考え - みる会図書館


検索対象: ダンテ神曲物語
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1. ダンテ神曲物語

へだてて、われわれの足下に回っていなかったならば、この小さな地球は、もっと広く見えたこ とであろう。ダンテのべア ト丿ーチェを慕う恋心は、まえより強くなって、ダンテの目をふたた びべア ト丿ーチェのほうに向かわせた。たとえ自然や芸術が人の心をとらえんとして、人間の肉 体またはその絵姿によって、人目を惹きつける餌をつくるとして、それらすべてを一個所に集め たとしても、ダンテがべアトリ ーチ ' の徴笑する顔へ向かったときダンテを照らした聖い楽しみ にくらべれば、無にもひとしいであろう。かくて、この視線がダンテに恵んだ力は、レダの美し い巣すなわち双子宮からダンテを引きはなし、いちばん速く回る原動力へと追いたてた。 この天体では、地球からもっとも近いところも遠いところも、一様であったので、べアトリー チ = がダンテのためにどこをえらんでくれたかダンテは知らなかった。しかし、ダンテの願望を 見たべアトリ ーチェは、神の喜悦そのものが顔に現われたと思われるばかり楽しげに微笑しつつ っこ 0 「中心を鎮めてその周囲にあるすべてのものを動かす宇宙の性は、おのれの源から出るように、 ここから出るのである。この天体は場所をもたず神の御意の中にあるのみである。そして、これ らを回転させる愛とこれが他に降らす力とは、この神意の中で燃えている。光と愛がこれを一つ の環の中に包みこむさまは、またこれがほかの諸環を包むさまと同じであった。またこの圏を司 る者は、これを包む者だけだ。この運行は、他のものによ 0 て測られず、他のものがこれによっ て測られることは、十がその半ばと五分の一によ 0 て測られるのと同じであった。それゆえ、時 がこの第九天にその根をおろし、葉をほかの諸天の中に茂らす理由は、いまに汝にしめされるで さが 442

2. ダンテ神曲物語

なったのだ。また、ガラスや琥玳や水品に光線がさすとき、それがはいってきて、はいり終わる までに、ほとんど時間が感じられないように、主の三重の被造物も、また神から光のごとく出て 完全な存在となり、いずれが初め、いずれが終りという区別をつけがたい。さて、内容とともに、・ それらの秩序と構造もっくられ、宇宙のいちばん高いところには、純粋な作用をなす者すなわち 天使が置かれ、純粋な潜勢力を有する者すなわち物質はもっとも低いところへ置かれ、中間の位 置には、天使と物質を結ぶ諸天が置かれたのである。イエロニモは、天使たちが、ほかの宇宙が 作られたときよりも、何百年も前に作られたと記しているが、私がいうように天使と残りの宇宙 が同時に創造されたという真理は、聖霊によって鼓吹された福音書作家によって、多くの場所で 書かれているが、それはすこし注意すればわかるはずだ。また、理性も多少その真理を悟るであ ろう。その理山は、もろもろのものを動かす者すなわち天使が、久しく完全でないことはありえ ないからである。いまや、おん身は、これらの天使がどこで、いつ、またいかにして作られたか を知ったはずである。それゆえ、おん身の願望の三つの炎は消えたわけである。数を数えて二十 に達するまでの時を要せず、たちまち一部の天使が、おん身らの要素の中のもっとも低いもの わざ ( 地・水・火・風の四要素中の地 ) を乱し、他の天使は、残っておん身の見るごとく、かの業を 始めたが、それをすることは彼らにとって大いなる喜びであるから、彼らは回転を中止すること はないであろう。天使の一部の堕落の原因は、すでにおん身が見たごとく、宇宙のいっさいの重 みによって圧せられている者すなわちルチフェロの呪うべき傲慢であったのだ。おん身がここで 見る者たちは、謙遜で、かくも高い徳を彼らに悟らせた神から自分たちが出たことを認めていた 0

3. ダンテ神曲物語

うちに、この王国を安んじたもう神は、おのれの楽しい聖顔の前で、すべての心をつくり、聖旨 のままに異なる恩恵をめぐみたもうのである。汝はこのことを悟ることで満足するがよい。さて、 人の魂には創られたときに、すでに神から受けた恩寵の量の多少があるが、人はそれを知ること で満足し、その理由をきいてはならないことは、汝ら人間に福音書の中で、母の胎内で怒りを発 した双生児の例で知らされているはずである。それゆえ、かかる恩寵の差にしたがって、至高の 光は、彼らの頭上に、各人にふさわしい冠をさずけられるにちがいないのだ。それだから、また きざはし 彼らがおのおの異なった階に座らせられているのは、自分のなした行為の徳によるのでなく、 その神を見る視力の差によるものなのである。世界がまだ新しかったころには、あまり人は罪を 犯さなかったし、その上、両親の信仰があれば救済をうるのには十分であった。第一の時代がお わった後には、男子は割礼によって、その罪のない羽根に飛翔の力を得ねばならなかった。しか し、恩寵の時がきてからは、クリストの全き洗礼を受けない幼児は、辺獄にとどめ置かれた。さ あ、クリストにもっとも似た顔をもっという聖母マリアの顔を、とくと眺めるがよい。その輝き のみが、汝にクリストを見ることを可能にするのだから」 ダンテが仰ぎみると、高いところを飛ぶように創られていた天使たちのもたらす大きな喜悦が、 彼女の上にふりそそいでいた。まえにダンテが眺めたもののなかで、これほど大きな驚きをもっ てダンテの心を奪い、これほど神に似たものをしめしたことはなかった。 そして、さきに彼女の上にくだった主天使ガプリエルが「めでたし聖寵みちみてるマリア』と うたいながら、その翼を彼女の前にひらくと、天の宮廷人たちは四方からこの聖歌にあわせて合

4. ダンテ神曲物語

市連合軍と戦ったとき、一方の大将をつとめた。 マレポルジャ邪悪の嚢という意味で、第八圏の総称。 * * テッギアイオ・アルドプランディフィレンツェのそれは十個に細分されている。 アディマーリ家出身の名で、モンタベルティの戦闘前に、フィ * ヴェネディコ・ . カッチャネ斗ーコ一二六〇年から一 レンツェ軍のシエナ攻撃中止を主張したが、いれられなかった。二九七年までのポローニ・ヤのグエルフィ党の領袖。 * * * ヤコボ・ルスティグッチ十三世紀のイタリア人、 * * ギソラベルラヴェネディコ・カッチャネミーコの 悪妻のゆえに妻と別居し、男色にふけった。 妹。兄はエステ侯の歓心をかうためいやがる妹を侯にとりもっ * グリエルモ・ポルシェレフィレンツェの著名な商人、た。 彼の名前は「十日物語』にもあらわれている。 ジャソーネ ( ィアソン ) ギリシア神話の英雄。彼は * 斗モンテ・ヴェーゾアルプス山中 . の山。 テッサリア王アイソンの子で、一隊の戦士をひきいて「金毛の * * * フォルリ北イタリアのロマーニヤ地方の町。 羊皮」をとりに行った。 * 聖ベネデット・デル・アル・ヘアベニン山中で、フォル * アレッシオ・インテルミネイ・ダ・ルッカルッカの 貴族で白党に属する追縦者。 リを眼下に見降すところにある修道続。 遊女タイデ ( タイス ) 古代ギリシアの著名な遊女。 タタールト韃靼 ( ) 人。 アラクネギリシア神話にみられる小アジアの機織アンフィアラオ古代ギリシアの占い師、彼はテーベ 女。彼女は高慢であったので、女神アテネと機織の技術の競争攻略の七人の王の一人であったが、戦っているとき、ゼウスが をし、その罰として蜘蛛に変えられた。 雷電を投げて地に穴を穿ち、彼を地の底へ落とした。 * ヴィタリアーノヴィタリアーノ・デル・デンテとい * * ティレシアテーべの占い師、エウェロ ( へウェロ うパドヴァの高利貸でパドヴァの長官となったこともある。 ス ) とニンフのカリクロの間に生まれ、七王のテーベ攻撃に参 * * ジョヴァンニ、プイアモンテフィレンツェ第一の加した。ある日森の中で交尾中の蛇を杖で打ったため彼の身体 高利貸。 は女に変わったが、 七年後、同じ二匹の蛇の交尾を見てそれを フトッギリシア神話上の人物、太陽神ヘリオスと杖で打ち男の身体にもどった。 クリメネの子、父親の太陽神にせがんで、その馬車を御したが、アロンタエトルリアの占い師、チェーザレ ( ュ あやまって軌道をはずれ、各地に火事を起こしたので、ジョー リウス・カエサル ) とポンペイオ ( ポンペイウス ) の戦いのと ヴェに電撃されて死んだ。 き、前者の勝利を予言した。 * * . イカロギリシア神話上の人物、有名な建築家ダイ ***** マント占い師ティレシアの娘で、父の死後長 ダロスの子で、父の作った翼をつけて空を飛ぶうちに、あまりい放浪の後イタリアのロンパルディア地方へたどりつき、マン 高く上昇したため、太陽熱で翼をとめていた蝦がとけて海中にトヴァの町を建設してそこに住んだ。 墜落して死んだ。 * * * * * テイローロ城北イタリアのチロル山中の城。