶ人々によって生命を失 うおそれがあります」 するとカッチャグイダが微笑する姿をつつんでいた光は、太陽光線にあたって黄金の鏡のよう に輝きつつ答えた。 「みずからのまた他人の恥辱によって曇った良心は、きっとお前の言葉の激しさを感じるであろ う、だがそれにもかかわらず、。いっさいの虚偽をすてて、お前の見たことはもらすことなくしめ し、お前の言葉をきいて苦痛を感じる者には感じさせるがよい。たとえお前の言葉は、初めいや しくとも、そのあとで消化してしまえば、やがて肝要な滋養を残すであろうから。お前のこの叫 びは、峰が高ければ高いだけ強くうつ風と同じようにするだろうから。また、それはけっして 小さな名誉ではない。それゆえ、この天体の輪においても、浄罪界においても、地獄界において も、お前にしめされたのは有名な魂だけだ。それは、出生が知られず、世間に隠れた例や、あま り顕著でない例では、聞く人の心が安心せず、また信頼もおかないからである」

8. ダンテ神曲物語

浄罪界は日没に近か 0 たので、エルサレムでは朝日がさしていたにちがいない。イベロ河は天 秤宮の下に落ち、ガンジ = 河の波は第九時にふたたび焼けた。つまりそのとき太陽はこのような 浄位置にあったのである。 そのとき喜色を満面にたたえた一人の天使が三人の詩人のまえに現われた。天使は炎のそとの 堤の上に立ち「心清きものは幸福なり」という聖歌をうたった。ついで天使はい 0 た。 「聖なる魂たちょ、まず火に噛まれずにはこれから先へ進むことはできない、汝らはその中には いってかなたの歌声に耳を傾けよ」 ダンテはそれを聞いて身のすくむ思いがした、そして心の中で人体の焼けるさまを思い浮かべ てそっとした。するとヴィルジリオがいった。 「わが子よ、ここでは呵責はあ「ても死ぬことはない、かってジ = リオンに乗 0 たときも私は君 第二十七歌 浄罪界の第七円 ( つづき ) 貞潔の天使、三人の詩人は火の中を通り抜けた、地上の楽園への登 攀、ヴィルジリオはダンテに以後自主的に行動するように告げる。

9. ダンテ神曲物語

工を嘲 9 て、その雷電にうたれて死んだ。 三一八ー二七一 l) 。イタリアを攻めてローマを悩ました。 ヴィテルポ付近の温泉。 * * * * セスト ( セグストウス ) 大ポンペイウスの子 * プリカート * * グレタグレタ良 ( 前三五年没 ) 、イタリアを襲った海賊。 リニエル・ダ・コルネートダンテ時代の有ィーダクレタ島の中央の山。 レアグロノスの妻、夫が生まれた子供を食べ 名な盗賊。 パッツイダンテ時代のるので、ジョーヴェが生まれたとき、彼女は赤ん坊をクレタ島 * * * * * * リニエル・ディ・ のイーダ山に隠し、赤ん坊の泣き声がジョーヴェに聞こえない 有名な追剥ぎ。 チチ・ーナ河トスカナ地方を流れリヴォルノ付近ように島民に音楽を奏し、叫ばせたという。 ダミアータエジプトの北岸で、ナイル河口の町。 で海へ注ぐ河。 * * フレジェトンタ地獄界の河。 トリヴォルノ付近の海岸の町。 * * コルネー レ 1 テ忘却という意味で、死んだ人の魂はこの河の * 不正な行為自殺。 ラーノエルコラーノの略称。浪費のため破産した彼水を飲んで現世の記憶を忘れるといわれる。「神曲 0 では、この 註 は、一二八七年アレツツォ付近の戦闘で戦死したが、それは絶河は浄罪界の地上の楽園を流れている。 フィアミンギ人ベルギー西部、オランダ南部、フラ 望のあまりの自殺的行為であった。 者 ジャコモ・ダ・サンタドレアパドヴァの浪費家。ンス北部を含むフィアンドル地方の住民。 **** 都市の生まれフィレンツ = 生まれの意、フィレパドヴァ人北イタリアのポー河の河口の町パドヴ パッティスタアの住民。 訳ンツェの紋章は軍神マルスから聖ジョヴァンニ・ 酸いソルポ酸味のある果実のなる灌木。 ( 洗礼者ヨハネ ) に変えられた。 草ローマの正しい伝統をひくダンテを指している。 * カトーネ ( カトー ) マルグス・ポルキウス・カトー ・ウテイケンス ( 前二三四ー一四九年 ) 、ローマの政治家、「神フィエゾレフィレンツ = の北三キロの町。 * フランチ、スコ・ダッコルソダンテ時代の法律学者 曲』では浄罪界の番人となっている。 ジョーヴェ ( ゼウス ) ギリシア神界の最高神、雷電、兼ポローニヤ大学教授。 ヾッキリオーネ河畔北イタリアのパッキリオーネ 雷霆を投げて秩序の違反者を罰した。 フレグラの戦いギリシアのテッサリアの平原でゼ付近の町ヴィチ , ンツア。 ヴ、ローナ北イタリアの町、この町の郊外では ウスに反乱を企てた巨人軍がおこなった戦闘。 毎年四旬節の第一日曜日に地区対抗の競走がおこなわれた。 モンチベルロシチリアのエトナ山の古名。 カバネオ ( カバネウス ) ピ , ポノオスの子、グイド・グ , 、ラ一二五五年にグ = ルフィ党の領袖 巨人で、テーパイを攻めた七将の一人、鹹壁に登り、ジ , ーヴで、同年フィレンツ、がアレ , ツオを盟主とするギペリー = 都

10. ダンテ神曲物語

会話は歩調を、歩調は会話をおそくせずに、二人は順風をはらんだ船のように足早に歩きなが ら話をつづけた。すると道の側から、二度死んだのではないかと思われるくらい痩せた魂が、く ばんだ目に驚異の色をみせつつ近づいてきた。 ダンテはあいかわらず、フォレーゼと会話をつづけながらいった。 「ヴィルジリオは私のために、特別に速度を落として登っているようだ。話は違うが、君の妹の ピッカルダはいまどこです。それから、私を眺めるため集まってきたこれらの者の中で記憶にと とどめるものがあったら教えてくれたまえ」 フォレーゼは答えた。 「私の妹のピッカルダは美しくて善良であったため、いまや天堂界で楽しい生活をしています。 ここにいる者は痩せて肉が落ちて容貌が変わってしまったから、各人をひとりびとり名前でよん 第二十四歌 浄罪界の第六円 ( つづき ) ポーナジュンタ・ダ・ルッカ、マルティ ノ・デラ・ピーラ、ポニファッイオ・フィエスキ、マルケーゼ・デリ・ ントウッカと清新体派、ロ腹の欲に耽っていた者が罰せられている実例。 ーノ四世、ウ・ハルディ アルグリオージ、ジェ